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【24話】話し合いを始めようと思う


 私対Eクラスの生徒との勝負が終わり、協力関係となったSクラスとEクラスの生徒はEクラスの教室に集まっていた。

 時間ではまだ体育の授業中であるが、大内とSクラス担当の体育教師である前原に「黒板などにメモを取りながら、話し合いがしたいので、教室に行ってもいいですか?」を私が尋ねると、二人は了承してくれた。

先程までの会話を聞いていたと思われるので、もしかしたら、駄目だと言われるかもと思っていたが、大内は「面白いもんが見られそうだから、いいぜ」と快く了承し、前原は大内に流され、仕方なく了承した。

その為、私達は体操着から制服に着替え、Eクラスの教室に集まった。

 Sクラスは少人数と言うことで他のクラスより狭く出来ており、SクラスとEクラスの全員が入れる余裕がないので、人数の多いEクラスの教室に集まったのだ。


 更衣室で着替えている際、私はクラスメイト達に謝罪した。

今回はほぼ私の独断で動いてしまっていたからである。しかし、それについて、クラスメイトは咎めなかった。

むしろ、感謝された。

「俺達だったら、Eクラスと仲良くなるなんて出来なかった」や「神前君は自分の言った事に責任を持って、やってくれるし」等、私を賞賛する言葉が多かった。

 ここまで感謝されると照れくさくなった。

私はクラスメイトに感謝の言葉を伝えたいと思い、「……みんな、ありがとう」と言った。

そうした所、何人かが鼻血を出し、一、二人が倒れた。その他はほのかに顔が赤みがかっていた。

「かんざきちゃん、何やってるの!?」

 なぜか百衣に怒られた。私が何をしたと言うんだ。

「皆に礼を言っただけだ。それ以外、何もやっていない」

 百衣が「あの時と同じかよ」と呟きながら、頭を抱えた。あの時とはいつの事だ? 百衣にお礼を言った時だろうか。

しかし、あの時とは状況が違うように思えるぞ。

「……この前と同じ無意識の笑顔か」

「やっぱり、あの笑顔は可愛いね~」

「……はぁ」

 以前の百衣とのやり取りを見た事がある士郎と治郎が独り言を喋り、貴弌は溜息をついた。

……こうなった原因はどうやら私の様であるが、私には原因が全然分からなかった。


 そんな事があったSクラスの生徒であったが、Eクラスの教室に行くと、Eクラスの生徒が待っていた。

「おせーぞ」

「すまない」

 素直に謝ると、神矢が驚いた表情をした。なぜ、そんな表情をする?

「……まぁ、いい。それより、早く始めろよ」

「私が進行役なのか?」

「お前以外に誰がいるんだよ」

 確かに私がSクラスとEクラスの仲介役ではあるが、さすがに進行役までやらなくてはいけないのは面倒である。

しかし、ここで誰かに代わりにやってもらうとしても、Eクラスの生徒が不満を言うだろう。

仕方がない。私が進行役をしよう。大内から交流祭の種目別の選手人数が記されたプリントは渡されているしな。

「分かった。

 では交流祭の参加競技を決める。

 競技は先生の言った通り、障害物競走と借り物競争と騎馬戦と千メートルリレーだ。

 千メートルリレーは選手が確定しているが、他の三種目はこれから決める。

 障害物競走と借り物競争は五人、騎馬戦は三十二人となっている。

 騎馬戦の人数を見れば分かるが、一人一種目か二種目やってもらう事になる。

 騎馬戦に出ない者は必ず障害物競走と借り物競走に出てもらう。

 それ以外の者は出たい物に出てもらおうと思う。

 ここまでで何か質問あるか?」

 私の言った内容に関して、質問はなかったようで静かである。

これなら、先に進められるな。

「かんざきちゃん~、一つ質問~」

 先に進めようと口を開いた時、百衣が右手をひらひらしながら、私に話しかけてきた。

「なんだ?」

「騎馬戦って、四人一組だよね~?」

「あぁ、そうだ」

「やる人決める時に一緒に組み合わせも考えるの~?」

「そうなるな」

「それだと、何人か仲のいい人と組めないんじゃない~?」

 そんな事か。こういう競技は仲のいい集団で集まっても、勝てるかは分からない。

まぁ、何組か強い者を配置するようにすれば、今回は大丈夫だろう。

「その辺は各自の判断に任せる。話し合った結果であれば、納得するだろう

 残ったら、残った者同士で組んでもらう事になるが、自分の知らない世界もひらけるし、あまりデメリットはないだろう」

 自分の苦手な人物であっても、接すると自分の知らない世界を知ることが出来るのは私の経験で味わったことだ。

私の大学時代の友人達の中には私が苦手とする性質の人間もいた。

あまり関わりたくなかったが、話してみると、自分の知らないことを知っており、話していて盛り上がった時もある。

そんな経験をしているので、あまり内に引き込むよりも外に出た方がいいと私は考えている。

私以外の人に関しては。

私は複雑な事情があるので、どちらかと言えば、内に引きこもりたい。

「まぁ、そうだけどさ~……残る面子がもう目に見えているんだよな……」

 百衣が小声で言った言葉に私は疑問であった。なぜ、やる人間が決まっていないのに残るのが分かるのだろう?

しかし、今はそれを百衣に聞く時間ではないな。

「他に質問がなければ、黒板に書いてある競技の所に名前を書いてくれ」

 私がそう言うと、教室が騒がしくなった。

仲のいい者と何をやるか決めているであろう。

私は余っている競技に入ればいいだろう。後、神矢と黒屋は障害物か借り物に出て欲しいな。

交流祭の種目別の選手人数が記されたプリント以外にSクラスとEクラスの二百メートル走の記録が書かれている紙も大内から渡されていた。

その紙によれば、神矢が一位、黒屋が二位であった。

一位と二位が走ってくれれば、獲得点数も高いだろう。

私がやってもいいのだが、さすがに全種目出てしまうのはあれだからな。

「神前、名前を書かないのか?」

 私が色々と思考を巡らせていると、貴弌が話しかけてきた。

黒板の方を見ると、何人か名前を書き始めている。これなら、早く決まりそうだな。

「私は最後の数あわせで何をやるか決める。

 貴弌こそ、名前を書かないのか?」

「俺も神崎と同じ様な事を考えている」

 つまり、数合わせか。生徒会副会長をやるぐらいだから、こういう事には慣れているのだろう。

他の生徒が黒板に名前を書くのを私と貴弌は横目で見ながら、他愛のない話をし、時間を潰した。


 その時はまさかあんな事になるとは思いもしなかった。




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