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デュアルフェイス 第■話

 終わったと見せかけてもう少しだけお付き合い願います。

 一年後の春、



「どうなっているんだ?」


 教慈は頭をカバーしていた手をどける。そこには見たことのあるような後ろ姿が存在した。

 真っ白なパーカーに黒いデニム生地のショートパンツ。スラリと伸びる足は細く、されど力ら強そうで、革製のブーツを履いている。

 髪は腰にかかるほどで、一部の髪は桜の花を模した装飾のついた簪によって止められている。

 そしてなによりもその全身が白かった。


「なんだ貴様? どこのセンチュリオンだ?」


 教慈を襲っていた男は不思議そうな声を上げつつも白い少女に問う。ところが白い少女は問答無用で男に向かって何かを振り上げ下ろす。

 男はそのモーションが攻撃だと判断し、即座にバックステップで回避した。


「なんだその武器!? 見えない武器だと言うのか!?」


 男の言葉に耳を貸さず、彼女はなおも攻撃に転じる。


「黙りとは失礼なやつだ! この俺を誰だと思っている! 俺は幻想の王、《ティンクルベリア》様の眷属、《オーガジョー》だぞ!」


 堂々たる姿勢で自らの所属と名を口にする男――いや、オーガジョー。

 彼はこう思ったのだろう。王の名を出せばどんな相手も退くはずだと。しかし、それは致命的な間違いだった。


「………………誰それ?」


 ようやく口から出た言葉はそれだけ。そのあと気にせず新たな攻撃が繰り出される。

 男は目を丸くしながらも慌ててその攻撃を避け、自らの手に武器を顕現させる。


「いいだろう! 物知らずの恥知らずめ! このオーガジョーのオーガアックスでお前を両断してやるぅ!」


 息巻き手に持つ斧で横に斬撃を入れるオーガジョー。完璧なまでに中断を凪いでいく。


「む!? 飛び上がるとは!」


 されど既にそこに白い少女はおらず、宙高く細い体が舞っていた。


「……そうか。これがお前の最も恐る武器か」


 そう言って何かを手に構え、眼下のオーガジョーめがけて急降下する。


「何を出したか知らんが落ちてこい! その時がお前の死ぬ時だ!」


 下段から上段への振り上げ。それは白い少女がオーガジョーにぶつかり合うであろうタイミングに合わされ振り上げられる。


「危ない!」


 教慈は思わず叫ぶ。しかしなぜか不思議な安心感があった。

 ……何故だ? 何故か彼女が勝つ気がしてならない。


「むぁまっぷぅたつだぁぁぁぁ!」


 空を切り始める斧。そこに向かって叩き落とされる何か。

 斧と何かはぶつかり合い火花を――散らすことなく斧が粉砕され、オーガジョーは「へ?」と間抜けな声を上げたあと圧殺された。

 とんと右足のみで地面に立つ白い少女。その手に持つ何かはオーガジョーのオレンジの血を浴びることによって輪郭のみが顕になる。


「……んだよあれ? ハンマー? にしては、でかすぎなんだけど」


 そこに握られていたのは巨大な槌。正確には直径九十cmある硬質な球体が握られていた。

 ゆらりと幽鬼のように身を翻し、教慈の方へ体を向ける白い少女。とても無機質な赤と金の瞳が少年の姿を捉える。

 ずりずりと左半身と右手の巨大な球体を引きずりながら教慈のもとへ歩を進める白い少女。

 教慈はただただ地面に腰を下ろしたままで、迫り来る脅威に対処することができなかった。

 ひきつる顔、されど胸には深い安堵が生まれる。

 恐怖と安心感の双方がせめぎ合う内心。そんな状態で正常な判断が出来ることもなくただひたすら胸の中で今まで守ってきてくれた存在に助けを乞う。「……助けてくれリアン」と。

 ついにたどり着いてしまう白い少女彼女は右手をゆっくりと持ち上げ始める。

 ――殺される。先ほどの絶対的に勝てない相手を殺した奴だ。きっとオレを容赦なく粉砕する気だ。

 嫌だ。死にたくない。嫌だ。嫌だ。嫌だ! 死ぬのは!


「…………立てる?」

「え?」


 いつの間にか白い少女は教慈の前に手を差し出していた。握られていたはずの球体は既に消失しており、白く細い、けれど力強そうな手のみが存在する。


「大丈夫。私敵じゃない。味方だよ」


 わずかに首を傾け優しく微笑む白い少女。

 その表情に教慈は胸を打たれこう思った。――眩しいと。


「教慈?」

「あ? ああ、済まない。手を借りるぜ」


 すっと手を伸ばし触れた瞬間、彼は理解した。


「お前がリアンなのか?」

「そうだよ。私がリアン。もう一人の貴方」


 彼女の手に引かれてゆっくりと立ち上がる教慈。目の前の白い少女――ヘーリアントの正面に立ち肩を並べた。

 オレより背が小さい。それに女の子の匂いがする。そんなことを不意に思ってしまう。


「ずっと。ずっとリアンのことをもう一つの人格だと思っていたよ」

「そう。それは私の予定通り。……違うな。思惑通り?」


 小首をかしげて訂正するリアン。その言葉を聞き教慈は言いたいことを理解する。


「そうかい。それは一杯食わされた」


 今日この日の瞬間まで自分の中に二つ目の人格が存在すると思っていた教慈。それはヘーリアントが謀ったことによる認識違い。

 ……けど、リアンがそういう風にしたっていうことは何らかの意味があるんだろう。

 十年間文字通り影で支えてくれた少女に疑いの眼差しを向けることなく、教慈は微笑む。


「なんにせよありがとう」


 言わなければならない言葉。そして、久々に心から感謝した言葉だった。


「気にしないで。当然のことだもの」

「そうか。けどさ、またこんなことになるのかな?」


 周りを見回す少年。周囲の色は反転しており、人っ子一人――動物すら見えなかった。


「安心して教慈。次誰かが貴方を襲ってきたとしても私が守るから」


 清々しいほどの綺麗な笑顔。それは無条件で相手を殺すという意思表示だった。


「げぇ、またこんな目にあう可能性があるのかよ」


 おぇと嫌がる素振りを見せる教慈。しかし、内心は喜んでいた。

 いつかドラマチックな人生を送りたいと彼は願っていた。それは例えば空から少女が降ってきたり、謎の生物に地球が襲われ過酷な世界を生き抜いたり。

 少し危険を排除したとして急遽特殊能力に目覚め能力者同士の戦いをしたり、体を覆うスーツを着て覆面をつけて夜の街を守ったり。

 彼は憧れていた。マンガやアニメのような展開に。それは存在しないと思ってはいた。それでも偶発的に奇跡的に超展開が起こってそんな目に遭わないかと密かに期待していた。

 ――そして、今その状況に立たされている。

 美少女に謎の敵。世界とは隔絶された異空間での戦い。燃えと萌えの要素が詰まった展開。

 長年待ち望んだ展開に教慈は内心喜び勇む。故に言葉が漏れた。


「この状況、最っ高にクールじゃん」


 かくして彼の人生は大きく変貌する。白い少女と出会ったことに。

 物語の歯車は再び動き出したのだ。それは二十年の月日を超え次の世代へと。


「行こうぜリアン。オレたちの明日は輝いている。決定的にな」

「そうだね教慈。貴方の人生は誰にも負けない輝きを放つよ」


 二人は歩き出す。運命は巡る。

 白い少女と母を亡くした少女の物語は終わり、その子供へと引き継がれた。

 その果ての結果はまだ白紙である。しかしいずれは埋まる。

 さぁ、救世主よ、己が信じる道を進め。愚者よ、汝が歩く道には何があるのか証明せよ。

 これにてゼロは終わり、真の物語が紡がれる。

 生き抜け。その胸の鼓動がたぎる限り。そして証を残し、今日を壊す厄災の七王を全て葬り自らの明日を切り開くのだ!




     デュアルフェイス

           第一話 マジンと出会った日

 これにて《デュアルフェイス・zero 君が居たから……》は完結となります。

 続きは本編へ――と言いたいけれど本編は一切公開しません。

 敢えて言うのであれば、読者様の手元に来る日こそが続きを読む日となります。

 そうなるように私は尽力いたしますので応援願います。


                       岡田 宗一郎

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