有名人?
北海道の地下にその施設がある。
竜騎機兵の生産工場が。
「この頃儲けが少なくないか?」
そういったのは、この世界に逃げてきた、一見威厳ありそうだが、態度に落ち着きが無いフォース=G=グラードである。
「まーあれだけDSSが竜騎機兵を倒してますし、あの竜騎機将って言うのが出てきた為、竜騎機兵が我々以外にも作成可能だという可能性を抱かせてしまったためですね」
そう平然と答えるのは、間違いなく日本人で、かなりの美形の雹見十三である。
「どうするんだ、このまま売り上げが下がっていったら!」
フォースの短絡思考に内心溜め息を吐きたくなるが、十三は笑顔のまま答える。
「安心して下さい。絶対に破れぬ兵器など最初から無いのですから。その証拠に今も注文は来ています。竜人界の政治不安は高まり、雇用金も低く抑えられています」
そして振り返り、後の工場を指して言う。
「量産設備も整い、新規顧客の対応もばっちりです」
そして一人の中年が入ってくる。
「例の重装備型のヒドラの買い手は付いたか」
その男こそ、竜騎機兵の機械装備の開発責任者、曇集四門である。
「ええ、付きました。それも日本で実働するそうですよ」
十三が穏やかな表情で言う。
「とにかくもっと儲けなければ、そしてあの憎き竜の巫女を排除して私が竜人界を征服するための資金を作らないと不味いのだ!」
その言葉に十三は笑顔で言う。
「その返り咲くつもりでしたら、契約金を値切るなんて真似はしない方が良いですよ」
「な……何の事だ」
明らかに動揺するフォース。
「今までは目を瞑って来ました。正直ちゃんとした商売になるかどうか解らない。最終的にはあんたを切るつもりでしたから」
淡々と続ける十三。
「でも、もう量産ラインは作りました。これで儲けるんです。下手を打たれたら困るんですよ。竜に渡す金額を抜き取るなんて真似は止めてもらいましょう」
笑顔を崩さず、何時もと何ら変わらないその言葉にフォースは寒気を覚えた。
その時、四門が宣言する。。
「私にとって必要な人間だ、消すな」
明らかな脅しに十三がそ四門の方を向いた時、四門は何時もサングラスに隠されていた瞳を見せていた。
その瞳を見た時、十三は大きく溜め息を吐いた。
そしてフォースの方を向いた時、何時もの十三に戻っていた。
「とにかく、裏社会でも信用が大切だって事ですよ。よろしくお願いします」
「解っておる」
そう言って出て行くフォース。
「私は研究の続きをする。何かあったら言え」
四門もそう言って出て行き、一人残った十三が言う。
「解ってれば、裏切られたりしませんよ」
そういいながら、新しい協力者のリストを捲りながら、四門の瞳を思い出す。
「あれは全てを捨てた目だ、道が無くなれば平然と自爆するな、気を付けないとな」
そして、テレビに映る十斗の姿を見て言う。
「そっちは楽しそうですね。まー私は私で楽しんでますよ」
『東京に現れた竜騎機兵に続き、ロシアに現れた竜騎機兵を退治した正義の竜騎機兵、竜騎機将ナナカレイこれがその勇姿です』
霧流家のテレビに望遠で映された竜騎機将ナナカレイの映像が流れる。
「あれが、七華なのね」
八子の言葉に味噌汁を飲みながら七華は頷く。
「所で、一つになるって説明だったけど、竜とエッチするの?」
七華が口の中の味噌汁を吹きそうになるのをなんとか堪え、飲み込んでから言う。
「どうしてそうなるの?」
八子は意外そうな顔をして言う。
「違うの? 男のそれを操縦桿代わりにあなたが体を使って操縦するんだと思ってたんだけど?」
「どこのエッチアニメですか! 特殊空間コックピットを作って、そこからシンクロして操るだけです!」
「そうよねーあたしも流石に竜とのハーフの孫は家業柄、困るから」
本気で言っている八子に大きな溜め息を吐きながら七華は食器を片付ける。
「学校行ってきます」
『そしてその竜騎機将ナナカレイのパイロットは女子中学生なんです。東京に住んでいる霧流七華ちゃん十四歳がそのパイロットなんです』
七華の写真がテレビに映った。
七華と三美が通う初等部から大学までエスカレート式学校、天野女子学園中等部二年C組の教室。
「ナナカ、朝のテレビ何!」
学校に到着するなり、三美が七華に詰め寄る。
「十斗さんと相談した結果、正直に話すことにしたの」
あっさり答える七華。
「そんな普通こーゆー時は秘密にするのがお約束でしょ」
そんな少し外れた突っ込みに七華は学校の外に集まりつつある報道陣を見ながら答える。
「あちきは、出撃のたんびに、トイレ行ったり、親が死んだりするのやなの」
不満気な三美。
そしてクラス中の視線が集まる中、七華は平然と授業の準備をしていると、数人の教師が教室に入ってくる。
「霧流は居るか!」
体育教師の言葉に七華が立ち上がる。
「ここに居ます」
「生活指導室に至急来なさい!」
三美が心配そうに見ると七華は平然とした顔をして言う。
「大丈夫、あちきがこんな事を予想しなかったと思う?」
三美は少し考えてから首を横に振る。
「ナナカだったら、こーなる前に校長達の弱みを掴んどく」
七華は頷く。
「準備はちゃんと出来てるよ、何せ今回は世界に喧嘩を売ったワンウィークウイナーが付いてるんだから楽勝だったよ」
そして教室を出て行く七華。
『あいつって何時もあーなのか?』
何時の間にかに現れたレイが言う。
「うん。不良グループと喧嘩した時も喧嘩始める前に、相手の秘密を探り出して、ばらされたくなかったら大人しく負けを認めろって脅してた」
普通に答える三美。
『やっぱパートナー間違えたかな?』
「きゃー可愛いコレ何?」
クラスメイトの女子達が集まってくる。
「一つ聞いて良いですか?」
DSSの飛行基地、バハムートのオペレーションルームの中央にある司令室でレインが言う。
「なんだ?」
何時もの暇そうな態度で十斗が言うと、レインが言う。
「こーゆーやり方はどうかと思いますが?」
そういって、天野女子学園の不正と、教師と生徒の不順異性(同姓?)交友の証拠の束を指差す。
「一応正攻法も考えたんだが、七華くんが面白いネタ一杯持ってたからな、まー俺がやったのは証拠固め位だな」
頭を押さえるレイン。
「因みに正攻法って、七華ちゃんの家に行った時みたいに、司令が説得に行くんですか?」
双葉の疑問に十斗が言う。
「学校関係に正攻法と言ったら、寄付金に決まってるじゃないか」
レインはそこにへたり込む。
「私は、協力する相手の選択を間違えたのかもしれません」
十斗はそんなレインを見て言う。
「間違えてないさ、俺以外誰に相談した所で、こんなに早くDSSを実戦段階まで運べないさ、まー例外は一人居るがな」
その言葉を聞いて双葉が興味津々な顔に成る。
「それって誰です。司令が自分と同じ位の実力持ってるって認めて居る相手ですよね?」
十斗が余裕たっぷりな笑顔で言う。
「俺とは少し違ったタイプだ、十三日の金曜日と呼ばれててな、そいつを敵にしたら必ず不幸が訪れる。まーぶっちゃけ世界相手に喧嘩売ってた時の俺のパートナーだ」
「司令のパートナー勤められる人間って、余り想像出来ませんねー」
双葉はそんな呑気な事を言う。
今日は比較的穏やか空気が流れていた。
「お帰り。どうだった」
教室で七華の帰りを待っていた三美の言葉に七華は、自分の席で寝ているレイを近くの女の子に手渡しから言う。
「OKお咎めなし。その上、DSSの仕事はボランティア活動の一環として出席扱いになるようにしてくれたよ」
「流石、ナナカ」
三美が単純に喜ぶなか、クラスメイトの一人が聞く。
「ってアルバイト禁止のうちの学校で良く許して貰えたわねー」
七華が平然と言う。
「そりゃ年間数百万の横領と世間に出たら間違いなくテレビ物の高校教師ネタ出したら、断れるわけないじゃん」
教室に物凄い冷たい空気が舞い降りた。
七華と三美の下校途中で毎度のお馴染みの間食タイム。
本日はお好み焼き。
三美がお好み焼きの世話をしている間に七華がレイに問いただす。
「どうしてあちきの側に居ることにしたの?」
『何時も引っ付いてると逆に引かれるから、少し離れた所に居てピンチの時に颯爽と現れピンチを救う方が受けが良いと聞いた、何時でも出撃出来るようにとナナカの側に来た』
レイが器用にへらを使って焼きあがったお好み焼きを口に入れる。
「言ったの五郎さんでしょ?」
七華が、お好み焼きのえびが入っている所切りとって口に入れる。
『そうだが、どうして解った?』
レイが驚いた顔をして七華の顔を見る。
「おにいちゃんがどうしたの?」
話をあまり聞いていなかった三美も聞いてくる。
「五郎さんってパイロットだから、普通の女性と何時も会えないから、そんな幻想を抱くんだよ。世間一般じゃ、結婚をする相手は何時も側に居る人の方が良いって統計知らないんだよ」
その言葉にレイが驚く。
『そうだったのか、それではやはりレインの側に居た方がいいのだな』
今にも戻りそうなレイに七華が言う。
「因みに一番嫌われるのは、そーゆー落ち着きが無いタイプだよ」
『そーだな、ここは当初の目的通り、いざって時に頼りになる所を見せる作戦で行こう』
無理やり納得するレイはほって置きながら、七華と三美がお好み焼きを食べていると、数人のテレビ関係者がお店に入ってくる。
「突然ですがいいですか?」
七華は微笑みながら言う。
「これ生?」
「えーと一般人も映るので編集して送るつもりですが」
アナウンサーのお姉さんの言葉に七華が言う。
「それは良かったね。首にならないで済むよ」
七華が笑顔で言う。
「どういうことナナカ?」
「十斗さんねマスコミに強いコネ持っていて、あちきの私生活に関して放送することを禁止するルールを各局に伝えてあるの。この人たちはそれを知らないで来たから、間違っても生放送で流していたら結構酷いペナルティー払うことになって、下手したらこの人達クビになってたの」
アナウンサーの顔が引き攣る。
「そんな脅し言っても駄目ですよ私達は知る権利が有るんですから」
マスコミの人間のお約束な台詞を言うと七華が言う。
「脅しなんて人聞きが悪い。あちきはただ真実を言っただけだよ」
その時、七華のDSSから支給された、地上のありとあらゆる所で通じる携帯電話が鳴る。
「はい、こちら七華」
七華が出ると双葉の声が聞こえてくる。
『竜騎機兵でたわ、場所は新宿山下公園。どうする?』
七華は少し考えてから言う。
「司令に連絡して、白バイの人にあちきを送って貰える様に手配してと」
『解ったわ』
アナウンサーの女性が嬉しそうな表情になる。
「もしかして竜騎機兵が出たんですか?」
その言葉に三美が言う。
「この人達、竜騎機兵が出て嬉しそうだねー」
七華はあまり気にした様子も無く言う。
「仕方ないよ、この人たちだって、視聴率って数値で生きてる人間だもん。少しでも人の目を引く情報が欲しいんだよ。例えそれが人が何人も死ぬことになってもね」
アナウンサーは七華の言葉に痛いところ突かれたって顔になる。
「えーとそれは違いますよ。私達はより真実を伝える義務が……」
それに対して七華が言う。
「真実の前に伝えることがあるんだけど解ってる?」
アナウンサーが何の事かわからないって顔になる。
「避難先や、避難の仕方。それを早く伝えないと被害が拡大するよ」
荷物の整理を済ませてレイを持って席を立つ七華。
お会計を済まして外に出ると丁度白バイが来る。
「お願いします」
白バイのお兄さんは不敵な笑みを浮かべて言う。
「任せておきな!」
七華とレイをつれて出発する。
残ったアナウンサーのお姉さんが三美に言う。
「えーとあの子いつもあんななの?」
三美が力強く頷く。
「ナナカは自分が正しい事の為に何時も全力であたる、本当にいい親友だよ」
そのアナウンサーは今まで自分達が視聴率に囚われていて、ろくに自分が正しいと思うことを追っかけてなかった事を思い出していた。
新宿山下公園の周囲で、牽制を続ける五郎が率いる竜殲滅部隊。
「にしても今回の竜騎機兵ヒドラは随分重装備だなー」
五郎がぼやくと
『今回の竜騎機兵ヒドラを竜騎機兵ヒドラヘビーと仮定するそうよ』
双葉の答えに頷く。
「別種としたか、おいソード1から3、少しアタックする、フォローしろ」
『了解』
五郎は竜騎機兵ヒドラへビーの科学兵器攻撃の雨を回避しながら接近して、肩に標準をあわせる。
「牽制させてもらうぜ! ドラゴンキラーファイアー」
そしてブレイドから発射されたドラゴンキラーは、一直線に竜騎機兵ヒドラヘビーの前足に向って飛んでいったが、装甲に弾かれた。
「冗談だろう、まさか竜の世界の無効化に失敗したのか?」
『違うわ、相手の科学装甲がドラゴンキラーの攻撃力を上回っただけよ』
九菜が説明する。
「本当かよ?」
『ええ、相手もこちらの装備を研究して、ドラゴンキラーの対抗策として、装甲の強化してきたって訳ね。考えたわね』
「それじゃあ俺じゃあこいつを倒せないのか?」
それに対して九菜が答える。
『そんな事は無いわ、ただ、装甲の薄い部分に何発か打ち込む必要がある為、それ相当のリスクを背負うことと、ヒドラを殺す覚悟が必要だけどね』
五郎は舌打ちする。
「とにかく、七華待ちだな」
『良いんですか隊長?』
七華の登場を快く思っていない隊員の言葉に五郎が居る。
「勘違いするなよ、俺達は自分のプライドの為に戦ってるわけじゃないぜ。俺達の正義の為に戦っているんだ。その為には屈辱的な事もあるが、己の信念を貫くと言うことはそう言う事だ」
断言する五郎に言葉を無くす。
『それにな、いざ七華ちゃんが危険な状態になったら隊長はリスクも相手の命も無視して助けるさ。うちらの隊長はそういう人間だ』
副官ともいえる人間の言葉に苦笑があちこちから起こる。
「基地に戻ったら殴るからおぼえてろよー」
七華は新宿山下公園に着く。
白バイから降りて白バイ警官に頭を下げる七華。
「ありがとうございました」
それに対して白バイ警官は言う。
「俺は正直お前みたいな子供が戦うのは反対だ。だが、お前があれを倒す有効な力を持ってる。一つだけ約束してくれるか?」
七華が言う。
「なんですか?」
白バイ警官は七華の頭に手を置き言う。
「無茶するなよ。お前が自分の命を一番大切にしろ」
そういって避難誘導の為に移動する白バイ警官。
『テレビで見ていた警官とは違うな?』
レイの言葉に七華が言う。
「きっと本当はあの人みたいに良い人が多いはずだよ、だって誰かを守りたくって警官に成ったんだから」
そして七華も目的地点に向う。
「七華ちゃんが目標地点に到着しました」
双葉の言葉に十斗が頷く。
「竜武、睦月射出準備」
「竜武、睦月型射出体勢に移行して下さい」
双葉の通信にそって、ハンガースタッフ達が退避、特別射出口のでかい金属の卵、竜武睦月型を格納した竜武玉が発射台に移動される。
双葉は、竜武玉が完全に射出装置に固定されたのを確認した所で、専用スライドレバーを大きく後に下げて、固定する。
そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標地点、山下公園にマークを合わせる。
「竜武、睦月射出!」
「竜武、睦月型射出します!」
双葉が、専用スライドレバーの解除と同時にスライドレバーが前方にスライドする。
それに合わせて射出装置が移動し、竜武玉は特殊射出用デッキから射出される。
「高度カウントします。8000・6000・4000・2000・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」
十斗が二本突き出した専用レーバーを握る。
「真竜開放魔方陣展開」
十斗がレバーを両側に開く。
竜武玉の外殻が割れる。
そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。
七華はレイを空中の魔方陣に向けて投げつける。
『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、レインボードラゴン』
その呪文に答え、レイは、魔方陣からの漏れる竜人界から力を己が体に変換し元の姿に戻っていく。
そしてその口から光の吐息が放たれ、七華を覆う。
七華の姿が掻き消る。
それと同時に、四足をついた状態だったレイが、直立し、まるで人間の様な体型になり、竜武の装備が体を覆っていく。
そして山下公園にその巨体を現し、その姿をテレビ局のヘリが映す。
竜騎機将ナナカレイが手を振り上げ、
『望みの船から舞い降りる』
竜騎機兵ヒドラヘビーを指差し、
『穢れし欲望を斬り裂く者』
拳を両拳を打ちつけ、
『純粋なりし刀』
腕組をして見下ろす様にして宣言する。
『竜騎機将ナナカレイ』
「なんですかあれ?」
バハムートの司令室でレインが唖然とする。
「イメージ戦略だ。かなり考えたんだぞ」
十斗が平然と答えると、双葉を始めとするオペレータルームのメンバーが大きな溜め息を吐く。
『カッコイイじゃないか。俺もやりてーな』
五郎の言葉に双葉が泣いてすがる。
「お願いだから止めて」
『こっちの世界の人間の考えることは良く解らんよ』
竜騎機将ナナカレイのコックピットの中にレイのぼやきが聞こえる。
「一応正義の味方っぽく振舞わないといけないから、決め台詞も作ったの。少し臭いくらいが丁度良いしね」
そう言いながら目の前に居る竜騎機兵ヒドラヘビーを見る。
「かなり装甲が厚いみたいだけど、なんとかなる?」
その言葉に、レイが自信たっぷり答える。
『当然だ。我を舐めるな!』
そして、突っ込んでくる竜騎機兵ヒドラヘビーを受けとめる。
七華が、アームブラスターを展開させ、レイが呪文を発動させる。
『ドラゴンサンダー』
収束された竜魔法の電撃が、竜騎機兵ヒドラヘビーに直撃する。
『やったか?』
レイのその言葉に答える前に、竜騎機将ナナカレイが大きく後に飛び下がる。
竜騎機将ナナカレイが居た所にとんでもない量のミサイルが直撃している。
「電撃対策も十分みたいだよ」
七華の冷静な言葉にレイが熱くなる。
『次は決める!』
大きく息を吸うレイ。
『それは駄目、竜騎機兵ヒドラヘビーの装甲を打ち破るほどの攻撃を放ったら周りにとんでもない被害を及ぼすわ』
九菜が調査結果を通達して来た。
「避難の方は?」
七華の言葉に双葉の声が答える。
『警察官の人が急いでるけど、完全安全圏までは三十分はかかるわ』
それを聞いて、ミサイルの雨と突撃を繰り返す竜騎機兵ヒドラヘビーにレイが苛立ちはじめる。
『いい加減我慢の限界だ。我はやる』
口にどんな物でも燃やし尽くしそうな熱量を込めたそれを吐き出そうとしているレイに七華は冷静に一言。
「切れて、こっちの世界に大きな被害出したら、レインさんが本当に困るだろうなー」
その一言でレイの口の中の炎の温度が一気に下がる。
「ずっと我慢してる必要ないよ。そうでしょ九菜さん?」
七華は確信を持ってバハムートに居る、開発部門の責任者に問いかける。
「当然よ! 私がこんなこともあろうかと装備を用意してない筈が無いでしょうが!」
バハムートのオペレータルームに陣取る九菜が大声で宣言する。
「十斗、闘竜の誓槍行きましょ」
レインが慌てて静止する。
「九菜さんあれは、まだ試作段階で、どんな影響を受けるかわかりません」
十斗がレインの言葉に頷く。
「確かに、試作段階で、上手く行く保障は無く。しかしこのままほっておいて事態を悪化させる訳には行かない。DSSは常に相手を圧倒する為にある。闘竜の誓槍射出準備開始しろ!」
オペレータ達が一斉に準備に入る。
『そういう事で、五分だけ時間稼いで』
双葉の言葉に強く頷く七華。
「そういう事で、良い所をレインさんに見せるチャンスだよレイ」
『本当か?』
レイの半信半疑の言葉に七華が力強く頷く。
「もちろん、女は女の為に耐える男の姿に惚れるんだよ」
『頑張るぞ』
あっさり騙されるレイ。
七華は竜牙刀を手に取り唱える。
『血の盟約の元、七華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀』
『見てください、突如竜騎機将ナナカレイの手に一本の刀が握られています』
七華達を送った白バイ警官がそんな声を聞きながら避難誘導を続行して居た。
「頑張れよ嬢ちゃん」
そう言って、竜騎機将ナナカレイの巨体を見上げると、そこに竜騎機兵ヒドラヘビーが突っ込んでくる。
竜騎機将ナナカレイはそれを刀を盾代わりにしながら受け止める。
連続して放たれるミサイルは、周囲を旋回するDSSの戦闘飛行機達が迎撃する。
後退し、再び竜騎機兵ヒドラヘビーは突撃を行う。
そして再び、竜騎機将ナナカレイはその突撃を受け止めた。
「おいおいさっきから攻撃しないじゃないかどうしてだ?」
その時、一人の少年が言った。
「あの装甲を打ち破る程強力な技を使えば、この周辺は尋常ではない被害を与えるからだろ。あいつの妹らしい考え方だ」
そういってその肩に黒いトカゲを様な物を連れた少年は興味を無くした様にその場を離れていった。
「避難急がないと不味いな」
そう言って白バイ警官は避難誘導を急ぐ。
『……まだか?』
三分迎撃を始めてそれだけでレイは弱音を吐いた。
七華は小さな溜め息を吐いてから言う。
「後およそ二分の我慢だよ。頑張って」
『当然だ!』
そう言って再度突進して来る竜騎機兵ヒドラヘビーに向って七華は竜牙刀を盾の様に構えた時、竜騎機将ナナカレイの手から竜牙刀が滑り落ちた。
『しまった!』
レイが慌てるが、七華は比較的落ち着いて、防御体制をとったが、予想していた衝撃は来ない。
竜騎機将ナナカレイが前方を見ると、足にドラゴンキラーが刺さり竜騎機兵ヒドラヘビーの動きが止まる。
『俺も居るんだ、安心しろ。それよりそろそろ来るぞ!』
『グッジョブ五郎さん』
七華のその声を聞きながら双葉が言う。
「司令、闘竜の誓槍の準備出来ました」
そして十斗が頷き、言う。
「闘竜の誓槍スターマーク!」
その言葉にオペレータ達が、竜騎機将ナナカレイを中心に六亡星を描く様に十二個点をマークする。
「闘竜の誓槍、射出!」
「闘竜の誓槍、射出します!」
そう言って、双葉が、手元のコンソールの六亡星型に配置された十二個のスイッチを次々に押していった。
「来たよ!」
竜騎機将ナナカレイの周囲に十二本の巨大な槍が降ってくる。
その外円は竜騎機兵ヒドラヘビーも包んでいた。
『我は闘う者なり、その誓いと共に、我等に真の戦場を与えよ、ドラゴンコロシアム』
そして、空間がずれた。
ほんの少しだけずれた異世界。
異世界に故にこちらの世界に影響が無い場所。
竜達の戦いの場所。
『もういいんだな!』
レイの言葉に七華が頷き言う。
「それじゃあ派手に行きますか!」
七華は竜騎機兵ヒドラヘビーにターゲットを合わせて、スイッチを押すと竜騎機将ナナカレイの装甲からミサイルが発射される。
それは竜騎機兵ヒドラヘビーの周りに着弾し、大量の液体窒素を撒き散らす。
その場は超低温地獄化したが、竜騎機兵ヒドラヘビーの竜の世界が、その地獄すら無視させた。
レイは鉄すら瞬間で昇華するブレスを吐き出す。
竜の世界を伴ったそれは、液体窒素で冷やされた世界に決定的な温度差による破壊をもたらした。
竜騎機兵ヒドラヘビーの竜の世界が、竜騎機将ナナカレイのブレスに篭った竜の世界に中和され、その途端に一斉に襲い掛かる冷気と熱気に自慢の装甲が打ち砕かれる。
「アイスアンドファイアーワールド」
竜騎機将ナナカレイは、竜牙刀を拾い上げ、斬撃の構えを取り言う。
『悲しき運命で戦いし者に、我が剣を持って、正義を示さん』
竜牙刀が振り上げられる。
『レインボーフィニッシュ』
竜騎機兵ヒドラヘビーが斬り倒され、何時も通り傷が回復している。
竜騎機将ナナカレイから放たれた結界弾が返還用の魔方陣を作り出す。
『ここは異界なり、正しき理を持って、正しき世界に帰れ、竜返還』
レインの呪文に因って、ヒドラが元の竜人界に戻っていく。
そんな様子を新都庁ビルの最上階の喫茶店で確認していた、十三が目の前に、先程白バイ警官と会っていた少年が現れた。
「お前の話しに乗ってやる」
十三は微笑み言う。
「ありがとうございます」
「いいさ、俺達も奴を倒すために更なる力が必要だったんだからな」
その少年、神谷百剣が自分の左目潰した傷跡をなぞりながら言う。
「あのドラゴンバスター霧流一刃を倒す為のな!」
その言葉に頷く、肩の黒いトカゲ、いやレイと同じ竜の赤子に擬態する者。
『我が父親の無念を晴らして貰えるのですね』
その言葉に百剣が頷く。
「俺とお前とで晴らすんだよ、どんな力を使ってもな」
十三は拍手をする。
「それこそ真実です。中途半端な誇りはひとりよがりでしかありません。相手に勝つために何でもする、それこそが正しい姿勢ですよ」
百剣は危険な笑みを浮かべ、言う。
「そー言う意味では、お前の提案は丁度良かった。あいつも自分の妹をズタボロにされれば飛んでやってくるだろうからな」
十三も頷く。
そして百剣は窓から見える竜騎機将ナナカレイとその先に居る者を睨む。
「俺達は絶対に勝つ!」