俺も怒る・リサも怒る
今日は、とんでもない一日だったと思いながら家に向かって歩く。それをふわふわと三人の精霊が付いてくる。
アーサーは足を止めた。
そして振り返るり三人をまじまじと見つめる。
「目立つな。 お前ら」
「・・・ん?」
「なの?」
「・・・?」
三人の精霊は首を傾げて顔を見合わせた。
「とにかく、一旦体に戻ってくれ」
言われるがまま 三人は戻っていった。
アーサーはあまり理解していなかった。
精霊たちを体の中に入れるという事は考え思考、心の中まで全て彼女たちにも伝わってしまうって事を・・・。
★ ★ ★
大きな城の前のドアで立ち止まった。
あまり帰りたくない家。
居心地の悪い家。
大嫌いな家族。
心休まることのない空間。
今のこのギスギスした気持ちは精霊たちにも伝わっている。
精霊たち三人も心を痛める。
そして、フラッシュバックされる記憶の数々も彼女たちの脳裏に映し出される。家族の冷たい態度や言葉。街の人々からの無視される辛さ。誰一人としてアーサーに優しく接してくれる人などいなかった。
ーー 魔法が使えるようになりたい ーー
その意味を彼女たちは、 ようやく理解した。
アーサーの決意、そしてこれから自分が変わろうとしていることも。
アーサーは覚悟を決めて玄関のドアを開けて中に入った。広いロビーが広がっている。
幸いにも誰もいなかった。アーサーは誰にも会いたくないので早足で自分の部屋のある二階へと階段を登っていくそこには、 会いたくなかった兄と遭遇してしまった。
「おや。 アーサー帰ってたのか、久しぶりだね。 なかなか家に居ても顔を合わせないからな。 調子はどうだい」
「兄さん・・・お元気そうで何よりです」
ーーでは、と アーサーは、 兄に一礼してそばを立ち去ろうとすると。ーー腕を掴まれ、
「まあ、 そう慌てるよ。魔法は使えるようになったのか? 今度一緒に各国の会食に参加してみるか」
アーサーは、何も言わず下を向いていると。
「ハハハ。 冗談だよ、冗談。 頼まれてもお前を連れて会食に連れて行かないよ。 恥ずかしくて逆にこっちが恥をかきそうだ」
兄は高笑いし、 腹を抱えいる。それを見て歯をくいしばり必死で怒りを我慢するアーサー。
「っていうか。 いつまでここにいるつもりだ。 早く出てってくれないか」
( もう、我慢出来ないわよ!! )
アーサーの体から勢いよくリサが飛び出した。
「さっきから黙ってれば、 いい気になってウチの旦那様に何調子にのった口聞いてんのよ」
「リサ・・・」
アーサーは、何とも言えない表情をしている。
「何だコイツは? アーサーお前こんな虫みたいなヤツ飼ってんのかよ」
ーー アーサーの中で何が切れた ーー