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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
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円卓到着


「ーーだから、絨毯(じゅうたん)は操れないって言っただろ?私は、(ほうき)専門だ!」


「自分が操縦じゃなきゃ嫌だって言ったんでしょ?」


黒いトンガリ帽子に黒いマント、桃色のショートヘアーの髪をした女の子と銀色の髪に金色の瞳をした女の子が言い争っている。


「私が誰かのケツに乗れる訳がないだろ。私のプライドが許さんのだ!」


腕を組み大威張りで自論を展開する、桃色のショートヘアーの女の子はキルケー。


「そのプライドのおかげで、こんなに時間がかかったのよ」


銀色の髪に金色の瞳の女の子は、メーディア。


「まあまあ、お二人共。目的地に到着出来たのですから。ーーそれに、空中浮遊魔法を扱えるのはキルケーさんしかいなかったんですから、逆に感謝です」


腰まで長い栗毛色の髪の毛に、青い瞳の小柄な女の子は、現魔法騎士団団長のリンスレット。


「ちょっと、静かにしてくれる?水晶でロビンに通信するから」


水晶を覗き込み通信しているのは、紫色の長い髪の毛に透き通るような青い瞳の女の子リリス。


「ふあああ、怠いわ。何で私がアンタ達と一緒に来なきゃならないのよ」


身体のラインがハッキリと分かる薄手のタイトな服を着て、薄紫色の髪をしたヴァニラが口を大きく開けアクビをしている。


ヴァニラは幻惑の魔女の二つ名を持つ、円卓の魔導士である。普段から空中浮遊していて地面に足をついて歩いている姿は滅多に見ることはない。


リリスが水晶に向かい話しかけるーー、


「遅くなってごめんなさい。色々あって、今、バルティカ共和国に着いたわよ。ーー、うん、うん。一つ聞いてもいいかな?」


それは、到着した全員が共通して思っていた疑問ーー、



「私たちの敵は、竜魔族討伐で良いんだよね?」



☆ ☆ ☆



竜の火炎息吹(ドラゴンブレス)


ファフニールは口から巨大な火炎を吹き出した。


「そんなもの私には届きませんよ」


炎はローゼンクロイツの目の前で消えさった。


「なっ、ーー!!」


ローゼンクロイツがローブを翻すと、周りを闇の霧が発生した。この闇の霧の前では全ての魔法は無効化されてしまうのだ。


「この霧は、魔界の霧でしてね。デーモンズゲートの向こう側から手に入れたのですよ。決して晴れる事のない絶対防御なのです」


「厄介な事を。なら、物理攻撃を仕掛けるまでだ!!」


擬人化しているファフニールの手に竜の手に変化するーー。


竜の鉤爪(ドラゴンクロー)


幻想影(イリュージョン)


ローゼンクロイツの姿が、ぐにゃりと歪みファフニールの周りにいくつもの分身が現れた。ローゼンクロイツが使っているのは魔法省により禁止とされている闇魔法だ。


「人間が闇魔法を・・・悪魔を憑依させているのか?」


ファフニールの攻撃は幾度も空を切り、分身した影に翻弄され、ローゼンクロイツ本体を攻撃出来てない。


「魔法何て理屈さえ分かれば誰にだって、どんな魔法も操れるのですよ」


憎たらしい表情を浮かべるローゼンクロイツ。


「あなたは、実に素晴らしい能力を持った竜です。頭もキレ他の竜より圧倒的な魔力量を持っている。私のペットにしたいくらいです」


新しいおもちゃでも見つけた子供のようにはしゃいで見せるローゼンクロイツ。その姿を見て呆れるファフニール。


「ペットだと・・・この俺を?冗談も休み休み言えよ!!」


ファフニールの魔力が更に加速するーー。


「ほー、更に上がりますか」


「喰らえ、竜の波動」


人間の姿のファフニールの背後に、竜の姿の自分の魔力の塊が現れそのエネルギーを波動に変えローゼンクロイツに放ったーー。


その膨大の魔力のエネルギーの塊がローゼンクロイツを襲い、闇の霧ごと吹き飛ばした。


「さすがに、これをまともに受けて無傷ではいられない筈だ」


砂埃が舞い上がり、ローゼンクロイツの状態が分からないでいる。ファフニールには、勝算の確信があった。それは、エキドナの中に眠る巨大な魔力がある事を知っていたからだ。


他の神竜たちは知らなかったが、ファフニールは気づいていた・・・。


エキドナとアポカリプスが同じ竜だと。



☆ ☆ ☆


「これが、バルティカの壁か・・・間近で見るとやはり大きいなあ」


キルケーがバルティカの要塞の入り口に立ち見上げる。


「かなり遠くからでもこの壁は見えたものね」


キルケーの隣で同じく壁を見上げるメーディア。ーー「そんな事よりも」とリリスが口を挟む、


「この馬鹿デカい魔力が二つぶつかり合ってる状況は何なの?」


「確かに凄い魔力量ですね・・・私たちの援護が必要無いんじゃないかってくらいですね」


「ホントよ。遠路はるばる来たのがバカらしくなるわ」


リンスレットとヴァニラが肩をすくめて見せた。


「状況をロビンに確認しよう。一体何がどーなってるのか、こちらには全く状況が伝わってないんだからな」


キルケーが真面目な顔をしバルティカの壁の中へと入って行ったーー。


「雲行きが怪しくなってきた・・・」


晴れ渡っていた空に、黒い雲がエドナ山脈にかかっていた。

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