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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と帝国事変の書
202/217

PM20:00・避難

「ケイトさん、ご無沙汰しております」


「すっかり村の警備隊のソルジャーだな」


「ええ、おかげ様でこのザマですよ」


苦笑いを浮かべるロッシ。


ロッシ・ロレッサは元帝国騎士団の聖騎士である。

聖騎士の中では最年少であった。

ケイトが帝国騎士団に所属していた頃はケイトの部隊の副部隊長を務めていた。


ケイトが帝国騎士団を脱退したことで聖騎士に昇格したのだ。


現在は、帝国の近くのマーティス村でソルジャーとして派遣されている。


「こんな何も無い村に何のようッスか?

俺への冷やかしッスか」


「お前のツラを眺めるのもあるけどーー、」


「勘弁して下さいよ。

これでもヘコんでるんすよ」


「冗談だよ。

真面目な話があるんだ、聞いてくれ」


ロッシにこれまでの経緯と、国民の避難の受け入れをお願いする。


ロッシは半信半疑だったが、尊敬するケイトの頼みってこともあり、この話を信じることにした。


「とりあえず、俺だけでは良い悪いの判断は出来ないので、村長に聞いてみますよ」





マーティス村は帝国領土から一番近い村である。

名物の特産物も名所もなく、これといって自慢出来るものは無い。

それでも村が潰れず維持出来るのは帝国領土から一番近い事、帝国で一泊宿泊する料金の1/3の値段でこの村では寝泊りできるのだ。


この村のほとんどが宿になっており、帝国からの宿泊者相手のビジネスで生活しているのだ。


「ケイトさん、村長に先ほどの受け入れの件話しましたら、即答でオッケーでした」


「本当か!助かるよ。

あとで御礼に伺うよ」


「帝国あってのマーティス村ですからね」


「ロッシ・・・もしもの時は頼むぞ」


真面目な表情をするケイト。

その意味を察し、


「ええ、その時は何があっても駆けつけますよ」


その言葉を聞き、ケイトは国民の救出作戦へと向かった。




「急いで避難を開始して下さい。

お願いします」


ダニエルの声に耳を傾けて避難を開始したのはごく僅かの人のみである。


「何でだよ・・・何で避難してくれないんだ」


自分の威厳の無さに情けなさを感じる。

何度も頭を下げ、何度も説明しても誰も信じてくれない。


なぜなんだ・・・


本当に自分は聖騎士なのかと疑ってしまう。


自分の事を信じてくれない人間の為に俺は今まで命をかけて守ってきたのかと思うと馬鹿らしくなってきた。


自分の抱いてきた正義とは何だったのだ。

ダニエルは内心諦めかけていた。


ーーその時、


「コイツの言ってる事は本当だ。

ここは危険だ、避難してくれ」


「勇騎士様が言うんなら・・・」


声のする方へ振り返るとそこには、


「ヴィル・・・何で?」


「お前が余りに不甲斐ないから来てやったんだよ」


「俺はてっきり向こう側だとばかり・・・」


「こっち側も向こう側も無い。

国民の命を守るのが俺たちの役目だろうが」


「ヴィル、すまない」


ダニエルは頭を下げた。

内心、ホッとしていた。

ヴィルが来なければ、正義心まで腐ってしまっていたかも知れなかった。

そうなってしまえば、騎士として終わりである。


「頭を上げろ、やる事をやってからだ!

時間が無いんだろ?急ごう」



ヴィルが声をかけてくれた事もあり、避難活動は徐々に浸透していった。


待機させてある獣車は避難する子供と女性で全ていっぱいになり第1陣はマーティス村へと向かって出発した。


現在、避難活動は第2陣の馬車の到着待ちとなっている。


取り残された男性陣より抗議の苦情が殺到したが、ヴィルが難無く説明し鎮圧した。


その辺の人に対する姿勢も含めてダニエルはコイツには勝てないと改めて思ったのだった。



避難活動は予定通り順調である。



ーー PM21:00 ーー

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