嬉しい・友達・大好き
「メルルが騎士なんて意外だったな。そんな風には全然みえなかったよ」
アーサーは少し意表をつかれ疑い深くメルルをマジマジと見ていた。
(普通に可愛い猫だが・・・おっと、首絞められる)
ムッとした顔つきでルナが噛みついた。
「メルルは、ウチの王国の最強騎士なんだからレインブーツ イン キャットと言われて今の国王を王座に導いたのもメルルなのよ」
「そうなのか。ところでなぜウチの国に来たの? 他にも国は沢山あるのに」
「それは、同じ規模で城と呼ぶには小さな王宮で城下町があるだけの小規模な国の地形が我々が暮らすホーエンハイムと似ていたからにゃん。敵に攻められた時の対処法など参考にしようと来たのですにゃん」
「そして今、ホーエンハイムは今のメルルの話したたおり戦火にあり、今ある敵に狙われているのよ」
「ある敵?」
「新聖教団クルセイダーズの部隊、薔薇十字軍に狙われているのにゃん」
「大規模な魔女狩りを行い魔女の王国を壊滅させた悪魔教団よ」
「なぜそんな奴らがメルルたちの国に」
「私の元パートナーが愛して、命がけで守った本物の魔女 リリスがいるからよ!」
「魔女・・・」
「その元パートナーこそメルルが登りつめさせた国王の息子 アクセル王子よ」
「元というのは? 契約が切れたということなのか?」
「さっきも言った通りよ。リリスを守って亡くなったわ。正確に言うとリリスを救う為に私と契約したのよ」
アーサーは、聞かなくても良いことを聞いてしまったかな? と複雑な気持ちだった。
「敵に攻められてるのに、こんなにゆっくりしてて大丈夫なのか?
メルルは最強の騎士なんだろ」
「貴方なかなか鋭い質問するわね。
彼の命と引き換えに私と彼である禁呪の呪文を使ったのよ。
それは擬似召喚魔法・・・大天使マリアを召喚させホーエンハイム全体に天の加護を貼ったのよ。
そのおかげで魔族や邪悪な魔力を持った者の進入は出来なくなっているの」
「それなら安心じゃないか」
「それが、そうでもないのよ・・・」
ルナが悲しそうで困ったような複雑な表情を浮かべている。
「大天使マリアの効果が消えかけてきているのにゃん。
アクセルとルナの愛のチカラが弱まってるのですにゃ」
「私は今でも愛してる・・・ただ亡くなった人は何も言ってくれないし何もしてくれない・・・私一人の想いだけではもう維持出来ない」
ルナは目にいっぱいの涙を浮かべている。
「そこで、ホーエンハイムに応援をお願いしたくきたのにゃん」
ルナは下を向いて涙を浮かべたまま勇気を振り絞り覚悟を決めた。
「こんな・・・私が言うのも失礼かもしれないけど・・・リサ、エルザ、シルフィー私と一緒にホーエンハイムに来てほしい・・・今までーー」
「ルナ!!」
ルナが話を最後までしようとした時に、
リサが話しに割って入った。
ルナは目を丸くしてリサを見る。
「私達は友達でしょ? 友達は困ってる時に助け合う為にいるんだよ。
ルナがずっと苦しかったの私達は知ってる。
あの時の私達はそんなルナを助けてあげられなかった。
うんん、 見て見ないフリをしてたのかも知れない。
自分に自信が無かったから、ルナの心の痛みや悲しみを癒してあげることが出来ないと決めつけてた」
「今なら言えるの。ルナはひとりじゃなの」
「私達が居ますわ。 一人で悩むことなんてないですし友達を頼って下さい」
「ルナ、 友達に遠慮なんかしなくていいんだよ」
三人の精霊は、立ち上がり目を輝かせてルナを見つめる。
ルナの消えないと思っていた十字架は今やっと消えた。
ルナのずっと抱えてきた思いも、止まっていた時間も再び動き出した。
「ありがとう・・・ 嬉しい・・・そして ごめんね」
ルナの目から一筋の雫がゆっくりと流れ落ちた・・・。
「うんん。 私たちもずっと言えなかった。
苦しかった・・・だから・・・ごめんね」
四人は、恥ずかしいほど涙が止まらず流れ続けた。 こんなに嬉しくて泣いたのは初めてだった。
「嬉しい時も、涙って出るんだね」
四人は泣きながら微笑んだ。
やっと言えた、ごめんねとありがとうを胸にしまって・・・
「ルナ、良い友達をもったにゃん」
「うん。大好きな大切な友達よ」
ーー ありがとう 友達 ーー




