PM13:00・待機
「まだ、レーベンハートさんからの指示はないのかよ」
「ああ。そろそろ作戦決行の時刻になる。
もしも、レーベンハートさんからの指示がなくても作戦は決行する。
その際、指揮命令は俺に移行する。
いいな?」
バンディッツの全員が無言で頷く。
現在、帝国から約100キロ地点で待機中である。
「ーーただ、アイツらだけは納得できねえ。
俺らだけでも戦えるってーの」
ウィーリーがゾロアスター教に悪態を吐く。
「ウィーーっ」
ミモザがウィーリーに言い方た瞬間何者かが、この場に現れるーー、
反帝国バンディッツの全員が後方にバッと、振り返る。
それは突然だった。
近づいて来たなら魔法移動などでも魔力感知出来るはず。
しかし、今目の前にいる其れはまるでその場に浮かび上がるように現れたのだ。
何よりその圧倒的魔力量にその場の全員が腰が引ける程だったーー。
「な、、何者なんだ」
「信じられない・・・こんなバケモノが存在しているなんて」
「バケモノなんてレベルじゃねーぞ。
あのアポカリプスよりもヤバイ魔力量だ」
「どーやって現れたのこれだけの魔力量がありながら、
私の空間座標が感知出来ないなんて・・・」
アルカナナイツのメンバーはその圧倒的魔力量の前で震える体を必死に抑えていた。
少しでも気を抜いたらその場から逃げ出したくなる。
そんな異次元のバケモノを目の前にしているのだ。
何より自分達と歳の変わらない少女がそのバケモノだったーー。
「君たちが反帝国バンディッツのメンバーか?」
ニヤリと微笑む紅い瞳の少女。
「・・・・・・」
その問いにバンディッツのメンバーは声が出ない。
誰も返事のない状況にため息を吐きながら、
「さすが、あの男の作った組織だけはあるな。
ホント、礼儀をしらねーな」
「あの男が作った組織?レーベンハートさんに会ったのか?」
目を丸くしバッツが叫んだ。
「ああ。私のところに来て一人で何やら叫んでいたよ。
見た目同様暑苦しい男だ」
紅い瞳の少女は馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「ーーーーっ」
バッツはレーベンハートが馬鹿にされた事に腹を立てたが、この状況では何も出来ないと分かって堪えていた。
紅い瞳の少女は目を細めながらじっくりと反帝国バンディッツのメンバーを一人一人見定めるように確認していく。
「あの男が勇ましく言うからどの程度のメンバーを集めたかと思ったらーー」
口元に手を押さえ、必死で笑いを堪える少女。
その姿にバッツの怒りの限界にきていた。
ミモザが必死にバッツの服を掴んで、怒りを抑えるように制止する。
「これで帝国に勝てる?馬鹿も休み休み言えって感じだな。反吐がでる!!」
ブチッ
「貴様あああぁぁぁぁ!!!」
何かがキレる音がしたと同時に、バッツがミモザの制止を振り切り紅い瞳の少女に殴りかかる。
紅い瞳の少女はその光景を見ても微動だにしない。
バッツがまさに殴ろうとする瞬間ーー、
バキッ
「グハッ」
肋の骨が折れた音と共に逆にバッツが宙を舞い倒れる。
「力の差が分からないのか?
ただの感情任せの馬鹿か?
どちらにせよ、これから特殊任務を遂行するのが分かっている筈だ。
その前に無駄に怪我をするはめになる愚か者がいる組織と一緒に行動するのは、逆にこちらから御免だな。
貴様らと行動する義理はない。
この場から去れ!」
その言葉の悔しさと一発殴らなかった悔しさに唇を噛むバッツ。
「アイツ何者よ。魔力量だけじゃないわ。
尋常じゃない動きよ」
ミモザが腹を抱え動けないバッツの側に駆け寄る。
白装束の一人が少女にスッと音も無く近寄り耳打ちする。
その言葉にニヤリと笑みを浮かべ、
「部隊は整った!さあ、行こうか。聖戦へ」
「はっ。我が教祖様」
白装束の軍団が一斉に動き出すと、
「ぐっ、、ま、待てよ」
バッツが腹を抱えて立ち上がる。
その声に足を止める少女。
「お前は何者なんだ?」
「私は見ての通りゾロアスター教の教祖だが」
「そんなことは分かっている。
名は何と言う」
「レディーに名を名乗れと、貴様どこまでも無礼な奴だな。
まあ、冥土の土産に教えてやっても構わんか」
少女は見下すようにバッツに視線をやる。
その紅い瞳が鋭くなる。
一瞬にして周りの空気が冷たくなるのが分かった。
銀髪がかった薄紫色の髪の毛に紅い瞳の少女。彼女の名はーー、
「アウレスター・クローリー」
ーー 紅い瞳をした悪魔の少女が動く ーー




