大将決戦
今回は逆に戦闘パートオンリーになっちゃいました。
戦闘の表現が苦手ですので、若干グダリ気味かも・・・それでもよろしくです。
今、アグナムートは久々の強敵にかなり緊張していた。
なぜ相手が強敵だかわかるのかというと、相手の刀使いの持つ魔力と殺気である。
魔力はアグナムートの10倍はくだらず、殺気に関しては現魔王にも劣らないほどだ。
(ま、今の魔王様はのほほんとしすぎなんだけどね。)
ほんの少し苦笑いしながら、そう思った。
そしてタイミングを見計らって、アグナムートが剣を上段に構えて突進する。
それを刀使いは、剣を滑らせるように受け流して斬りかかってきた。
「刀スキル 【天翔】」
一度メツの持っている刀が腰にある鞘に収まったと見えた時には、その刃が目の前にまで迫って来た。
アグナムートは刀を体をひねって躱すが、左腕を易々と切り裂かれた。
正直な話、一秒でも遅れたら腕が胴体とサヨナラしてるはずだ。
(攻撃の速さは異常だけど、でも・・・この程度のダメージなら耐えられる!)
アグナムートは剣を地面に突き刺して、スキルを放つ。
「彼の者を煉獄の業火に曝せ・・・【グランドイグニッション】」
邪神族の幹部の足元が突然隆起して、そこから巨大なマグマが幹部を襲った。
メツは眉一つ動かさずに刀を鞘に戻してマグマを避けた。
だが、それが彼女の本当の目的ではない。
その隙をついて背後に回ったアグナムートは静かにスキルを打つ。
「【バーサク】・・・からの両手剣スキル 【ムーンゲイル】!」
ボロボロの左腕に腕力強化のスキルを使い、その腕で両手剣を構え三日月型に相手を切り裂く。
反応速度がどれだけ速くてもマグマをさけたこの瞬間だけは、もう奴はマグマに突っ込むかこのスキルを体で受け止めるしかないはずだった。
しかし、
「そんな亀のような攻撃速度が俺にあたるとでも思ったのか?」
幹部は、なぜか鞘に収まっているはずの抜き身の刀を右手に持ちながらそう言った。
アグナムートはスキルがなぜ当たってないのを不思議に思うと、よく見ると自分の両手剣が手元に見つからなかった。
いや、正確には手がなかったのだ。
(手が!!!?)
アグナムートは激痛のせいで膝をついてしまい、そこを幹部は見逃すことなく追撃で蹴りを加えた。
「ガッ!?」
「あんた大将のくせに弱いな? もっと別のやつにさせたほうがいいぜ。」
慌ててアグナムートは起き上がるが、幹部はその間も休ませる暇もなく刀で斬りつける。
アグナムートは何度も後ろに下がって避けようとするも、間を詰められて斬られてしまう。
「ガハッ・・・」
血反吐をまき散らしながら、またも吹き飛ばされる。
相手の攻撃速度が本当に異常すぎるのだ。
「ぐぅうう・・・!負げるものがぁああ!!」
無理やり血まみれの拳を振るうも、スキルである【天翔】より速い斬撃で右手すらも切り落とされてしまった。
幹部の斬撃は目で追うことはことは不可能、そして武器すら失ったアグナムートでは勝負はとっくについていたが、彼女は諦めずに回し蹴りを叩き込もうとする。
それを幹部はシュンっという音とともに右足を切り落として、残念そうに言った。
「はぁ、もっと楽しめると思ったんだけどな。」
幹部は刀を、膝のついたままのアグナムートに向け最後に一言いって振り下ろした。
「こんなんじゃ魔王ってやつもたかがしれてるな、じゃあな女。」
という一言を聞いた。
そのとき、アグナムートの中で何かがはじけた。
(私の侮辱はいい・・・が魔王様の、ミーティア様をけなしたことはぜっっったいに許さない!!!)
それを言葉にする暇もなく彼女は首を切断された。
体中が業火に焼かれるような痛みがアグナムートを襲った。
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メツは相手の弱さに正直残念で仕方なかった。
(あそこまで啖呵が切れる奴は珍しいから、俺が本気で相手をしたらすぐにこのザマだ。)
この斬撃の速さの秘密は、彼の固有パッシブスキル ≪神速抜刀術≫ であった。
効果は、いつどの状態であっても自分が刀を持っている限り相手より先に攻撃できるというスキル。
一見チート染みた性能に思えるが、あくまで刀の届く範囲での話なので近づけなければ弱い能力なのである。
それすら迎撃できない相手の大将などたかが知れてる。
そう思い、相手の死体にも目をくれずに自軍の援護に向かおうとしたとき、いきなり高熱の熱風が幹部の体を吹き飛ばした。
「・・・まれ。」
メツが起き上がって振り返ると、さっき死んだはずの奴がいた。
それは、マグマを全身に被りながら、無くなったはずの左手で両手剣を握った女。
今、彼女の顔は鬼すら真っ青な憤怒の表情でこっちを睨んでいる。
「魔王様に謝れっつてんだろ雑魚。」
その瞬間にメツは歓喜とともに相手の生に喜んだ。
自分を完全に欺いて、生きていたんだろうと思って。
「あれだけ受けて死ななかったのか、ハハッ! 死んだふりが上手だなあ!!」
「うっさい。 『フレアX』。」
不機嫌そうな声とともに巨大な火柱がアグナムートの手から生成されて、火がメツを飲み込む。
それをメツは正面から斬り伏せてアグナムートの目前まで迫った。
「これならどぅだああああ? 【秘技弐ノ型 火蝶封血】!」
という掛け声とともに、クリムゾンレッドの光が刀を包み込んで刀スキルが発動する。
刀スキル最上位であるこのスキルには二つ特徴がある。
まず一つは二十連撃という全スキルの中でもトップクラスの攻撃回数をもっていて、
二つ目に、被回復魔法効果減少<大>という名前の通りの凶悪な追加効果まである。
これをモロに受ければ回復魔法を受けても回復効果が悪くなり、治癒できなくなるということだ。
しかし、アグナムートは微動だにぜず全部受け止めると、そのまま跡形もなく粉々になっていた。
メツは相手の即死にとても高笑いした。
「あんだけカッコつけて即死するとか、本当に馬鹿な奴だな・・・!?」
最後メツが驚いたのは、アグナムートが死んだはずの場所から大きな火の玉が出現し、それが消えると同時に無傷で現れたからだ。
そしてメツを睨んでこういった。
「私は決して負けない、決して敗北などない。」
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アグナムートはなぜこんなにも回復能力が上がったのかは、ほんの少しだけわかった。
自分に回復系の固有スキルが顕現したからという理由である。
おそらく火山のマグマ中にある火の魔力を吸収して再生する回復能力だということで、その上で重症や即死でも復活できる。
しかし、どれだけ回復できようともメツに攻撃が当たらなければ一緒でジリ貧なだけだ。
だけど、
「仲間が逃げる時間は稼ぐっ!!【フレイムアーマー】!!!」
アグナムートは炎の鎧を体に纏い、両手剣の真価を発揮させる。
炎剣アグナムート 両手剣 AF
専用効果・・・攻撃力UP(大)、炎属性物理攻撃強化、炎属性魔法攻撃強化、炎属性スキル強化、
武器変換 (両手剣→杖)
〔杖形状時・・・魔法攻撃力増加(大)〕
所持効果・・・最大MP増加(大)
自分の名前をもった剣であり杖。
そして、尊敬するミーティアの作ってくれた武器でもある。
(たとえ勝てなくても、みんなが生きれるようにする。これが私の我儘のケジメのつけ方だ!)
覚悟を決めメツを見据えて、戦う。
「幹部野郎、見せてやるよ・・・悪あがきって奴をな?」
アグナムートは不敵に笑い、詠唱を開始する。
「『フレアストームVIII』!『ダークフレイムX』!!『ファイアストライクV』!!!」
使える限りの魔法をぶつけていくが、それらをメツはすべてを切り捨てていく。
そしてメツはアグナムートの目の前まで行くと刀を高速で振って首を飛ばす。
しかし、アグナムートは余裕綽々といった感じですぐに復活した。
メツは少し不快そうに眉を寄せると言葉もなくスキルを発動させる。
それに対抗してアグナムートが火の魔法を打つ。
そこから無限にも思えるような長時間の戦闘が行われた。
魔法を打つ、斬られる、蘇る・・・ということを何度も何十度も繰り返してゆくうちに、とうとうアグナムートは再生限界を迎えた。
それに気づいたのは、ある時メツの刀スキルを腕で受けた瞬間に回復しないことだった。
その後、すぐに距離をとったおかげで腕は落とされなかったがもう体が全身痛くて動けなくなっていた。
さすがのメツもさっきまでは、息が完全に上がっていてかなり疲れとダメージがあったようだが、回復魔法で傷を粗方治したみたいでパッと見て今は、無傷の状態だ。
しかしさっきのような油断を完全にやめ、メツが無言で刀を抜いてこっちに歩いてきた。
そのときに、アグナムートは本当の最後を感じた。
もう今まで大好きだった友である、カグヤやソラス、自分の敬愛する魔王との記憶までもが走馬灯のように流れる。
(あぁ、もう。結局最後はこんな終わり方か~。
死ぬ前にミーティア様に好きだって伝えておけばよかったかなあ・・・)
恥ずかしがりな自分の性格にいやになりながらも、人生が楽しかったとも思えた。
死が歩いてくるのを、すべて受けいれて目を閉じた。
ヒュンという風切り音が鳴った・・・
瞬間にギャリィィイイン!!という不協和音を奏でた。
そして自分の大好きな人の声が耳元で聞こえた。
「全く、諦めるなんてアグナムートらしくないぞ。もっと醜く無様にあがこうぜ。」
そろりと目を開けると、そこには右手の片手剣で攻撃を防ぐミーティアが立っていた。
メツは突然のミーティアの登場に驚きを隠さずに名を問う。
「お前は一体何者だ!?」
その瞬間、ミーティアは口に小さく笑みを零しながら名乗った。
「名乗るほどじゃないが、僕は創造魔王ミーティアだ。 覚悟しなよ、邪神共・・・?」
英雄と邪神との戦いはここからが本当の始まりである。
ここまでよんでいただきありがとうございます!
次回からは邪神族との戦いがさらに激化していきます。