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竜騎機将ナナカレイ  作者: 鈴神楽
誕生編
5/17

タッグ解消?

『幾らなんでも今回の事が許されると思っているのか?』

 バハムートの特殊テレビ会議室の映像に、世界を裏から支える重鎮たちが揃っていた。

 その前に立つのは、この場に揃った奴等に喧嘩を売り、今の地位を手に入れた男、雨林十斗だった。

「今回の騒動ででた損害は全てこちらで補填した。元々うちのメンバーが個人的に受けた挑戦だ問題ないと思うがな」

 その言葉に、重鎮の中でも最大権力者の老人が言う。

「お前が我々と喧嘩して突き進めたのは世論を味方に出来たからだ。今回のことには馬鹿な民衆も納得しまい」

「そうだ、お前が幾ら巧妙にマスコミを操作した所で無駄だぞ」

「お前も終わりだな」

 ここぞとばかりに十斗をなじる重鎮達。

 十斗が大きく溜め息を吐いてから、反論しようとした時、その人物が入ってきた。

「今回の事は闇の世界の話ですよ。光の世界の人間が口を出す問題じゃありませんよ」

 十斗が振り返るとそこに霧流八子が居た。

『お前は何者だ?』

「霧流八子です」

 その言葉に、テレビに映る全てのメンバーが動揺する。

「特に今回の事は息子、一刃に対する復讐を娘、七華が受けただけの事です。大事にする必要は無いでしょう」

『竜騎機将を使っている以上それで済むと思って貰っては困る!』

 そういった男を見ず、八子は淡々とメンバーを見回してから言う。

「あくまで事を大事にするつもりでしたら、こちらもそのつもりになりますが良いんですか?」

 その言葉に最高権力者の老人が言う。

『それはどう言う事だね』

 八子は笑顔のまま答える。

「霧流が竜退治にしか使ってない力を使うことになると言っているのですよ」

 テレビに映るメンバー達は明らかに動揺する。

「これが最後です。今回の事は無かった事にするそれで良いですね?」

 八子の提案に否の言葉は結局出なかった。

 通信が切れた後、十斗が言う。

「昔何があったのですか? 上層部の弱点を探っていた時に何度も霧流の名が出てきました。しかしそれについては誰も語りませんでした」

 八子は平然と言う。

「むかし馬鹿な魔術師が居たの。その魔術師は異界から万年生きた最強の竜を召喚し、この世界を滅ぼそうとしたの。当然竜を殺すことは霧流の仕事だったから、夫が請けたわ。まー夫が受ける前にあそこに居た人達は無駄に戦力を消費していたけどね」

 その言葉に大きな溜め息を吐く十斗。

「このバハムートのメインフレームと大動力を維持するのに使われた万年竜を殺したのが七華の父親だったって事ですね」

 頷く八子。

「このバハムートは、小さいけど意思がある。その意思が貴方を主を選んだんでしょうね」

 十斗は、世界を動かす今の奴等相手に喧嘩を売ってる時、偶然手に入れたこの飛行基地が、万年竜の死体をベースに作られていると言う与太話は半ば信じていなかったが、今回の事でそれもありえると思い始めた。

「娘をよろしくお願いします。あの子は凄すぎる父親と兄と比較しすぎています。兄がやれば大丈夫だと、半ば逃げているんです。それを取っ払えるのはここだけですから」

 そして去っていく八子。

「しかし、どうやって空中にあって且つホワイトハウスより厳重なこの会議室に入り込んだんだ」

 十斗はその答えを七華に聞くべきかどうか悩むのであった。



「五郎の馬鹿!」

 バハムートの内にある医療施設の病室に双葉の声が響く。

 慣れた者で当の五郎は耳を塞いでいる。

「あの時偶然完成したばかりのドラゴンコロシアム脱出装置が搭載されてなかったら間違いなく死んでたわよ!」

 あの時、五郎の乗る特殊飛行戦闘機、ブレイドには特殊空間ドラゴンコロシアムから強制的に元の世界に戻りパイロットの命を守るシステムが搭載されていた。

 そのシステムがあった為、五郎は一命を取り留めた。

 しかし、五郎は病院のベットの上に居た。

「神殺しの意思の衝撃波は異世界からでもダメージを与えてくるから体全体にダメージがあるじゃない!」

 双葉の言葉が示すとおり、五郎は百剣の放った意思の衝撃波のみのダメージで全身に大怪我を負っていた。

「ああ、あいつには必ず借りを返してやる」

 強い意志を込めて呟く五郎を双葉が睨む。

「まずは体を直す方が先よ!」

「だったら、あまり怒鳴らない方が良いと思うけど?」

 隣のベットに居た七華の言葉に双葉が慌てて振り返り頭を下げる。

「ごめんなさい」

 首を横に振る七華は五郎の衝撃波による打撲に似たダメージの他にも無数の切り傷等で体中に治療痕があった。

「でも回復魔法って本当にあるんだね」

 三美が感心した様子で言う。

「まーね。体力がある竜と違ってあっと言う間に直るって言うのは無理だけどね」

 そう答える七華のダメージは最初は、はっきり言って生死の境にあった。

 それまでの接近戦で受けたダメージの上に、百剣の意思の衝撃波とダークスタードラゴンの闇魔法の直撃、常人だったら間違いなく死んでいた。

「母親の深い愛に感謝するのよ」

 さっきまで十斗の所に居た八子が戻って来て言った。

 治療班があまりにも大きなダメージに絶望仕掛けた時に、八子が来て、七華と五郎に回復魔法を掛けたのだ。

「本当にありがとうございます」

 そう言って頭を下げる双葉。

「良いのよ、何時もうちの娘がお世話になってるんだから」

 八子は椅子に座って言う。

「一応一刃には今回の事は報告しといたわ」

 その言葉に七華は拳を握り締める。

「解ってると思うけど、一刃に期待しちゃ駄目よ」

 八子の言葉に頷く七華。

「自分が受けた屈辱は自分で返すでしょ」

 八子が頷き続ける。

「霧流の家に生まれた以上、自分に降り掛かった火の粉を振り払えないのは認められない」

 シリアスな空気が病室を覆おうとした時、八子は手を叩き、五郎の方に向う。

「これはお見舞いです」

 一つの紙袋を渡す。

「何ですか?」

 五郎の代わりに受け取った双葉が聞く。

「一刃が隠してた、異世界で流行っているエロ映像投射魔法玉」

 双葉が固まる。

「えーどんなのですか?」

「面白そうだな。どんなのがあるんです」

 三美が興味津々近寄って来て、五郎は面白そうに覗き込む。

 エッチにフリーな晴晴兄妹であった。

「母さん、そーゆーのをお見舞いに渡してどうするの!」

 七華が怒鳴ると八子が指を振り言う。

「解ってないわね、男の人は下手に動けない時こそ溜まる物なのよ。だから適度に抜いてあげないと。あ、でも双葉さんが居るから必要無いですか?」

「そんな事病室ではしません!」

 双葉が反論する。

「でも、何時も働き者の恋人が怪我してる時こそエッチするチャンスだと思うんだけど。私が七華を身篭った時もそんな時だと思うわよ」

「母さんそれ以上言うとあちきも怒るよ!」

 七華も怒鳴る。

 いつの間にかにシリアスな空気は消えていた。



「で、どうだ?」

 バハムートの開発室に赴き、九菜に現状を確認する十斗。

 目の下に大きなクマを作っている九菜が答える。

「ソードの予備機の調整はほぼ終了したわ、竜武睦月の修復は不可能だったから、新型の完成を急いでる、一週間もあれば実戦導入が可能よ」

 目の前で着々と完成に近づく新型の竜武、如月を見る。

「まさか相手側が竜騎機将を持って来た時の為に開発していた新型竜武がこんなに早く必要になるとは思わなかったな」

「すいません。私の見通しが甘かったんですね」

 開発の手伝いをする為に居たレインが頭を下げる。

「構わない、今回のドラゴンに関して言えば、そっちとは全く関係ない。相手が、DDCダークドラゴンカンパニーが霧流一刃に恨みを持つ奴等を探し出したそれだけの事だ」

 そう呑気に言う十斗が続ける。

「問題はレイの方だが、どうだ?」

「竜人界に戻り、治療院で直ぐに回復しました。もう直ぐにでも再びこの世界に呼び出せます」

 レインの言葉に十斗が呟く。

「七華も三日もあれば戦えると言っているから、竜武が完成すれば、またあの竜騎機将オケンセンが出てこない限り対応は可能だな」

 九菜が溜め息を吐いて言う。

「ハイハイ、出来るだけ急ぎます」

 そう言って、作業員に指示を出しに行った。

「問題は一ヵ月後だな」

 十斗の言葉に、レインが言う。

「私達であの竜騎機将オケンセンに勝てるのでしょうか?」

 十斗は強い意志を込めた目で断言する。

「勝てるんじゃ無いんです、勝つんだ」



 横浜の地下街に隠れるようにある喫茶店に十三と百剣が居た。

「竜騎機将ナナカレイは完全に倒した。これで契約は成立だな」

 百剣の言葉に十三は笑顔で頷く。

「はい、もうあの竜騎機将の装備は貴方達の物です」

 百剣の肩に乗るセンも頷くが、

「しかし、整備やパワーアップは必要ですよね? なんせあの一刃に勝つためだ、少しでも勝率を上げる必要がありますね。違いますか?」

 その言葉に百剣の視線が強まり、テーブルが震え始める。

「俺にお前等の手先になれと言うのか?」

 それに対して十三は首を横に振る。

「まさか、そんな大それた事は考えては居りません。頼みたいのは、装備の強化ですよ。相手の竜騎機将の技を防ぐ為のね」

『詰り、私の竜魔法で竜騎機兵の装備を強化したいと言う訳ね』

 その言葉に頷く十三。

「話しが早くて助かります。協力して頂ければ、こちらも最大限の整備と、強化をやらせて頂きます」

 百剣が明らかに嫌悪した瞳を十三に向ける。

「考え違いをするなよ、俺とお前とでは対等では無いのだぞ」

 その言葉に十三は唾を飲むが、続ける。

「解っているつもりですよ。しかし、私も商売をしているんです。全てが無料と言う訳には行きません」

 視線が交わり、テーブルの上のグラスが割れる。

『百剣、私はやっても構わない。あの一刃に勝つ為だ多少の事は覚悟の上だ』

 センのその言葉に、百剣も引く。

「解った。しかし余り思い上がった態度を取るな。所詮お前等はこっちの業界では新人もいい所なんだからな」

 そういって立ち去る百剣。

 大きく息を吐いて十三が言う。

「流石に、私など一瞬で殺せる人間と交渉すると緊張する。しかし、一刃と言う要素がある内は大丈夫だな。私としては、一ヶ月後の戦いで一刃が勝てば今後とも使えて助かるのだがな」



 竜騎機将オケンセンとの対決から一週間が経過した、バハムートのオペレータールーム。

『奴等は何処だ!』

 戻ったレイの第一声はそれだった。

『我が奴等を倒してやる!』

 大きく溜め息を吐いて七華が言う。

「何馬鹿言ってるの、今のあちき達じゃ勝てるわけ無いでしょう」

『あの時は油断したんだ。次やれば必ず勝てる!』

 その言葉に七華が怒鳴る。

「馬鹿もいい加減にして!」

『お前の弱さも我が引き受ける!』

 レイが傲慢に言うと、七華が言う。

「冗談は止してよ、レイ、貴方はあのダークスタードラゴンより力が劣っているのにどうしたらそんな事言えるの?」

 レイが七華を睨む。

『何を根拠にそんな事を言う!』

「簡単だよ、最後のレインボーフィニッシュに込められた力が完全に相殺されたから。レイの力が相手のより勝っていたのなら、竜騎機将ナナカレイはダメージを食らっていても、竜牙刀の光は消えない筈だよ!」

 七華が冷たい視線でそう言うと、レイが言う。

『お前が弱いことを我の責任にするか!』

 その言葉に七華が溜め息を吐き、十斗の方を向く。

「司令、あちきは竜騎機将ナナカレイを降りて良いですか?」

 その言葉にオペレータールームがどよめく。

「今の口喧嘩が原因か?」

 十斗の質問に七華が頷く。

「あちきは強くなりたいから、竜騎機将ナナカレイに乗っています。でもパートナーが相手の実力を感じられない存在ではこれ以上のパワーアップは望めません。新しい竜騎機将の竜と共に戦うことを選びたいです」

 その言葉にレイが驚く。

『新しい竜騎機将の竜だと?』

 七華が振り返り言う。

「そうだよ、元々、新しい竜騎機将の組み合わせを作る計画は挙がっていたの。あちきがこっちの術者の仲間に声をかけてパイロットを探し、レインさんが竜議会に話を通して新しい竜を呼ぶことを認めさせて、九菜さんが今作成中の竜武とは別に新しい竜用の竜武も作成する。そして竜騎機将ナナカレイとは別の竜騎機将を誕生させる予定だったんだよ」

「そーいえばそんな話しがあったな」

 一応プロジェクトに関わっていた筈の五郎は忘れていた様子だ。

「あちきはそっちのパイロットになりたいと思います」

「そんな勝手が許されると思ってるのか?」

 十斗の言葉に頷く七華。

「当然です。あちきはあちきの成長の為に竜騎機将ナナカレイのパイロットをやっています。自分の成長の妨げになるのでしたらやる必要がありませんよ」

 誰もが唖然とした、最前線に立ち、責任感も強い七華がそんな事を言うとは思わなかったからだ。

「確かにお前の言うとおりだな」

 その中十斗だけは納得した。

「司令良いんですか?」

 双葉の問いに十斗が言う。

「多分お前たちは七華の事を無責任だと思っているだろーが違うぞ。責任を負うって事は自己犠牲とは違う。自分が考えた道を進むために、七華は一番責任を強く感じていただけだ。全ては自分にとってプラスになると判断した上で責任を負っていたのだ。七華にとっては、世界を守るより自分の成長の方が重いんだろう」

 大きく頷く七華。

「当然です。本気で世界平和の方が大切だったら、無理やりでもお兄ちゃん連れてきます」

 その言葉に三美が言う。

「ナナカのお兄ちゃんってそんなに強いの?」

 大きく頷く七華。

「竜騎機将オケンセンだって負けないと思うし、間違いなく竜騎機将ナナカレイより数段強いよ」

 その言葉に十斗が頷く。

「お前がそう思うんだったら構わない。代わりのパイロットを急いで手配してくれ」

「もう呼んであります」

 そういって、携帯をかける七華。

「司令良いんですか?」

 双葉の言葉に十斗が頷く。

「止めると言うんだったら止めるが、組み合わせを変えるだけだからな。正直今のまま二人を組ませても大した成果が期待できないからな」

『それは我が未熟という事か!』

 レイの言葉に十斗は平然と言う。

「お前等二人共だよ」

 そして一人の少年が入ってくる。

「ついに僕の出番ですね」

 かっこつけて現れた学生服の十五歳の美少年が立っていた。

「彼の名前は安陪アベノ十二支イフシ、あの有名な安倍晴明の直系の子孫にあたる人間で、干支十二支を用いた式神を使わせたら若手で右に出る物は居ないと言われているよ」

「あーあたしも陰陽師の映画見たことある!」

 ミーハーな三美。

 カッコつけて十二支が言う。

「そこに居る、七華は、まー年齢の割にはそこそこやるが、天才の僕には敵わないね」

『確かに、七華より高い術力を持っているな。丁度良い、お前が新しいパートナーだ』

 レイも頷く。

「僕の実力があれば竜騎機将は更なる強さを得られますよ」

 自信満々の態度で十二支が言う。

 そして、七華がその場を出て行った。



「本当に良いの?」

 研究室に竜武如月の改装の為に来ていた七華に九菜が言うと七華は頷く。

「負けることが悪いわけじゃ無いんです。問題はそれを認められない事ですから。負けを弱さを理解しない限り強さは得られないですよ」

 七華は平然とそう言うと、資料を整え続ける。

「話は変わりますけど、如月の装備に術要素を強める必要があると思うんですけど」

「そうね、元々七華ちゃんは、術と刀術の混合だものね、陰陽術だけが得意な人間には、七華ちゃんの仕様の今の如月では合わないわね」

 幾つかの武装パターンを表示して七華が言う。

「ですよね、ですから装備パターンの変更が必要だと思うんだけどね」

 それに対して九菜が言う。

「如月は貴女用に調節したの。これはあたしの意地だよ」

 九菜の言葉に如月の隣で開発が進むもう一機の竜武を見る七華。

「でもあれは、飛行型だよ、レイには向かないと思いますけど」

 九菜は新しい竜武を見る。

「確かにあれは、次の竜用にセッティングしてあるけど、如月は間違いなく七華ちゃん用に作ったからそれは曲げられないよ」

 困った顔をする七華。

「パイロットに合わせるより竜に合わせた方が良いと思いますよ」

「七華ちゃんにも、譲れない物があるでしょ?」

 九菜の言葉に大きな溜め息を吐く七華。

 九菜は睦月の資料を見ながら言う。

「睦月を無理に使っていたのは知ってたよ」

 七華もその資料を見て答える。

「無理ってそんなつもりは無いよ。そこにある道具を有効に使うそれが戦いって物だと思っているよ」

「それが無理してるって言うの。私達の仕事は貴女の力を最大限に引き出すことよ。貴女が合わせるのじゃなく貴女にあわせるの。それが裏方の仕事だよ」

 そう言いながら、九菜は如月の武装を表示する。

「その集大成がこの如月なんだから、如月だけは七華ちゃんに使って欲しいの」

「あちきはそんな事してもらえるほど強くないよ。お兄ちゃんだったらどんな状況でも勝てるし」

 そんな七華の言葉に九菜が溜め息を吐いた。



「それじゃあまだ次の竜が来てないの?」

 毎度お馴染みの学校帰りの間食、今回は鯛焼き屋で三美が言う。

「まーね、ダークスタードラゴン登場に竜人界の方でも混乱してる。ダークスタードラゴンは最悪最強とも呼ばれる竜で相当な竜じゃないと相手できないからね」

 ストロベリークリームの鯛焼きを食べながら答える七華。

「じゃあ暫く暇なの?」

 三美の言葉に首を横に振る七華。

「フォローしないといけない事が山ほどあるから駄目なの」

「そー言えばお兄ちゃんも言ってたっけレイと十二支さんが仲悪いって」

 大きく頷く七華。

「まー二人とも我が強いから、しかた無いんだけどね」

 そんな時、通信機に連絡が入る。

『七華ちゃん、中国に竜騎機兵が出たわ、急いで合流して!』

「十二支さんは捕まらないのですか?」

 七華の質問に、十斗が答えた。

『いや、既にここに途中で合流する手筈になっているが、お前も必要だから呼んでいる』

「どうしてですか?」

 七華が首を傾げる。

『それを理解させる為だ』

 とだけ答える十斗。

「解りました。ポートアルファーまで迎えの飛行機手配して下さい」

『了解待ってるわ』

 双葉の声で通信が終る。

「今のあちきが必要な理由か」



「これで僕の実力を示せば、若手最強の名は僕の物になる」

 竜騎機将イフシレイのコックピットで十二支が呟く。

『どうでも良いが、まともに戦闘をしろ』

 レイの言葉に十二支が怒鳴り返す。

「うるさい、前から言おうと思ったのだが、この操縦システムは欠陥がある。どうでも良いような動きをトレースするのに、必要な動きをトレースしないどうなっているんだ!」

『お前のやり方が悪いんだろ、七華は、上手く切り分けてたぞ』

「何だと!」



 バハムートのオペレータルームではさっきから止まる事の無い、レイと十二支の口喧嘩が聞こえてきていた。

「司令、そろそろ目標地点です。投下しますか?」

 双葉の言葉に十斗が首を横に振る。

「七華ならともかく十二支君じゃ、空中制御にミスる可能性が高い、地上まで空輸する。元々そのシステムもあるだろう」

「また?」

「第一、何でバハムートの中で竜騎機将になってるの?」

「そりゃ空中合体が出来ないって事だからよ」

「第一あの坊や、こっちの指示を明らかに無視するじゃない」

「そうよそうよその方がやり易いって言ってさー」

 十斗の言葉にオペレーター達から愚痴もあがる。

 竜騎機将イフシレイになった今回は、前回までとはまるで違っていた。

 何をやってもスムーズに行かないのだ。

「皆さん、十二支さんは、今回初出撃です。頑張ってフォローしてあげてください」

 と七華が頭を下げるのを見て、やれやれと言う顔になって作業を続けるオペレーター達。

 そして空輸システムで、竜騎機将イフシレイが地上に降ろされる。



『我々は、資本主義に傾倒する今の政治に物申す。我らの社会主義こそ至上の政策である。再びこの中華人民共和国を完全なる社会主義に戻す事こそ大切である』

 そんな事を言っている竜騎機兵ランドドラゴンに乗るテロリスト。

 そこに竜殲滅部隊が、特殊戦闘飛行機、ソードで取り囲み魔法ミサイルを打ち続ける。

『その程度の攻撃はこの竜騎機兵ランドドラゴンには通用しないわ!』

 その言葉が示すように、竜騎機兵ランドドラゴンは無傷である。

 竜騎機将イフシレイが地上に降り立つ。

『お前の横暴もここまでだ、僕が安陪十二支が退治してくれる!』

 そして、竜騎機将イフシレイの手がぎこちない動きで、印を刻むと、大きな酉の式神が現れて、竜騎機兵ランドドラゴンに迫る。

 そこにレイのファイアーブレスが吹きかかり、炎の酉となり竜騎機兵ランドドラゴンに当るかという所で、竜騎機兵ランドドラゴンの目前に一つの黒い盾が展開される。

 それは、簡単に炎の酉を防いでしまう。

『わははは、これはお前が敗れた竜騎機将オケンセンのダークスタードラゴンが作り出した盾、お前の力では敗れまい!』

『違う、敗れたのは前任者だ。僕は勝つ』

 そういって、竜騎機将イフシレイは更なる印を組み始める。



「九菜、あの盾の防御力を越す方法はあるか?」

 オペレータルームの中央の司令室の十斗の言葉に研究室で事の成り行きを観察していた九菜が答えてくる。

『難しいわね、七華ちゃんの言葉通り、竜の世界はダークスタードラゴンの方が上だから、普通にやってはダメージを与えられないわね。ここは篭っている力を使い果たすまで攻撃を続けるしかないんじゃないかしら』

 その言葉に七華が首を横に振る。

「試験運用の時から算出して、今と同クラスの術が放てるのは精々2回位。それ以上は十二支さんの体力は持たないよ。何らかの手を打たないと」

「そうだな、手を打たないとな。九菜例の奴はどうなってる?」

『テスト運転前だけど動かせる筈よ』

 十斗の言葉に九菜が答えてきた。

「いざとなったら五郎に任せる心配するな」

 そういって十斗は心配そうな七華の頭を叩く。

「そうだけど……」

 その時、七華は今まで感じたことの無い苛立ちを覚えていた。



「くそー、何で防がれる!」

 コックピットの外壁を思いっきり叩く十二支。

「レイお前の力が低いせいだ!」

『お前のヘボ術がいけないのを我の所為にするな!』

 二人は戦闘中なのに口喧嘩を始める。

 その時、竜騎機兵ランドドラゴンの突撃が決まり、近くの壁にぶち当たる。

 その衝撃で、十二支の意識が飛び、竜騎機将イフシレイが解除される。

 竜武如月が元の姿に戻って、レイと十二支を連れて自動帰還する。

 レイが力の限り叫ぶ。

『くそー!』



「五郎、行けるか?」

 十斗の言葉に本来なら回復魔法慣れして無い為、病室に居る筈の五郎がパイロットルームから答えてくる。

『ソードだっていうのは少し何だが、任せておけよ』

 それに対して九菜が研究室から言う。

『任せなさい、こんな事もあろうかと、貴方用の特殊戦闘機ADX_5マサムネが暖機してあるわよ』

 その言葉に、双葉が怒鳴る。

「しかしあれは、まだテスト飛行も済んでないものです!」

 そんな双葉の心配など何処吹く風と五郎が宣言する。

『任せて置けよ、整備不十分の飛行機には乗りなれてるぜ』

 そして五郎は素早く、マサムネに乗り込む。

『竜殲滅部隊マサムネゼロ、晴晴五郎出る!』

 バハムートから、日本刀を思わせる鋭いシルエットの戦闘機が発進した。

「五郎!」

 双葉の叫びが響く中、レイがオペレータルームに入ってくる。

「よ、レインボードラゴン、連敗記録更新おめでとう」

 十斗の軽口にレイが睨む返す。

『あれはパートナーがいけないんだ!』

「違うな、十二支くんの術力は高い、あの盾、ダークスタードラゴンの盾が無ければ竜騎機兵ランドドラゴンは倒せただろう。そしてダークスタードラゴンの盾に術が無効化させられたのは、お前の力よりダークスタードラゴンの力が勝ったからだよ」

 その十斗の冷静な言葉にレイは睨み返すしか出来なかった。

 その後、十斗は七華の方を向く。

「それで七華、お前自分だったら方法があると思っていないか?」

 その言葉に七華が慌てて首を横に振り断言する。

「実際戦っていない人間の言葉には意味はありません」

 十斗は七華とレイを見て言う。

「断言してやるよ、ナナカレイは強い、少なくともイフシレイよりは」

「初戦で較べられるのは問題だと思いますけど」

 その七華の言葉に十斗が首を横に振る。

「熟練度の問題じゃない。総合的な問題だ。元々レイは相手に合わせることが出来るタイプでは無い。それを上手くコントロールしていたのは七華だ」

 レイが七華を見る。

「そして七華が竜騎機将の初期パイロットだった事は我々にとっても幸運だった。十二支の態度は特別ではない、元々違う分野の人間だ、こっちの指示等より自分の考えで動くのが普通なのだ。七華みたいに、こちらの考えを理解しこちらの話を聞き、必要な事を言う。当然だが、なかなか出来ない事をやってくれていた」

 オペレーター達が頷く。

 そして十斗が七華を見て言う。

「俺たちは七華くんを必要としている。万年竜殺しの父親でもダークスタードラゴンを生身で倒した兄でもなく、お前、霧流七華を必要としているんだ」

 少し驚いた顔をして回りを見回すと、オペレーター達が笑顔で頷く。

 そして最後にレイと視線を合わせる。

『我は今はダークスタードラゴンに遅れを取っているが何時までも遅れを取っているつもりは無い。お前はどうだ?』

 その言葉に七華が笑顔で言う。

「そう簡単に接近戦の技で百剣に勝てるように成れると思わない。でも必ず勝つ方法を見つけだすよ。それがあちきの強さの筈だから」

 そして七華とレイの視線ががっちり合った。

「五郎、時間稼ぎを頼む、これから竜騎機将の再出撃だ」

 十斗の言葉に五郎が返す。

『わーたよ、こっちは病み上がりだ、出来るだけソフトにやってやるよ』

「本当にだからね!」

 双葉が念押しを入れる中、七華とレイが竜騎機将発進準備の為、駆け出す。



「さてさてどうするか」

 新型機、マサムネのコックピットで五郎が呟く。

「以前戦った事がランドドラゴンより一回り大きいし装甲も厚い、これはドラゴンキラーは通用しないタイプだな。そして一番の問題はあのダークスタードラゴンの盾だ」

『五郎、現在使える新装備の説明、マサムネにはドラゴンキラーの貫通力をアップしたロンギヌススピアを搭載しているわ。地面に縫い付けて動けなくさせたり出来るわよ』

 九菜からの通信に五郎が口笛を吹く。

「ビンゴの新兵器だな。まーこんなこともあろうかな兵器な可能性もあるが、使えるものは使うまでだ。お前等、あの盾を使わせろよ」

『了解隊長!』

 そして竜殲滅部隊のソード乗り達が魔法ミサイルの集中砲火を浴びせる。

『うるさい蠅が!』

 魔法ミサイルに対して竜騎機兵ランドドラゴンはダークスタードラゴンの盾を使った。

 その時、上空に上がっていた五郎のマサムネから新装備、ロンギヌススピアが放たれる。

 槍の形をしていたそれは、ダークスタードラゴンの盾で守られていない前足を貫いた。

「足止めはしたぞ。後は頼んだぞナナカレイ!」



 ナナカレイ降下出口と書かれて、スノーボードが置かれただけの外部出口。

『またそれか?』

「今回は暴れないの?」

 レイの疑問に七華が聞き返すとレイは少し考えた後言う。

『我はナナカを信用している』

 そして二人はスノーボード一つで上空一万メートルから飛び降りる。



「竜武、如月、射出用意完了しました」

 双葉の報告に、十斗が頷く。

「竜武、如月射出準備」

「竜武、如月型射出体勢に移行して下さい」

 双葉の通信にそって、ハンガースタッフ達が退避、特別射出口のでかい金属の卵、竜武如月型を格納した竜武玉が発射台に移動される。

 双葉は、竜武玉が完全に射出装置に固定されたのを確認した所で、専用スライドレバーを大きく後に下げて、固定する。

 そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標地点、空中を滑空する七華とマークが重なる。

「竜武、如月射出!」

「竜武、如月型射出します!」

 双葉が、専用スライドレバーの解除と同時にスライドレバーが前方にスライドする。

 それに合わせて射出装置が移動し、竜武玉は特殊射出用デッキから射出される。

「高度カウントします。8000・6000・4000・2000・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」

 十斗が二本突き出した専用レーバーを握る。

「真竜開放魔方陣展開」

 十斗がレバーを両側に開く。

 竜武玉の外殻が割れる。

 そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。



 中華人民共和国上空で、レイは自ら七華の体から離れ、魔方陣に向った。

『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、レインボードラゴン』

 その呪文に答え、レイは、魔方陣からの漏れる竜人界から力を己が体に変換し元の姿に戻っていく。

 そしてその口から光の吐息が放たれ、七華を覆う。

 七華の姿が掻き消る。

 それと同時に、四足をついた状態だったレイが、直立し、まるで人間の様な体型になると降下速度の差が縮まり、機械がレイの体の重要部分だけを覆い、その後、各種装備が展開装備されていった。

 睦月型より、一見すると装備が少なそうだが、幾つもの新機能を持った如月型竜武が展開された。

 そして竜騎機将ナナカレイは大地に繋ぎとめられた竜騎機兵ランドドラゴンの前に降り立った。

 竜騎機将ナナカレイが手を振り上げ、

『望みの船から舞い降りる』

 竜騎機兵ランドドラゴンを指差し、

『穢れし欲望を斬り裂く者』

 拳を両拳を打ちつけ、

『純粋なりし刀』

 腕組をして見下ろす様にして宣言する。

『竜騎機将ナナカレイ』



「十二支くんではあーはいかよな。イメージ戦略としてごつい男より可愛い女の子が頑張ってる方がマスコミ受けするもんだ」

 十斗のその言葉にバハムートのオペレータールームに冷たい視線が集まる。

「何にしろ、勝負は決まったな、七華くんならば動けない奴がどんな強い盾を持っていても、死角から攻撃出来るだろう」

 その時、竜騎機将ナナカレイは正面から斬りかかって行った。

「七華ちゃんどうして?」

 双葉の言葉に七華は通信で答える。

『このままあの盾を攻略しないであいつを倒しても前進はありません。あちき達はあの盾を打ち砕き、そして前進して勝利を収めます』

「あの盾は、術の力だけならナナカレイを越している竜騎機将イフシレイの強力な術を込めた一撃を防いだのよ、無理よ!」

 通信画面の中の七華は自信満々に言う。

『出来ます。強くなると誓ったあちきとレイそして皆さんのハ゛ックアッフ゜がある竜騎機将ナナカレイなら絶対に』

 竜騎機将ナナカレイの手に竜牙刀が握られる。

 そして両腕の装甲が竜牙刀の柄を包むように展開する。

「なんで、竜牙刀をもった状態でアームブラスターを展開するなんてどういうこと?」

 双葉が疑問符を浮かべる中十斗が合点が行った表情になる。

「成る程な、普通に打ち合って勝てないんだったら、打ち勝てるように打ち込めば良いと言う訳だな」



「お前の攻撃など、ダークスタードラゴンの盾の前では無効だ!」

 竜騎機兵ランドドラゴンに乗るテロリストはそう言って、ダークスタードラゴンの盾を竜騎機将ナナカレイに向けて展開する。

 竜騎機将ナナカレイはその刀を振り下ろすと、ダークスタードラゴンの盾にぶち当り止まった。

「やはりお前の攻撃など……」

『ブラスターレインボーフィニッシュ』

 次の瞬間腕から光が溢れ出し竜牙刀を包み、ダークスタードラゴンの盾を打ち砕き、そのまま竜騎機兵ランドドラゴンを切り裂いた。



 パイロットを排除し、完全に動きを止めた竜騎機兵ランドドラゴンを監視をしながら竜騎機将ナナカレイのコックピットの中から夕日を見る七華。

「あちき達はまだまだ強くなれるね」

『当たり前だ、我は最強の竜になる。お前もそれに相応しい存在となれ』

 レイの言葉に苦笑する七華。

「はいはい」

『信じておらぬな、我は……』

『遅れてすいません、直ぐに返還します』

 事件がおきた時、竜人界に行っていたレインがランドドラゴンを返還する為に戻ってきて、言った言葉を聞きながら七華が言う。

「多分父さんやお兄ちゃんみたいな強さを手に入れることは無理だけど、自分なりの力で強くなって見せるよ」



 夕日が沈む、しかしそれは新しい日の出を迎えるための準備。

 竜騎機将ナナカレイは一度敗れた。

 しかしそれは、新たな強さを身につける為のワンステップでしかなかった。

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