反帝国軍潜伏メンバー
「ソ、ソフィア様ーー、ご報告が」
駆け込んできた兵士が敬礼しながらそう告げたのは、戦略会議をしている真っ最中だった。
一斉に視線を浴びた兵士は、自分が行った事の重大さに気付き、顔を青ざめた。
「無礼者! いきなり飛び込んで何事だ」
会議を中断され頭に血が上っている白髪交じりの男が威勢良く兵士を叱りつけるがソフィアはその男の前に手を出し制止する。「それより」と息継ぎをし、
「よほど急いで来たと見られる。何の報告だ?」
直感的にマズイ事態が起きたのでは?とソフィアの問いに肩を上下させ兵士は、
「て、て、敵襲です! カタリナ公国全土を帝国軍が包囲しています」
悪い予感は的中した。出来れば外れてほしかった予感だったが、
「予定より早過ぎる。ーーまだ何の策も練っていないのに」
「ど、どうするのじゃソフィア様」
帝国軍が攻めて来ることは予想していたし、分かっていた事だった。しかし、いざその場面に直面すると何も出来ない。
皆、一斉にソフィアにすがるように見つめている。
正直何も分からない。こんな時レオンが居てくれれば助けてくれるのにーー。
ソフィアは目を閉じレオンの顔を思い浮かべる。
「レオンだって援軍を呼びに頑張ってくれてる。 レオンが帰って来るまで私も頑張らなきゃ」
ソフィアは、自分にそう言い聞かせると、
「国中の人々をカタリナ城にーー、ここが国で一番安全な場所だからみんなで手分けして避難させるのよ」
☆
ーー帝国軍が包囲し、国中の人々で溢れかえったカタリナ城内。
「俺は、反帝国軍バンディッツのアーサーと言います。君達の仲間レオンより援軍要請を受けて来ました。メンバーも時期に到着しますので安心して下さい」
その言葉に皆、少し安堵の表情を浮かべた。
「ああ、レオンが・・・おじ様」
ソフィアは隣にいた白髪の老人執事と手を取り合った。
「ーー但し、まだ少し時間がかかるので何としても援軍が来るまでは耐えなければならない。このままここで籠城してたら全員即死だ。ここが一番安全そうだが一番危ない
」
アーサーの言葉に全員が耳を傾ける。
「俺一人では何の役にもたたないけど、俺には小さいけど凄く頼りになる仲間がいる」
そう言うと、アーサーの体が光輝き中から三体の精霊が飛び出して来たーー。
戦争や争いと無縁のカタリナ国民でも知っている。ーー三人の精霊を宿した人間が存在しデーモンズゲートを封印した噂を。
「まさかあなたが噂のーー」
その存在の大きさに皆、希望を抱いた。
「とにかく、時間がない。いくつか策があるがその場しのぎにしかならない。バンディッツが来るまで何とかみんなで耐え切ろう」
アーサーの言葉に皆、精気が戻った。
みんなが自分を頼ってくれているのは表情を見れば分かった。
しかし、あの時と今では状況も立場も違う。
頼れる円卓の魔導士もいない、何より金色の瞳が使えない。
期待の眼差しが心に突き刺さる中、アーサーはソフィアを呼んで耳打ちした。
何事かをアーサーが耳打ちした瞬間ソフィアの顔は明らかに強張った。
そしてーー青ざめた表情になった。
『 バンディッツは間に合わないーー 』
そして更に続ける、
『 俺が何としてもお前だけは逃がしてやる。これはレオンからのお願いだ 』
ソフィアの心は複雑だったーー。
自分だけ助かるのか?
国民の皆の命を犠牲に?
本当にそれでいいのか?
ソフィアは迷っていたーー。
ーー 帝国軍の攻撃が今、始まった ーー




