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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と帝国事変の書
204/217

PM20:00・B地点

ーー B地点 ーー


「薔薇十字軍、クルセーダーズだな」


「ああ、かなりの数だな」


アーサー達はグリフィンに乗り空から地上を眺めていた。


「あなた達せいぜい足を引っ張らないでよね」


オルレインが上から目線で三人の精霊を見下す。

相変わらず、仲があまり良くない精霊達。


「あまり時間が無い。援軍が来る前に少しでも数を削っておこう」


アーサーの言葉に、


「ああ、なら行こうぜ!

オルレイン準備しろ」


「はい。ーーでは、」


オルレインは『闇払い』を投げた。

瞬く間に辺りは昼間のような明るさになった。


アーサー達はグリフィンから飛び降り、

薔薇十字軍の先頭の前に立ちはだかる。


「挨拶代わりに俺から行かせてもらうぜ!」


パトロクロスが指をパキパキと鳴らすと、


「全ての生命の源よ 流れる水の女神よ 我が声に応えたまえ 氷麗の五月雨(アイシクルレイン)


オルレインの水属性の魔法が発動する。

無数の巨大な氷の塊がクルセーダーズ達に襲いかかる。


「アーサー様、負けてられないよ!!」


リサがオルレインに張り合おうと、目をギラギラと輝かせる。


「ああ、リサお前の力を見せてやれ!」


アーサーの瞳と三人の精霊達の瞳が金色に変化して輝く。


「天を燃ゆる不死鳥よ 我に聖なる炎を 燃えゆ不死鳥(エクスブロージョン)


リサが指でピストルを打つような構えをして魔法を放つ。


「ばーーん!」


その言葉と同時に周辺に炎の火柱と大爆発が発生する。


その光景にオルレインは驚きを隠せず口を開けたまま、ぱくぱくさせていた。


リサは見たかとドヤ顔で胸を張っていた。


「アーサー様私もなの!」

「アーサー様私もやりますわ!」


大地の鎮魂歌(アースレクイエム)

疾風の犬鷲(アサルトグリフィン)


オルレインに見せ付けるかのように、薔薇十字軍を粉砕する精霊達。


自分たちも魔法が自在に使えて、ご主人様も凄いのよとアピールしている。


「な、何よこのくらい。契約してるんだから出来て当然でしょ」


オルレインの口元はわなわなしていた。

ここまで魔力量があるとは想像もしてなかったようだ。


「アーサーさんは噂通りの精霊使いですね」


「いやいや、僕じゃなくて精霊達が優秀なだけですよ」


「この感じで、倒していけばノルマ達成は出来そうですね」


「まだ油断は出来ないですけどね・・・」


アーサーの予感は的中する。

厄介な事に薔薇十字軍は魔法障壁を展開させながらの持久戦に持ち込まれて行く。


「相手もこちらも魔法を放っても回避、回避の展開か・・・」


「障壁ごと吹き飛ばす大魔法もあるが一発使ったら魔力が尽きてしまう。

一度魔力が底をついたらジャンクフルーツをいくつ食べても回復しないからな」


パトロクロスは軽く準備運動を始める。


「パトロクロス?」


「僕は接近戦も得意でね。

こっちも扱えるんですよ。

丁度、援軍も来ましたので援護お願い出来ますか?」


剣を掲げて、ニシシシと笑顔を見せるパトロクロス。


「分かった。援護は任せてくれよ」


アーサーはその笑顔をどこかで見た気がして不思議な感じに襲われた。


パトロクロスの言った通り、アヴァロン魔法騎士団の金色の夜明け団が集結した。


パトロクロスを先頭に薔薇十字軍に立ち向かう。


先頭を行くパトロクロスの身体能力の高さは異常だった。


一瞬にして敵の目の前まで移動し敵の間を駆け抜ける。


バタバタと敵が倒れて行く。

魔法を使おうにも一瞬で倒されるので魔法を使っている隙すら与えない。


「パトロクロス凄いの」


「当然でしょ。私のご主人様なんだから」


ドヤ顔で大威張りのオルレイン。


薔薇十字軍は後方からの魔法攻撃で援護射撃に出る。


「エルザ障壁だ!」


「なの!」


アヴァロン魔法騎士団の目の前に薄茶色の半透明の障壁が展開する。


薔薇十字軍の魔法攻撃を全て遮断する。


「ナイスアシストだよ!」


パトロクロスはアーサーに向かって親指を立てる。


「アヴァロン魔法騎士団!アシストしてくれるから安心して暴れてくれ」


その言葉に奮起し次々と薔薇十字軍を殲滅するパトロクロスと薔薇十字軍だった。







「あらら、様子を見に来たらこのザマですか?魔力強化してあげてた筈なんですけどね」


上空の空間の亀裂から一人の男が現れる。


「アーサー様あの人はーー!!」


シルフィーが指を指す。


「クリスチャン・ローゼンクロイツ!」


アーサーが身構える。

驚愕の魔力に身震いするオルレイン。


「ほお、金色の坊主か」


面白いオモチャを見つけたかのように笑顔を見せるローゼンクロイツ。


「これからの先の事もあるので、これ以上信者を減らされる訳にはいかないのでね」


ローゼンクロイツは何もない空間から一冊の書物を取り出す。


その書物を手に取った瞬間、空気が振動を起こす。


精霊達は狂ったように怯え出す。

三人の精霊はアーサーにしがみ付く。

オルレインもとっさにアーサーにしがみ付く。


魔力の無いアーサーでも、それは危険だとハッキリ分かる程の恐怖だ。


「何なんだあの書物は?」


シルフィーがガタガタと震える身体で、


「あ、、アーサー様、おそらくアレが禁断の書物(グリモワール)ですわ」


「あれがグリモワール・・・」


「さあ、金色の坊主絶望に震えよ」


ローゼンクロイツが書物をパラパラとめくり出すと書物は輝き出す。


「天から堕ちた 名も無き天使よ我が問いに応えよ 汝は片羽の堕天使ルシファー」


書物が一層の輝きを放ち周囲を包み込む。


天空の雲の間から天使が舞い降りてくる。

その余りの美しさに一瞬呼吸をするのも忘れる。


ーーしかし、その天使には片羽のしかない。



その場にいた者はそれが天使では無い事にすぐに気づいた。


あまりに危険過ぎるその魔力、

邪竜アポカリプスが可愛く感じる程だ。


まさに世界を破滅に導くことができるレベルである。


アーサーは悟った。


勝てないと・・・


例え英雄と言われた(シーサー)であっても無理だと。


こんな魔力を持った者がなぜこの現世に存在するのか?


デーモンズゲートは封鎖した筈なのになぜ?


疑問は尽きないが、今はこの場をどうするかを考えなければならない。


「アーサー・・・さま」


震えるリサ、何が言いたいかは分かる。

エルザもシルフィーもぎゅっとアーサーの服を握っていた。


オルレインも恐怖の余り、アーサーからしがみ付いて離れられないでいた。


パトロクロスがアーサー達の元に戻って来た。


「パトロクロスぅぅぅ」


オルレインがパトロクロスにしがみ付く。


「桁外れのバケモノだな」


「ああ、正直勝てるイメージが全くない」


冷や汗をかきながらルシファーを見つめるアーサー。


「ーーだが、コイツを倒さん限りこの先の未来は無いぞ」


パトロクロスを剣に魔力を集中させる。


「確かに・・・」


アーサーは迷っていた。

勝てる見込みのない相手に挑むことに意味があるのか。

自分が戦う必要があるのか?

ここから逃げ出しても誰かが倒してくれるんじゃないか?


「アーサーさん迷うな!

もう僕らしか戦える人間はいない」


パトロクロスの言葉に我に返る。


「チャンスは一度だと思います。

僕もその一撃に賭けます」


パトロクロスの顔に緊張感が漂う。


「一撃か・・・なら僕もその一撃に賭けたいと思う」


アーサーにしがみ付く三人の精霊と目が合う。

アーサーとの心のリンクで三人の精霊にもアーサーの想いが伝わる。


「お前ら聖剣を奴にお見舞いしてやるぞ!」


アーサーと三人の精霊の心に覚悟の文字が刻まれた。



ーー PM22:00 ーー

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