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三人の精霊と俺の契約事情  作者: 望月 まーゆ
三人の精霊とクリスタルパレスの魔女の書
123/217

親父からのプレゼント


「よう!親子の会話は終わったのか?」


城から出て来るとランスロットが待ってましたとばかりに声をかけてきた。


「ああ。ーーって何でそれを」


アーサーが辺りを見回すと、舌をぺろっと出しているリンスレットがいた。


「用は済んだんだろ?一緒に飯でもどうだ」


「私も一緒に行きますわ。どうでしょうか?」


「そうだね。お前らも行きたいだろ?」


「うん」

「ご飯たべるの」

「はい、是非」


三人の精霊も嬉しそうに返事した。



☆ ☆ ☆


ランスロット、リンスレットと一緒に城下町にある食事処に向かった。アヴァロン騎士団御用達のお店らしくランスロット曰く(いわく)アヴァロン城の食堂より美味しいらしい。


店内は温もりを感じるようなウッド調で統一された作りになっていて丸いテーブル席が六つある。壁にはいくつか棚が並んでいてその全てがワインやらウイスキーやらの酒が納めてあった。



「あれ? いつもなら俺もとロビンが来るのに」


「ああ、アイツは前線送りになってしまったんだ」


「前線・・・バルティカ」


「苦渋の決断だったーー若いアイツに行かせるのは酷だったんだが実力的にも適任者だった」


「銀の星団からも数名派遣させました。世界中の国々からバルティカに援軍を出しているみたいです。それだけ事態は深刻のようです」


「相手は人間じゃなく魔物。一筋縄ではいけないらしい。一撃で倒せる相手じゃなく何より恐ろしいのは数で攻めて来る」


「まだシーサー様に動きはありませんがバルティカ共和国から再度、援軍を要請されれば円卓が前線に行く可能性もあります」


「バンディッツのメンバーも数名行っていると言っていたな」


「バンディッツ? 反帝国軍とも繋がりがあるのかーー」


「俺ってより姉さん(ミランダ)が顔が広くて」


「ミランダさん。分かります、とても煌びやかな感じですものね。社交的なイメージがありますもの」


「ミランダは魔法省や世界議会にキャメロットの代表で出席しているだけはあるな」


「まあ、そんな縁で今は反帝国軍バンディッツのメンバーとして活動をしているんだ」


「円卓の魔道士でバンディッツのメンバーって何だか凄いですね」


「バンディッツに入った目的ってのは例の噂は本当だったのか?」


「それは世界指名手配されてるってお話ですか?」


「ああ、姉さんの提案でもあるけど、どこの国にも属してないメンバーで構成され更に反帝国を掲げている組織は好都合なんだ」


「しかし、何でアーサーが指名手配に」


「そうですよ。デーモンズゲートを封印して世界を救った英雄なのに」


「いえいえ、俺は英雄なんかじゃないよ。みんながチカラを合わせたおかげだよ。俺一人ではとても無理だったよ」


「そうなると影でアーサーの活躍が許せない奴がいるって事だな」


「何か陰謀を感じますね」


「お待たせしました」と、料理がテーブルに運ばれて来た。


辛気臭い(しんきくさい)話はここまでにして食事をいただこう」


「えるざお腹ぺこぺこなの」


エルザはお腹をさすった。


洋風のパスタなどの料理を食べながら、


「今後はどうするんだ?まだアヴァロンにいれるのか?」


「明日にはアヴァロンを出て、秘密結社アルファ本部を尋ねるつもりなんだ」


「メーディアのところか」


「ずいぶんと多忙ですね。もう少しゆっくりされたら良いのに」


「ゆっくりのんびりの人生を今まで送って来たからか忙しい日々が今は楽しいっていうか目的がある人生を楽しんでるのかもしれないです」


「アーサーらしいな」


食事の後、ランスロットとリンスレット別れたアーサーと三人の精霊は城下町にある宿に泊まり一晩明かした。


散々、城に泊まれば良いと二人に言われたがそこまで甘えることは出来なかった。



☆ ☆ ☆



「アーサー様のお父様に頂いたその笛は何ですの?」


次の日の朝、宿を出て城下町の外れにやって来たアーサーと三人の精霊たち、シルフィーが物珍しそうにアーサーの手にしている物を覗き込んだ。


アーサーが手に持っていたのは昨日シーサーがプレゼントと貰った銀色の細長い小さな笛だった。


「何だろうね? 吹いてみよっか」


「あーエルザ吹きたい吹きたい」


エルザはアーサーの服の袖を引っ張り銀の笛を取ろうとする。


「アーサー様、エルザに渡さない方がいいよお」


顔を膨らませながらエルザはリサに、


「何でよお」


「だってエルザの食べた後や飲んだ後を見ると汚いもん。全部ベチャベチャ」


リサは両肩をあげ、首を横に振った。


「そんなことないの。貸してよアーサーさまあ」


その話を聞きアーサーはエルザの食事シーンを思い浮かべた。確かにテーブルがいつもぐちゃぐちゃに汚れていたのを思い出した。


「アーサー様、笛貸したらよだれでベチャベチャになるわよ」


「アーサー様貸しーー」


アーサーはとっさに笛を背中の背後に隠した。


「あっ・・・」


エルザはそのアーサーの行動にこれ以上笛を欲しがることはなかったーー。




「よし、吹いてみるよ」


一同息をひそめてアーサーの動向を見守る。


アーサーが銀色の笛に息を吹き込むーー。


ピイイィィィィと甲高い笛の音が辺りに響き渡った。


ーーしかし、


「何も起きないね」


リサがため息混じりに首を傾げる。


「何の笛だったんだ?」


アーサーが銀色の笛を改めて確かめるように見つめていると、


「アーサー様、上です。空にーー」


黒い大きな影が現れアーサーたちを包み込んだ。


「な、何だ? と、鳥? この笛で呼んだのか?」


「鳥ではないですね。グリフィンですわね」


「これがグリフィンーー」


鷲の翼と上半身にライオンの下半身を持つ生物がアーサーと三人の精霊の前に現れた。体長は約二百センチほどで翼を広げると体長以上に存在感は大きく感じる。


「かいじゅうなの」


「の、乗っても大丈夫なのかな?」


迫力のある顔と存在感にアーサーは乗るのを躊躇(ちゅうちょ)していた。


「意外と大人しそうよ」


リサはグリフィンのまわりをじろじろと観察している。


「銀色の笛を持っている人をご主人様と認識しているみたいですわ」


グリフィンの視線は確かにアーサーだけを見ている。正確にいえばアーサーが手に持っている銀色の笛を見ていた。シルフィーの仮説は正しいのかもしれない。


「よし乗ってみるか」


覚悟を決めゆっくりとグリフィンの背中に足を掛け背中に跨る(またがる)


「意外と簡単にーー」


と言いかけた時、グリフィンはアーサーが跨ったのが分かったのか翼を羽ばたき空へ向かって飛び立った。


「うわっ飛んだ。どこに向かってるんだ?」


「あ、あ、アーサー様ああ」


エルザは今にもどこかへ吹き飛んで行ってしまうかのように必死でグリフィンの首元の羽を掴んでいた。


「エルザ、こっちへ。ーーリサ、シルフィーも俺のとこへ来るんだ」


グリフィンの空を飛ぶスピードはキルケーの箒よりも数倍速く必死で捕まっていないと振り落とされてしまう程だ。


あっという間にアヴァロン帝国が見えなくなってしまった。行き先を告げていないのにグリフィンはどこへ向かって飛んで行くのか。



大海原の上空をグリフィンの背中の上から見る景色はとても神秘的だった。


「この方角は何か見覚えあるな」


「あの小さな小島ってーー」


アーサーの服の中から顔を出し指を指すリサ、その指差す方向に小さな小島が浮いていた。


グリフィンはその小島に降り立った。


グリフィンの背中からアーサーが降りると、再び空へと帰って行った。


「この屋敷はまさしくメイザース邸」


「メーディアにメイザースさんが生きてることを報告しなくちゃね」


再びアーサーの服の中から顔を出すリサ。


「お前たちもういい加減服から出てこいよ」


アーサーの服は不自然に膨らんでいる。

三人同時に首元から顔を出し、「えーーっ」と不満そうに声を出した。


小さな小島の上に建てられたメイザース邸、かつては山奥にあったが敵対するゾロアスター教に居場所を知られてしまった為に時空転送魔法によりこの場所に移転した。


「メーディアいるかなあ」


リサは入り口にある呼び鈴を鳴らそうとするより先に入り口の扉が開いた。


「何やら外が騒がしいと思い覗いてみればアーサーきゅん達ではないですかあ」


扉から聞き覚えのある声が聞こえてその人物が姿を見せた。


「あっ!」


開いた口が塞がらないとはこの事だった。

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