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最終話 デュアルフェイス・ゼロ 君が居たから…… 2

「おかしいか? さっきまで汚いセリフを吐いていた奴の素顔がアイドルみたいな顔なのがよ……」


 スズメバチの顔の下にはあどけなさ残る青年の顔があった。声もまた全くの別物。

 かつての映画界を惑わせた甘いマスクのハリウッドスター、『ジェームス・ディーン』を彷彿させる整った顔がそこにある。


「自分でも分かっていたんだ。あっていないのさ。中身と外見が……」


 口元からぼたぼたと血を流す青年。力ない笑顔を浮かべたあと、一瞬にして捕食者の目つきに変わる。


「だからこそ変わるためにぃ! 生きるためにお前を倒すぞ! 幻想の王! アンリ・マユゥ!」


 あらぶる鷹のように両の手を開くペイルライダー。そこで僅かな憂いを見せ、


「これだけは! 使いたくなかったぁぁ!」


 自らの胸部に汚れた十指を突き刺した。

 決して自決した訳ではない。けれどただでは済まないであろうことを彼の態度が語る。


「見るがいい幻想の王! 俺は今! この瞬間からセンチュリオンであることを放棄する!」


 隆起していた甲殻は吹き飛び、その下から屈強そうな四肢が現れる。その皮膚は瞬時に硬質化し、爬虫類のような鱗となった。

 その異様な変質をアンリ・マユはもの哀しく見つめる。

 ……彼の甲殻は自らが病にかからぬようにと常に身にまとっていたもの。それを脱ぎ捨て恐ろしいはずである病原体を体に注入するなんて……。


「アンリィィィィ・マユゥ! これで終わりにしてやぁるぅぅううう!」


 血管が浮き上がり、顔中に醜いシワを作ったペイルライダーが吼えた。


「ソロモンよぉぉぉぉ! 今しばらくこの俺に力をぉぉぉぉぉ!」


 地面に脚を叩きつけ、直後ペイルライダーは水平方向へ加速する。


「これが俺の最後の七十二擊だぁぁぁぁぁ!」


 鬼気迫る。――いや、暴走特急のような肉体がアンリ・マユに迫った。命懸けの凶行にアンリ・マユは静かに口を開き彼を見据える。


「……咲き乱れろ《クレイドル・オブ・フラワーズ》」


 ペイルライダーがアンリ・マユにたどり着く前に世界は塗り替えられる。先程まで発動できなかった我式捕縛陣。それがなぜ今になって使えたか? 別にペイルライダーが瀕死だからという理由ではない。


「体調が万全の私にとってお前の術式はただの塵芥ごみだ」


 その言葉はしっかりと届いていた。だが、ペイルライダーは引くことなく、ただ最初から決めていた通りにアンリ・マユに激突する。


「おぉうらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁ!」


 右手右足、左手左足と四肢すべてを使った攻撃。速度は今までの彼とは別次元で違い、重力法則を無視したありえない動きで打撃を放ち続ける。

 それに対してアンリ・マユも人間では到底出し得ない残像すら残る反応速度でそれを防ぐ。

 刹那、アンリ・マユは胸の中で悲しんでいた。目の前の青年に対して……。





 ……ごめんね。殺そうとして。私が悪かった。

 貴方はきっと誰よりも優しい思いを持っていた。だから誰よりも死を恐れた。

 私と貴方は同じ気持ちを持っている。〝死にたくない〟という気持ちを。

 この戦いはきっと存在すべきではなかった。できることなら、手を取り合って共に生きる道を模索するべきだった。

 私と貴方は同じ存在。自らの鏡と呼べる存在に私は……。


『違うよ。おねえちゃんとこの人は違う』


 ――沙遊?


『この人とおねえちゃんは一緒じゃない。この人は自分が生きることだけのために戦った。だけどおねえちゃんは私たちが生きるために戦っている。

 だから全然違うの。――別物なんだよ』


 …………沙遊。





「そうだね。私は違う」


 一秒にも満たなかった。その刹那の時間に彼女は決意した。今この場でどうすべきかを……。

 なおも続く連撃。それはとうとう六十の末端の数字まで数えられ、六十九、七十、七十一と放たれた。

 魂を込められ打ち出される攻撃。だけどアンリ・マユはそれを防ごうとはしない。

 なぜならその攻撃は既に威力をなくしていたのだ。別に特殊な力が働いていた訳ではない。ペイルライダー自身の残された力が底を尽いていたから。


「ラスゥゥゥトォォォォォォォォ!」


 地を震わすこともない弱々しい右ストレート。それはポスンとアンリ・マユの胸に当たり彼女の胸を少しだけ揺らした。

 もう力は無かった。動けるはずもなかった。されど彼は自分で決めた、自分の意思をねじ曲げずに最後までやりきった。今まで生きてきた日々とは違って。


「ごめんね。もう終わりにするから」


 花咲く庭園に穏やかな空気が流れる。


「咲き生きろ、ローゼン・バウム(薔薇の樹)


 彼女の言葉とともに足元から薔薇の華が咲き乱れる。それは雄々しく成長し、たくさんの蔓を伸ばしていく。それは上に乗っているもの全てを吹き飛ばす力を持っていた。

 無論このような攻撃が来ることを疑り深い彼が気づかないはずがない。のだが、彼は避けなかった。また防御もしない。

 ――いや、そうじゃない。出せるはずのない七十二の攻撃を放った彼にはもう避けたり防いだりする気力がなかったのだ。

 眼下に迫る可憐な薔薇の束に彼は穏やかな視線を送りそして、


「……ジョジョの続き……読みたかったな」


 華に体を持ち上げられ蛍光色の血をまき散らしながら吹き飛んでいった。

 ここまで読んでくださった方々へ。


 面白いのかつまらないのか十人十色の感想だったと思います。

 さらにはおそらくきゅうりのくだりで気づいた方もおられると思いますが、ジョジョネタを入れさせてもらいました。

 一応言っておくと私はにわかジョジョファンです。本物のファンの方々と比べると圧倒的に好きのレベルが劣ります。

 よって謝罪の言葉を。

 荒木さん、そしてジョジョファンの皆様へ。ごめんなさい。


 さて、今回の敵であるペイルライダーもにわかジョジョファンということでかなりセリフを多用しましたが、こういうことは中学生時代に遊んだ方ならわかると思います。

 中二病を発症するとその時読んでいた好きな漫画のキャラに影響されるのでこうなっちゃったり。

 けれどたまに成功して本当にそっちの道行っちゃう人がいますよね。

 キャプテン翼読んでサッカー選手になるとか。


 雑談はここまでにしておいて続きをどうぞ。

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