皇子と光の妖精5
爆音と地響きが王宮にも響き渡る。
王宮の屋上の部屋にもその爆音や戦場で闘う兵士やクルセイダーズの声も響いてくる。
「アクセル、 大丈夫なの? まさか敵が」
「心配ないよ。メルル達もいるし君が心配することは何もないよ」
「やはり・・・魔女の私なんかがいるから」
「何度も言うが魔女だからとか人間だからとか関係ない。
俺はお前と毎日笑って一緒に過ごしたいだけなんだ
それを邪魔するヤツは俺が退いてやる。
お前を傷つけようとすれば俺が守ってやる」
「アクセル・・・昔からずっと変わらないね。嬉しいよ」
「ニシシシ。リリスお前のその笑った顔もな!
俺好きなんだその笑顔が」
「私もよ、アクセルの笑顔好き。だって太陽みたいにみんなを照らしてくれるから」
アクセルとリリスは、王宮の最上階にあるアクセルの部屋で二人仲良く微笑んでいた。
「リリス、ごめんな。少しだけおやすみ」
リリスのサラサラの紫色の頭の上に手を置くと、どこからとも無く光輝く精霊が現れリリスの周りをくるくると回るとリリスは眠ってしまった。
「本当に、これで良かったの」
ルナは、申し訳無さそうに眠るリリスを見ている。
「ああ。お前も気付いただろ? どんでもない魔力が近付いて来てるのに」
「ええ。少し嫌なことを思い出させてくれる魔力だわ。あの時の借りは返させてもらう」
★ ★ ★
城門前は、アクセルの登場に喝采が沸き起こっていた。
「サタン、あの時の恨み忘れたことは一度もないわ! 覚悟しなさい」
ルナの魔力が一気に膨れ上がる、周りにいるキャットハンズの兵士達も鳩が豆鉄砲を食ったように驚く。
隣に居たアクセルは、笑みを浮かべた。
「グフフ。なるほどなるほど、あの時の光の精霊デスか。これは面白いデス」
「何だ? 悪魔と知り合いなのか」
「因縁ね。少し訳ありなのよ」
「とりあえずあのちっさい方から片付けるぞ!」
アクセルは、黒い炎を纏った剣を構えるとその場で剣の素振りをするようにデビルに向かって振り抜いた。
その太刀筋は、無形の剣となりデビルを黒い炎が包み込む。 これがアクセルの魔封剣の威力、敵の魔法を吸い取りその魔法を無形の剣にする。 防御不可能の見えない斬撃。
「ひぁはははははははは・・・」
デビルは、黒い炎に包まれながらもがき苦しんでいる。
「天に輝く光の化身よ、我にチカラを与えたまえ、
我が名はルナ、月の精霊の名の元にーー」
全身を包んでいたオーラがルナの右手の集まるーーそしてもがき苦しんでいるデビルに向かって一気に魔力を解放する。
「消え去れ! 聖なる彗星」
光の輝く特大な流星がまるで隕石のようにデビルに向かって落下した。
真面に衝撃を受けたデビルは跡形もなく消え去った。
「これが精霊のチカラにゃん・・・」
メルルは、信じられないと言った表情でポカンと口を開けていてた。
「上出来、上出来。 魔女の前に掘り出し物を発見デス。 私もまだ完全体ではないデスがお相手して差し上げるデス」
「魔封剣のインターバル中だ、ルナ援護頼む」
「任せてアクセル! 」
「行くぞ!!ルナ」
あのキャットハンズのメルル達以上のスピードでサタンに向かって一直線ーー
端から見たら一瞬消えたように見えるスピードだ。
アクセルの剣がサタンを襲う。
しかしーー、
「人間にしては、なかなかのスピードデス、私に剣を突きつけようなどと考えないことデス」
アクセルの剣は 空を切る。
「くっ、当ててやる」
アクセルは、更にサタンに向かって踏み込むと一瞬で背後の死角をつき斬りつける。
「無駄、無駄、グフフ」
またも、空を切る。
「こちらからいかせてもらうゾ」
サタンから異様な魔力が増大する。
その場にいる全員が身震いする程の魔力だ。
「ルナ!! みんなを頼むぞ」
「任せて! あなたもよアクセル、その場から離れなさい」
「光の精霊のお子様如きが我が魔力を防げると思うなよ」
サタンの両手に闇の魔力が集まる。
「朽ちろ! ダークマター」
闇の波動が波のように押し寄せる。
「天に輝く光の化身よ、 我にチカラを与えたまえ 天の障壁 」
サタンの魔法とルナの障壁がぶつかり合う。
「うっ・・・駄目だわ。やはり契約してない精霊の魔法なんて悪魔族からみたら赤ん坊みたいなものだわ」
「グフフ。 無駄デス、死ね人間ども」
「ダメ。障壁が剥がれるはみんな衝撃に備えてーー」
キャットハンズ達は、地面に伏せていると。
「顔を上げろ、馬鹿ども! 敵に無様姿を見せるな」
アクセルが皆の前に仁王立ちする。
「アクセル・・・」
ルナの隣に立ち頭をクシャクシャに撫でる
「インターバル終了だ。ナイス時間稼ぎ」
剣を前に構えると見る見るうちにサタンの魔法が剣に吸い込まれる。
「ーーーーーーッ」
「マジックセールソードチャージ完了」
アクセルは、サタンを見ながら口元を緩めた。
「ーー人間風情が調子に乗りすぎデス」
サタンの怒りは全身を駆け巡り頭から湯気が出るように目を血走らせている。
「普通の剣の太刀筋なら効かないが、無形の剣は止めらせるのか」
サタンに向かって剣を構え、思いっきり素振りをするように振り抜くーー。
闇の魔法を帯びた無形の斬撃はサタンを斬りつけた。
「ーーーーッ!!!」
サタンからおびただしい血が噴き出す。
そして、苦痛に満ちた表情を浮かべてた。
「己れ、人間よ。悪魔族に楯突いたことを後悔させてやるゾ。 ペダラン来い」
そう言うと千鳥足でふらふらと人間の男がサタンの元にやって来た。
「悪魔族も人間の生命力、精神力を借りることにより魔力を増大させることが出来る。
精霊は契約など面倒な手順を踏まなければならないが悪魔族は違う。奪えばいいのだ」
そう言うとペダランの頭に手を乗せ生命力、精神力を奪う。
「これは、ヤバイな。インターバル中で魔封剣が使えない・・・」
「撤退しようにも後ろは城門、横は断崖絶壁、
前はクルセダーズの大軍にゃ」
「人間に本物の恐怖を教えてヤル! 悪魔族に逆らった罪は重い」
サタンの魔力は膨れ上がる。
この世のものと思えない悍ましい魔力がサタンを包み込む。
全員が終わったと思ったーー。
それほどまでサタンは恐ろしく強大な魔力を帯びている。まさに悪魔だ。
キャットハンズの兵士たちやカスケード、たま、ミント、メルルさえもう立ち上がる気力を失う程の圧倒な力の差を目の当たりしている。
ーー ああ、 此処までか ーー
誰かが口にしたような気がした。
「終わってたまるか、簡単に諦めるか」
アクセルの目は死んでない。
「アクセル・・・」
ルナと目が合うアクセル・・・。
アクセルは、しばらくルナを見つめる。
「エッ? 嫌だ。こんな時に何よ」
顔を真っ赤にして顔を隠して照れるルナ。
ーー もっと違った形で君に伝えたかったーー
10/11 誤字脱字修正。




