彼女たちの夢⑤
目が覚めたーー 寝汗をかき、涙を流していた。
今でも目に焼き付いて消えない。
悪魔族に無理矢理口づけをされ、魔力を吸い取られた精霊。
無気力になり目は死に、身体は青白くゾンビのようになっていた。
そして、みんな決まって世界樹の方に向かって歩き出し帰れるはずも無い精霊界に血の涙を流しながら加護の結界の前で泣いていた。
ーー 帰りたい、入れてよ、帰りたい ーー
そして、ミリアも同じように・・・
「るな・・・ヤダよ・・・悪魔になりたくない」
ルナあああああ ーー
るな・・・
ーー
その後、 駆けつけた先生や精霊界の人たちの手により何とか悪魔族を追い払うことが出来た。
ーーしかし、
「あなた達、絶対許さないから。あなた達さえいなければミリアは・・・一生恨んでやる、 呪ってやる!!」
ゆるさない!!
★ ★ ★
これが彼女たちの過去でルナとの因縁だった。
消えることのない記憶、消せない過去ーー。
その後の彼女たちは、ルナによりみんなから無視され虐められて学生生活を過ごすことになる。
「辛かったんだろうな。 今はあんなに明るく元気で少しも辛い様子を俺には見せないけど悪魔族に魔力を吸いとられた精霊も消えない十字架を背負うけど、 ウチの三人も友達を悪魔族に変えてしまったという罪の十字架を自分達で背負ってしまってる」
ベッドから起き上がり横で縦に川の字で寝ている精霊たちを見ながら思う。
自然と愛おしく思い三人の頭を撫でるアーサー。
「そんなに自分達で、 自分の首を絞めることはないよ。 過去のやってしまった事は消せないけど、 それに縛らてしまっていたら前に進むことは出来ない。 ミリアもそんなお前らを助けたいとは思わなかったと思う。 ルナにもあの時と何も変わらないお前らの姿を見せるより、 変わったお前らの姿を見たいと思ってる筈だよ。 俺も変われたんだ! お前らも変われる!だって、お前らには俺がいるから」
再び横になると、そのまま朝まで眠るアーサーだった。
リサは、必死で寝たフリをしていた。
ただ、涙は止めどなく流れた・・・。
エルザは、嗚咽を抑えるのに必死だった。
もう、顔は涙でくちゃくちゃだった。
シルフィーは、布団に隠れて泣いた。
ねえ、アーサー様。
こんな私たちでも変われるの?
かけてくれた言葉、優しく頭を撫でてくれた事、そして心の温かさ。
閉ざしていた記憶の扉を開いてくれた。
冷え切った心を溶かしてくれた。
止まっていた時間の針を動かしてくれた。
一生背負って行かなきゃならないと思っていた十字架を壊してくれた。
何もない世界に色を付けてくれた。
人の愛情に初めて触れた・・・。
ねえ、人を好きになってもいいんだよね?
もう、我慢しなくていいんだよね ?
三人は涙を流して眠ったのだった・・・。
ーー アーサー様、ありがとう 大好きだよーー




