総力戦?
「ここって何の施設なんですか?」
バハムートに負けない設備を見まわしながらの七華の言葉に、十斗が答える。
「十三が、DDCがバハムート攻略の一環として造った施設だ。何の因果か、DSSの私達が使うことになったがね」
無事脱出したDSSのメンバーがこの施設に集まっていた。
「私たちの基地が奪われ、相手の組織の名はオーフェンと名乗っていた」
その言葉に七華が驚きの表情になる。
「本当ですか?」
十斗が問い返す。
「七華が知っているという事は、そっちの関係の組織か?」
七華が頷いて説明しようとした時、別のところから説明が始まる。
「異界からこの世界に悪意を持ってやって来た、異邪と人の間に生まれたハーフ。親との再会の為に異界との扉を開こうとする者。そして八刃の敵対者だよ」
その声の主は較であった。
その後ろには、千夜と剣一郎が居た。
「ヤヤお姉ちゃんどうしてここが解ったの?」
七華の質問に一人の人の良さそうな中年が現れて言う。
「八刃の情報力を甘く見たら駄目だよ」
その中年を見て、今度こそ七華が驚いた顔をする。
「どうして百母の長がここに?」
「オーフェンが出た以上、我々八刃の仕事という事だ」
一人の気が強そうな老人が現れて答えた、それに続き、一人の老婆が現れ言う。
「後の事は、我々八刃にお任せください」
「萌野の長に遠糸の長まで、来てるなんて」
殆ど目が点になっている七華を他所に、五郎が八刃の人間に詰め寄る。
「いきなり出てきて何のつもりだ! 奴等は俺達の敵だ!」
それに対して気の強そうな老人、萌野の長が言う。
「小僧、身の程を知れ」
「なんだと!」
いきり立つ、五郎に十斗が言う。
「止めろ、五郎!」
五郎が何か言いたげに振り返るが、十斗の視線がそれを押し止める。
そして、十斗が八刃の重鎮達の前に出て言う。
「今回の件は竜関係で起こったテロの一種として考えられます。その場合、国連の決定で、DSSが最優先権限を持っています」
十斗の言葉に萌野の長が鼻で笑う。
「国連なんぞ、とっくに話はついている。あのバハムートに関しては全て、我々八刃が始末することでこの日本を始めとする全ての国に了承はとれているわ」
十斗が驚いた顔をすると較がフォローに入る。
「八刃と表社会とは取り決めがあるんだよ。八刃が基本的に表に干渉しない限り、裏の仕事において全ての権限を明け渡すって。そういった意味では七華が、DSSに所属していたのは本気で特例だったんだよ」
その言葉に七華が困った顔をして答える。
「一応竜が関っていて、灰色だったからって言う話だよね」
頷く較。
そして萌野の長が言う。
「解ったら、ここで大人しくしているのだな」
悔しそうな顔をするDSSのメンバー。
そんな顔を見て、較が少し考えた後、十斗に言う。
「DSSってさー、あちきが株を持ってる組織の資金を元に運営されていたんだよね?」
その言葉に十斗が何か感じる物があり即答する。
「そうです。事実上、ヤヤが最高株主と言っても言い過ぎではありません」
較が頷き言う。
「だったら、あちきの配下として、今度の作戦に参加させる問題無いですよね?」
その言葉に萌野の長が怒る。
「馬鹿な事をいうな、八刃で無い人間が何の役に立つ!」
較は剣一郎を指さして言う。
「今、オーフェンハンターをやっているメンバーの半数は八刃以外の人間だって知ってますよね。そして中には八刃を越す能力を持つ人間もいる。剣一郎がその良い例ですよ」
その言葉に、萌野の長が少し憎々しげに剣一郎を見ると、人の良さそうな中年、百母の長が言う。
「戦力が多いに越したことは無い。今度の戦いはかなり大事になりそうなのですから」
その笑顔に、萌野の長が舌打ちをした後言う。
「あくまで作戦の主体は八刃だ! それは譲れないぞ!」
「了解、それで司令ですけど、お父さんや霧流の長が居ない以上、実力から百母の長にやってもらおうかと思いますが、如何でしょうか?」
較の言葉に、百母の長が首を横に振る。
「私は、人を使うタイプではないですよ。ここは八刃の盟主とも言われる白風の次期長、必殺の白手ヤヤに任せたい」
萌野の長が驚く。
「長でもない二十歳の娘に任せるだと!」
しかし、萌野の長と一緒に来た老女、遠糸の長が頷く。
「白風の次期長でしたら、適任でしょう。そちらの人たちとも繋がりがあるようですし」
いきなりの展開で戸惑う較に、千夜が言う。
「あのバハムートとの因縁だ、受けるべきだな」
その言葉に較が頷き言う。
「それでは、現在の状況の確認等をする為、主な人達は集まって下さい」
そして、八刃とDSS連合がバハムート攻略に動き始めた。
「ようやく我々の元に戻ってきたわね」
バハムートのオペレータールームでそう呟く、四門と一緒だった少女、オーファン六頭首の一人、魔磨。
「ローデアの失敗で、八刃の監視下に置かれていたこのバハムートに、我等オーフェンが直接手を出す事が出来なかったからな」
レインを連れ去った男、オーフェン六頭首の一人ファザードが続ける。
そして、十斗が座っていた司令の席に座る、一人の美少年が言う。
「これも全て、僕の頑張りのおかげだよ。この作戦を成功させれば、いよいよ懐かしの父上に会える訳だ」
その美少年を見て、魔磨が言う。
「貴方の、オイノの苦労は認めるわ。しかし、八刃が動き出した今、これからが問題よ!」
その言葉にオーフェン六頭首の一人、オイノが高笑いをあげる。
「あの時とは違う、態々僅かに繋がっていた異界に住む竜、魔神竜と契約して、バハムートをバハムートヘルとして蘇らせた。バハムートヘルは元のバハムートの数倍の力を秘めている。例え前回の様な事をされても沈む事は無い!」
魔磨が微笑む。
「今回の作戦には、六頭首が三人直接出張ってきていて、オーフェンハンターなんて名乗っている最強の鬼神をひきつける為、六頭首の一人、グラードまで動いている。失敗する訳が無いわね」
ファザードが立ち上がり言う。
「私は、例の巫女の様子を見に行く」
四門は、バハムートの中枢で、目的の達成の為の準備を続けていた。
「貴方は何でこんな事をするのですか?」
バハムートのエネルギーの全てを賄っていた万年竜の心臓を元にしたエネルギー機関に縛り付けられたレインが言う。
四門は一切の迷いが無い顔で言う。
「死んだ妻を取り戻す為だ」
その言葉にレインが驚く。
「貴方は死者の復活を望むと言うのですか?」
四門は首を横に振る。
「死人が蘇らせられて喜ぶと思うのか?」
逆の問い掛けにレインが戸惑う。
「喜ばないと思います。それが解るのでしたら何で?」
四門が真っ直ぐだが、強大な狂気を潜ませた瞳で答える。
「だからこそ、このバハムートの極限の力と君の時空神の力を引き出す巫女としての力が必要なのだよ」
レインが困惑する中、四門が呟く。
「そう、私はあの頃の妻を取り戻すのだ」
そこにファザードが来る。
「四門よ、あれは何時実行できる?」
四門は、幾つかの計器を確認した後答える。
「もっとも適した場所にこのバハムートヘルを移動したのち、実行する予定だ。その場所の特定と移動におよそ二十時間と言った所だ」
その言葉にファザードが言う。
「つまりその二十時間と起動後の完了までの時間、四時間、丸一日このバハムートヘルを死守すればいいのだな?」
四門が頷く。
「任せたぞ、お互いの目的の為に」
八刃とDSSの主だったメンバーが、会議室に集められていた。
「一応、事情がわからない人も居るから最初から話します」
そう前置きして較が説明を始める。
「DSSが基地として使って居たバハムートは、七華のお父さんが殺した万年竜の死体を元にオーフェンが対八刃用の兵器として開発していた物です」
意外な真実にDSSのメンバーが驚く。
「それがどうして、私の元に来たのですか?」
十斗の言葉に百母の長が言う。
「物が大きすぎて処分も儘ならなかったって言うのが真実で、表に預けていたのですよ。そして今のバハムートに改造されて、十斗さんの手元に行き着いたのです。八刃もその危険性は知っていたので常に監視していました。実際今回のオーフェンが関係していると報告していたのもその監視の人間です」
舌打ちをして萌野の長が言う。
「そんな甘い事だからオーフェンに奪い返されるのだ! わしの発言した様に即座に廃棄して居ればよかったのだ!」
その言葉に遠糸の長が言う。
「過ぎた事を幾ら言っても仕方ありませんよ。これからの事を考えましょう。ヤヤ話を進めて」
較は遠糸の長に一礼してから話を続ける。
「遠糸の長が言う様に、今更オーフェンの手に渡ったバハムートをどうこう言っても仕方ありません。問題は敵の目的です」
それに対して十斗が答える。
「DDCの兵器開発者、雲集四門が言っていた、妻を取り戻す為だと。四門の妻は世界大戦の時に死んでいる。奴は死者を復活させようとしているみたいだが、可能なのか?」
その言葉に八刃の人間が揃って難しい顔をする。
「やはり不可能なのか?」
十斗の確認に百母の長が言う。
「その判断が難しいのだよ。単純に肉体を復活せせる等は、今の科学技術でも可能だね。問題になるのは記憶や精神と言われる部分だ」
較が少し考えてから言う。
「人間として考えるから難しいけど、凄く高性能なAIロボット、例えばアトムが居たとして、ボディは幾らでも作り直せるけど、壊れたAIを直すにはどうしたら良いと思う?」
九菜が即答する。
「バックアップを取っておいて、それを新しいボディに組み込むわね」
較が頷く。
「つまり、バックアップがあれば人間でも精神まで復活させる事が出来る。逆を言えばそれが無い限り、元に戻す事は不可能って事だよ。バックアップは無かったと思う。あれば態々バハムートを使う程じゃないから。時空に干渉して、あるかどうかわからないアカシックレコードなんて物でも見るつもりなのかもね」
首を傾げる重役でも何でも無いのに居る三美。
「なんですかそのアカシックレコードって?」
それに対して千夜が答える。
「普通に訳せば公式記録だけれども、オカルト的に言うと、神様が書いたとされる、全ての歴史を記述された記録。空想の産物って言われているけど、溺れるものは藁をも縋るって言うから全く可能性無いわけじゃないわ」
十斗が納得した顔になる。
「詰り、そのアカシックレコードを見て、過去の妻のバックアップを作製しようとしていると考えているのだな?」
頷く較。
「そして、それにオーフェンがのって来て、挙句の果てに最悪の竜と名高い魔神竜まで絡んでる」
「何なんだよ、その魔神竜って?」
焦れた五郎の言葉に較が七華を見る。
「竜はあたしの担当、魔神竜はこの世界にも一回だけ来た事あったの。強さで言えば、バハムートの元になった万年竜クラス。でも一番の問題は、異界の竜と結びつく事で、死んでもその竜が生きている間は幾らでも復活する事。そして結びついた竜も、魔神竜が死なない限り殺されても死なないの」
少しの沈黙の後、双葉が冷や汗を垂らしながら言う。
「それって不死身じゃない?」
七華が頷く。
「殆ど不死身。ただ、この世界に現れた魔神竜は、当時の霧流との戦いで、連続的に殺され続けた結果、結びつく竜の力が追いつかず、滅びたよ」
その説明に較が続ける。
「今回、それは期待出来ない。なんせ一度滅びたと言っても、万年竜。魔神竜の力で一度復活すれば、魔神竜を百や二百回殺した所で、力不足には成らない。そこであちき達がするのは、両面作戦。魔神竜の方は霧流の長に一任して、こっちでもバハムートを潰す。その役目は七華任せたよ」
いきなりの話に驚く七華。
「どうしてですか? あちきじゃ力不足だよ!」
「竜はお前等霧流の専門だろう。そして霧流の直系でこの場に居るのはお前一人、他に選択肢は無かろう」
萌野の長の言葉に遠糸の長も頷く。
「安心しなさい。貴女には沢山の仲間が居るのでしょう? その仲間と一緒に闘えばきっと勝てます」
不安げな顔をする七華に較が言う。
「あちきが途中まで着いて行って、邪魔なオーフェンの相手はするから、貴女は、バハムートの心臓を壊す事だけを考えてれば良いわ。タイミングは親子の絆に期待してるからね」
少し躊躇した後、七華はDSSの面々を見てから強く頷いた。
「あちきやります!」
そして、レイが言う。
『レインを救い出すのを忘れるな!』
レイの言葉に頷く七華。
「落とすと成ると、戦う場所が問題になるが?」
十斗の質問に対して、較が答える。
「戦う場所は決まってるよ」
そう言って、地図を広げて指さす。
「八刃学園上空。ここは、世界の歪みを寄せ集めている場所、相手が儀式をするのには、もっとも適した場所だから、おびき寄せなくても向うの方からやってくるよ」
「学校の上なんて危険ではないですか?」
九十九の質問に百母の長が答える。
「そこはまだ開校前です。それにあそこは全て八刃が管理しているので多少の事があっても大丈夫ですよ。そして一度入ってしまえば、間結の人間が結界を張って、結界の外に被害を及ばなくしてくれるから大丈夫です」
「罠だと解れば逃げるのでは?」
十斗の質問に較が答える。
「それをさせないのが、残りの八刃のお仕事。百母の長が正面から攻撃して相手を牽制する。当然相手も部下を投入してくるだろうから、そこは突入班以外のメンバーで対応する。作戦開始は、バハムートが、八刃学園の上空に達した時。それまでにDSSの皆さんは、突入班になる竜騎機将とあちきをバハムートまで運ぶマサムネとムラサメの整備お願い」
そして作戦準備を開始する。
「ここは何処だ?」
百剣はシティーホテルの一室で目を覚ました。
「私が泊っているホテルだ」
ドアのところに居た英志が答えた。
「何故助けた?」
百剣の言葉に英志が言う。
「お前が使っていた兵器を使って、オーフェンがバハムートを乗っ取った。八刃は全力を持ってバハムートを落とす。私もそれに参加するつもりだ」
その言葉に、百剣は戸惑う。
「俺がオーフェンの行動を助けたと言うのか?」
頷く英志。
「私も人の事を言えた義理ではないがな。だからこそ今度の戦いでこの命落とそうと、必ず奴等の計画を潰す」
そう言って立ち上がると、部屋を出て行く。
残された百剣にセンが言う。
『私達はどうしますか?』
意外そうな顔をする百剣。
「お前が興味あるのは、親の仇である一刃を殺す事だけだと思ったが?」
センはその言葉に沈黙した。
百剣はその沈黙を肯定と受け取り言う。
「俺は、死んでも神谷だ。異邪の血を引くオーフェンに利用されてこのままで居られない。奴等の企みを打ち砕く」
そう言って、傷付いた体を起こす。
センがその肩に乗り言う。
『私は百剣と共に進む道を選びました。何処までも一緒に行きます』
センのその言葉に百剣が強く頷く。
「そうだったな」
そして歩み始めた百剣達であった。
DDCが造った秘密基地のオペレータールームで双葉が言う。
「バハムート、八刃学園上空に到達を確認しました」
その言葉に、現場に出る較の代わりという建前で指揮を任された十斗が言う。
「竜騎機将ナナカレイ・イフシゼロの準備を急げ! 間結の結界展開後、八刃の人間が足止めに成功したら、即座に発進させるぞ」
そこに、もう竜騎機将ナナカレイのコックピットに居る七華から通信が入る。
『十斗さん。今回の戦いが終わったら、DSSってどうなるんですか?』
その言葉にオペレータールームに緊張が走る。
十斗はあっさり答える。
「解散だ。DDCが無くなった今、もう竜騎機兵は出てこない。あのバハムートも今回は完全に廃棄するらしいしな」
悲しそうな表情をするメンバーに十斗が言う。
「だが勘違いするな。お前達はやり遂げたのだ。今度は自分達の手で、この世界を変えていくのだ。困難な道だろう。苦しい道だろう。しかしお前達は、力を合わせて人の力の及ばない竜と戦い勝って、今がある」
そこで一旦言葉を切って、基地内カメラを使って、DSSメンバー全員の顔を見てから十斗が言う。
「私や十三は間違った力に対抗する為、間違った力を手に入れようとして失敗した。お前達は、操られている竜に対して団結の力で打ち勝ってきた。その力の意味を間違えない限り、これからの戦いも勝てる」
涙を流すオペレーター達。
そして十斗が宣言する。
「さー、DSS最後の戦いだ絶対勝つぞ!」
「『はい』」
DSS全員の心が一つになった瞬間である。
バハムートヘルのオペレータールーム、オイノが言う。
「ここが、あれに最適な場所か。ここで後四時間頑張れば、再び愛しき父上に会える」
微笑むオイノにファザードが言う。
「ここからが正念場だ」
その言葉に、オイノがファザードを睨みつける。
「セカンドが煩い! 手は打ってある!」
そう言って魔磨を見る。
「行けるな?」
魔磨は笑顔で頷く。
「ええ、ばっちりよ」
そして、手に持った杖を掲げる。
「さー魔竜軍団よ、私達に力を貸すのよ!」
秘密基地のオペレータールームで双葉が叫ぶ。
「バハムートより、大量の竜が発生しています」
十斗がそれを確認しながら、マサムネの予備座席に座っている較に言う。
「相手は、魔神竜から戦力を借りてきたみたいだ?」
ディスプレイに映る較が頷く。
『大丈夫だよ、この程度の追加戦力は予測の内。八刃の力見せてあげるから』
微笑む較。
「バハムート南部の八刃防衛ラインと敵が接触します!」
双葉の声にオペレータールームの映像が変る、そこには生身の千夜と剣一郎の二人しか居なかった。
目が点になるオペレーター達。
しかし、次の瞬間本当の意味で驚愕した。
剣一郎が居合いをしただけで、数十メートルある魔竜軍団の竜の横一列が足を失う。
『我は神をも殺す意思の持つ者なり、ここに我が意を示す剣を与えよ』
その言葉に共に、千夜の手に神威が生まれると、千夜は穴が開いた魔竜軍団に突っ込んで行き、次々と魔竜の頭を一撃で切り裂いていく。
それでも突っ込んでくる魔竜は、剣一郎の居合いで確実に足を切り落とされて突進が止まる。
暫くその光景を見た後、十斗が言う。
「ここは大丈夫だが、他の所はどうだ?」
双葉は、他のところの映像も出すが、要所に八刃の人間が立っていて、信じられない力で魔竜軍団を蹴散らしていた。
バハムートヘルの北部、ここには萌野の長が単独なのに悠然と構えていた。
「久々の実戦だ! 思いっきり行くぞ!」
遠くに居る魔竜に向かって手を向けて唱える
『我が攻撃の意思に答え、炎よ集いて敵を貫け、弾炎翼』
集束された炎の塊は、一撃で魔竜の頭部を消し炭に変化させる。
強敵とみなし、一斉に向かってくる魔竜軍団に萌野の長が笑みを浮かべ両手を向ける。
『我が攻撃の意思に答え、炎よ全てを爆炎に包め、爆炎翼』
爆炎が、その場に居た魔竜達を一瞬の内に燃やし尽くす。
「次はどいつだ!」
バハムートヘルの全体が見られる八刃学園の時計塔に遠糸の長が居た。
「この年になってこんな大きな戦いに参戦するとは思いませんでしたね」
そう言いながらも、唱える。
『九尾弓』
すると、右手の腕輪の飾りが一つの弓に成り、遠糸の長が左手で構える。
遠糸の長は左腕の腕輪の飾り穴に手を入れて唱える。
『純白色鳥矢孵化』
遠糸の長の手には白い矢羽をもった矢が何処からともかく現れる。
その矢を番えて、上空、ライフルでも届かない空を飛ぶ魔竜の中心点を視線で射抜き、矢を放つ。
信じられない事にその矢は、視線で射抜いた所まで到達する。
『羽撃』
矢から生まれた光は、空を飛ぶ魔竜達を撃墜させていく。
「私の視界に居る限り、決して外には行かせません」
そして次の矢を番え始める。
「あの人達って本気で人間止めていませんか?」
双葉の言葉に秘密基地のオペレーター達が思いっきり頷くが、ナナカレイに乗っている七華が言う。
『八刃でもトップクラスって言われている人たちですから。でも、百母の長は、そんな人達を超越した所にいますよ』
その言葉に双葉が言う。
「でもこれだけ馬鹿げた力を見た後では、どんな凄い能力でも驚けないわ」
ディスプレイに映る七華が解っていないと言う顔をする。
『心構えをしといた方がいいですよ』
そして、作戦の要である、百母の長が、バハムートヘルの下に着いた。
バハムートヘルの中では魔磨が舌打ちをしていた。
「ひ弱な竜達ね! 仕方ない場所を移動させて!」
魔磨の言葉にオイノも頷く。
「移動させるぞ」
オイノは、自分の異邪能力で、バハムートヘルを動かそうとした時、バハムートヘルの全体が大きく衝撃で揺れた。
バハムートヘル直下の百母の長は、手に持っていたダイヤの目を埋め込んだ竜の彫刻を掲げて唱える。
『百母西瓜の名の元に、この寄り座しを用いて、ここに獣晶せよ、光集進竜』
彫刻は、光の竜と変化し、周囲の戦いの光を吸収しながら進む。
『光集めて突き進む竜よ、八つの頭を持ちし竜と化せ! 八頭光集進竜!』
光の竜の先端が八つに分かれると、それぞれが出鱈目に動き、四方八方からバハムートヘルに当たって、巨大なバハムートヘルを周りから削りに続ける。
秘密基地のオペレータールームに沈黙が訪れた。
双葉が目の前の数値を何度も確認した後、報告する。
「あの一撃一撃が、オケンセンスペアーのダークノヴァツイン以上の破壊力を持っています」
オペレーター達が必死にそれを確認する。
しかし、誰の口からもそれに対する訂正はあがらなかった。
その時、八子が現れて言う。
「六牙も負けていないわよ!」
そう言って、空中に一つの映像を浮かび上がらせる。
そこに、バハムートヘルにも負けない巨大な竜相手に、技を放ち続ける七華達の父親、六牙が居た。
映像の中の両者の一撃は、大地を砕き、丘を消滅させ、空間すらゆがませて居た。
「非常識過ぎる。どうしてこんな力があるの?」
双葉の呟きに八子が真面目な顔で答える。
「理由は目の前にあるでしょ。あのバハムートの元になった万年竜やいま六牙が戦っている魔神竜、共にこの世界で暴れていた事がある奴よ。そんな化け物がこの世界には、無数に来ていた時代あって、それに対抗する為に八刃の人間は自分の魂すら削り、力を磨いて、今の力を手に入れてた。表の世界にある科学兵器とは違う。大切な者を護る為に必要だからこそ手に入れた力なのよ」
そして八子はディスプレイに映る七華に言う。
「七華、貴女はあの魔神竜と戦っている六牙の娘であり、元新名の巫女である私の子供。そう、一刃が起きるかもと思いながらも激しい六牙の責めにあたしが、……」
『八子さん、細かい描写は必要ありません』
較が途中で止めると、何か不満そうな顔をしたが八子が続ける。
「貴女が本当に通じたいと思えば、六牙と意識を通じる事は出来る筈よ。行ってらっしゃい。私は家で皆の帰りを待っているから」
ディスプレイの中の七華が強く頷く。
『十分足止めも出来たみたいだから、突入班も出るよ!』
較の言葉に、十斗が言う。
「こっからがDSSの本番だ! 行って来い七華、十二支、五郎、九十九!」
十斗の言葉に答えて、五郎が言う。
『任せておけ! マサムネゼロ、晴晴五郎でる!』
マサムネが較を乗せて、基地を離陸する。
『フォローに入ります。ムラサメゼロ、晴野九十九行きます!』
続いて、九十九が乗るムラサメが出る。
『竜騎機将イフシゼロ、安倍十二支、飛びます』
十二支が操る、竜騎機将イフシゼロが、翼を羽ばたかせ、上空に上がっていく。
ナナカレイの中の七華が、周りに居るDSSのメンバーを見た後、ディスプレイに映るオペレータールームの人達も見る。
「レイ、あちきは、この人達を護りたい。だから絶対勝つよ!」
『当然だ! それとレインを救出して帰ってくる事も忘れるな!』
レイの何時もの声がコックピットに響くのを聞きながら七華が言う。
「竜騎機将ナナカレイ、霧流七華、出撃します!」
竜騎機将ナナカレイ達、DSSの最後の戦いが今始まった。




