六袈の装 ①
1章ももう後半戦です!
・・・完全に油断してたわ
僕は最初ブレイド火山組の皆がちゃんと作戦通りに動いてくれていると思って色々と準備をしていたんだけど、皆いつのまにか作戦無視して人間大砲してるのには絶句したわ。
敵が魔法使いが多い編成なら確かに有効な作戦だけど、完全に最初の趣旨忘れてるじゃん。
ようするに「時間を稼いで!」っていうことで作戦つくったのに、今のやってることは「殲滅するぜ!」に変更されてしまっていたいたのです。
それを知らされたのは、戦闘で邪神軍の奴らを8割ほど倒したという報告と一緒だったのだ。
こちらの軍の被害は未だに10人未満だということに対する驚きも隠せなかったが、一つ気になったのがアグナムートの現在の状況のみ情報が全くなかったところだ。
いくら彼女が最前線で戦っていようとも、疲れや怪我をとるために休憩は必ずするだろう。
ましてや定時報告をお願いしたから彼女の律儀な性格から約束を破ることはないはずなのだ。
まぁ、作戦無視してる時点で律儀じゃないかもしれないけど。
なんか嫌な予感がしたから開発班に無理をさせて本来かかるはずだった数時間分の作業を30分でさせて完成したものを手に現場に急行した。
開発班にご褒美を上げなければいけなくなったのは蛇足かな。
ただ、変態の集まりに対するご褒美が何かわからないから怖いんだけど・・・
それはいいどうでもいいとして、
現場に到着したとき今にもアグナムートが殺されそうになっていたから慌てて剣で攻撃を防いだのだ。
あと数秒の判断で生死が分かれていたと思うとゾッとする。
ただ仲間は死んでほしくないのだ、本当に。
たとえ魔王らしくないと笑われたとしても、
これのことだけでは絶対に後悔はしたくない。
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「今更、魔王が出てくるのは遅いんじゃないのか?」
メツは刀の柄に手を当てつつ問いかけた。
僕は二振りの剣を物質創造で生み出してから返事をする。
「確かに遅かったかもしれないけど、君を完全に倒すのには念には念を入れないといけないと思ってね。」
喋っているうちに手元に全く同じ剣が二本完成する。
嵐剣<雫> 片手剣 SR
専用効果・・・身体能力強化(大)、攻撃速度倍化、心眼、風属性
「アグナムート、絶対に前に出ちゃだめだからね?」
アグナムートに一言言って前に出る。
彼女はコクコクと頷くと数歩後ろに下がり、僕が両手で剣を構えた瞬間に戦いは始まった。
先手を取ったのはメツだ。
「いくら魔王でも俺の剣は見切れるわけがない!【天地縮尺】!!」
メツはスキルで僕との距離を詰めると、刀で一気に首をとりにきた。
僕は、それを見切って躱すだけでなくカウンターで一撃叩き込む。
専用効果にある、心眼と攻撃速度倍化のおかげで相手の速さにもついていけているのだ。
ザシュっという小気味のいい音ともにメツの肩口から血が噴き出した。
「チッ!」
舌打ちとともに回復魔法で傷を治すと、スキルを連発してきた。
「刀スキル【燕】!【月花】!!【風燐火斬】!!!」
「なんの!片手剣スキル【ソフトピアース】!【ビッグブレイド】!!」
メツのスキルに対抗して、いくつものスキルを放つ。
刀の鋭い突きと剣撃をソフトピアースで防ぎ、巨大化した刀をこちらも巨大化した片手剣で防ぐ。
スキルが終わった後も何度も相互で剣戟が行われるが実力は、ほとんど全く対等のように思えた。
しかし、先に僕の片手剣がバキっという音とともに柄から折れた。
げ、あいつ同じところばっかり狙って剣を折りにきてたのか・・・
というか、毎度毎度敵の皆さん僕の剣壊しすぎでしょ。
なにか武器にでも恨みがあるの?!
そのまま勢いを殺さずにメツが間合いを詰めようと試みるが、慌てて二人の間に土の壁をだして時間を稼ぐ。
この対応にメツはものすごく不満そうな顔をするのでイラっとしたが、
「だれも剣勝負なんて言ってないし!ついでにくらっとけ、ダークイクスプロージョンX!!」
生み出した土の壁あたりに闇属性の大爆発をぶちまけまくった。
まぁ、さすがに相手の幹部だけあって全く当たらなかった。
相手が挑発するように言った。
「ふん、ここまでして俺に対してまともにダメージを与えられないのは雑魚な証拠だな。」
僕はそれを鼻で笑ってこう言い返した。
「手加減してあげてるから仕方ないじゃないか~。」
これは、ハッタリじゃなくて本当の話だ。
一瞬だけメツの眉が吊り上がって、
「じゃあ見せてもらおうじゃないか・・・魔王とやらの力をなぁああ!!」
メツは真正面から目にもとまらぬ速さでこっちのほうに向かってきた。
迫ってきているのを確認しつつ、自分の首に飾ってあるチョーカーに手を触れて起動の言葉を口にする。
「六袈の装・・・起動。」
起動した瞬間に、膨大な魔力がチョーカーから生み出された。
それに驚きメツはつい足を止めてしまった。
「な、なんだ、その魔力は?!」
その間にも体中に魔力が覆っていき徐々に形を変化させてゆく、
最後に顔までに魔力が覆ったときに、メツはハッとなって慌てて刀で斬りかかった。
しかし、もう遅い。
「六袈の装【狼鏡】」
メツが次に目にしたのは、腕や足に銀の拘束具をつけた全身黒色のローブ姿を身に着けて、狼をかたどった杖で攻撃を弾いた魔王の姿だった。
「さぁ、蹂躙を始めようか・・・?」
魔王の両目が怪しく紅く光る。
本当のメツと魔王との闘いが佳境を迎えていた。
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