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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
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神竜対人間①


「威勢の良い人間が何人かいるねえ」


「サーペント、暴れに行っても良いんだぞ」


「冗談だろ? 人間如きに神竜の俺が手を下すのか?」


「俺は、冗談は嫌いだ!行くのか?行かないのか?」


サーペントは、その言葉をはぐらかすように、


「・・・そもそも、他の神竜たちは何してんだ?ファフニールとエキドナは人間の肩を持つとか頭の可笑しい事を言い出してる。アジ・ダ・ハーカとウロボロスの野郎はどこで何してんだ?」



「ウロボロスは、そろそろ来るはずだ。アジ・ダ・ハーカはここ何年も姿を見た奴はいない。サーペントお前が行かないなら俺が手を下すだけだ」


漆黒の翼を持つ竜の燃える様な赤い瞳がサーペントの青い瞳を睨み付ける。


「・・・わ、分かった。俺が人間に手を下す」


サーペントの中には、神の言葉がまだ残っていた。『人間と共に歩み生きろ』という教えを。それに反いた竜は、アポカリプスのみ。結果、人間に封印されたーー。


神の言葉に反いた罰だと思っていた。竜は、神が創り上げた創造主。人間と共に歩み、人間と共に豊かな世界を作る。それが今、争いを繰り広げている・・・。更に、自分は、人間に手を下そうとしている。


許されるのか・・・それともアポカリプスのように人間によりーー嫌、神の鉄槌が下るのか?



☆ ☆ ☆


「ヴィルぅぅぅ、まだここにいるの?そろそろ違うところに出かけようよ」


ヴィルの周りをくるくると、茶色のボブカットの精霊が口を膨らませて飛び回わっている。


「私も行きたいのは、同じ気持ちだよ。だけどね、彼が楽しいものを見せてくれるらしいので待っているんだよ」


キツネ目の男が申し訳なさそうに精霊に話しかける。その言葉に感情があるのか、無いのか、その表情も作った演技ではないのか?その全てが何とも表現し辛い。


「ふーん。ヴィルにも友達いるんだ」


「・・・トモダチ」


その言葉に何かを思い出すかのように、遠い目をするヴィル。


「私は、ミリアがいるよ! ずっと私のこと待っててくれてるの。早く会いたいなあ」


笑顔を振り撒きヴィルの周りをくるくると飛び回る。


「私にも、友達はいたかな・・・今は、会っていないんだ」


ミリアは、ヴィルの顔を覗き込んで笑顔で、


「じゃあ、私と同じだよ。早く会いたいね」



キツネ目のヴィルの目が開いたーー。


思わずヴィルの口から溢れた言葉、



『パトリシア・・・』




☆ ☆ ☆



「魔弾【ラグナ・リボルバー】」


アスベルが指でピルトルを撃つような仕草をすると突き出した右手の人差し指から光の閃光が放たれるーー。


アスベルの特異能力【魔弾】、自身の体内エネルギーを弾に変えてピルトルのように敵に撃ち込む事ができ、魔法とは違い、敵の属性関係無しにダメージを与える事が出来る。


「くっ、魔弾で全然ダメージを与えられてないなんて」


「明らかに、この大きな竜は他の竜とは違うわ」


「違うなんてレベルじゃねーぜ、スピードが桁違いだ」


バッツの顔が険しくなる。


神竜サーペント、蛇の様な肉体を持っているがその表面は、硬い鱗のようなもので覆われている。本来は、水竜の部類に入るが神竜と呼ばれる存在なので空中に浮かぶ事も出来る。


サーペントの特徴は、大気中を含む全ての水を操ること・硬い鱗は半端な魔法や攻撃を回避する・そしてそのスピードの速さだ。【アルカナ・ナイツ】の中で一番動きの速いバッツのスピードでも追いきれない程だ。


「デカイし速い・・・リリー!!」


バッツが後方にいるリリーに向かって叫ぶ。


「分かってわよ。今準備してるわ」


リリーは、サーペントに向かって右手の人差し指と親指を円形にして覗き込む。


「ターゲットロック! ストップ」


リリーの特異能力は、ターゲットにした者の行動を制限することができる。ただし、リリーが指を円形にして覗き込むんでいる範囲内の者に限定される。制限は、ストップ・スロー・スピードの三種類。


リリーがサーペントをストップさせている間にウィリアムスとアスベルが攻撃する。


「ドラゴンスレイヤー」

「魔弾【ラグナ・リボルバー】」


ストップで動けないサーペントに直撃する。

更に、バッツが高く跳ね上がりオーラブレードで切り裂くーー。


サーペントから苦痛に満ちた咆哮がバルティカ戦線に初めて響き渡った。


「もう一発ーー!」


バッツが着地し更に下から斬りこもうと体制を変えると、サーペントの目がギョロッとバッツを睨む。


「な、何? 急に気温が・・・寒い」


後方で待機しているミモザとフルールは二人肩を寄せ合いながらガチガチと歯を鳴らしている。


「危険な感じがする・・・」


フルールは、小さな声で呟いた。


空中の水分を氷の結晶の刃に変え、アルカナ・ナイツを襲うーー。


『ダイヤモンド・ダスト』


バッツは、直感で分かった。ーーこれは危険だと。斬りこもうとしていた体制を元に戻し後方に飛び、少しでもサーペントから離れる。大気中がまるでイルミネーションの飾り付けをしたからのようにキラキラと輝いている。


しかし、そんな優しい物ではなく一つ一つ鋭利な刃物の様に鋭くなっていて、触れれば切り裂かれる。それが今まさに無数に降り注そがりアルカナ・ナイツに襲い掛かる。


「ーーヤバっ!!」


バッツが思わず倒れ込みながら目を塞いだ。

確実にサーペントの攻撃の直撃を避られないと思った。ーーしかし、


「・・・ん?」


バッツがゆっくりと目を開けたその先には、


「ふーっ、フルール助かったぜ」


フルールの特異能力【ミラージュシールド】


一定時間だけ絶対防御の障壁を貼る事が出来る。時間が経つと自然にガラスが割れるように崩れてしまう。


バッツが安堵の表情を浮かべていると目の前に貼られたシールドは、音を立てて崩れて落ちた。


「間に合って良かったです」


フルールは笑顔を見せたのは、つかの間ーー、


「バッツさん!!」


フルールが珍しく大声で叫ぶーー。


サーペントの前に巨大な竜が地面から現れた。バッツは慌てて後方にいるアルカナ・ナイツのメンバーの位置まで下がった。


「更に、巨大な竜が増えたな・・・」


ウィリアムスが右腕を押さえながら、眉間にしわを寄せる。


「・・・・・・」


「どーしたのバッツ?」


「ああ、ミモザ悪いが頼まれてくれ」


「ーーーー」


「賢明な判断ね。 分かったわ」


「バッツお前らしくないが、俺も賛成だ」


「ミモザ頼む!」


「任せて」



☆ ☆ ☆



「サーペント、何を遊んでいる」


燃えるような赤い皮膚に、小さな漆黒の翼の竜。


「ウロボロス・・・」


「サーペント貴様、人間に情けをかけていないか?」


「・・・・・・」


「貴様も結局は、エキドナやファフニールと同じ類いって訳か」


「俺は別に・・・」


「まあいい、貴様はそこで見ていろ!俺が人間を葬ってやる」


「ウロボロス・・・」


ウロボロスは咆哮を響かせたーー。


ーー 神竜 対 人間の第ニラウンド ーー

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