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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・序
67/217

水竜討伐②


轟く咆哮。ーー羽ばたく度に吹き起こる竜巻と高波。


水竜に立ち向かう、銀髪のメイドと王道魔女スタイルのピンクの髪の少女。


「魔法効いてるか? 全く動じてないぞ」


「ええ。私の魔法も手ごたえがないように感じるわ」


「弱点的なところを探さない限り無意味って事か」


「多分ーー弱点があればだけど」


メーディアとキルケーは、手ごたえのない相手に困惑の様子だ。


「私が探るよ。 メーディアは相手を引きつけておいて」


「任せて。 今はあなたの多彩の魔法が頼りよ。全属性魔導士パーフェクトマイスターの才能が羨ましいわ」


「天才だからって妬むな、妬むな」


「その性格がなければ尊敬するのに・・・損してるわよ」


「妬むな、妬むな。 こっちも頼りにしてるんだから」


二人は、パチンとハイタッチするとそれぞれの持ち場についた。


「水竜さん、こっちよ。私が相手よ」


メーディアは魔力を上げ、バチバチと魔力の電流のオーラを身にまとって威嚇する。


それを見た水竜は大きな声で咆哮を上げる。


「さてさてと、少し本気で集中しないとね。メーディアがいつまで頑張れるかわからないからな」


キルケーは、地面に魔法陣らしき物を書き出した。


「天才キルケー様が本気を出せば出来ない魔法はないのだ。 見つけ出してやるぞ弱点を」


魔法陣の中心に立ち、杖を中心に突き立てると両手を前に広げ目を閉じる。


「我が心の眼よ 全てを見透せ我に教えたまえ

幻影望遠(スコープ)


キルケーの頭の中に水竜の投影映像が流れ込んでくる。


その映像は、物体を3Dの立体映像で把握でき防御の強い部分は赤、弱い部分は青、その他は緑で分かる。


更に属性の弱点は予め色で分かるようになっている。


「なるほどね。 これでは私たちがいくら魔法を使っても効かないはずだよ」


「キルケーわかったの? 」


水竜の攻撃をかわしながらキルケーに尋ねるメーディア。


「分かったよ。 時間稼ぎご苦労様」


突き立ててる杖を手に取り、真剣な面持ちで水竜を睨みつける。


「覚悟しろよ! すぐにブッ倒してやるからな」



★ ★ ★


「アーサー様ああ、アーサー様ああ」


頭を抱えて苦しみもがいて転げまわるアーサー。


「メイザース様、アーサーに治癒魔法を早く」


リサが必死な形相でメイザースに頼み込む。


「・・・・・」


メイザースは、微妙な顔つきで黙り込んでいる。


「メイザース様!! 」


シルフィーも声を大にしてメイザースに必死に頼み込む。


「頭がーー頭がーー出ていってくれ」


「アーサーきゅんは何者と格闘しているのだ」


アーサーの異常な独り言などで治癒魔法は効果が無いと分かっているかのように精霊たちの言葉に耳を傾けずアーサーの挙動に身を向けている。


「独り言? メイザース様はそれがアーサー様の苦しんでいる原因かと」


「混乱? 魔法とか呪い? 」


精霊たちはの心配は募るばかりで居ても立っても居られない状態だ。


「私にも分からないのだよ。 ただ一つ言えるのは魔法でも呪いでもなさそうなのだよ」


「アーサー様がこんなに苦しんでるのに何も出来ないなんて・・・」


リサは、アーサーの苦しむ姿を見ていられず両手で顔を覆った。


★ ★ ★


真っ白な部屋。ーーどこまでも真っ白で無限に広く何もない。


そこにアーサーと同じ形をしたもう一人の自分がいる。


「よう! やっと体を渡す気になったか」


「俺の体だ。お前に渡す訳ないだろ」


もう一人のアーサーが近づき耳打ちをする。


「チカラが欲しいんじゃないのか? ホーエンハイムの時も何も出来ずに僕に頼んだじゃないか。 今回も何も出来ずに立ってるだけじゃないのか」


ポンと肩を叩いて、ニヤッと笑みを浮かべた。


「ーーーーっ」


何も言い返せず唇を噛むアーサー。


「昔から何も出来ないくせにデカイ事を言って周りをその気にさせて自分は結局見てるだけ」


再びもう一人のアーサーが耳打ちをする。


「チカラがないから、魔力がないからだよ。

水竜討伐したいんだろ? 誰も傷付けさせたくないんだろ」


頭にポンと手を置きーー、


「お前じゃ誰も救えない。僕と代われ」


アーサーの目が死んだ。


アーサーの意識は無くなった。


真っ白な部屋にアーサーは崩れ落ちた。


バンッと誰かが電気のブレーカーのスイッチを切ったかのように辺りは真っ暗になった。




ーー スイッチ (人格)切り替え完了 ーー

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