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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊と帝国事変の書
186/217

桃色の過去①

魔女は基本的に紫の髪に青い瞳。

それ以外は不吉とされてきた。


桃色の髪をした子供が産まれた。


小さな村での出来事だった為、村長は悪魔に取り憑かれた子供が産まれたと恐れた。


母親は必死に我が子を守った。


魔力が定着する十歳まで様子を見ると約束してくれた。その際に不吉な出来事や予期せぬことがあればこの娘を容赦無く殺すと約束された。


キルケーと名付けられた桃色の髪の娘は、村人たちの予想をはるかに超えた。


まさに天才だった。

僅か十歳にしてとんでもない魔力をもっていた。

それだけではなく、ほぼ全ての属性の魔法を操ることが出来たのだ。


そして何より穏やかな性格。

村人たちからも愛されていた。


ーーこの小さな村にもあの悲劇が訪れる。



魔女狩り。




「長老様、お願いします。キルケーを、娘を助けて下さい。お願いします」


村長の足元にしがみつく母親。

村長は横に振りながら、すまないっと言った表情を浮かべる事しか出来なかった。


それでも母親は涙を流しながら必死に「お願いします」と、叫び続けた。


見兼ねた村人何人かに抱えられ、何とか村長から母親を引き離した。


ほとんどが年寄りと低級魔女しかいない村。

薔薇十字団に立ち向かえる魔女はこの村にはキルケーと他数人の魔女のみだった。


その中でも、キルケーは圧倒的な魔力と強さを誇っていた。


「もうこの村はキルケーに託す他ないのじゃ」

「そんな、あの子はまだ十歳の子供なんですよ・・・」



必死に薔薇十字団と戦う我が子を見守る母親。何もしてやれない虚しさで心が痛む。


次々に脱落して行く村の魔女たち。


遂に、キルケーただ一人が村を背負って戦う事になる。


「キルケーが戦ってくれているうちに、逃げるのじゃ。あの子の頑張りを無駄にするな」


その言葉に皆、申し訳無さそうにその場を離れて行く。


「嫌よ、私はあの子を置いて逃げる事なんて出来ないわ」


村人数人に無理矢理連れて行かれようとするが、抵抗する母親。


戦いの最中、キルケーが一瞬の隙を突いて母親の元に駆け寄る。


「キルケー・・・もう充分よ。お母さんとーー」


「ごめんなさい、邪魔なのよ。さっさと逃げて!!」


「キルケー・・・」


まさかの我が子の冷たい一言で呆然となる母親。引きづられるように村人に連れて行かれた。


「お母さんごめんなさい」


キルケーは心の中で何度も何度も謝った。

母親の気持ちは痛いほど分かっている。

しかし、キルケーも母親には生きていてもらいたい。

きっと、ああ言わなければ母親は逃げてくれないと分かっていたからだ。


僅か、十歳の娘が全てを理解し一人戦っているのだ。




「何を手こずっている?たかが村一つ落とせないのか!!」


薔薇十字軍の隊長格の男が声を上げる。


「それがとんでもない魔力をもっている少女がいまして・・・」


「餓鬼に手こずっているのか。お前らは薔薇十字の恥だな」


「どの娘だ?」


ずっとだんまりを決めていた黒ローブを身に纏い。金の十字のネックレスをしている人物が口を開いた。


「あの、ピンクの髪の少女です」

「ピンク?」


黒ローブの人物は被っていたフードから目を凝らした。


「・・・突然変異か?それとも」


一人でブツブツと難しい事を呟いている。周りにいる薔薇十字軍の人間には何を言っているのか理解出来なかった。


「お前らには少し武が悪い相手かもな。

見る限り全ての属性魔法を操っているように見える」


「全属性の魔法を、、あの歳で!?」


「ククク、面白い。

私が特別に相手をしてやる!」


「クローリー様自ら・・・」



現、円卓の魔道士にしてアヴァロン王国最重要危険人物である。

アレスター・クローリー、彼女の黒い噂は尽きることが無い。


なぜ、シーサーは彼女の円卓の魔道士に任命したのか謎である。


立ち上がったクローリーはやけに背が小さい。

身長は130センチ位だろう。

そして、徐ろにとったそのフードの下の顔はあどけなさが残る幼女の顔をしていた。

真っ赤な瞳に、銀髪に近い薄紫色をした髪の毛を肩くらいでカットしている。前髪は真一文字に切り揃えられている。



幼き日の全属性魔導士パーフェクトマイスターキルケー対黒魔導士アレスター・クローリーの対決開始。

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