表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と帝国事変の書
203/217

PM21:00・帝国騎士団


爆音が轟いては、また轟く。

絶え間無く降り注ぐ魔法の雨。

市民街はすでに火の海になっている。


人々は逃げ場を失っていた。


帝国北部より雪崩のように市民街に白装束を身に纏った軍団が押し寄せ、街を破壊し人々を無差別に襲った。


あっという間に帝国領土を支配したゾロアスター教はアストレア城に火を放ったのだった。



☆ ☆ ☆


「ミレニア、ミレニア無事か?」


ミレニアは何度も、何度も扉を叩いて叫んでいる。


「姉さんが、姉さんの返事がないの」


返事のない扉に向かってミレニアは叫ぶ。


「何だって!!」


ロイは任せろと言わんばかり扉に体当たりをする。


びくともしない頑丈な扉に、ロイは悔しそうに再び助走を取る。


「クソッ!もう一度」


再び扉に体当たりをする。

やはりびくともしない扉。


「ロイ、危ない!!」


その声が響いた途端ーー、


脆くなった天井が崩れ落ちる。

ミレニアの声のおかげで難を逃れたロイだった。


崩れ落ちた天井の瓦礫により、エレンシアの部屋の扉は完全に塞がれてしまった。


「姉さん・・・」


瓦礫の山の前で座り込むミレニア。

どうする事も出来ずに呆然とする。


ーーその時、


「王子!まだこんな所にいたのですか?

直ぐそこまで火の手が来ております。

急いでお逃げ下さい」


帝国騎士の一人が血相を変え叫んだ。


「ミレニア急いでここを離れよう」


座り込むミレニアの手を引っ張るロイ。


「姉さんが・・・まだこの中に」


座りこんだまま動こうとしないミレニア。


「エレンシアならきっと大丈夫だ。

彼女には禁断の魔法書(グリモワール)がある。きっとそれが彼女を守ってくれる」


少しでも元気づけようと手を差し伸べる。


「・・・うん」


複雑な気持ちを抱えたままロイの手に捕まり立ち上がる。


既に周りは煙に巻かれていた。


ゴホ、ゴホ・・・


「ここは危険だ。とりあえず外に出よう」


ロイはミレニアの手を取り、城内から外を目指す。


城の廊下の窓から見えるのは地獄としか表現しようがない絶望が広がっていた。


ロイはその光景を目にし唇を噛んだ。

思わず握っていたミレニアの手を強く握る。

ミレニアにもロイの悔しさが伝わる。


耐えまく続く爆音は今尚、人々の命を奪い続けていたーー。



☆ ☆ ☆



容赦なかったーー。


逃げ惑う無抵抗な人々を無差別に殺す。

例え任務であり命令であっても簡単に殺す事など出来るのだろうか。


同じ人間なのに・・・。


ゾロアスター教の魔道部隊は次々に魔法を放ち街を破壊し、国民を無慈悲に殺していく。


それを黙って見ている訳にはいかないのが帝国騎士団だ。








「大聖堂に逃げろ!あそこに魔道障壁を貼ってある。あそこなら安心だ」


「あ、ありがとうございます」


ゾロアスター教に襲われていた国民が例を言う。


「ミリア魔力はまだ大丈夫か?」

「うん。ヴィルの魔力もまだまだ残ってるし全然平気だよ」


「帝国騎士団は魔法が使える者が少ないからミリアの魔法が頼りになる。

負担をかけるが頼む」


「うん。任せて!」


ミリアはヴィルに親指立ててみてた。


「体長、北側だけじゃなく東方面からも別の敵部隊が攻めて来ます」


「何?!数は・・・」


「お、およそ5千・・・クルセーダーズです」


「くっ、薔薇・・・ローゼンクロイツめ!!」


ヴィルの表情に怒りがこみ上げる。

自分を利用するだけ利用し、その代償がこの惨劇なのだ。


「ヴィル、俺らだけでは防ぎきれない。

このままでは全滅だ」


敵を倒しながらダニエルはヴィルに視線を送る。


「分かっている。だが、せめて国民だけでも助けたい」


ヴィルはほとんど戦うことが出来ずミリアの魔法を頼りに魔法攻撃を防ぐことが精一杯になっていた。


東方面から喝采が上がり、クルセーダーズたちがそちら側に注力し始めた。


「報告です。白銀の国家騎士ケイト様とロッシ様が応援に来てくれました」


「ケイトが・・・」


「ヴィル」


ダニエルがヴィルの肩にポンと手を置いた。




「ケイトさんのその格好久しぶりに見ましたよ。相変わらずイケてますね」


「冷やかしかよ。ふざけんなよ」


ケイトとロッシは次々に敵をなぎ倒す。


クルセーダーズは魔法攻撃をケイトとロッシに向けるが、


「ーーだから、魔法は効かないんだよ」


ケイトが右手を差し出すと、周辺の魔法は全て消え去った。


『アンチ魔法体質』それがケイトの特異能力。これは生まれた時からケイトが持っている能力だ。


ケイトを中心とした半径30メートル内の全ての魔法を無効化する。

その代わりに回復魔法も魔法障壁も効果がなくなってしまうのでそこは不便である。


「さすが、変態能力者ッスね!!」


「お前バカにしてんだろ?」


「いやいや褒めてんスよ」


東方面の帝国領土への進入をギリギリで阻止するケイトとロッシ。


ケイトとロッシの噂を聞きつけ騎士団の皆が集まる。


「ケイト様、ロッシ様来てくれたんですね」


涙ぐむ騎士団員達、これほど心強い援軍はいない。


「俺たちだけじゃないぜ!!」


ロッシの視線の先に燃え上がる炎のを避けるように現れたのは、


「だ、、団長、トーマス団長!!」


喝采が起こる。

帝国騎士団の心臓が今動き出した。

彼がこの場にいる事が騎士団員の最高の活力になる。


「ケイト、約束通り来てくれたんだな」


ダニエルとヴィルも集まる。


今ここに帝国騎士団史上最強メンバーが揃ったのだった。


ケイトが抜けた事によりもう二度と見る事が無いと言われた光景を騎士団員が目に焼き付ける。


帝国騎士団長・トーマス・ガルフォード

勇騎士・ヴィル・クランツェ

国家騎士・ケイト・ローレント

聖騎士・ダニエル・カーター

聖騎士・ロッシ・ロレッサ


五人は無言で集まり輪を作り、剣を天に掲げる。


「我が帝国騎士団は永久に不滅だ!!」


沸き起こる歓声と帝国騎士団全員の足踏みによる地響きが帝国領土に響く。


周りを取り囲むゾロアスター教、クルセーダーズの連中も思わず手が止まる迫力だ。


「ケイト、白銀の剣と兜はやはり似合うな」


「ありがとうございます団長」


「よせ、俺はもう隠居で団長では無い」


「いえ、例えそうであっても俺らにとってはトーマス・ガルフォードは団長です!」


ダニエルが力強く叫んだ。

ヴィル、ロッシ、ケイトは頷く。


「皆、例を言う」


トーマスは頭を下げる。

そして、


「皆の者、恐る事はない我等がいる!

胸を張れ、剣を取れ、今一度立ち上がれ」


騎士団員全員が剣を天に突き上げる。


「行くぞ!!」


トーマスの合図で活力を取り戻した騎士団員は全員、ゾロアスター教、クルセーダーズに立ち向かって行った。



ーー 22:00 ーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ