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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と悪魔教団の書・序
60/217

天才魔導士だぞ

行く当てもなく迷子の箒が空を彷徨う昼下がり。


「こんな事ならメイザースにちゃんと場所を聞いて来るんだったよ」


舌打ちをし、 地面に目をやりながら箒に跨がり空を飛ぶキルケー。


「俺らも聞いておけば良かったです」


キルケーの後ろに箒に跨るアーサーは、肩を落とし申し訳なさそうにする


「メイザースさんのお話しですと、ある地方全体が既にゾロアスター教に支配されているそうですわよ」


シルフィーが髪の毛を押さえ思い出しながら話す。


「そうは言っても世界は広いからな、 そう簡単には見つかるわけーー」


言いかけた時、 ある街の上空から下を覗き込むと白い人々の固まりが目に飛び込んで来た。


「いや、 見つけたぞ。 ゾロアスター」


キルケーの口元が緩んだ。


「一旦近くに降りるぞ」



★ ★ ★


街はずれの岩陰に身を潜めているアーサーとキルケー。 精霊たちはアーサーの中に戻っている。


この町は周りは岩山に囲まれていて身を潜めてるには適している。


街の中に進入するにはかなり開けていて家と家の間隔も広く隠れながらの進入は困難である。


街の中央には見るからに真新しい礼拝堂がありその周りに白装束を着た人々がごった返している。


「アーサー様、 進入するにはかなり困難だと思います。 これだけの人が礼拝堂にいては見つからず中に進入するには・・・」


リンクテレパシーからシルフィーがアーサーの頭に直接話しかける。


「どうやってバレないように潜入捜査するんだ?」


「良し! 私に良い案がある。 私の得意の変身魔法を披露してやろう」


「そんな魔法があるのか」


「凄いの」


「私を誰だと思っておる。 天才魔導士キルケーさまだぞ」


思いっきり仰け反りながら高笑いする。


「仮染めの影よ 我が姿を覆い尽くせ」


魔法の杖が輝き出すーー アーサーに杖を向けると光がアーサーを包み込む。


「犬に慣れ!! ドロンパ」


アーサーが一瞬煙に包まれたと思うと煙が晴れた時にはもうアーサーの形はそこにはなく犬のような姿になっていた。


「うん。 我ながら完璧だ!成功だ」


「・・・・」


「どっからどう見てもーー」


「アーサー様、 変です」


「コラ! 何勝手に具現化している」


精霊たちは、アーサーの中から出て冷ややかな目で変身したアーサーを見ている。


「犬に決まっているだろ。 完璧だ」


反り返り威張るキルケー。


「犬にみえないの・・・きもちわるいの」


「・・・個性的? ですわね」


「何? 何処がおかしいと言うんだ? 見事じゃないか。完璧な変身魔法だ」


「全体的に変! 犬に見えない、感性がおかしい」


エルザとシルフィーはうん、うんと頷く。


キルケーは、 マジマジとアーサーを見てみる。


まさに短足、胴長の人面犬だ。


「どこも変ではないと思うが」


「・・・元に戻してくれ」



★ ★ ★


「いつも変身してバレないの」


リサが核心を突くようにズバリ聞く。


「天才魔導士だぞ・・・バレるわけ・・・」


顔に汗が滲む明らかに動揺を隠しきれない。


「バレてるなの」


「バレるわよ。 あのクオリティーなら」


精霊たちは一様にうん、うんと頷く。


「ば、 馬鹿にするなよ! これならどうだ」


キルケーは、 再び杖を取り呪文を唱える。


「ドロンパ」


アーサーは、再び一煙に包まれたと思うと煙が晴れた時にはもうアーサーの形はそこにはなく白装束を来たゾロアスター教信者の姿になっていた。


周りから喝采と拍手が起こったーー


「天才だぞ! これ位朝飯前だ」


「これならかんぺきなの」


「初めから白装束に変身すれば良かったですね」


皆一同感心と尊敬する声が溢れる。


「良し! 私もドロンパ」


キルケーは煙に包まれたと思うと一瞬で白装束姿に変わった。


「これなら完璧だな! 良し街に潜入するぞ。ついて来い」


キルケーは大威張りで街に向けて歩き出す。


やれやれといった感じで肩をすくめてアーサーはキルケーの後をついて行く。


アーサーの白装束は表向きは普通だが背後は丸見えでアーサーのパンツ姿があらわになっていた。


「アーサーさまあああああ」


精霊たちは赤面して慌てたのは無理もない話だったーー



ーー キルケーの魔法って・・・ ーー

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