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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と帝国事変の書
198/217

PM18:00・新戦力

アストレア帝国関所前ーー裏口ーー


「おい、声を出すな。黙って言う事を聞いてくれ」


「おっ、お前はケイト・ローレーー、」


慌てて門番の口を塞ぎ、

「シーーッ」と、人差し指を立て口に当てる。


「俺だと分かってるなら頼むから今から俺の言うことを聞いてくれ!」


疑いの眼差しをケイトに向ける門番。

ケイトは必死に帝国の危機を説明する。


ケイトの願いが通じたのか観念する門番。


「すまない。

早速で悪いが時間が無いんだ。

ロッシを連れて来てくれないか」


その言葉に首を横に振る門番。


「頼む!時間が無いんだ」


「それは出来ません」


門番の胸倉を掴み上げ、


「おい!こっちは時間が無いんだ。

このままでは皆死ぬぞ!!

帝国の危機なんだ!」


「無理なものは無理なんです。

ロッシさんはもう帝国にはいないんですよ」


門番の胸倉から手を離し、今の言葉に耳を疑う。


「今なんて?ロッシが帝国にいないだって」


「はい・・・私もつい最近まで知りませんでした」


「なぜロッシが・・・何か失態を犯したのか」


「い、いえ。その様な情報は私の耳には」


「ーーなら、なぜロッシが・・・

では、今ロッシはどこにいる?」


「あっ、はい。

確かロッシさんはソルジャーに降格になり、近くのマーティス村に派遣されました」


「マーティス村・・・」


「なるほど」と、ケイトの口元が緩んだ。


「ケイトさん?」


「おっ、悪いな。

代わりにダニエルを呼んでくれ」




☆ ☆ ☆



「ケイト、久しぶりだな。

しかし、何だその眼鏡に頭は」


苦笑いを浮かべるダニエル。

ボサボサの髪の毛を触りながら、


「この方が目立たないから仕事がやり易いのさ」


「ソルジャーハンターか。

余り良い噂は聞かないが、今の現状の帝国を見れば納得出来るな」


ダニエルは申し訳なさそうに肩を落とした。


「団長とロッシの件を聞いた。

ヴィルとお前がいながら、なぜこんな事になるんだ」


「ーーっ、すまない。

ヴィルは国王と大臣に直訴までしてくれたんだが、結果は変わらなかった」


「あのヴィルが・・・直訴を」


「ああ、俺も驚いたよ。

自分の事しか考えてないと思っていたけど、仲間の為に動いてくれるとは思わなかった」


「何だかんだアイツもいざと言う時は動いてくれるんだな」


それでと、ケイトの近くにより耳打ちする。


「何のために呼び出したんだ?

ただ顔を見せに来た訳でもあるまい」


「いきなり本題に入るが、帝国の危機だ」


「・・・・冗談では無さそうだな」


新聖教が奇襲攻撃を仕掛けてくる事、

国民を避難させることなどケイトは要点だけダニエルに伝える。


「ーーなるほど、これでハッキリした。

帝国騎士団の弱体化を狙っての解任と移動だったって事だな」


「おそらくな」


「ーーとなると、帝国の幹部は新聖教と繋がりがあるって事になるな」


「ふんっ、こんな事だろうと思ってたよ。

初めから胡散臭い奴らだったからな。

とりあえず時間がない。急いでくれ!」


「分かった!すぐに避難の準備をさせる」


「ダニエル頼んだぞ!」



☆ ☆ ☆


「これが獣車・・・近くで見るの初めだ」


アーサーの目の前には、大きな虎がいた。

体長/体重・約3メートル/350キロ、鋭い牙と鋭い爪が生えている。


「襲って来ないよねえ」


リサがアーサーにしがみつく。


「珍しい種の個体ですね。

ここまで大きな個体は、この大陸では見た事がありません」


シルフィーは怖がる事なく虎の周りをジロジロと見て回っていた。


「さすがはシルフィーちゃん博識ね。

この虎は貴重種でね、ティーガーって言うのよ。

一部地域でしか生息してないのよ」


リンスレットがティーガーの頭を撫でる。

ティーガーはゴロゴロと喉を鳴らし喜んでいる、まるで猫のようだ。


「獣車、馬車凄い数だな」


「獣車は余り数が少ないので50台。

馬車は約100台程を集めたわよ。

時間が無かったからこれが今集められる限界よ」


「いや、十分だよ。

ありがとうリンスレット」


リンスレットは「どういたしまして」と、

頭をちょんと下げて微笑んだ。




アヴァロン騎士団一同が馬車、獣車にそれぞれ別れて乗り込み移動を開始する。


獣車の移動速度が尋常じゃない。

移動速度約60キロから80キロは平均で走る。

馬車との差を余裕でつける。


獣車の50台は先陣として先に帝国での避難活動を行ってもらう事になった。


また、円卓の魔導士の殲滅部隊は次のような布陣となった。


A地点・帝国城は空から突入出来るキルケー・ヴァニラが担当となった。

キルケーは本人の強い要望もあった。


B地点は、薔薇が相手になるのでアーサー達が担当。


C地点は、アイリス・百合の部隊なのでリンスレット・ミランダ・リリスが担当になった。


尚、ランスロットはアヴァロンの留守を預かる為待機。

ロビンはバルティカ戦線での度重なる負傷の為休息中である。

ライラは相変わらずバルティカ戦線以降、田舎に帰ると言ってから行方不明である。

メーディアはシーサーの契約があり、アヴァロンとメイザース邸が行動できるエリアである為参加不可である。

また、メイザースは空間魔法で契約リンクの範囲を自在に操ることができるのでメイザースが共に行動できるならメーディアも参加出来た。


また円卓の魔導士には、メイザース、クローリー、マーリンも含まれていた為欠員が多い。




こんな現状を知ってか、アヴァロンを発つ前にアーサー達は再びシーサーの元に集められた。


「円卓の魔導士も除籍が多く出てしまったようだな。

新たな追加メンバーを呼んでいる。

入ってもらえ」


「はっ!」


ツンツン頭の青年とその横をふわふわと精霊が浮いている。

その青年の顔はどこか懐かしく見た事のある顔だ。


「・・・アクセル?」


「え?」


リリスの言葉ではっと思い出した。

ルナの元パートナーのホーエンハイムの皇子にそっくりな顔をしている。


「いや、似てるけど少し違うような」


「アクセル兄さんをご存知ですよね。

よく似ていると間違われるんですよ。

確か、リリスさんでしたっけ」


「あなたは?」


義弟(おとうと)のパトルクロスです。

そして、隣はーー」


「委員長!!」


三人の精霊はパトロクロスの隣にいる精霊の見て目を丸くしている。


「あら?あなた達はウチのクラスにいた三馬鹿じゃないの」


「三ばか?」


「ええ、もの凄く出来の悪い精霊でしたわ。

あなた達よく人間と契約できたわね」


口元を両手で覆いながら笑いを堪えている。

パトロクロスがその様子を見るなり、


「おい!」


と、一喝する。


「あっ、ごめんなさい。

つい昔の事を思い出して」


「気分を害したなら申し訳ない。

改めて、彼女は僕のパートナーで」


「水の精霊アルレインです。

お見知り置きを」


脚をクロスさせ、スカートの両端を摘み上げて軽く会釈する。


アルレインは背中まで伸びる長い青い髪にエメラルドの瞳をしている。

青いメイド服調の精霊の服を着ている。

三人の精霊達に委員長と言われるだけあって、とても賢そうな顔をしている。


「水の精霊・・・」


ミランダはその言葉を聞きシーサーの顔を覗いた。


シーサーは目を細め、


「あの日以来、水の精霊は世界樹からほぼ誕生していない。

彼女は貴重な水の精霊じゃ」


オルレインは上目遣いに人差し指を顎に当て、


「三バ・・・確か、リサとエルザとシルクだっけ?」


「シルフィーよ!!」


ムッと、眼鏡を押し上げ即訂正する。


「ああ、そうだった。

いつも教室の隅で一人で居たから分からなかったわ」


ふふふと、掌を口元に当てる。

明らかに精霊達を弄り出している。


三人の精霊たちも表情が徐々に険しくなっている。


リサが顔を引きつらせながら、


「い、、委員長これから宜しくね」


「まあ、せいぜい足を引っ張らないでほしいわね。

あの時のように命まで取られたら溜まったもんじゃないわ」


その言葉に三人の精霊の表情は見る見る変わっていく。

リサが飛びかかろうという瞬間でエルザが服を引っ張り、「ダメなの」とリサを制止した。


「こんな安っぽい挑発に乗るほど私たちは子供じゃないですわ」


シルフィーが鼻で笑う。

オルレインはそのシルフィーの態度に、


「何その態度。昔から何も変わらないわね。

相変わらずのデカイ態度とって協調性が無いとか良く言われてたよね」


「ええ。けど今は、心から親友と呼べる仲間と一緒にいますわ」


「は?まさかリサとエルザとーー」


ハハハハハとお腹を抱えて笑った。


「ああ、三人の精霊使いの話ってあなた達の事なの?ウケる」


「何か文句でも?」


シルフィーが眼鏡を取り睨み付ける。


「あんた達三人を契約してる人はよっぽどの物好きよね」


「もう一度言ってみろおおぉぉ!!!」


シルフィーが眼鏡を投げ捨て飛びかかる。


「お終いだ」


パトロクロスが二人を制止する。

シルフィーに笑顔で「ごめんね」と会釈する。


振り返りオルレインには冷ややかな表情と口調で、


「この子たちは僕の故郷を救ってくれた恩人だ。仮にも恩義がある人に対してその言動は如何なものか?さっきも注意したよな」


オルレインはびっくと体を小さくして


「ごめんなさい」


と、謝った。


「僕からも謝るよ。ホーエンハイムでの皆さんの活躍とても感謝してます。

そんな方々にこの様な言動をしてしまい申し訳ございません」


パトロクロスは深々と頭を下げた。

オルレインはご主人様に頭を下げさせてしまった事に申し訳なさが溢れて、今にも泣かそうな表情を浮かべていた。


「ありゃ、もうお一人来る予定だったが?」


「はい。まだお見えになっておりません」


可笑しいなと首を捻るシーサーに、


「父さん時間がないんだ。

もし来たら水晶で連絡をお願いします。

それか直接、帝国に」


「ああ、分かった。

くれぐれも無茶はするなよ」


「はい」



アーサー達はそまあたあれぞれの地点へと向かうのだったーー。




ーー PM18:00 殲滅作戦開始 ーー

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