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竜騎機将ナナカレイ  作者: 鈴神楽
変革編
9/17

恋人?

「あちき、今日から二日間出撃できないからね」

 バハムートのオペレータールームに七華の宣言が広がる。

「法事か何か?」

 その言葉に七華は夢見る少女の様な顔をして言う。

「あちきの彼が、こっちの世界に来るの。そして明日は二人っきりでデートなんだー」

 その瞬間、バハムートの高度が落ちた。

「何やってるんだ。ふざけてないでちゃんと元の高度に戻せ」

 十斗が平然と言う。

 オペレーター達は、驚きの為の操縦ミスによる降下のリカバリーを急ぐ。

『お前恋人居たのか?』

 本当に不思議そうにレイが言う。

「うん。ブン=セさんって言って、あちきより三歳年上なの」

 オペレーターの女性達が小声で呟く。

「七華ちゃんより年上って事はロリコンね」

「間違いないわ」

 次の瞬間、七華がその後ろに立っていた。

「今ブンの悪口言ってなかった?」

 慌てて首をふるオペレーターの女性。

「どうやって知り合ったの?」

 双葉のフォローに再び夢見る乙女モードになった七華が言う。

「運命的な出会いだよ。お兄ちゃんに頼まれて異世界に行った時に邪竜を退治したけど、まだ生きていて、あちきに最後の攻撃をしようとしたの。そこを自分の身を挺して庇ってくれたのがブンさんなの」

 それには、オペレーターの女性が興味をひかれる。

「その後、好きな人居ますかって聞いたら、付合ってくれないかって言われたの」

 盛り上がりを迎えたその時、茶々が入る。

「子供扱いされてるのが解らないのかねーこのお子様は」

 一刃が七華の後ろに立っていた。

 その後ろには数人のこの世界の人間ではありえない髪の毛の色をした人達が居た。

 その中でも清楚で神秘的な女性が頭を下げる。

「はじめまして。私はハジメと言います」

 男性スタッフの視線が集まるが、一刃が一言。

「俺の女だ手を出そうとしたら、ただじゃ済まないぜ!」

 一気にひく一同。

「もーカズバは」

 そー怒りながらも満更ではない様子のハジメ。

「ブンさん。会いたかったです」

 ハジメの後ろにいた好少年という雰囲気の少年に抱きつく七華。

「僕もだよナナカ」

 頭をなでる、その少年、ブン。

 その二人の雰囲気をみて、五郎が呟く。

「あれじゃ恋人同士って言うより、兄妹だよな」

 次の瞬間、五郎の頬に傷が出来ていた。

「恋人同士なの!」

 七華は、手に持っていたデート用のパンフを投げつけていた。

「そんなに確認しなくても良いだろ。僕とナナカが判っていれば」

 その言葉に嬉しそうに頷く七華。

「おい。七華、お袋にこいつ等連れて行くって伝えておいてくれ」

「まさか遅くなるの?」

 ブンを見ながら寂しそうに言う七華。

「我慢して、僕達としても、邪神竜と戦う為に必要な物を買いに来たのが本命なんだから」

 ブンの説得に詰まらなそうな顔をする七華に、ブンは耳の側で呟く。

「その代わり、明日は、ずっと一緒に居られるよ」

 途端に嬉しそうな顔になる七華。

「わかったお母さんに伝えてくる」

 駆けて行く七華。

 七華が消えたところで一刃が言う。

「七華をからかうのは止めろよ」

「ふざけてるつもりはありませんけど」

 ブンがそう言った時、一刃がその胸倉を掴む。

「聞いてるぞ、邪神竜を倒した後の楽しみだって言ってたらしいじゃねえか! 俺達は、今生きてるんだそんないい加減な気持ちで七華に言い寄るんじゃねーよ」

 その言葉に殺気すら感じた。

「カズバ、止めて!」

 ハジメが止めに入る事でその場に収まった。

 そして一刃が十斗に言う。

「とにかく前助っ人代として貰う約束だった装備を頼む」

 十斗が頷く。

「解ってるさ」

 そして一刃達が荷物を受け取って去った後、オペレータールームは滅多に無いネタに沸いていた。

「何か面白い展開よねー」

「そうそう。一刃さんって意外と妹思いなんだ」

「でもでもブンさんってカッコイイじゃない。七華ちゃんと今はまだ深い関係じゃ無かったらあたし今夜にでも」

「大人の魅力で攻めるのね」

「そうそう」

 十斗が詰まらなそうな顔をして言う。

「おーい私は、お前等にそんなゴシップ記事的話をさせる為にお金払っているんじゃないぞ」

「「はーい」」

 鶴の一声でオペレーター達が元の仕事に戻っていくが、例外が少し居た。

「だから、七華って意外と落ち込みやすいんだって、惚れっぽいくせに男運悪いほうで、ブンさんで要約と長続きしてるの。それまでは失恋しては落ち込みまくってたから」

 三美の言葉に九菜が頷く。

「七華ちゃんってそっちの方弱そうだからね」

 そして九菜は十斗の方を向いて言う。

「万が一、七華ちゃんが失恋した場合、戦力低下が考えられます。ですから七華ちゃんの恋をサポートする特殊班の発足を提案します」

 十斗は大きく溜息を吐いて言う。

「はいはい。予算出してやる。人員も通常業務に関係なければ自由に使って良いから頑張ってくれ。私はノータッチだ」

 戦線を早くも抜け出す十斗。

「予算と人を確保したわ。それでは作戦名『七華ちゃんロリ的魅力で、貴方もロリコン作戦』始動よ」

 何時に無く萌えてる九菜。

「親友の恋路を助けるのは当然」

 直ぐに参戦する三美。

『まーパートナーだからな』

 レイも消極的に参戦。

「オペレーター代表として」

 控え目に双葉も参戦。

「あのー私も良いですか?」

 恥しがりながらレインも参戦。

 ここに『七華ちゃんロリ的魅力で、貴方もロリコン作戦』のメンバーが揃った。



 七華が部屋で明日の準備を嬉しそうにしていると八子が部屋に入ってくる。

 七華は嫌な予感を覚えて先制攻撃を放つ。

「コが頭につくゴム製品はいりませんからね」

 八子は頷く。

「解ってるわ。私の娘だもの」

 珍しく物分りがいい事を驚きながらも七華が振り返ると、折りたたまれた一人用ビニールシートを差し出される。

「これどうするの? それも一人用なんて?」

 それに対して八子が微笑みながら答える。

「外でやりたくなった時用。服汚したらその後のデートが上手く行かないでしょ」

 崩れ落ちる七華。

「私の娘だもの、十五歳で子供産む位気にしないでしょう?」

「いい加減にして!」

 怒鳴る七華。

「どうしたんです?」

 泊まって居たブンが覗きこんでくる。

「何でも無いんです!」

 慌てて押し返そうとする七華。

「そうだ、ブンさんうちの娘はバージ……」

「わーわーわー」

 意味不明な大声を出す七華に不思議そうな顔をするブン。

 七華の意味不明な大声は一晩中続いた。



「にしても、映画なんてべたな展開よね」

 次の日(日曜日)、七華とブンを特殊指令車(地上とバハムートを結び、地上サポート班の指示を出す為の車)に乗って尾行する七華(省略)メンバー。

「気付かれませんか?」

 レインが心配そうに言うと九菜が自信満々言う。

「任せて、新装備の動物型監視装置を使ってるから大丈夫よ」

 その次の瞬間、動物型に偽造された監視装置から送られてきていた映像がブラックアウトする。

「七華ってタイマーセットのカメラだって気付けるから無理だと思うよ」

 三美の言葉に舌打ちをする九菜。

「まーいいわ。ここはバハムート一のヘッドオペレーターの双葉さんに頑張ってもらいましょう」

 そういって双葉にヘッドフォンを着けさせる九菜。

「物凄い音ですよ?」

 双葉の抗議に九菜が言う。

「この音の中から七華ちゃんの声を拾い出して」

「無茶ですよ」

 言い返す双葉の肩に手を置き、九菜が言う。

「貴方なら出来る」

『こんなんで上手く行くのか?』

 レイがぼやいた。



「ナナカ一つ聞いていいかい?」

 一緒に町を歩くブンの言葉に七華は緊張して答える。

「な、なんですか?」

「僕はこっちの言葉よく解らないが、エイガと言う物を楽しめるのだろうか?」

 その言葉に固まる七華。

「そうですよね……」

 そう呟き俯いてしまう七華。



「やっちゃったねー」

 双葉が、選別した七華達の声を特殊指令車の中で聞いた三美がのんきに言う。

「困ったわね。このままギスギスした展開になってしまうわね」

 九菜が思案する。

「行き先を水族館に変えたらどうかな?」

 そう言って三美が、車の外にある水族館の看板を指差す。

「ナイス、アイデア!」

 そして九菜が動き出す。

「こちらゼロナイン、ナインナインに通達、水族館のペアチケットを手に入れ偶然を装い、ターゲットの手に渡る様にするのよ」

『ナインナイン了解』



「気にしなくても良いよ。ナナカが楽しいんだったら僕も嬉しいよ」

 そうフォローするブンだったが、七華は落ち込んだままだった。

 そんな時に、イルカの着ぐるみが近づいてくる。

 そしてクラッカーを鳴らす。

『おめでとうございます。貴方達は、ここを通過した一万組目のカップルです。記念にこの水族館のチケットをプレゼント』

 驚くブンの代わりにそのチケットを受け取る七華。

 笑顔でブンに言う。

「水族館の方が面白そう。そっち行こう」

「そうだね」

 そして二人は、水族館に向かっていく。

 途中七華が戻ってきて言う。

「九十九さん。九菜さん達に言っておいて、変なちょっかい出してきたら許さないって」

「ナナカどうしたんだい?」

「何でも無いです」

 ブンに呼ばれて、慌てて戻っていく七華であった。



『ばれていたみたいです』

 イルカの着ぐるみを着ていた九十九からの通信に九菜がうなる。

「落ち込んでいても七華ちゃん鋭いわね」

「あのー止めた方が良いのでは?」

 レインが控えめに言うが、九菜は全く気にしない。

「しかし、あたし達は諦める訳にはいかないの。この作戦にはDSSのひいては世界の運命が掛かっているのですから」

 熱血する九菜であった。



「九菜さんって意外と色恋沙汰すきなんですね」

 バハムートの司令室で五郎が、十斗の前に座って言うと十斗が大きく頷く。

「まーな高校時代からあんなだ。その度に付合わされていたよ」

 その時、警報が鳴る。

『東京湾に竜騎機兵が出現しました!』

 その言葉にオペレータールームに緊張が走る。

『政府から連絡がありました、ブルーブラッドから要求が来ています。この国も王政に戻し、全権を天皇陛下に戻せと』

 十斗が溜息を吐く。

「今の天皇に政治を動かせるわけ無かろうが。政府との交渉は私がやる。全員、竜騎機兵殲滅の準備を行え」

 慌ただしく動き出すバハムートであった。



『竜騎機兵出現です。至急お戻りください』

 特殊指令車でその報告を聞いた九菜が少し思案した顔になって言う。

「東京湾だったらこの特殊指令車で現場に向かうわ」

 そう言って、運転席に伝える。

『ナナカを呼び出さないとな』

 レイの一言に、双葉とレインが固まる。

 九菜も躊躇していると、三美が平然と言う。

「竜騎機兵でしょ? イフシゼロだけで大丈夫だよー」

 その一言に九菜も頷く。

「そうね、元々休みのあの子を引っ張り出す必要は無いわね」

「そうよね人の恋路邪魔をすると馬に蹴られるっていうしね」

 双葉も同意する。

『しかしそれでは我が仕事出来ないでは無いか』

 そういったレイにその場に居た全員が怖い視線を向ける。

 半歩下がってレイが冷や汗を垂らしながら続ける。

『まー偶にはゼロに手柄を譲ってやるのも良いか』

 そして、特殊指令車は東京湾に向かう。



「はー? 七華がデートを続けてる?」

 マサムネのコックピットに座る五郎が聞き返す。

『はい、今回はイフシゼロで十分だという、九菜博士の判断です』

 オペレータの言葉に舌打ちをする五郎。

「九十九も居ないって言うのに、これだから女は駄目なんだよ」

『何か言った五郎』

 スピーカーから双葉の声がする。

「お前外に出ているんじゃ?」

 五郎が冷や汗を書きながら聞く。

『特殊指令車だから、こっちでオペレータールームに居るのと同じ事が出来るの。それより今なんか聞こえた気がするんだけど?』

「気の性だ。竜殲滅部隊マサムネゼロ、晴晴五郎出る」

 双葉の問い返しに五郎は慌てて出撃する。



「五郎の奴、戻ったら問い詰めてやる」

 双葉が特殊指令車で、各種処理を制御しながら呟く。

 九菜が、東京湾に出た竜騎機兵の情報を確認しながら言う。

「サーペント、海竜タイプの竜騎機兵。初めてね」

 その呟きにレインが答える。

「竜人界もこの世界と一緒で海が広い為、竜がかなり自由で、あまりお金に不自由してない筈なんですが?」

「でもお金全く要らないなんて事無いよね?」

 三美の質問にレインが答える。

「ええ、でも地上で暮らす竜に比べて格段少ないですから、無理にこっちの世界に来て稼ごうとする程じゃ無い筈です」

「うーんそれじゃあどうしてだろうね?」

 首を捻る三美に頷くレインであった。



 竜騎機兵サーペントが暴れるのを見渡せる喫茶店で十三がコーヒーを飲んでいる。

「呑気だな、あんな雑魚で霧流が操る竜騎機将を倒せると思っているのか?」

 向かいに座る百剣の言葉に十三が首を横に振る。

「別に負けてもらっても構いません。今回は海で使える竜騎機兵のテストでしかないのですから。まーそう言う意味では、エース君のコネは助かりましたがね」

 その言葉に百剣が言う。

「いい面の皮だな」

 そして十三が続ける。

「言ったでしょブルーブラッドなど単なる捨て駒、使えるだけ使わせてもらいますよ。私が世界を改変する為にね」

 その言葉に危ない臭いを感じ取る百剣が、鋭い目付きになる。

「言っておく俺は、八刃の一人だ。異界とこの世界を繋げなんて事を考えているのなら殺すぞ」

 十三は恐ろしく冷たい目をして答える。

「安心してください。私は私の力でこの世界を変えます。その為にも十斗には戻ってきてもらいます。こっちの世界にね」

 二人の視線がぶつかり合う中、バハムートが上空に到着する。



 発進口で十二支が呪符を束ねて呪文を唱える。

ちゆういんぼうしんしんゆうじゆつがい。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』

 酉の呪符に手を当てる。

飛翼ヒヨク

 そして呪符は、一羽の大きな翼を持つ鳥に変化する。

 十二支はその鳥に乗り空に飛び出す。

 その後を追う様にゼロも飛び出す。

「前回みっともない所みせた借りを返すぞ!」

『はい』

 十二支とゼロは今日も元気一杯であった。



「安倍十二支が、目標地点に到着しました!」

 オペレーターの言葉に十斗が頷く。

「竜武、弥生発射準備」

「竜武、弥生型発射装置に装填して下さい」

 オペレーターの通信にそって、ハンガースタッフ達がガイドする中、一本の巨大砲台にでかい竜武弥生型が入った竜武玉がセットされる。

 オペレーターは、竜武玉が巨大砲台に格納された事を確認した所でアナウンスを流す。

「これより、竜武弥生型を発射します。各員対ショック体勢を取ってください」

 そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標、上空を飛ぶ十二支とマークが重なる。

「竜武、弥生発射!」

「竜武、弥生型発射します!」

 オペレーターが、プラスチックでカバーされたスイッチをカバーを叩き割りながら押す。

 竜武玉が巨大砲台から発射される。

「距離カウントします。2000・1600・1200・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」

 十斗が円形の専用ハンドルを握り締める。

「真竜開放魔方陣展開」

 十斗がレバーを大きく回す。

 竜武玉の外殻が回転しながら割れる。

 そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。



 後方から迫る魔法陣にゼロが接触する。

『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、ゴールデンワイバーン』

 十二支の呪文に答え、ゼロがその体を金色に光らせながら巨大化し、その巨大な翼をはためかせる。

 金色のブレスが十二支を包むと十二支の姿が消える。

 その巨大な翼はそのままに人のシルエットを形成する。

 その間に後方から迫ってきた装備がゼロの全身を覆った。

 そしてバハムートを背負い、

『望みの船から飛び立った』

 竜騎機兵達を指差し、

『穢れし欲望を打ち破る者』

 両手で印を作り、

『高尚なる印』

 両手を腰に当てて見下して宣言する。

『竜騎機将イフシゼロ』



「それで敵は何処だ!」

 イフシゼロのコックピットの中で十二支が言う。

『十二支くんが居るほぼ真下。でも深度五十メートルだから流石に攻撃は届かないわ』

 特殊指令車から双葉通信してくる。

「それじゃあどうすれば良いんだ?」

 十二支がぼやく。

『簡単だ! 町を攻撃する為には、海面まで出てこなければいけない。そこを狙えば良いんだ!』

 五郎の自信たっぷりの声が聞こえてくる。

『竜騎機兵サーペントアルファー、上昇してきます』

 双葉が報告する。

『噂をすればなんとやらだ! 行くぞ!』

「僕等も行くぞ!」

『はい』

 そして、イフシゼロは、滑空する。



「どうしたんだいナナカ?」

 七華と一緒に水族館に来ていたブンが何か遠くを見ている七華に問いかける。

 七華は慌てて言う。

「何でもありません」

 その時水族館にアナウンスが流れる。

『すいません、東京湾に竜騎機兵が現れたそうです。この施設に危険が及ぶ可能性がある為、至急避難して下さい』

 その言葉に困った顔をする七華。

 そんな七華を見てブンが言う。

「行って来ると良いよ」

 その言葉に七華が戸惑う。

「でも五郎さんや十二支さんもいるからきっと大丈夫だと……」

 ブンは首を振る。

「仲間を信用するしないじゃないよ。仲間が一生懸命戦っているのに自分ひとり遊んでられない。仲間ってそんな物じゃないかい?」

 七華は少し躊躇した後、頷く。

「だったら行って来るんだ」

 七華は凄く名残惜しげな顔をしてから言う。

「直ぐ戻ってきます!」

 そう言って駆け出す七華。

 七華が去った後、一刃が現れる。

「何時から付けて居たんですか?」

 ブンが聞くと一刃が頭をかきながら言う。

「妹とのデートの後を付けるほど無粋じゃない。タイムリミットだよ。時間が無いと思ってたがもう戻らないと不味いみたいだ」

 その言葉にブンは少し困った顔をする。

「あー言った手前、僕だけ残るわけには行きませんね。ナナカを待って居たかったんですがね」

 一刃が言う。

「前も言ったが、俺は人の妹を青田刈りだと言う奴と付き合せるつもりは無いぞ」

 その言葉にブンが首を振る。

「その言葉は撤回します。ナナカは本気でまっすぐでいい子です。今すぐにも恋人になりたいくらいですが、僕にもやる事がありますからそれが終わるまで待っていてもらうつもりです。これで良いですか?」

 その言葉に一刃が睨みながらも言う。

「まー、青田刈りよりは増しだな。しかし助平な事をしてみろ殺すぞ!」

 その言葉に腹を抱えて笑うブン。

「貴方だけには言われたく無かったです」

 顔を赤くしながら一刃が言う。

「それじゃあ戻るぞ俺達の戦場に」

 ブンは力強く頷く。



「当たらない」

 大きく舌打ちをする五郎。

『隊長、相手はこちらの攻撃射程が解っているみたいです』

 隊員の言葉に五郎は内心頷く。

 五郎も感じていたのだ、竜騎機兵サーペントがこちらの射程に入る直前に深度を深くする事を。

「今までの戦闘データからとったにしては、正確過ぎるぜ」

『キクイチモンジの量産の為にかなり情報を公開したそこから漏れたんだろう』

 十斗の通信からの答えに軽く溜息を吐きながら五郎が言う。

「仕方ない、少し無理するか?」

 海面すれすれまで高度を下げるマサムネ。

『隊長さすがにそれは危険高度です!』

 その言葉に五郎が不敵な笑みを浮かべて答える。

「だからこそ意味があるんだよ!」

 そして、こっちの接近を感知して深度を深くする竜騎機兵サーペントをロックオンする。

「いけロンギヌススピア!」

 マサムネから発射されたロンギヌススピアが竜騎機兵サーペントに命中する。

「いまだ食らわせてやれ!」



『いまだ食らわせてやれ!』

 通信機からの五郎の声に十二支が頷く。

「これで決める!」

ちゆういんぼうしんしんゆうじゆつがい。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』

 寅のボタンを押し、寅の護符が出るとゼロが何時もの様に竜魔法をかける。

『ゴールデンドラゴンパワー』

 そして十二支が呪文を完成させる。

『雷寅』

 生まれた雷の虎の式神は、海水で拡散するが、ロンギヌススピアがその電撃を集め、竜騎機兵サーペントに大ダメージを与える。



「決まりだ。もう相手に戦闘を続行するだけの力は無いな」

 バハムートのオペレータルームで勝利を確信した。

「竜騎機兵サーペントアルファー深度をどんどん深くしていきます。そのまま湾から離れて行きます!」

 十斗が舌打ちをする。

「逃げるつもりだな」

 その時、発進通知が入る。

『キクイチモンジワン、晴野九十九出撃します』



「何か方法が無いのかよ!」

 五郎がコックピットの壁を叩く。

『荒れているな』

 九十九が通信してくる。

「遅いぞ!」

 怒鳴る五郎。

『八つ当たりするな。遅れた代わりは、ちゃんとある。七華ちゃんこの下だ!』

「七華がきてるのか?」

 五郎が呟いた時、九十九の乗るキクイチモンジの羽根から七華が飛び降りる。



『竜武遠距離射出準備終了しました』

 双葉の通信に十斗が頷く。

「竜武、如月射出準備」

『竜武、如月型射出体勢に移行して下さい』

 双葉の通信にそって、ハンガースタッフ達が退避、竜武如月型を格納した竜武玉ブースター付きで発射台に移動される。

 司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標地点にマークを合わせる。

「竜武、如月射出!」

『竜武、如月型射出します!』

 竜武玉は特殊射出用デッキから射出されて、ブースターで七華が居る地点まで飛ばされる。

『高度カウントします。8000・6000・4000・2000・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします』

 十斗が二本突き出した専用レーバーを握る。

「真竜開放魔方陣展開」

 十斗がレバーを両側に開く。

 竜武玉の外殻が割れる。

 そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。



 七華はレイを空中の魔方陣に向けて投げつける。

『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、レインボードラゴン』

 その呪文に答え、レイは、魔方陣からの漏れる竜人界から力を己が体に変換し元の姿に戻っていく。

 そしてその口から光の吐息が放たれ、七華を覆う。

 七華の姿が掻き消る。

 それと同時に、四足をついた状態だったレイが、直立し、まるで人間の様な体型になり、竜武の装備が体を覆っていく。

 竜騎機将ナナカレイは落下勢いをそのままに海中に入っていく。



「時間が無いからとっとと決めるよ!」

 ナナカレイのコックピットの七華がそう言って呪文をとなる。

『血の盟約の元、七華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀』

 竜牙刀は銛の形で現れる。

『ドラゴンヒール』

 レイの竜魔法が銛の形をした竜牙刀に籠められる。

 七華は思いっきりそれを竜騎機兵サーペントに投げつけ、命中させた。



「無事返還終了しました」

 バハムートのオペレータルームでレインが十斗に報告する。

「解った。それより九菜はどうした?」

 十斗の問いにレインが困った顔をする。

「まだ下でナナカさんの恋の行方を見守っていると居ると思います」

 その答えに十斗が大きく溜息を吐く。

「懲りない奴だな」



「……待っててくれなかったんだ」

 急ぎ足で帰ってきた七華がそこで落ち込む。

 その時、案内係の女性が近寄ってきて言う。

「もしかして霧流七華ちゃん?」

 その言葉に七華が頷くと、その女性は一つのイルカのペンダントを七華に渡す。

「これ彼からよ、ペアのアクセサリーでもう一つは彼が持っているそうよ」

 明るい顔になる七華であった。

 そしてそのイルカのペンダントをつけて笑顔で家路に着く。



「上手く行ったみたいね」

 九菜が満足そうに頷いたその時、九菜達が乗る特殊指令車が揺れた。

「どうしたの?」

 九菜が双葉に確認しようとした時、三美の携帯が鳴る。

「七華どうしたの?」

『忠告はしといたよ』

 それだけ言ってとっとと携帯が切れる。

「忠告って?」

 三美が首を傾げるが、双葉の顔が青褪める。

「この車、氷で固められています」

 その言葉に他のメンバーも顔からも血の気が引いた。



 九菜達が救出されたのはそれから三時間後の話だった。

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