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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
150/217

神竜対人間⑤


俺たちは、何を見せられているんだろ?

こんな事を望んでいたのか?


目の前には、想像もしてなかった展開が繰り広げられていて誰もついてはいけず、ただそれを見ているしかなかった。


バルティカの壁に行進していた魔族ですらその足を止め、置物のようにじっとしていた。



俺たちの目の前で、竜が竜を殺しあっていた。


三つの首のある竜は血の涙を流しながら先ほど俺たちと対峙していた竜を殺したーー。


止めに入った竜も今まさに命の灯火が消えようとしていた。


「バッツ・・・どーなってるんだ?」


「バッツ、何がおこってるの?」


ウィリアムスとリリーが前を向いたままバッツに問いかける。


しかし、返答は無い。


無くて当然だーー、バッツ自身今まさに目の前でおこってるの現実が誠か否か分からないでいた。


口を開け固まったままのアルカナ・ナイツのメンバーの目の前で、遂に三本の首の竜が二体の竜の息の根を止めた・・・。



悲しい竜咆哮は、バルティカ戦線に響き渡った。



☆ ☆ ☆



「ニーズヘック・・・」


「ああ、一体何がおこってる?この魔力は、アジ・ダ・ハーカなのか?」


「サーペントとウロボロスの魔力反応が無くなったわ」


「人間如きにやられたと言うのか?」


首を横に振りながらエキドナは、ニーズヘックに向かって、


「分からないわ、予期せぬ事態が起こっているのは確かよ。神竜二体がやられる何て未だかつてなかったわ」


エキドナとニーズヘックは同時にバルティカの戦場を見つめた。


争いを止めに来たつもりのエキドナだったが思わぬ事態に本来の目的を変更を余儀無くされてしまった。


「アポカリプスが復活目前だって言うのに、とんだ邪魔が入ったな」


「ニーズヘック、悪いがアポカリプスは復活させないわ」


エキドナは、ニーズヘックを睨みつける。


「お前に何が出来る?復活は誰にも止められない。俺は、ウロボロスとサーペントがやられた元凶を突き止めに行く。アポカリプスの復活を止められるなら止めてみろよ」


ニーズヘックはエキドナに背を向けバルティカの戦場へと飛び立った。


エキドナは、分かっていたーー



アポカリプスの復活はもう止められない事を。


止められるのはもうこの世にはいない最初に封印した人物、サーガだけだと言う事を。


「アポカリプスが復活したらもう誰にも止められない。何としても復活を阻止しなければ・・・」


一人天を見上げるエキドナ、その目に写る空は不安とは裏腹にいつも以上に青く輝いていた。



☆ ☆ ☆



正直言って俺は、面倒臭いことに巻き込まれるのが嫌いだ。だからいつも一人でいる。


一人でいるのは気楽で良い。


寂しい?


そんな事今まで一度も思った事はない。


他の同族は、派閥を作り群て仲間意識を高めていたが俺はそういう事は、無関心であえて一人を選んだ。


誰にも迷惑をかけず、他との交流を一切取らず一人平穏に暮らしていた。


ーーそんなある日、



「私、人間として暮らすことにしたわ。人間と結婚して子供を産んで一生を過ごすの」


何を考えているんだ?


竜が人間と・・・?


「そんなことして何になる。お前の愛する人や人間としてお前と繋がってくれる大事な人は必ず先に逝ってしまう。それをお前は何度も何度も目にする事になるぞ。それでもお前はその道を選ぶのか?」


彼女は人間の姿になり、


「私は全てを彼に話した上でこの道を選びました。どんな悲しい結末が待っていても今この瞬間に自分が後悔しない道を選んで歩んで行こうと思ってる」


自分の後悔しない道・・・。


「面白いな。なら俺も人間となり君の人生がどんなものか見せてもらうとするよ。どうせ俺は一人、暇つぶしがほしかったところだ。人間と竜が一緒になり最後どんな結末を迎えるか見せてもらうよ」


彼女は万遍の笑みを浮かべて微笑んだ。


「ファフニールありがとう」


何を感謝されたのか俺には分からなかったがそれから俺は人間としてバルティカに住んで過ごしていた。



彼女の結婚式、出産など節目となる場面を見ているうちに心無しか自分が竜である事を忘れていた。


俺自身もバルティカ王国で沢山の人間と繋がり友と呼べる人間の仲間が出来ていた。


一緒に笑い、酒を飲み、歌い。

エキドナの家族とも仲良くさせてもらった。


彼女の選んだ道は間違いじゃなかったと思った。


神が人間と共存しろと言っていた意味がようやくわかりかけた時にその噂か耳に届いた。




ーー アポカリプス復活が近いと・・・ ーー

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