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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とバルティカ戦線の書
141/217

バジリスク④


trance(トランス)それは覚醒状態。ライラの魔力値がピークに達した時に昏睡状態に入り覚醒状態に移行するのだ。


完全自動化(フルオート)これこそが彼女の本当の戦闘モードなのだ。


「ライラ?大丈夫か」


「ーーーー」


ロビンの問いかけに返事はない。


「標的バジリスク、戦闘準備完了」


ただ与えられた台詞を棒読みで読むように独り言を話すライラ。その一語一語に感情はない。


ロビンがバジリスクの攻撃を回避しようとした時、無数の閃光弾がバジリスクを襲う。


全弾命中しバジリスクは蹌踉めく。


burst(波動球)


両手を前に出し魔力を一気に放出させる。バジリスクにめがけて巨大な魔力の塊が撃ち放たれた。


緑色の巨体が吹き飛ぶーーバジリスクは地面に崩れ落ちた。


「とんでもない魔力量だぜ」


ロビンも唖然としている。


ライラは更に追い討ちをかける。


charge(チャージ)


魔力を更に練り上げる。高密度な魔力のオーラがライラを包み込む。


バジリスクは地面から起き上がろうとしているがまだ目をキョロキョロとさせふらついている。


full burst(波動砲)


地面に巨大な穴が空いた。バジリスクは地面の底が見えない暗闇に落とされた。それほど巨大な魔力の塊が直撃したのだ。


ライラの魔力のほぼ全てを撃ち込んだと思っても良い。ライラはその後気絶しその場に倒れた。それと同時にバジリスクの魔力も消え去ったーー。


「セントラルコントロール聴こえるか?こちらロビン。バジリスク討伐完了した」


『こちらセントラルコントロール。ロビン了解した。すぐ帰還せよ。門を解放する』


ロビンは気絶したライラを抱きかかえる。


「ーー女の子って軽いしこんなに細いのか」


空を見上げながらアヴァロン(故郷)を少し恋しいと思うロビンだった。





* * * * * * * * * * * * *


エドナ山脈の奥にある巨大な洞窟ーー。

人間らしき人物と竜が話をしている。



「バジリスクの魔力が消えたーー」


「なかなかどうして、人間も凄いじゃん」


ファフニール(お前は)本当に他人事な」


「俺は初めからアポカリプス(そっち側)じゃねーからな」


「相変わらず気に食わねえな、その態度」


「別にどー思われようが構わねえよ」


「うぜー」


竜はファフニールを無視し洞窟の奥に消えて行った。


「マズイね。余り人間に活躍されるのも問題なんだよねー」


ファフニールが頭を掻いていると、


「何が問題なんだ? ファフニール」


巨大な影がファフニールを覆った。ファフニールがその声に振り返ると、


「ニーズヘッグ・・・」


「馬鹿みたいな姿してここに来るじゃねえよ。俺らを馬鹿にしてんのか?」


漆黒の身体と翼を持つ竜が睨みを利かす。


「別に馬鹿にはしてねーよ。俺は好きでこの姿をしているし人間界でも楽しくやってる」


「楽しくやってる? 貴様俺らが今、何をやってるのか分かってその発言をしてるのか」


「分かってるからこそ言ったんだ」


「ファフニール貴様ぁぁぁぁ!」


ニーズヘッグは怒りを露わにした。その凶々しい魔力が辺りを恐怖に包んだ。


「相変わらず凄い魔力だね、ニーズヘッグ」


ファフニールは平然と切り返した。


「その余裕に満ちた態度を改めさせてやる」


一発触発の場面になっていたところで、


「どーしました?何事ですか?」


ニーズヘッグの凶々しい魔力に釣られ洞窟の奥からぞろぞろと竜たちが心配そうにやって来た。


「ーーこいつらに免じてこの場は収めよう」


「感謝するよ、ニーズヘッグ」


ファフニールが洞窟から去ろうとするとーー、


「ファフニール、アポカリプスは近々復活するぞ」


ニーズヘッグのその言葉に足を止めたファフニール。振り返らずに、


「ーーエキドナが黙ってないぜ。アポカリプスが復活するのが先かお前らが始末されるのが先か」


「エキドナ? あいつにもーチカラはないだろ」


竜たちからどっと笑い声が湧き上がった。


「じゃあな」


ファフニールは手を上げ去っていった。


「今のうちに笑っておけ、人間との共存を実現させた神竜が産んだ結晶は必ず天罰を下すだろうよ」


誰にも聞こえない独り言。その意味をいずれ竜魔族は知ることになる。


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