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竜騎機将ナナカレイ  作者: 鈴神楽
誕生編
6/17

幼馴染?

「僕の竜騎機将の竜はまだなんですか!」

 十二支がバハムートの司令室で十斗に詰め寄るが、十斗はまるで自分の爪を切りながら言う。

「まだだよ、レインも頑張っているが、やはりダークスタードラゴンに対抗できるほどの竜は早々異界に出てこない。レイは本当に特例なんだよ」

「でしたら、いまの竜騎機将のパイロットを僕にして下さい。前回は不覚をとりましたが次やれば確実に結果をだして見せます!」

 十二支がしつこく食い下がるが、十斗は全然気にせず答える。

「十二支くんとは、レイも今ある竜武如月も合わない。元々陰陽師は前面に出て戦うタイプじゃないだろう」

 十二支はその言葉には納得するしかなかった。

「とにかく一刻も早く頼みます」

 そう捨て台詞を残して去っていく十二支。

 溜め息を吐く十斗。

 そこに九菜が入ってくる。

「また?」

「まただ。奴にしてみれば、陰陽師の業が、特別な一族のみに伝えられる人外の技に劣っているって思われると考えているんだろうよ」

 九菜は席に着きながら言う。

「実際の所、大した物よね、通用しなかったけれどもあの術は七華ちゃんが使ったどの術よりもパワーが上だったわ」

 十斗も頷く。

「ナナカレイが前衛向きとしたら、奴は間違いなく後衛向きになるだろうな」

「次の竜はワイバーンの様な飛行型だから、遠距離からの術攻撃向きだし、ぴったりの人材よね」

 九菜も同意すると十斗はレインからついさっき届いたばかりの次の竜の資料を見る。

「ワイバーンの上位種スカイドラゴンそれも光属性が非常に高いゴールデンスカイドラゴン、純粋な光属性能力だけならレイを超すとも思われる逸材」

「条件に完全一致じゃない。こんな良い話しがあるんだったら何で言ってあげないの」

 九菜の言葉に十斗が机の上に資料をほおり出して続ける。

「問題はこのお嬢ちゃんとレイ関係だな。それ次第では諦めるのも仕方ないな」

「レイとの関係?」

 九菜が首を傾げた。



 学校からお迎え用飛行機にのって七華と三美がバハムートにやって来た。

「ナナカも大変だね、毎日の様にバハムートに来てテストや何やらやってて」

「あちきは何故かミミも何時も一緒の気がするよ」

「そーだっけ」

 そんな呑気な会話をしながら、移動していると、三美が五郎の姿を見つける。

「お兄ちゃんだ! おーい」

 手を振ると向こうも気付いた。

「お前達なんか急ぎの用事あるか?」

 五郎の問いに三美が七華を見る。

「テストはあるけど、急ぎのは無かったよ」

 それを聞いて三美は七華を連れて五郎の側に行く。

「どんな面白い事があるの?」

 三美の言葉に五郎が自信満々に答える。

「ソードに代わる新型量産機が今日納入されるんだよ」

 しかし三美と七華の反応は低かった。

「あーキクイチモンジだっけ、竜騎機将オケンセンとの戦いで実戦配備中だったソード全機とブレイドが壊れて、バハムートの生産ラインは竜武とマサムネに取られてるからって、技術提供を餌に外部発注した奴だよね」

「新しい戦闘機なんて見ても詰らないよ」

 五郎が瞳から炎が上がりそうな表情で言う。

「お前達には解らないのか。新型機だぞ新型機。男だったら燃える展開だろう」

 しかし三美と七華は平然と答える。

「あたしは女の子だもん」

「ブレイドの量産型だよね? 確か小型ドラゴンキラー、ドラゴンファングを装備しているけど、基本性能はソードと大差無いって聞いてるよ」

「お前等な!」

 そういきり立つ五郎の肩を叩き、人の良さそうな男、五郎の副官でもある晴野九十九ハレノ ツクモが言う。

「お前の妹が言うとおり、女性にはわかり辛い世界だよ。七華ちゃん基本性能の話しだけど、ソード自身が特殊技術を使ってあげてあるんで、そうそう上がる物じゃないんだよ。正直今回のキクイチモンジの件は最後の最後まで外で作らせるか揉めた話だからね」

 三美が首を傾げる。

「どうして外で作っちゃ駄目なの?」

「DSSの技術って竜騎機兵を初めてに作った百年に一度の天才、曇集四門博士の技術に、自分の興味があるものしか作らないから学会から徹底的に無視されてる不出世の天才雪森九菜博士の合作みたいな物だからね。世間に出回ってる戦闘機の性能を遥かに凌駕してるの。竜騎機兵相手するのには丁度良いけど、これが通常兵器相手に使われるのは世界の軍事バランスを崩しかねない物なの」

 七華の説明に頷き、九十九がフォローを入れる。

「その為、今回の外注は、世界の指折りの軍事国家の参加の業者十社すべてに同時発注して、軍事バランスが崩れない様にしたって話だよ」

「あー面倒な話しだぜ」

 そう言いながらまだかまだかと、新型量産機の到着を待つ五郎。

「さっきの話に戻るんだけど、結局外部に発注したけど、キクイチモンジに用いられてる技術だけでは嫌だと蹴られたって聞いたけどどうしたの?」

 七華の言葉に九十九が肩をすくませて答えようとした時、それが来た。

 一見するとマサムネと見間違うスタイルの戦闘機が入ってくる。

 その後方から、基本スタイルは近い物があるが、あきらかに元のソードやブレイドの形式を残したキクイチモンジの連隊が入ってきた。

「あれってお兄ちゃんのマサムネじゃないの?」

 三美の言葉に九十九は首を横に振る。

「あれは、マサムネの前に五郎専用機として設計されていたADX_4ムラサメだ。キクイチモンジの製造の引き換えに設計図等が提供されていると聞いていたが、もう完成してたのか」

 完全にムラサメが止まった時、コックピットから一人のアメリカ人が降りてくる。

「久しぶりだなゴロウ」

「エース。まだ飛行機に乗ってたのかよ」

 二人の視線がぶつかりあう。

 七華が視線だけで問いかけると九十九が諦めた表情で言う。

「私と五郎が自衛隊を辞めて傭兵になる前、つまり自衛隊で戦闘機乗りをやっていた頃に在日米軍に居た奴で、やたら五郎に突っかかった米国空軍パイロットエース=M=サンダーだ。傭兵時代にも何度かやりあう嵌めになった事がある」

「つまりお兄ちゃんのライバル?」

 三美の軽い台詞に九十九は少し躊躇した後頷く。

「そういっても問題ないだろう」

 そしてエースが嘲るような表情になって言う。

「そー言えば、お前この頃小学生の小娘の露払いを遣ってるんだってな」

「小学生?」

 七華が反応するが、五郎は構わず反論する。

「お前はまだ戦う理由を勘違いしてるのか!」

「己が正義の為に己が剣で戦う、何の間違いがある。私は新たな剣を、お前に対抗出来るだけの剣を手に入れた」

 そう言ってエースは、ムラサメを示す。

「今までお前等に頼らざる得なかったが、このムラサメと新たに製造されるキクイチモンジがあれば我々だけで竜騎機兵に対抗出来る!」

 その言葉に七華が言う。

「それで竜騎機将とどう対抗するの?」

 エースは声をかけた七華、竜騎機将ナナカレイのパイロットを見て言う。

「貴様等も負けといて何を言う!」

 七華は呆れきった顔をして言う。

「それは余り関係ないよ。貴方達に対抗手段があるかどうかの話し。はっきり言って経験値も竜人界とのコネも無い貴方達には、ダークスタードラゴンの盾すら敗れないよ」

 何も言い返せないエース。

「ついでに言えば、ムラサメって五郎が新しい機体マサムネに乗ったから余った設計図、つまり貴方は五郎のお下がり貰って喜んでるんだよ」

 止めを刺す七華。

「うるさい、アメリカ軍の技術は世界一だ! お前等が作った戦闘機より数段上の性能を持っているわ!」

 エースが激情のままにいうのに対して七華はあくまで冷静に指摘する。

「根幹技術をDSSに頼っているうちは無理だよ。ついでに言えば、アメリカ軍は竜騎機兵に対する知識はいま世界でも三位だよ。因みに一位はユーロだったりするんだけどね」

 ついにエースが七華に殴りかかる。

「エース貴様!」

 五郎が殴りかかろうとしたその瞬間、エースは床に叩きつけられていた。

「エースさん、七華ちゃんはそーみえても生身で竜騎機兵と渡り合える人間ですよ。並の人間じゃ指先程の怪我を負わせるのも不可能ですよ」

 九十九の言葉に五郎が突き出した拳の行き先に迷っていた。

「お兄ちゃん、何してるの?」

 三美の言葉になにか深く五郎は深く悲しい物を感じた。

 そしてその時、オペレータールームと繋がる。

『そちらに米軍の輸送責任者が居ると思うんですが。こちらDSSオペレータールーム、メインオペレーター流雲双葉です。返信を下さい』

 その瞬間エースが立ち上がる。

「フタバ、君もここで働いていたのか!」

 その声を聞いて双葉が驚いた声で答える。

『サンダー少尉ですか?』

 嬉しそうな表情でエースが答える。

「はい。今は大尉であります」

 三美が九十九に視線で問いかける。

「エースが在日米軍に居た頃、五郎に合いに来た双葉さんに一目ぼれしてるんだ」

 疲れた口調で答える九十九。

『それでは、あの受け渡しの為の事務処理がありますので、司令室までお願いします』

「わかりました直ぐに行きます」

 そういって駆け出すエース。

 そして出口付近で振り返り五郎に宣言する。

「フタバはお前には勿体無い。私がお前に勝ってフタバの目を覚まさせてやる」

 そんなエースを見て七華が一言。

「つまり恋の鞘あてな訳ね」



「中々面白い展開になってるわね」

 こないだ拾ってきたエリマキトカゲを見に霧流家に来た三美から昼間の事件を聞いて八子が言った。

「面白いって、好き嫌いで軍事関係者が動いてたら大変だよ」

 七華の比較的まともな意見に八子は指をふる。

「よく専門家は経済活動が全ての戦争の引き金と言うけど、違うわ。経済活動は要因にはなっても実際戦争を始める引き金は常に人の愛よ!」

 その宣言に頭を抱える七華と賛同する三美。

「そーですよね八子おばさん」

「そー愛は最大の力、そして愛とはエッチ」

 七華が倒れる。

「どうしてそっちに行くかなー」

「それで八子おばさんの愛って凄いんですよね」

 三美が余計な事を聞く。

「それはもちろん、こないだ帰って着た時も、合計十ラウンドのすっごい愛だったんだから」

「すごい!」

「少し年が離れた弟できるかもよ」

 そんな二人を置いて、七華が言う。

「どんな理由があろうともDSS以外にキクイチモンジとムラサメという竜騎機兵に対抗する術が渡った。それがこれからの戦いにどう影響を与えるか解らないね」

「ナナカ一人でシリアスやってないでさー、八子おばさんの話し聞こうよ」

「あんたも年頃なんだから、少しはこっちの知識も」

 七華は耳を塞ぎながら続ける。

「それでもあちきは強くなって、そして竜騎機将オケンセンを打ち破る」

「「ナナカ」」

 七華はその後直ぐ自分の部屋に逃げ込んだ事は仕方ない事だと思う。



「それでは紹介します新しい竜騎機将になる為に来てくださった、ゴールデンスカイドラゴンさんです」

 レインの紹介にバハムートのオペレータールームの視線が一匹の小さいが体に合わない翼をもった金色の竜の幼生にあつまる。

『我は、ゴールデンスカイドラゴン、ゼロとでも呼んで』

『ゴールデンスカイドラゴンお前がどうしてここに』

 ゴールデンスカイドラゴンの姿を見て驚く、レイ。

『レインボードラゴン、貴方が帰ってこないから、幼馴染として心配だから手伝いに来たのよ』

『お前なんぞに心配される謂れはないわ!』

『ダークスタードラゴンに負けといてよくそんな事言ってるわね!』

 二人が喧嘩するなか、三美が呟く。

「そーいえば前から気になってたけど、ドラゴンって名前ないの?」

「うんにゃ竜騎機兵になってるような竜だったら個別識別の為に名前持ってるよ。でもね、レイやゼロさんみたいな貴種の竜はその種の誇りから種族名を名乗る習慣があるんだよ」

「ふーん。でどうしてゼロさんはゼロって名乗っているの?」

 三美の質問に七華が頬をかきながら言う。

「多分、ゼロさんレイの事が好きだから、因んでるんじゃない」

 三美の顔が途端に笑顔になる。

 それが解っていたのか、七華が溜め息を吐く。

「ねーねーどうして解ったの」

「レインさんに対する態度だよ。竜の巫女であるレインさんに竜人界の高位の竜が冷たい態度とる訳無いのにかなり冷たい態度とってるからね」

「わーわーこれが話しでは良く聞く、素直になれない幼馴染の彼女って奴だ」

 目をキラキラさせる三美は置いておいて、七華は十斗の側に行く。

「正直人選ミスだと思うけど?」

 十斗も頷く。

「まーな、これが本人に強い自覚があるんだったらまだましなんだが、中途半端に幼馴染のポジションとってるからな。レインに理屈と感情とが分かれる気持ち持っている奴は不適切だが、今回挙がったメンバーで間違いなく一番強い力とこっちの要求に答える性質を持っているんだよ」

 七華も資料を見ながら頷く。

「確かにこの能力見ては、諦めきれない駒だよね。で、使えこなせそうですか?」

 十斗がいやらしい笑みを浮かべて言う。

「まーな。その為に協力して貰うよ七華くん」

「まー出来る事だったら良いですよ」

 そんな二人を見ていた双葉が一言。

「七華ちゃんが司令に汚染されていく行く気がするのは気のせいかしら?」



 ゼロ用に調整された竜武弥生型でのテスト運用を七華がしている頃、司令室に十二支が呼ばれていた。

「最初に言っておく。君には次のチャンスで結果を出して欲しいと思っている」

 その言葉に驚く十二支を置いて十斗が話を進める。

「正直、竜騎機将で竜騎機兵に負けたの我々にとって物凄いイメージダウンなんだよ」

 十二支が机を叩きつける。

「前回のは何かの間違いです。次ぎやれば必ず倒して見せます!」

「だからそれを証明して貰いたい」

 冷たく言い放つ十斗。

 十二支も知っている、術者の世界に一度の失敗だけで一生仕事が無くなる事がある事を。

 今回の事は、周りの人間は乗り気でなかった。

 もし竜殺の一族霧流の人間が前例に居なかったら駄目だったろう。

 しかし、その人間が成功している今、自分が失敗したならば、間違いなく自分が能力が無い事を意味することになる。

 どんなに言い訳を尽くそうと結果が全て、それが術者の世界である。

 成功した物こそ正しいのである。

「間違いなく結果を出します」

「期待をしている。しかし次失敗した場合は、すまないが君には」

 十斗の言葉に強く頷き十二支が宣言する。

「ええ、僕も安陪清明の血を引く人間です、自分の身の振り方くらい心得ています」

 そして司令室を後にする十二支を見送りながら、九菜が言う。

「プレッシャー与えすぎじゃない?」

「あれ位でいいんだ。エリートって奴は出来る素養があるが故に次のチャンスを待ちやすい。自分に一番良い所で実力を発揮して良い所を見せようとする性質がな。しかしこっちはそんなのを待ってやる気はない。少ないチャンスで確実に成果を上げてもうさ」

 人心把握の上手さを感心しながら九菜が改めて聞く。

「それでゼロちゃんの方はどうするの?」

 それに対して十斗が言う。

「それだったら七華に任せてある」



「流石、ゴールデンスカイドラゴン。やっぱ竜は空を飛べないと」

 竜騎機将ナナカゼロのコックピットで七華が言う。

『そうですよね。レインボードラゴンって色んな術使えるからって、自分こそ次の竜の王に成るなんて言ってるんです』

「でもそんな所がレイの良い所だと思うけど」

 七華のからかい半分の台詞に沈黙するゼロ。

「ところで、レイって自分がナンバーワンじゃなくても竜騎機将続けるかな?」

 その言葉にゼロが少し考えてから。

『それは、レインボードラゴンの性格から考えて、無理だと思う』

「すると、ゼロさんが活躍してナンバーワンの竜騎機将になったら竜人界に帰ってしまうねー困ったなー」

 七華の言葉にゼロは強く頷き言う。

『そうですよね。レインボードラゴンの性格からしたらそうですよね。そうよ私が一番になれば、レインボードラゴンは竜人界に帰ってくるんだ』

「あちきは、レイに帰られると凄く困るなー」

 七華は業と聞こえるように小声で呟く。

 それは七華の予想通り、ゼロの心に強く刻み込まれた。七華が自分のナンバーワンになる邪魔する者として。



 テストから戻ってきた、七華とゼロを待っていたのは十二支だった。

「七華、次は僕が乗る問題ないな!」

 その言葉に七華はゼロを見て言う。

「でもゼロさんは疲れているから今は……」

『私は大丈夫です。この人が私の正式パイロットになるんですよね』

 割り込んでくるゼロに七華が頷くとゼロが宣言する。

『私はナンバーワンの竜騎機将になります。貴方にその覚悟はありますか?』

 十二支は傲慢に見下ろし言う。

「当然だ。僕は最強の術者になる男だ。当然竜騎機将のパイロットとしても最強に成る」

『証明して下さい!』

「望むところだ!」

 そして二人で再度テスト飛行に向う。

 それを見送った後、七華が基地内通信機で十斗に伝える。

「ミッション君がナンバーワンだ第一段階コンプリート」

『ご苦労さん。後は結果を待つだけだ』



「ゼロちゃんと十二支さんって毎日練習してるんだよね?」

 毎度お馴染みの学校帰りの間食タイム。今回はたこ焼き。

「まーね、それより揚げる様に焼くのが流行なのかな、あちきは昔の屋台風な方が好きなんだけどな。オカカかかったのが好きだったな」

『我はこれはこれで好きだぞ』

 レイが器用に口だけで食べながら言う。

「竜って雑食なんだねー」

 三美が感心していると例の如く七華の通信機が鳴る。

「ねー前から思ってるんだけど何で下校途中に敵が出てくるの?」

 三美の鋭い突っ込みに七華は一言。

「学校の授業中に出てくるより場面が面白いからじゃない。きっと戦いの神様がそーゆー変わった性格なんだよ」

 そういいながら携帯に出る。

「戦いの神様だって、うーん阿修羅みたいな神様かな?」

 とこっちの世界の神様を知らないレイに同意を求める三美。

『この世界の神様は知らないが、噂では異世界にやたらドジで金運が無い戦いの神様が居ると言う話しを聞いた事があるぞ』

「へー面白い神様が居るんだねー」

 話しがついたのか、レイを拾い上げる七華。

「今度はアフリカだって、動物愛護の人間が、竜騎機兵なんて使うんじゃないよ!」

 急いで外に出る七華とレイ。

「あーあたしもついてく、象見るんだから!」

 と呑気な事を言って、七華達の後を追っていく三美であった。



「敵の戦力は竜騎機兵ワイバーン三体に竜騎機兵スカイドラゴン一体です」

 バハムートのオペレータルームに双葉の報告が木霊する。

 五郎が舌打ちをして、レインの方を向く。

 レインは真っ直ぐその視線を受け止める。

「前回のワイバーンの事が問題になって、ワイバーン雇用を止めた人達が多発したんです。そして大量のワイバーン雇用解除でワイバーンを統括してるスカイドラゴンにも影響があったみたいです」

「お前達の世界はどうなってるんだ!」

 五郎が怒鳴ると、十斗が言う。

「五郎、こっちの世界が他の世界を批判できるほど上等だと思ってるのか?」

 ひたすら冷たい言葉に、五郎が十斗の方を向く。

 その目の中の口では表現できない冷たさを潜ませていた。

「お前は知っているのか、ただユダヤ人だからといって虐殺された人間と虐殺した人間が居た事を。黒人だからといって奴隷にする白人を。俺は日本人だと言うだけで、殺されかけた事もある。奇麗事は通用しないそんな世界だ。だからこそ俺は世界を変えようとした」

 十斗の世界経済に対する影響力は誰もが知っていた。しかし今の話は多分、十斗が大学時代から付き合いがあった九菜位しかしらないだろう。

 そしてレインの方を向いて十斗が言う。

「悔しいだろう?」

 レインは強く頷く。

「前に五郎が言っただろう。理不尽に勝つには力を得るしかないんだ。お前が竜を連れ戻す功績を挙げ続ける事で、竜に対する発言権が高くなるだろう。その為の手伝いを俺達はしてやる。だがその先はお前がやれ」

「解っています。竜騎機兵に志願する竜の居ない世界にきっとして見せます!」

 そして五郎は頬をかいていると、七華達が到着する。

「お兄ちゃんどうしたの?」

 三美が尋ねると、五郎はオペレータールームを出て行く。

「出撃準備してくる」

 その後姿を頭に疑問符を浮かべながら見送る三美に七華が一言。

「また、レインさんに当って諭されたんだよ」

「お兄ちゃんも懲りない人だね」

 何か悟りきった中学生コンビである。

「フフフついに僕の出番ですね」

 十二支が入ってきて言う。

 そして七華に指差して言う。

「これからは僕と」

 肩に乗っていたゼロが続ける。

『私が』

『「最強の竜騎機将だ(です)」』

 ハモル二人。

 思わず手を叩くオペレータールームの皆。

「行くぞ!」

『はい』

 二人が竜武のある発射口に向う。

「作戦は上手く行ってるな」

 十斗が呑気に言うと七華も頷く。

「これは今回はあちき達の出番無いかも」

『おい我は強いところをレインに見せる必要があるんだぞ』

 レイが怒るがレインが、

「レイさんが強いのは十分しってます」

 言うだけで、

『ここはゼロに花を持たせるか』

 と意見を変える。



『竜殲滅部隊マサムネゼロ、晴晴五郎出る!』

 五郎のマサムネが出撃し、次々とキクイチモンジが出撃するなか、十二支が呪符を束ねて呪文を唱える。

ちゆういんぼうしんしんゆうじゆつがい。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』

 酉の呪符に手を当てる。

飛翼ヒヨク

 そして呪符は、一体の大きな翼を持つ鳥に変化する。

 十二支はその鳥に乗り空に飛び出す。

 その後を追う様にゼロも飛び出す。

『「絶対に勝つ!」』



「十二支くんが、目標地点に到着しました!」

 双葉の言葉に十斗が頷く。

「竜武、弥生発射準備」

「竜武、弥生型発射装置に装填して下さい」

 双葉の通信にそって、ハンガースタッフ達がガイドする中、一本の巨大砲台にでかい竜武弥生型が入った竜武玉がセットされる。

 双葉は、竜武玉が巨大砲台に格納された事を確認した所でアナウンスを流す。

「これより、竜武弥生型を発射します。各員対ショック体制を取ってください」

 そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標、上空を飛ぶ十二支とマークが重なる。

「竜武、弥生発射!」

「竜武、弥生型発射します!」

 双葉が、プラスチックでカバーされたスイッチをカバーを叩き割りながら押す。

 竜武玉が巨大砲台から発射される。

「距離カウントします。2000・1600・1200・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」

 十斗が円形の専用ハンドルを握り締める。

「真竜開放魔方陣展開」

 十斗がレバーを大きく回す。

 竜武玉の外殻が回転しながら割れる。

 そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。



 後方から迫る魔法陣にゼロが接触する。

『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、ゴールデンワイバーン』

 十二支の呪文に答え、ゼロがその体を金色に光らせながら巨大化し、その巨大な翼をはためかせる。

 金色のブレスが十二支を包むと十二支の姿が消える。

 その巨大な翼はそのままに人のシルエットを形成する。

 その間に後方から迫ってきた装備がゼロの全身を覆った。

 そしてバハムートを背負い、

『望みの船から飛び立った』

 竜騎機兵達を指差し、

『穢れし欲望を打ち破る者』

 両手で印を作り、

『高尚なる印』

 両手を腰に当てて見下して宣言する。

『竜騎機将イフシゼロ』



「おー登場の台詞まで言うか!」

 十斗の嬉しそうな声がバハムートのオペレータルームに響く。

「七華は行かなくていいの?」

 三美の言葉に七華が頷く。

「ナナカレイは地上戦用、竜騎機兵スカイドラゴンとワイバーンの混合部隊じゃ出番は無いよ」

『ここは、新人に手柄を譲るのも先輩としての懐の深い所を見せるところだな』

 レイもレインを意識しながら発言する。



「流石に竜騎機兵スカイドラゴンは早いな」

 五郎がマサムネのコックピットで愚痴りながらも、牽制の魔法ミサイルを撃ち込む。

 その間も、キクイチモンジに乗った竜殲滅部隊達が、竜騎機兵ワイバーン達を確実に弱らせていた。

『五郎、竜騎機将イフシゼロが来るぞ』

 九十九の言葉に五郎が振り返るとそこに竜騎機将イフシゼロが居た。

「さーてどう扱うかだが」

『五郎さんすいませんけど、一度全員後退させてください』

 七華の言葉に五郎が不満そうな顔をしていると十斗の声が続く。

『竜騎機将イフシゼロの実戦データが欲しいんだ。大人しく下がれ』

「はいはい」

 そして、部下達に動きを見ながら的確な後退の指示を出す。

「まー、お手並み拝見と行くか」



「ゼロ行くぞ!」

『はい!』

 十二支は竜騎機将イフシゼロのコックピットの中で印を刻んでいく。

 竜騎機将イフシゼロはそれを正確に再現する。

 これは、繰返し行われた練習と、竜武弥生の手甲部分の補助装置のお陰である。

ちゆういんぼうしんしんゆうじゆつがい。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』

 そして、イフシ用にセットされた十二個のボタンの一つ、子と書かれたボタンを押すと、竜騎機将イフシゼロの装甲から特殊な製法で作られた強化紙に子と描かれた物が出て来る。

 それは、十二支の手元の紙とリンクしている。

 ゼロがその紙に強化の竜魔法を掛ける。

『ゴールデンドラゴンパワー』

 そして十二支が呪文を完成させる。

突子トツネ

 紙は無数の鼠と変化し、竜騎機兵ワイバーンに向って空中を走っていく。

 竜騎機兵ワイバーンもミサイルやファイアーブレスで対抗するが、絶対数が違った。

 鼠達はあっという間に竜騎機兵ワイバーンの武装を打ち砕き、ダメージからどんどんワイバーンが落ちていく。



『ここは異界なり、正しき理を持って、正しき世界に帰れ、竜返還』

 気絶したワイバーン達をレインが返還していくのを見ながら、三美が驚いた顔をする。

「十二支さんって強いんだ」

 七華が頷く。

「当然だよ、数百年以上術を磨き続けた一族のホープだもん。前回は自分の術だけに頼っていたから成果が上がらなかっただけ。今回みたいに竜武に専用の装置をつけて竜にサポートして貰っていたら、あんな盾じゃ防げない攻撃なんて幾らでも出せたんだよ」

「力は解った、後は実戦に対するセンスだな」

 十斗はそう言ってメイン画面を見つめる。



「後はあの大きいのだけだ!」

『初戦で竜騎機兵四機、これだけの成果を挙げれば、最強の名前は私達の物ですね』

 ゼロは嬉しそうな声に、コックピット内の十二支も頷く。

 再び印を組み始める。

ちゆういんぼうしんしんゆうじゆつがい。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』

 寅のボタンを押す。

 ゼロが寅の書かれた紙に魔法を掛ける。

『ゴールデンドラゴンパワー』

 そして十二支が呪文を完成させる。

雷寅ライトラ

 雷を纏った大きな寅が生まれ、竜騎機兵スカイドラゴンに襲い掛かり一撃で装備を無効化していく。

「やったぞ!」

 そしてガッツポーズをとる十二支。

 だが次の瞬間竜騎機兵スカイドラゴンは最後の力を振り絞って、全身のミサイルとブレスを打ち込んできた。

『ゴールデンドラゴンシールド』

 ゼロが咄嗟に防御魔法を展開し、全ての攻撃を防ぐ。

 その時警告音が鳴り響く。

 竜騎機将イフシゼロに向って突撃をかけてくるスカイドラゴンがどんどん画面上で大きくなっていく。

 十二支の脳裏に前回の苦い経験が思い出される。

 しかし、防御魔法を展開している今、回避行動はとれない。

『防げるかどうか半々です』

 苦しげにゼロが言ったその時、竜騎機兵スカイドラゴンの進路が変えられる。

『キクイチモンジ4から7ドラゴンファングでこっちに誘導しろ!』

 五郎の声が通信機から入ってくる。

 そして、竜騎機兵スカイドラゴンが進路を変えざる得なかったのは、キクイチモンジの小型ドラゴンキラー、ドラゴンファングの攻撃の性であり、その攻撃で誘導された先にはマサムネが居た。

『撃ちぬけエクスカリバー!』

 マサムネの新装備、七華が父親に頼み込んで分けて貰った千年竜の骨をベースにレイがドラゴンヒールを懸けて後に、七華と九菜の共同作業でドラゴンヒールの効果を停滞させたそれはレインボーフィニッシュと同じ効果を持つ、エクスカリバー(聖剣)であった。

 竜騎機兵スカイドラゴンは気絶する。

 魔方陣ミサイルがキクイチモンジ数機から放たれて、スカイドラゴンが返還された。



 バハムートの司令室で十斗の前に立つ十二支。

 前回に引き続き無様な姿を見せた、その自覚はある為、何も言わない。

「今回は竜騎機兵ワイバーンを三体倒した、これは確かな評価だな」

 十斗の言葉に希望を感じた十二支だったがすぐさま十斗が続ける。

「だが、前回と同じ失敗をしかけた。俺は同じ失敗を繰り返す人間は使わない主義だ」

 その言葉にゼロが反論する。

『私の防御魔法がありました。きっと防げました!』

 その言葉に十二支が首を横に振る。

「自分でも解っている。油断が有ったのは確かだ」

 そして決断を望む瞳を向ける。

「だが、俺は仏の様に慈悲深い。だから今回も容認しよう。だが、仏の顔もそう続かないぞ!」

「はい。次は確実に敵を全滅させます!」

 十二支が力強く言うのを聞きながら、七華が賭けの配当を行っていた。

「二十倍の高配当だよ」

 三美が外れ券を持って興味深げに言う。

「誰が当てたの?」

 七華は司令室を指差す。

「うちの司令。こーゆーの得意だもん。最初から、竜騎機兵スカイドラゴンを撃ち漏らすのも計算にいれて、貴重なエクスカリバーを温存させてたんだよ」

「おー考えたら、一匹くらいワイバーンを事前に倒しておけば良かったじゃないか!」

 ワイバーン二体に賭けていた五郎が悔しげに外れ券を床に叩きつける。

「仕方ない。これも作戦の結果なんだからな」

 的中させた九十九が慰めていた。

 出撃せず、密かに暗号通信まで使って胴元やっていた七華と、その手伝いをした双葉が利益の計算にいそしんでいた。

「これで五郎とのデート代が出る」

「よしよし、これ儲けを回せば、今月の家に入れるお金もOKだね」

 そんなDSSのメンバーを見てレインが深い溜め息を吐いて悩む。

「この人達に手伝って貰っていて良いのかしら」

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