最終話 デュアルフェイス・ゼロ 君が居たから…… 9
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次の日、すぐに沙遊の葬式は執り行われ、地方から両家の親族が集まり彼女を弔った。
皆が涙し、棺桶の中にある亡骸を前に言葉や手紙、贈り物を柩の中に入れ別れの儀式は進んでいく。
そんな沙遊の亡骸は特別に新たな手足がつけられていた。木製の手足。啓造の計らいで知人の人形作りを趣味にしている人物から特別に譲り受け、せめて形だけでもとその亡骸を一時的に完璧な形に戻す。
一人離れた位置から椅子に腰掛けたままヘーリアントは葬式に立会い、やがて火葬場へと赴く。
連日泣いた彼女の目は腫れ上がり、けれど誰にも認知されない。唯一見ることのできた女性はすでにこの世から去ってしまった。
そう思うと寂しく思い、また一度苦しい思いをしてその身を焼かれたというのにもう一度焼かれなければならないという現実が彼女の胸を焦がす。
正直やめて欲しかった。だけどこれは日本の風習で、皆がそれを望んだ。炎に焼かれることで浄化されると……天の国に行けると言うから彼女は口を出さず静かに見届けた。
とめどなく流れる涙。枯れることを知らないその雫はボロボロと流れ落ち、足元に溜まる。
「……こんなのおかしいよ」
ふと誰かが言った。
「なんでまたママはもやされなきゃいけないの? もういっぱいもやされていたいおもいをしたのに……」
それは子供の声だった。
「……ぼくはいやだ。ぼくはゆるさない。こんなふじょーりはぜったいにゆるさない」
子供にとって慣れない意味の言葉。だが、少年は言う。
「…………ああ、私だけじゃない」
私だけじゃなかった。
半身を引きずりヘーリアントは少年の下にたどり着くとその身を優しく抱きしめる。
「……貴方も苦しいよね。腹が立つよね。こんな不条理。それと、ママを――――沙遊を守ってあげられなくてごめんね教慈」
触れることができない体に優しく声をかけ頬をくっつけるヘーリアント。
この時彼女は決めた。自分の生涯の全てをかけてこの少年を守りぬくと。
夢も希望も目的さえも二度失くした白い少女は愛しい人の子を抱きながら新たな、三度目の夢と希望と目的を得るのであった。




