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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
148/217

神竜対人間③


三つの首を持ち、刃のような鱗が体を覆っている。大きな翼と鋭い爪と牙を持つ神竜【アジ・ダ・ハーカ】が突如バルティカ戦線に現れた。


「ーーまた、新たな巨大な竜・・・」


リリーは、腰を抜かし地面に尻餅をついた。


フルールは、ガタガタと震えながら、


「ねえ・・・この三本の首の竜・・・」


「ああ、忘れる訳ない。あの時の、アイツだ!!」


ウィリアムスは、アジ・ダ・ハーカを睨みつけた。


「俺らの国を壊滅された元凶だ!」


バッツは、歯ぎしりをしながらゆっくりと立ち上がった。


「バッツーー、ど・・・どーなってるの?」


バッツの頼まれ事を終え、ミモザが血相を変えて戻って来た。


「それより、セントラルコントロールは受理してくれたのか?」


「何とかね。レーベンハートさんに直接話しすれば早いのに・・・」


「バルティカ共和国内での争いや活動に勝手に首を突っ込むのは法律上禁止されているんだよ。特に、国を持たないバンディッツは交渉すらしてもらえない時もある。だから面倒だけどこの国の事は、この国のトップから交渉してもらう必要があるんだ」


「ーーこんな緊急事態でも遠回りの段取りが必要なのね」


ミモザは、肩を落としため息を吐いた。


「援軍が来るまで、バルティカの国内に(コイツら)が進入して暴れないように持ち堪えるのが俺たちの役目だ」


「そうね。悔しいけど私たちだけではこの巨大な竜を何体も相手に出来ないわ」





「アジ・ダ・ハーカ、今までどこにいたんだ?」


懐かしそうにサーペントが話かけるが、


「・・・・・・」


全く動かし反応がない。


「アジ・ダ・ハーカ・・・?」


「サーペント、アジ・ダ・ハーカの様子が変だぞ」


ウロボロスが近寄りアジ・ダ・ハーカの顔を伺う。


「意識がないのか?さっきから全く動かない。それに魔力の流れがおかしい」


サーペントの顔が険しくなる。


「ど、どーなってるんだ?アジ・ダ・ハーカしっかりしろ!!アジ・ダ・ハーカ!!」


ウロボロスが咆哮をあげる。


「ククク、そんなに叫ばないでくださいよ。竜も一応、仲間の心配とかするんですね。ウケるー」


アジ・ダ・ハーカの肩に黒ローブを羽織り手には光輝く書物を手にした男が現れた。


「ーーさて、暴れてもらおうかな。手始めにお仲間さんに五月蝿いから消えてもらいましょ。行けアジ・ダ・ハーカ!」


ローゼンクロイツの一言にアジ・ダ・ハーカは動き出した。


先ほどまで、蝋人形のように固まっていたのに、動き出した途端、ウロボロスに襲いかかった。


「お、おい!何の冗談だ?アジ・ダ・ハーカ」


「止めろ!アジ・ダ・ハーカ」


ウロボロスに攻撃するアジ・ダ・ハーカを止めに入るサーペント。


そんな竜のやりとりを見ていたアルカナ・ナイツのメンバーには何が起こったのか、分からず混乱していた。


「竜と竜で争ってる?仲間割れ?」


「こっちとしては好都合だけどね」


アルカナ・ナイツのメンバーはこの混乱に乗じて一度竜との距離をとった。


「バッツ、どこに援軍を頼んだんだ?」


ウィリアムスがバッツに問いかける。


「ロビンに間に入ってもらい【円卓の魔道士】に応援をお願いした。それにアイツも来てくれる」


「アイツ?」


「デーモンズゲートを封鎖した男だよ」



☆ ☆ ☆



「アーサー様、バルティカ共和国ってどこにあるの?」


「最北端の地だって聞いたよ。何でも大きな壁が何キロにも渡ってあるらしいよ」


「それにしても、物騒ですわね。【円卓の魔道士】の招集はあの日以来です」


「ああ、リリスの話だと先陣を切ってロビンが行っていたらしいけど、そのロビンからアラートが出たらしいんだ」


「それだけ厳しい戦場なのですね・・・」


「ああ。彼ほどの騎士でも助けが必要だと感じるほどなんだろう」


アーサーと三人の精霊は、グリフィンに乗りバルティカ共和国に向かっている。


他の円卓の魔道士達は、一度アヴァロンに集まってからバルティカ共和国に向かうらしい。


「ふにぃー、アーサーさまあ。お腹空いたのお」


「エルザはいつもそればっかよね。だからそんなにまん丸なのよ」


「リサは、あんまり食べないからお胸にお肉がないのよ」


ふんっ、とエルザはそっぽを向いた。


「見たあー!シルフィーあの態度」


キーッと、顔を真っ赤に膨らせるリサ。二人を横目にシルフィーはアーサーに、


「アーサー様は、アヴァロンに集まらなくて良かったのです?」


「僕は、円卓の魔道士でも何でもないから・・・リリスが力を貸してくれるなら一緒にバルティカで戦ってほしいと言われただけだからさ」


「リリスさんだけでなく、皆さんアーサー様の力を必要としてくれてると思いますよ」


「僕ってより精霊のみんなの力だよ。僕なんてみんながいなきゃ、ただの能無しだから」


「そんなことないです。私たちはアーサー様がいて初めて本来の精霊の力を発揮出来るのです」


シルフィーがグッと力を込めて力説する。


「そーだよ!まだアーサー様そんなこと言ってるの?言わない約束だよ」


「リサの言うとおりなの。私たちは四人で一人前なの」


リサとエルザもアーサーに顔を近づけながら思いを伝える。三人は真っ直ぐ真剣にアーサーを見つめる。


「ありがとう、三人のおかげで自身が持てたよ」


三人の精霊は、微笑み顔を見合わせた。


グリフィンは、そんな四人を乗せながら最北端の地バルティカ共和国を目指していた。

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