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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
第1章: 三人の精霊と契約
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猫舌


「いらっしゃいませえ、ごめんね。お客様いらっしゃったから」


ウエイトレスのミーナがお客さんのお出迎えに精霊たちの席から立ち上がると入り口へと向かった。


「ミーナ行っちゃったねえ」

「この時間にお客様、 珍しいですわね」

「なの」



喫茶店が賑わう時間帯は大抵決まっている出かける前にコーヒーを一杯という感じの早朝と食後のコーヒーのお昼過ぎ、そして喫茶店の稼ぎの時間帯のおやつの時間帯。


現在は、朝と昼間の間の一番人が来ない時間帯。 この喫茶店の常連客になってから初の出来事だ。 客と決まった訳でもないがどんな人物が来るのか興味深いので、コーヒーを飲みながら注意深く見守っていた。 ガールズトークを邪魔された精霊たちも肩を落としながら自然と身体の向きを入り口方向に向けていた。


「ふう、良いコーヒーの香りだにゃん。良い豆を使ってる証拠だにゃん」


( にゃん・・・? )


「ありがとうございます。 お好きな席にどうぞ」


「カウンターテーブルで大丈夫だニャン。逆にこっちのが落ち着くニャン」


アーサーの席からでは、死角になっている為にはっきりとその人物を捉えることは出来ないが男性なのか女性なのかはっきりしない声だ。 たっだ一つ気になるのが語尾の甘ったるい愛嬌のある言い回しだ。


「わああ。 獣人族だあ珍しい」

「ここらへんでは、あまりみないの」

「ふふふーー 素敵ですわ」


物好き、好奇心の塊のような三人娘たちは既にニャンを語尾つけている謎のお客様のところで戯れていた。


「にゃにゃにゃ、精霊なのかにゃ? 」


獣人族ってリサが言ってたな。獣人族は実際見たことはないが、兄貴たちはそういった種族とも交流があったりしたと聞いたことがある。獣の顔に首から下は人間と同じような種族らしい。


一体どんな感じなんだろうか・・・?


アーサーは、緊張な面持ちで恐る恐る獣人族でニャンの語尾のつく人物に近づいて行った・・・・・。


「あっ?! アーサー様ぁ、珍しい獣人族だよお」


ーーーー!! いきなり出鼻を挫かれた。


ーーすると、にゃん?っといった表情でこちらの方に視線をおくってきた獣人族、これがまた何と愛らしい顔立ち。目は真ん丸で当然猫目だ。

八重歯がちらりと見えているのもまた似合っていて可愛らしい。 ふわふわの茶色の栗毛色をした髪。

そして哀愁漂う猫耳が頭にある。

ただ、女性なのか男性なのか分からない。可愛いのだけは確かだ。


「アーサーさまは、わたしのご主人さまなの」

「私たちでしょ!! 独り占めしないでよお」

「ふふふ、私のモノよね。アーサー様」


漫才のコントのような会話を目をまん丸くしてキョトンとした表情で眺めている猫の獣人族。


「そういえば、全然飲み物手をつけてないねえ。冷めちゃうとおいしくないよ」


顎の下に手を置き首を傾げなら不思議そうにリサが訪ねた。



「猫舌だにゃん。熱い物は完全に冷めるまで飲めないのにゃん」


「なら、アイスコーヒーやアイスカフェオレとか他にメニューにあったよお」


「そこは、ホットへのこだわりだにゃん。アイスではこの香りと味は出せないのにゃん」


チッチッと、人差し指指を立てながら得意な感じで熱弁する猫舌。その動きはまるで着ぐるみショーを見ているかのように愛くるしい。思わずぎゅーっとしたくなる。


「そろそろ飲めるかにゃん?」


ゆっくりとカップを口に持っていきコーヒーを啜る(すする)と、思いっきり顔を顰めて体中の毛を逆立てて舌を出した。


「ーーーーまだ熱いにゃん」


精霊たちもアーサーもミーナもその場にいたみんなが大笑いしてその場が和んだ。


「そういえば、まだ自己紹介がまだでしたにゃん。 私は、メルルと言いますにゃ。以後よろしくお願いしますにゃ」


メルルは、笑顔で深々と頭を下げてお辞儀をした。


名前からも結局、 男性なのか女性なのかわからないままだった。

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