魔法結社 アルファ
「やあ、よく来てくれたねアーサーきゅん。
君に会えるのを楽しみにしてたなのだよ」
黒いローブを身に纏い、黒髪の長髪にシルバーのメッシュが入っている。 オッさん何だろうが若く見られたいような若作りをしている感じだ。
「あっ、どうも初めまして」
「本当に三人の精霊と契約してるんだね」
マジマジと三人の精霊を眺める。
さっさっとアーサーの背後に隠れる三人は、怯えてた表情でメイザースを陰から覗く。
「わざわざこんな所まで来てもらって申し訳ないね。 色々君の噂を耳にしていてね。
どうしても聞いておきたい事とかあったのだよ」
メイザースは、 一人でうん、うんと頷き納得している。
「はあ。」
アーサーは、よく分からないがその男は何かを聞きたいようだ。
「まあ、立ち話も何なのでこちらへどうぞなのだよ」
奥にある広い応接間のような部屋に案内される途中の廊下にはよく分からない壺や鎧、箱など他の人から見ればガラクタにしか見えない物が所狭しと飾られている。
奥の部屋の扉をメイザースが開けると一人の女性が立っていた。
銀色のショートヘアで両サイドを三つ編みにして可愛い赤いリンボで留めている。
服装は、 お屋敷にいるだけあってフリフリのメイド服だ。
メイザースの趣味なのか際どい位のミニスカだ。
そして何よりの特徴はーー瞳の色が金色だった。
部屋は、 応接間というには広く沢山の書物が溢れる程ある。 真ん中にテーブルと高そうなビンテージの皮のソファーがあり奥にメイザースが使っているであろう机がある。
「あら? 噂の彼。 ふーん、本当に三人の精霊と契約してるんだ」
金色の瞳を細めてじっと、アーサーと三人の精霊を見つめた。
「メーディアちゃん、客人にお茶をお出ししてちょうだい。 あったかいお紅茶何て良いんじゃないの」
「かしこまりました」
メーディアと呼ばれた彼女は、返事をしてそのまま部屋を出て行った。
「好きな所に腰掛けてくれたまえよ。 自己紹介がまだだったね。 私の名前はメイザースなのだよ。 よろしくね」
「初めまして、アーサーです。 よろしくお願いします」
適当なソファーに腰掛けて軽く会釈した。
メイザースは、 ニコニコと笑顔で精霊達を見ている。 まるで今度は君達の番だよと言わんばかりの笑みだ。
「炎の精霊 リサです」
スカートの裾を摘んで軽く会釈した。
「大地の精霊 エルザなの」
同じくスカートの裾を摘んでお辞儀をする。
「風の精霊 シルフィーですわ」
同じくスカートの裾を摘んで軽く会釈する。
それを見ていたメイザースは、笑顔でうんうんと頷いていた。
「実に良いですねえ。うん、うん」
「メイザース様、気持ち悪いですよ」
メーディアが横から現れてティーカップをテーブルに置きながら真顔で軽べつする。
「酷いなあ、 メーディアちゃんはぁそんな言い方しなくてもねえ」
肩をすぼめてため息をつくメイザースは冤罪だよと言わんばかりに顔を軽く振る。
「メイザース様、この水晶に映っているモノは何でしょう」
そこには、色んな精霊たちの自己紹介風景が映像として記録されていて、 皆同じポーズをとりながらスカートの裾を持ち上げているシーンがランダムに映し出される。
(まさか、 コイツ・・・)
「メーディアちゃん、 いつの間に・・・なぁに、 これは精霊の研究の為の資料なのだよ、特に深い意味などないのだよ」
顔と口調が明らかに動揺してしどろもどろになって目が泳いでいる。
メーディアが水晶に触れるとーー、
「メーディアちゃあああん駄目だよ」
凄い勢いでメーディアに駆け寄るメイザース
しかし、 一歩遅かった。
ーー炎の精霊 リサですーー
水晶から先ほどの映像が流れた・・・
「あ」
その場にいた全員が凍り付いたように固まったのは言うまでもない。
★ ★ ★
ゴホンっ、 咳払いを一つし改めてと仕切り直そうとするメイザース。
しかしーー 冷ややかな視線を一点に浴びて動揺している。
「まあ、 前置きがいろいろあったが、 君たちの事について私なりに色々調べさせてもらったのだよ」
顎を掻き、 明後日の方向を向き冷ややかな視線を受け流しながす。
三人の精霊は、顔を膨れさせて目を細めて冷ややかな視線を送り続けている。
メイザースもその視線に困惑していてやりづらそうだ。 まあ自業自得だな。
俺が気になって仕方ないのがメーディアのあの瞳だ。 俺の中のもう一人の俺と全く同じ瞳をしている。
もう一人の俺は、血筋とか言っていたが彼女は何かを知っているのだろうか。
「アーサーきゅん、君の家の家系だが人間じゃない血が混じってるねえ」
「えっ」
アーサーは、思いもよらぬ言葉に息を詰まらせる。
「君は、母親について何か聞いているかい」
「俺の母親・・・・」
アーサーは、声を出せない。
何故ならアーサーは、 母親の顔すら知らない。
物心つきた頃から母親は居なかった。
「アーサー様のお母様には、確かにお会いした事ありませんね」
「ないのお」
「お父様も見た事ないね」
精霊達も首を傾げていた。
「父は忙しい方でほとんど家には居ないんだ。 母親は、 物心ついた頃から居なかった」
アーサーは、 下を向き語る。
「君は自分のこと知りたいと思うかい? それとも知るのは怖いかい」
「ーー知りたいです」
★ ★ ★
静まり返る応接間、 アーサーは緊張な面持ちで手に汗を感じその時を待っている。
「アーサーきゅんのおかあさまは、メリュジーナと言い精霊なのだよ」
「えっ? 精霊」
アーサーは、驚きを隠せず三人の精霊たちを思わず見てしまった。
「精霊にもいろんな種類があるのですよ。 全ての精霊が小さい訳ではないのです」
「そうなのですか。 私たちの周りの精霊は全て小さいのでそれが普通だと思ってました」
「悪魔族もそうです。 巨大なチカラを持った悪魔こそ巨大な身体なのです」
メーディアは、精霊たちを見つめながら答えた。
「じゃあ、僕は人間と精霊の間に生まれた子」
「そうなのだよ。 そしてペンドラゴン家は選ばれし家系の血を引く」
「選ばれし家系? 」
メイザースが指をパチンと鳴らすとメーディアがスッとやって来てアーサーの元へと向かって来た。
「私の瞳、 あなた何となく気付いていたでしょ?」
アーサーが一番気になっていた事、 知りたかった事。
「この瞳は、 何なんだい?」
「皇帝の瞳」
ーー 選ばれし一族のみが許された瞳ーー




