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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
153/217

父と母の出逢い②


ーーまるで風の一部になったようだった。

映画のフィルムのように景色が流れて行く。


グリフィンに乗ったアーサーと三人の精霊達はバルティカ共和国に向かっていた。


「ねえ、アーサー様。何で竜と人間は争っているの?仲良く出来ないのかな?」


リサの純粋に素朴な疑問。確かに僕も心の片隅に抱いていた。精霊は、純粋で思ったことは素直に言葉に出てしまう。


「そうだねー、僕にも分からないけど争わなければならない理由があるんじゃないかな」


「どんな理由かなぁ。みんな仲良くすればいいのにねえ」


「リサみたいにみんな単純に生きてないのよ。現実は厳しいのよ」


シルフィーが眼鏡を押し上げながら鼻で笑う。それを見てリサはムッと眉間にシワを寄せた。


「ーー何よシルフィー、私がまるで何も考えてないみたいじゃない」


「あら、何か間違いでも?」


口に手を当て、大袈裟に驚いてみせるシルフィー。その憎たらしい顔を見てリサは顔を膨らませる。


「人を馬鹿にした事しか言えないから、顔も性格もブサイクなのよ!」


その言葉にカッとなるシルフィー、


「言ったわねえー、今日という今日はゆるさいわよリサ」


「こっちの台詞よ!!」


リサとシルフィーの睨み合いが始まったが、それを無視してアーサーの背中に抱きつく茶色ふわふわの頭。


「アーサーさまあ」


「ーーん?」


「アーサーさまは、人間の味方なの?」


「そうだねー、バルティカ共和国に援軍を要請されたからね」


「竜と人間のケンカの理由も分からないのに人間の味方をするの」


「ーー確かにね。何か理由がなきゃ、争いは始まらないからなあ」


「竜とちゃんと向き合って話すれば、分かってもらえるかもなの」


「・・・争わず誰も傷付けずに解決出来ればそれが一番だな」


アーサーはクルッと回りエルザと向かい合うと、ふわふわの茶色頭を撫でた。


時折、アーサー自身では思いもよらない事を精霊達の何気ない一言が解決してくれる事がある。今のエルザの一言も精霊の純粋な優しい一部が伝わってくる。ーーその優しさにどれだけ救われたか・・・。


僕も知らない間に目先の事しか見えない汚い大人になっていたんだな。と、改めて思った。


「リサ、エルザ、シルフィー・・・」


アーサーの一言で口喧嘩をしていたリサ、シルフィーのすぐに辞めて振り返る。エルザは、「なの?」とアーサーの前で目を丸くする。


「ありがとう」


三人は、顔を見合わせて、



「「「どう致しましてアーサーさま」」」





* * * * * * * * * * * * *



「君、怪我をしているのか?だからここから動けない訳か?」



「ーーだから何だ人間、去れ!去らぬなら噛み殺すぞ!!」


「随分と乱暴だな」


そこには、世にも珍しい白い神秘的な竜が傷付き横たわっていた。


邪竜アポカリプスとの戦いで、巻き込まれたのだろうか。白い竜の傷は痛々しくとても立ち上がれる様子ではない。


青年は、白い竜に近づき傷の具合を確認するーーしかし、


「貴様ーー!何のつもりだ」


「おいおい、こっちはお前の傷を治せるか見ていただけだろ?」


「何だと貴様、正気か?先ほどまで意味憎みあっていた相手の傷を癒すだと、どーゆー魂胆だ」


「・・・別に魂胆なんてないさ。傷付き倒れている人を見たら手を貸すのが本物の男さ」


そう言うと、ゆっくりと白い竜に近づき手を翳した。


青年は目を閉じまるで診察するかのように、ぶつぶつと独り言を言いながら納得した様な表情を浮かべた。


「貴様、何を勝手にーー」


「黙って見てろよ!」


白い竜に翳した手の平が、ぼんやりと輝きを放つ。ーーそれは、白い竜を優しく包み込むように傷を癒して行く。


「・・・どういうつもりだ?」


巨体を横にし光に包まれながら、目の前にいる青年を目を丸くし見つめる白い竜。


「治癒の揺り籠っていう光の魔法だが?」


答えになってない答えを返事をし、その場をはぐらかそうとする青年。


「この傷が癒えたら、貴様を噛み殺すかもしれないのだぞ?」


「まあ、そん時はそん時で対処するよ。俺も一応、人間界では最強のギルドの一員だからさ、簡単には殺られない自信はあるけどね」


白竜は、その言葉と青年の表情にイラついていた。何故なら青年は、自身に満ち溢れた表情を浮かべていた。まるで、今回の大戦は人間が勝って当たり前のように聞こえたからだ。


「・・・・・・」


白竜は、静かに怒りを収めた。


今のこの身体では、この青年を噛み殺す前に自分自身が殺られてしまうのは目に見えていた。


白竜は、地面に顔を伏せ青年に身を預けた。今は、この青年に傷を癒してもらうのが最善であると悟ったからだ。


この傷が癒たら今度こそは人間をーー




「おーい、どこだあ?居るなら返事しろよ」


静かな洞窟に木霊する人間の声ーー、白竜は自分が寝てしまっていた事に今気付いた。


慌てて身を起こすーー!!?


「・・・傷が癒てる」


「当たり前だろ?俺が治してやるって言っただろ?」


白竜は、目を丸くし青年を見下ろしていた。


「ーーさて、仲間も迎えに来たから俺は行くとするよ。じゃあな」


白竜に背を向け去って行く青年。


白竜は、思わず、


「待って!!」


青年がその声に振り返るとそこには、先ほどの大きな白竜の姿は無く、真っ白な透き通るような白い肌と腰までの長い髪をした女性が立っていた。


「・・・・・・」


余りの美しさに言葉を失う青年。


「せめてお名前を・・・」


「え?君はさっきの白竜?」


「はい、エキドナと申します」


「僕の名前は・・・」





ーー あなたの名は? ーー

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