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第四話 疫病VS幻想 8

「く! しぶとい!」


 思わず舌打ちするアンリ・マユ。


『おねえちゃん大丈夫?』

「問題ない。だけど最初から今に至るまでの喋り方に腹が立つ!」


 若干苛立ちを込めた言葉を吐き捨てると拳と拳をぶつけるアンリ・マユ。その拳はぶつかった瞬間に金属音を出し火花を散らした。


『それわたしも気になっているよ? なんだろうあの話し方。どこかで聞いたことがある気がする。確か、おにいちゃんとかその友達が言っていたような』


 アンリ・マユは離れた位置で姿勢を直すペイルライダーに疑問の眼差しを送る。その視線に気づいたペイルライダーは肩で息をしていたが、毅然とした態度で応じた。


「どうした? 俺の何かが気になったか?」

「いや、お前の話し方が腹立たしいと思っただけだ」

「は! 嫌だねぇ! これだから文化を知らない箱入り娘ちゃんは……」


 ペイルライダーは両足を揃え背中をのけぞらす。そこで右手を自らの額に指を立てながら置くと独特の姿勢をとる。


「俺の話し方が気に入らない? それはお前に文化がないからだ王! だが、あえて言おう!」


 怪しい眼光で白い少女を見据え彼は口開く。


「――俺は! ――俺はDIO様に憧れているんだ!」

「でぃおさま?」

「違う! DIO様だ!」


 どこのどのような発音が気に入らなかったのか訂正を入れるペイルライダー。


「俺は初めてあの方を見たときにシビレ憧れた。あの方の生き方は俺の生にとってとても意味のあるものだった。

 そう! その方こそDIO様! 悪の中の悪! いずれ一つの境地に立つべき俺が目指すは彼のようになるべきだと悟ったのだぁ!」


 雄々しいセリフ。それは誰が聴いても納得するであろう言葉。


「DIO。そんな奴が居たなんて……」


 彼をここまで支える存在。それはきっと、とてつもなく強い存在なのだろうとアンリ・マユが悟る。ところが意外なところから変な声が漏れた。

 それは自分の体の中に居る沙遊が漏らした声。その声に彼女は耳を傾けた。


『DIOってたしかおにいちゃんが読んでいたマンガの中に出てきていた悪役キャラだったはず……』

「…………え? そうなの?」

『うん』


 思わず漏れた疑問の声。そこでアンリ・マユは確信を得るために瞬時に作戦を練り、沙遊に相談する。

 沙遊は自身の記憶にある情報を頼りにそれをアンリ・マユに教え、彼女は実行に移す。


「――すぅぅぅぅはぁぁぁぁぁ」


 急に構えを取り、指先を立てるアンリ・マユ。その際にあえて変わった呼吸をし始める。その様子を見ていたペイルライダーが急に険しい顔をし始めた。


「なんだ? その構えは? ……まさか」

「驚くことはない。私は今、〝波紋〟の呼吸をし始めたのだ」

「何!?」


 波紋と言う単語を聞いた瞬間彼は飛び上がる。


「行くぞペイルライダー!」


 駆け出すアンリ・マユ。目指すはペイルライダーの元へ。迫り来る相手に対してペイルライダーも臨戦態勢に入る。

 交錯する視線。そこでアンリ・マユは沙遊から聞いた決め台詞を言う。


「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート! 刻むぞ血液のビート!

 喰らえ! サンライトイエロー(山吹色の)オーバードライブ(波紋疾走)!」

「そんなものが通じるかぁぁJOJO!! ――っっはぁ!?」 


 言ってからしまったという表情をするペイルライダー。だが時すでに遅し。アンリ・マユも沙遊も確信を得た。

 ……こいつ、マンガの敵役をイメージして戦っていると。


「ぶるぁぁぁぁああぁぁ!?」


 容赦なく振り抜かれた右拳はペイルライダーの顔正面にめり込み、その体を吹き飛ばす。

 クラッシュした車のように上下側面をぶつけながら飛んでいき、最後には無様に地面に転がった。

 突き出されたアンリ・マユの右拳にはおびただしい量の返り血がついていた。だが、不審な点がある。それは手に直接付いているのではなく、手の周りの何かに付着していた。


『おねえちゃんの手……』

「これ? これは多分ガントレットだと思う。このガントレットがアレの最も嫌いな武器だったみたい」

『武器?』

「そう。武器。私のセンチュリオンとしての能力は想像したものを構築する能力。中でも戦闘で使うのは相手の一番嫌いな武器を構築して戦う力」


 それが、それこそが彼女が幻想の王たらしめる能力、幻影の装備イリュージョン・ラストゥングだった。

 アフラ・マズダしかり、ペイルライダーしかり、センチュリオンには固有の能力が存在する。

 それは多種多様で、可能性さえあれば存在するほどの数だ。


『ガントレットって守るものだよね? それがなんであの人の嫌いなものだったんだろう』

「ガントレットは守る以外に直接殴ることにも使える。きっとあれは他者に殴られるのが嫌いだったんだろう」


 右手の返り血を振り捨て一息つく二人。


『これで、お父さん助かるんだよね』

「うん。終わったよ。啓造も。他の住人を苦しめているのも。元凶は今倒したからね」


 戦いは終わった。当初劣勢だったアンリ・マユは一人の少女の介入によってその身を救われ、また彼女も多くを救った。


「さ、病院へ行こう。啓造が目を覚ましてくれるはず」

『うん!』


 これが白い少女と母を亡くした少女の出会いと結末。

 二人は病院に戻り、回復する啓造を見て安堵する。そして、これからは五人家族として生きていく。

 いつまでも幸せに。アンリ・マユと沙遊はいつまでも幸せに暮ら


「…………UREEYY」


 異様な気配にアンリ・マユは即座に振り返る。そこには、顔を潰されたはずのペイルライダーがいつの間にか立っていた。

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