PM23:00・反転時計
帝国は壊滅した。
ルシファーにより全てが散りとなった。
懸命に戦った帝国騎士団も生存者はほぼゼロ。
最強と言われた聖騎士達も全員が命を落とす結果となった。
「作戦コードグングニル終了だな」
「思ったより時間がかかったのだよ」
「私もまさか、悪魔化するはめになるとは思わなかったぜ」
「私はまあルシファーを使うのは計算のうちだったかな。
予想通りに金色の坊主を倒してマーリンが立てた計画を潰してやる事が出来たからね」
「ああ、これで目的は果たしたのだよ。
後は、デーモンズゲートを解放するだけなのだよ」
メイザースが不敵な笑みを浮かべていると、
『そうはさせないわ!!』
空間が歪み、亀裂が走る。
「その聞き覚えのある声・・・」
ローゼンクロイツの表情が曇る。
空間の歪みから黒い猫耳ローブが現れる。
「マーーリン!!!」
メイザースが眉間にシワを寄せ叫ぶ。
ローゼンクロイツとクローリーも冷ややかな視線をおくる。
「あなた達の思い通りの世界にさせないわ」
「時の砂の魔法を使う前に殺してやるぜ」
クローリーが戦闘体制に入る。
「もう遅いわよ」
「何?」
「すでにリセットは完了したわ」
「どういうーーーー、」
次の瞬間、立体魔法陣が浮かび上がり、大きな時計が浮かび上がる。
時計の針は逆転しくるくると回り始める。
時間軸がぐにゃぐにゃにねじ曲がり、フィルムの一コマ、一コマが元に戻るように巻き取られていく。
ブラックアウトした先にはリセットされた過去の世界に戻っていた。
今まで記憶は全てリセットされている。
マーリンのみだけが前回の記憶を引き継いでいるのだ。
ーーだけど、マーリンの魔法も進化した。
姿を消している間に会得したのだ。
記憶の断片を一部だけ継承させる事が出来る。
時の砂の魔法を使う前にマーリンがマーキングした人物に記憶の継承が出来るというものだ。
今回マーリンが記憶の継承をさせた人物はアーサーとリサ、エルザ、シルフィー、オルレインそして、パトロクロス。
マーリンが帝国に駆けつけた時に偶然いたメンバーだ。
三人の精霊とオルレインには事情を説明していたが意気消沈していて話は上の空だった。
マーリンの時の砂の魔法は時間を巻き戻せるがその戻せる時間はランダムで自分の好きな時間に戻れる訳ではない。
凄く長い時間を戻せる時もあれば、数週間の時もある。
そして、今回はーーーー。
* * * * * * * * * * * * *
緑と花が咲き乱れて色鮮やかに咲き誇る。
太陽の光が降り注ぐ長閑かな日常。
精霊たちはもう何日もそこにいる。
まるで、誰かを待っているかのように。
「いつかは会えると思っていた。
遅くなってごめんね」
三人の精霊たちはその声に振り返る。
薄っすら覚えている記憶の中で確かにこの男性はいた。
「君たちの名前を教えてほしい」
優しい男性の声に思わず涙が込み上げてくる。
今日初めて会ったのに、前から知っているような感覚。
慣れ親しんだ声。
「炎の精霊リサです」
くると一回転し脚をクロスさせスカートの両端を摘む。
「大地の精霊エルザなの」
くると一回転し脚をクロスさせスカートの両端を摘む。
「風の精霊シルフィーですわ」
くると一回転し脚をクロスさせスカートの両端を摘む。
「ご主人様のお名前をお聞かせください」
三人の精霊は涙をいっぱい溜めて笑顔でこちらを見つめる。
聞かせてほしい大切な人の名前を・・・。
「俺の名前はアーサー・ペンドラゴン」
「アーサー様ああああ」
三人の精霊はアーサーに抱き付く。
初めてなのに知っている。
ああ、全部思い出した。
あの日のあの時の光景ーーーー。
三人の精霊は同時にアーサーにキスをした。
ーー 第2章 完 ーー
初投稿から4年間で200話突破と第2章を書き終えました。長く投稿出来なかった時もありましたが、沢山の読者様がいてくださる事に感謝しております。第3章の話もすでに執筆中ですのでまた皆様ご愛読よろしくお願いします。




