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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と光の精霊の書
37/217

皇子と光の精霊1


暗闇を照らす炎は、心までも暖かくするように見ている者を安心させてくれる。


そこにいる全員が焚き火の炎を見つめているとルナが口を開いた。


「私とアクセルの出会いは精霊の養成学校を卒業してパートナーを探す旅に出ていた時の話です」


「あくせる? なの」


エルザが、ぽかんと口を開けている。


「ルナのパートナーになるかも知れない人のことよ。 ちゃんと話聞いてようね」


リサがエルザを子供でもあやすかのように言い聞かせている。


それを見てルナは、微笑み話を続けた。



★ ★ ★



つん、 つん、


「ん・・・誰? 止めてよ」


つん、 つん、 ぎゅーっ


「痛い、止めて何なの」


つんつん、指で頬を突き、最後は両手でルナの頬を引っ張った昼寝を邪魔する輩がいる。


「ニシシシ。何だお前? 精霊か」


「だったら何? 邪魔しないでくれる」


「俺、精霊初めて見たからさ、生きてんのかなあ〜と思ってよ。 ニシシシ」


少年のような笑顔で話かけてきて太陽のように心を照らしてくれるこの人こそ私が唯一心から好きになった人。


「ふんっ! 昼寝してただけよ。用がないならとっとと行ってくれる」


顔を膨らませ不貞腐れる(ふてくされる)ルナをよそに男は御構い無しに話を続ける。


「丁度さあ、俺も退屈してたんだ。 一緒にどっか行かね?」


「はあ? 何で私がアンタなんかと一緒に行かなきゃならないの」


「暇して寝てんじゃん。 ニシシシ」


「私は忙しいーー えっ、ちょっとおお」


男は強引にルナの手を引き走り出した。


これが私の運命の人、アクセルとの出会いだった。



アクセルは、いつも突然やって来て・・・


「よう! また寝てんのか」

「起きてるわよ。何よ」

「森に果物が沢山あるんだ。一緒に取りに行こうぜ」

とか。

「お前が好きそうな花畑がある。行くか?」とか。

「暑いから水浴びに行くか?」とか、

いつも強引に連れ出すの。


精霊とか身体の大きさとか関係無しに一人の女の子として見てくれてると私は思ってた。


彼と過ごす毎日は凄く嬉しい。いつしか本気で好きになってた。


だけど、 彼には好きな人が居たの・・・。


綺麗な紫色の髪の毛に、透き通るような大きな青い瞳。 雪のように白い肌と愛らしい顔立ちの少女。



「アクセル。また遊んでるの?」

「リリス。お前も遊ぶか?」

「遠慮しておくわ。あら? あなたもまた来てたのね」

「悪い?」


顔を膨らませながら明ら様に不機嫌な態度をとるルナ。


「ニシシシ。 ルナは俺の大事な友達なんだ」

「・・・ともだちか」


周りに聞こえるか、聞こえないか位の小さな声で呟いた。


「アクセル・・・話があるの」

「あん?」

「やっぱりこのまま私がここに居てはこの国が危ないわ。 魔女に私なんかがいたらみんなに迷惑をかけてしまう」


「またその話か、何回言ったら分かる?

俺がお前もこの国も両方守ってやる。俺が信じられないのか?」

「・・・そんなことないけど」

「なら信じろ! 俺が守る。 命にかえても」

「あくせる・・・」


リリスは涙になりながらアクセルを見つめている。


そんな光景を見てルナはとても胸が苦しくなるのが分かった。

それはとても寂しくて悲しくてルナは今まで経験したことのない気持ちだった。


そんな二人のやり取りをこれ以上見ていられないルナは堪らずその場を立ち去った。


アクセルは自分だけに優しくしてくれてると思ってた。

自分だけは特別だと思ってた。

アクセルは、私だけを見てくれてると思ってた。


全部、全部自分の思い込みだったのかな。

勘違いなんて・・・馬鹿みたい。


自然とルナの瞳から大粒の涙が溢れる。


アクセルの本当の気持ちが知りたいよ。


私に優しくしてくれてたのは、 ただ暇つぶしだったのかな。


私じゃなくて誰でも良かったのかな。


何で精霊の私だったの。

知りたいよ、教えてよ。

アクセルのこと考えると胸が痛いよ。


「教えてよ・・・私アクセルのこと好きなのよ」


小さな木の陰に座り込み人知れず、アクセルの思いはルナの瞳から溢れ出し暫く泣き続けた。



「ねえ、 アクセル・・・・」



ーー 人間だったら愛してくれましたか ーー

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