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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と光の精霊の書
38/217

皇子と光の精霊2


「最近姿見せないと思ったらこんなところにいたんだ」


そこ木々の闇がいっそう荒々しく息づき人は寄りつかない場所だった。


「何のよう? こんな所までわざわざ探しに来て」


「何のようって? ニシシシ。理由がなきゃ来ちゃダメか」


「迷惑よ」


ルナはアクセルを無視して飛び去って行った。

アクセルには何で怒っているのか全く見当がつかなかった。


「何だ? アイツ」


アクセルが肩を落として、つまらなそうな顔をしているとガサガサと物音がして猫耳が頭を覗かせた。


「にゃにゃ、葉っぱが・・・ アクセル様こんなにゃ所までわざわざ精霊を捜しになられて」


「まあ・・・友達だからな。今はだったが正しいか」


メルルは、遠い目をしながら全てを悟ったような表情の浮かべた。


「アクセル様は、魔女も精霊もそうですがあまりそういった類いの種族に近づき過ぎてるのですにゃ」


「そうか? 人間より素直で良い奴らばかりだからな。俺は人間のが嫌いだ、嘘や偽り裏切りそんなことを平気でする奴らばかりだ」


「お言葉ですが、リリスにゃんは危険ですにゃ。

魔女はいろんな国や悪魔族など災いを運んでくるのですにゃ。これ以上の関係をお持ちになられますと」


アクセルの表情が一気に険しくなる。


「メルル、それ以上俺の友達関係に口を出すと消すぞ!! 俺とガチでやり合うのか」


腰に差していた剣をメルルの鼻先に向けて言い放った。


「ーーいいえですにゃ」


メルルは、苦笑いを浮かべて頭を下げた。


「例え、リリスが災いを招こうが帝国を敵にまわそうが俺が必ず守る! 国もリリスも俺の大切な者は全て、もちろんメルルお前もだ」


「アクセル様・・・」


メルルは、頭を下げたまま嬉し涙を浮かべた。


このアクセルという男は最強騎士メルルすら歯が立たない。超人的な身体能力と抜群の剣術そして、特異体質のどんな武器を持ってもそれを魔封剣に変える事が出来る。


誰かが自分に向かって魔法を使えばそれを吸い取り無形の斬撃として相手に打つ事が出来るのだ。

その魔法が強力であればある程強い斬撃を与えることが出来る。


但し、剣の耐久性と魔法を吸い取り、 魔封剣にするまでのインターバルがかかるのが弱点だ。


皇子にして最強の戦士、いろんな戦場でも全て先頭に立ちみんなを率いてきた。


メルルは、それが気がかりで仕方なかった。

皇子を護るのが使命の自分達がいつも守られてばかりの現状、もしもの事が・・・。


「メルル帰るぞ」

「はい。 アクセル様」


★ ★ ★


「何なの、アクセルは。デリカシーが無いのにも程があるわ」


ルナは戸惑っていた。絶対に見つかる事のないところに隠れていたのに見つけ出してくれた事。

正直嬉しかったーーけど、 リリスの事を思うと胸が痛む。


「何で、アクセルはリリスが好きなんだろ?」


アクセルとリリスの関係って?

聞きたいけど、何か怖いな。

そう言えば私、アクセルのこと何も知らない。


気づけばまた、ホーエンハイムの城下町の辺りまでやって来ていた。

街はずれの小川のせせらぎの音がアクセルと出会った頃の事を思い出させた。


「ここで、アクセルと出会ったんだ」


アクセルと出会ってから今までのことを思い出す。

あんなに楽しい毎日は初めてだった。

契約するならアクセル以外の人はいないと思える存在だった。


「やっぱりここだったんだ。ニシシシ」


声と同時に目の前にアクセルが笑顔で現れた。


「あくせる」


思わぬ登場に感情が(せき)を切って溢れ出しアクセルに抱きつくルナ。


「どうしたんだよ。そんなに俺に会いたかったのかよ」


「ちがうもん」


「そっか。俺はお前に会いたかったし、話がしたかった。それに一緒に居たかったよ」


「何でよ、何でそんなに私をからかうの? 困らせるの?」


「正直な気持ちを伝えてるだけだよ。俺は嘘も冗談も言わない。俺は真っ直ぐな気持ちしか伝えられない」


「あくせる・・・」


涙を流しながら上目遣いでアクセルを見上げるルナ。 そっと涙を優しく拭いてあげるアクセル。


「ルナ、俺のそばに居てくれ」

「うん。もう泣かせないでね」

「ニシシシ。それは保証出来ねえな」

「酷い」


ポンとアクセルの胸を叩くルナだった。





ーー 一緒にいて良いんだよね アクセル ーー

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