大どんでん返し?
バハムートでは今、竜武皐月型・卯月型の改修・竜武水無月型の製造が急ピッチで進められていた。
そして、大怪我を負ったレイも全身を包帯でぐるぐる巻きに成りながらも、こっちの世界に戻ってきていた。
『レイ! 族長達に喧嘩売ったら大変よ!』
ゴールデンスカイドラゴンのゼロが前を歩くレインボードラゴンのレイに向かって声をかけると、レイは怒りのままに怒鳴る。
『あんな奴等の事は、関係ない! 我は我で、あのダークスタードラゴンと決着を着けるだけだ』
そこに、七華が通りかかる。
「二人ともどうしたの?」
七華の問いにゼロが何かうしろめたそうな顔をするが、レイが即答した。
『竜議会のボケどもが、我は唯一の存在だから、これ以上危険を冒すなと言って来たのだ。無視してこっちに来てやった』
ゼロの慌てている様子を見て七華はかなり大事になっているのを察知したが、この場でレイに何を言っても無駄と考えて言う。
「とにかく今は傷を治すのを優先してよ。前回みたいに途中で倒れられたら困るから」
『解っている!』
そう言ってレイは、バハムートの自室に戻る。
「なんて事あったんだけど大丈夫なの?」
バハムートのオペレータールームで七華がレインに質問する。
「正直かなり無理をしています。しかし、ここで私たちが手を引けば本当にこっちにいる竜を見捨てる事になります!」
強い意志を込めて言うレインに、十斗が言う。
「頑張れ。それよりこっちは超竜騎機将オケンセンスペアー対策を決めるぞ」
頷く一同。
「一番の問題はアルテミスの祝福が使えないって事だな」
十斗の言葉に、双葉が月齢カレンダーを表示して言う。
「次の満月は二十日後です。それまで来ない可能性は低いですね」
七華はそれに頷き発言する。
「百剣の狙いはこのバハムートだよ。相手にとって目の上のタンコブだもん、バハムートを撃沈して、竜騎機将を自分の物にする為に、早いうちに攻めてくるよ。唯一の救いは、絶対無敵では無いって事実が解っている。相手の防御を打ち破ればダメージをちゃんと与えられる。こちらの竜騎機将でもそれが可能な事は千夜さんが証明してるよ」
「ついでにあの最強技、ダークノヴァツインも対抗方法は見当ついたわ、マサムネとムラサメで対応可能よ」
九菜の言葉に士気があがる。
「あとは、十二支だけだよね」
何故かミーティングに参加している三美の言葉に、重い空気が流れる。
傷の治療が終わっている筈なのに出てこない十二支は、前回のショックからリタイヤしたと言う噂が流れているのだ。
「僕だったらここです」
入り口から十二支が入ってくる。
「オケンセンの襲撃に間に合わなかったドジは、次できっちり返します」
その瞳には、強い決意が込められていた。
「メンバーは揃ったな。いつオケンセンスペアーが何時来ても良い様に準備を開始だ!」
十斗の言葉にDSSのメンバーが強く頷いた。
「傷は大丈夫か?」
百剣が肩に乗るダークスタードラゴンのセンに言う。
『もう大丈夫です』
百剣が頷き、十三が居る部屋に入る。
「次こそはあのバハムートを落す」
十三が頷く。
「お願いします。スペアーの最終調整も後三日もあれば終わるそうですから。その時は、頼みましたよ」
「もう二度と撤退はしない」
そして去って行く百剣を見送りながら十三が言う。
「最悪は、スペアーに組み込んだ、竜力機関を暴走させれば、バハムートに大ダメージを与えられるな」
十三は、ディスプレイに表示している全世界主要都市に配置した、竜騎機兵の確認をして笑みを浮かべる。
「バハムートが無くなれば、これだけの竜騎機兵を止める術は無い。今の腐った奴等を一掃し、真に差別の無い世界を作れる」
胸元から、一枚の写真を取り出す。
そこには十三と十斗そして、十三が学生の時の彼女と作った子供が映っていた。
「金斗、お前を死に至らしめた、差別など、全て無くしてやるぞ」
「金斗くんってアメリカで殺されたんだっけ?」
十三と同じ写真を自室で見ていた十斗に九菜が問いかける。
「ああ、殺された理由が凄いぞ。日本人だから。それだけで殺された。信じられるか?」
九菜が首を横に振る。
「裁判も行われたが、犯人は事故という事で軽い処分で済んだ。十三と私はその時に誓ったよ、こんな腐った連中は皆潰してやるって」
十斗が遠くを見ながら語る。
「でもな、私達は方法を間違えたのだよ」
そう自傷を込めた笑みを浮かべる十斗だった。
「だから今は必死に間違いを訂正してるんでしょ?」
九菜の言葉に十斗は首を横に振る。
「間違いを正す事は出来ない。出来るのは、次の奴等の手助けをするだけだ」
そして映し出される、必死に準備を進めるDSSのメンバー。
「私はあいつ等を信じる」
霧流家の庭で、千夜に剣の修行を受ける七華。
「そろそろ休憩したら?」
そう言って、八子がお茶菓子を持って来た。
「ありがとうございます」
頭を下げる千夜だったが、出されたお菓子を見て手が止まる。
「これ何ですか?」
八子は笑顔で答える。
「すっぽん赤マムシ饅頭。精力が尽くそうよ。もう直ぐ剣一郎さんが戻ってくるんでしょ? これ食べて新しい子供を作る為のロングファイト!」
疲れ果てていた筈の七華が飛び起きる。
「何時も何時もそんな事を!」
それに対して八子が言う。
「家族はやっぱ多い方が良いでしょ。あたしは親兄弟も居なかった。一人で神殿に暮らしていても寂しいって、気持ちは解らなかったわ。でもね今もう一度同じ生活をしろって、言われたら駄目。六牙や一刃、七華が居ない生なんて何の意味も無いもの。一人でも多くの家族が欲しいと思うのは当然な事よ。千剣ちゃんも大きくなって、兄弟の一人や二人居ないと可哀想よ」
珍しい真面目な台詞に戸惑う七華。
「剣一郎が戻ってくる正式な日付はまだ不明です」
千夜の言葉に手元の饅頭を見て残念そうな顔をする八子であった。
「六牙も魔神竜の方が面倒な事になって、まだ帰れないそうだし、残念」
そんな八子は置いといて千夜が言う。
「護りたい者が居る人間は、負けないそれを信じるのよ」
七華は強く頷いた。
「超竜騎機将オケンセンスペアーが出てきました!」
双葉の言葉がオペレータールームに響くと、全員が動き出す。
その中、十斗が立ち上がる。
それを見ていたレインが言う。
「どうしたのですか?」
「ここは、現場の人間で十分だろう。竜武の許可はレインに任せる」
驚くレイン。
「いきなり何で、ですか?」
「私は私でやる事がある」
そして出て行く十斗の後姿を見つめるレインであった。
「きっちりいくぜ!」
五郎がマサムネのコックピットで気合を込める。
「竜殲滅部隊マサムネゼロ、晴晴五郎出る」
九十九が続く。
「竜殲滅部隊ムラサメゼロ、晴野九十九行きます」
二人に続き竜殲滅部隊が飛びたっていく。
手書きで書かれた、『七華とレイの発射口』(BY三美)のプレートを触りながら七華が言う。
「レイは、どうするつもり?」
『どうするもこうするも無い。我は我が道を行くだけだ!』
そんなレイに七華が言う。
「了解、行くよ!」
バハムート降下装備片手にバハムートから飛び降りる七華とすっかり慣れたレイ。
バハムートの竜武玉発射口前で十二支が言う。
「ゼロ、僕がパートナーだった性で、辛い目に合わせた」
ゼロは首を横に振る。
『私こそ、レイを連れ戻したいなんて個人的な理由で参加していて、覚悟が足りませんでした』
「僕だってそうだ。この業界で有名な八刃の人間に勝てるチャンスがあると思って参加して居た」
十二支がそう言ってから、手にある護符を握り締める。
「相手は最初からそんな下らない事は気にもしてないって言うのに。これからが本番だ、行くよ」
『はい』
ゼロも元気良く答える。
十二支が呪符を取り出し呪文を唱える。
『子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』
酉の呪符に手を当てる。
『飛翼』
そして呪符は、一体の大きな翼を持つ鳥に変化する。
十二支はその鳥に乗り空に飛び出す。
その後を追う様にゼロも飛び出す。
「七華ちゃん、十二支君ともに目標地点に到着しました」
バハムートのオペレータールームに報告が入る。
レインが緊張の表情で頷く
「竜武、皐月型・水無月型の発射準備お願いします」
「竜武、皐月型射出体勢に移行同時に、竜武、水無月型発射装置に装填して下さい」
双葉のアナウンスにそって、竜武皐月型を格納した竜武玉が発射台に移動され、一本の巨大砲台に竜武水無月型が入った竜武玉がセットされる。
双葉は、竜武玉が完全に射出装置に固定されたのを確認した所で、専用スライドレバーを大きく後に下げて、固定しアナウンスを流す。
「これより、竜武弥生型を発射します。各員対ショック体制を取ってください」
そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが二つ現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標地点、空中を滑空する七華と十二支にマークが重ねる。
「竜武、如月射出・弥生発射お願いします!」
「竜武、如月型射出・弥生型発射します!」
双葉が、専用スライドレバーの解除と同時にスライドレバーが前方にスライドする中、プラスチックでカバーされたスイッチのカバーを叩き割りながら押す。
それに合わせて射出装置が移動し、皐月型が入った竜武玉は特殊射出用デッキから射出され、水無月型が入った竜武玉が巨大砲台から発射される。
「高度・距離カウントします。8000/2000・6000/1600・4000/1200・2000両方共、1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」
レインが二本突き出した専用レバーを握る。
「真竜開放魔方陣展開」
レインがレバーを両側に開き、同時に直ぐ隣の円形の専用ハンドルを握り締めて、レバーを大きく回す。
竜武玉の外殻が割れる。
そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。
上空で、レイは自ら七華の体から離れ、魔方陣に向い、ゼロは魔方陣に接触する。
『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、レインボードラゴン』
『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、ゴールデンスカイドラゴン』
レイとゼロは、魔方陣からの漏れる竜人界から力を己が体に変換し、元の姿に戻っていく。
レイの口から光の吐息が放たれ、七華を覆い、ゼロの金色のブレスが十二支を包み十二支の姿が消える。
四足をついた状態だったレイが、直立し、まるで人間の様な体型になり、ゼロはその巨大な翼はそのままに人のシルエットを形成する。
レイとの降下速度の差が縮まり、機械がレイの体の重要部分だけを覆い、ゼロの後方から迫ってきた装備がゼロの全身を覆った。
竜騎機将ナナカレイと竜騎機将イフシゼロが超竜騎機将オケンセンスペアーの前で飛ぶ。
竜騎機将ナナカレイが手を振り上げ、
『望みの船から舞い降りる』
竜騎機将イフシゼロがバハムートを背負い、
『望みの船から飛び立った』
二人で超竜騎機将オケンセンスペアーを指差す
『穢れし欲望を斬り裂く者』
『穢れし欲望を打ち破る者』
竜騎機将ナナカレイが両拳を打ちつけ、
『純粋なりし刀』
竜騎機将イフシゼロが両手で印を作り、
『高尚なる印』
腕組をして見下ろす様にし、両手を腰に当てて見下して宣言する。
『竜騎機将ナナカレイ』
『竜騎機将イフシゼロ』
竜騎機将ナナカレイのコックピットで七華が言う。
「きっちり連携していくよ!」
『解っている!』
強く答えるレイの言葉に苦笑する七華。
『何がおかしいのだ?』
レイの質問に七華が笑顔で答える。
「レイも変ったなと思って。会った頃のレイだったら、自分独りで大丈夫だって言い切ってたよ」
『我独りでは何も出来ない。竜騎機将になるのもお前や、DSSの人間が居るから出来る事だ。そして肩を並べて闘う者も居る』
レイが強く翼を羽ばたき、竜騎機将イフシゼロの隣に行く。
『こちらでも空を飛べるようになるとは思わなかったぞ』
新型竜武、皐月の一番の特徴それは、イフシゼロの飛行データの解析と推進機の増加による飛行機能である。
そして、竜騎機将ナナカレイと竜騎機将イフシゼロの前に、超竜騎機将オケンセンスペアーが存在した。
『あの時の借りを返し、そしてあのデカ物を壊す』
そう宣言し、百剣が唱える。
『我は神をも殺す意思の持つ者なり、ここに我が意を示す剣を与えよ』
オケンセンスペアーの手に意思を凝縮して作り出された剣、神威が現れる。
一気に斬りかかって来るオケンセンスペアーに七華は、竜牙刀のアクセサリーを掴む。
『血の盟約の元、七華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀』
ナナカレイの手に竜牙刀が生まれ、オケンセンスペアーの神威とぶつかりあう。
『お前の実力で俺に勝てるつもりか?』
百剣の言葉に七華が笑顔で言う。
「あちきは勝つ必要はないんだよ!」
オケンセンスペアーの背後から次々にキクイチモンジのドラゴンファングが放たれる。
『こんなものは効かぬ!』
百剣の宣言通り、キクイチモンジのドラゴンファングは、オケンセンスペアーに当たる前に爆散した。
『だからお前は甘いんだよ!』
五郎の言葉に共に、ドラゴンファングが作った爆煙を突っ切り、マサムネが接近してくる。
『やらせん!』
前回、チヤゼロに放たれた強力な雷撃の篭ったミサイルがマサムネに向かう、しかしそれらは全てキクイチモンジのドラゴンファングが撃墜していく。
『舐めるなよ! 行けロンギヌススピア!』
マサムネから放たれるロンギヌススピアをオケンセンスペアーが片手で受け止める。
七華はその隙の逃さす、軽く引くとそのまま連続暫撃を放つ。
『この程度!』
ロンギヌススピアを手放そうとしたオケンセンスペアーだったが、手からロンギヌススピアが外れなかった。
『馬鹿が、俺達がお前に通じない攻撃をするとでも思ったか!』
五郎の言葉通り、前回ロンギヌススピアを掴まれた反省から、様々な試行錯誤の結果、掴ませない事は不可能だという事が解った時点で、発想を逆転して、強力な接着剤を内蔵させたロンギヌススピアを開発していたのだ。
『こんな小細工で!』
必死に片手でナナカレイの連続攻撃を防ぐオケンセンスペアー。
『避けろ!』
通信機から聞こえる十二支の言葉に、七華は頷き、ナナカレイを大きく横に移動させる。
イフシゼロのコックピットで十二支は、自分の家に家宝として受け継がれた十二枚の護符の一枚を構えて唱える。
『子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥。時空を司る十二の獣よ我が意に答え、我が式神と成りてここに』
寅のボタンを押して、護符を掲げて呪文を続ける。
『聖獣戦神の力が封じられし護符よ、我が声に応えよ』
イフシゼロから出た大きな護符にコックピットの護符が共鳴する。
そこにゼロが呪文を込める。
『ゴールデンドラゴンパワー』
『神雷寅』
十二支の声に応え凄まじい雷を纏った虎が、現れる。
それは、オケンセンスペアーに向かって突っ込む。
『八刃で無い人間の技が通じるか!』
オケンセンスペアーは、神威で神雷寅を斬ろうとするが、逆に弾かれる。
『馬鹿な!』
そして神雷寅の一撃がオケンセンスペアーにダメージを与える。
『これほどの力が在るなんて信じられん』
百剣の言葉に、十二支が答える。
「いまのはただの式神では無い。お前達の崇める八百刃が造りし護符を使って生み出した神の式神だ!」
十二支は手に握られた護符を見つめる。
オケンセンスペアーのコックピットにセンの言葉が響く。
『百剣、今の話は本当ですか?』
百剣が頷く。
「かなり有名な話だ。霧流と一緒に動いていた安倍の人間の為に、八百刃様が護符を作ったらしい。しかしそんな護符があろうが、俺は負けん! ダークノヴァツインを行くぞ!」
『はい』
そう答えて、力を貯め始めるセンと百剣。
百剣は闘気抽入ミッドを殴りつける。
「行け!」
『ダークドラゴンフレア』
センの竜魔法の超高温の炎が、百剣の闘気とミックスして相乗効果であがった後、スペアー装置で連続倍増され、一旦力の方向性により二本の砲塔に別れ、発射される。
「いけーダークノヴァツイン!」
「俺達の出番だぜ」
マサムネのコックピットで五郎が言うと通信機で九十九も同意する。
『先走らないでくれよ』
スペアーの砲台から発射されるエネルギー弾にマークを合わせる。
『こちらも大丈夫だ!』
九十九の声に応え、五郎が叫ぶ。
「いけ! ドラゴンボーンミサイル!」
五郎のマサムネと九十九のムラサメから竜骨が組み込まれたミサイルが放たれる。
ミサイルは、オケンセンスペアーが放ったエネルギー球にそれぞれ当たる。
すると、エネルギー球の軌道が変化して、ぶつかり合い相殺して消えてしまう。
「見たか! これが俺達の力だ!」
「千夜さんならともかくあんな奴等に破られるだと!」
オケンセンスペアーのコックピットの壁を叩く百剣。
ナナカレイから七華が声を掛けてくる。
『ダークノヴァツインは、元々のエネルギーの相殺で威力が落ちていたダークノヴァの力を一時的に分けて、反発させるタイミングでぶつける事で意味を成す技。そのタイミングを外してやれば、二分化しきったエネルギーは消滅するだけだよ』
『百剣……』
心配そうなセンの言葉を聞いて百剣が叫ぶ。
「小細工はお終いだ!」
強烈な闘気を全身から放出する。
片手に張り付いていたロンギヌススピアがその波動で消し飛び、近くを飛んでいたキクイチモンジが撃墜されていく。
神威を両手で構えて言う。
「最初から、この神谷の技だけを信じればよかったのだ!」
百剣は、ナナカレイに斬りかかる。
『解ってないよ! 戦いに勝つのに必要なのは勝ちたいと思う心! 戦いの為に戦ってる百剣さんにはあちき達は負けない!』
七華がそう宣言して竜牙刀で正面から刃を受け止める。
「負けるか!」
百剣はそう叫び、竜牙刀を切り裂く。
「お終いだ!」
神威を更に進めようとした時、百剣は愕然とした。
神威がナナカレイの胸部装甲に食い込んで止まってしまったのだ。
「最初から足止めのつもりだったと言うのか!」
百剣の問いにナナカレイから七華が答える。
『あちきには、後を任せられる仲間が居るからね!』
神威を手放し、咄嗟に後退させる百剣だったが、その上に式神の竜と寅が居た。
『神爆寅辰』
十二支の呪文を聞いたとき、百剣の意識が薄れて行った。
イフシゼロのコックピットで大きく息を吐く十二支。
『やりました。遂に竜騎機将を倒しましたよ!』
ゼロの言葉に頷く十二支。
「ああ、今まで散々足を引っ張っていた僕がやったんだ!」
そう言って、感慨深げに竜騎機将モードが解かれて、落ちていく百剣とセンを見る十二支。
『十二支さん、避けて!』
七華の声に慌てて、レーダーを見ると、オケンセンと合体していたスペアーが自動飛行でイフシゼロに向かって飛んできた。
「しまった!」
咄嗟に横へ回避するが、翼に掠め、下降するイフシゼロ。
DCCの秘密工場では、オケンセンスペアーを負ける所を見ていた十三が言う。
「意外と情けないですね。しかし、スペアーを突入させて竜力機関を暴走させればあのバハムートを落とす事も出来ます。今だったら可能な筈」
「やっぱりそんな手を打っていたのか」
その声に驚き振り返る十三の視線の先には十斗が居た。
「十斗どうしてここに?」
肩を竦めて十斗が言う。
「もしかして私の事を馬鹿にしているのか? 探そうと思えばこんな工場を探すなんて訳ないぞ」
十三が手元のスペアーのリモコンを操作しようとした時、十斗が懐から拳銃を抜いてリモコンを撃ち砕く。
十三は、十斗を凝視する。
「あんな物は要らない! 私の下には世界中の首都を制圧できる竜騎機兵がある。それで全ての腐った奴等を殺せば、私たちの夢見た差別無い世界が来る!」
十斗が溜息を吐く。
「何夢見ている。少し考えれば解るだろう、そんな事で世界が変るわけ無い事位」
ハンディーディスプレイで映像を十三に見せる。
それには、十三が隠蔽していた竜騎機兵達が武装を解除して、元の世界に戻っていく姿が映っていた。
「馬鹿な奴等はもう戻る先は無いはず?」
愕然とする十三に十斗が告げる。
「何にも裏がある。金さえ積めば密かに回収してくれる連中くらい探せば幾らでも居たって事だ。その金はお前がブルーブラッドを始めとするテロリストから奪い取った金だがな」
激怒する十三。
「お前が否定するのか! 私達の夢を!」
十斗が丁度自分の後ろにある鏡付きドアを指さして言う。
「それじゃあそこに映っている差別主義者は誰が殺すのだ?」
意味理解できず、十三は怒鳴る。
「何を言っている、ドアの外には誰も居ないぞ!」
十斗はそんな十三に淡々と言う。
「お前には見えないのか? 私たちが一番嫌いだった、力さえあれば全て自分の思い通り出来ると勘違いしている奴の顔があるだろう」
十三は、ドアを凝視する。
「ドアの所には、鏡位しか無いぞ!」
十斗が辛そうな顔をして、搾り出す様に告げる。
「そうだ、私たちがいつの間にかに私たちが一番嫌っていた、力で何でも思い通りにしようとしている最低な人間になっていた。鏡に写った顔を見ろ! 金斗を殺した奴と同じ表情をしているだろ」
その一言に、十三が改めて鏡に写る自分の顔を見て、本当に絶望した。
「そんな、私はただ差別が無い世界を作りたかっただけだった筈だ!」
顔を掻き毟る十三に十斗が言う。
「私も同罪だ。あいつ等を排除する為に、あいつ等と同じ力を手に入れようとした。それが間違いだったのだ」
十斗は上着を脱ぐとそこに銃痕があった。
「これを撃ったのは、無力な子供だった。父親の会社を私たちに乗っ取られた所為で一家心中して、独り生き残ったそうだ。その子供の瞳に写る自分の姿を見て私は愕然としたよ。そこには、私たちが一番嫌っていた人間が居たのだからな」
顔を自分で血だらけにして呻く十三に十斗が近づく。
「間違った私達は、もう駄目だが未来ある奴等の手伝いだったら出来る。だから私はDSSを作った」
その言葉に十三が顔を上げて言う。
「私にも出来るだろうか?」
十斗が頷いた時、バハムートの状況を移した画面に映っていたスペアーが再起動を始めた。
「馬鹿なリモコンを壊されたのに動くわけが無い」
その時、スペアーを作った科学者、雲集四門が入ってきて言う。
「残念だが、スペアーは本来の目的通り、バハムートと異界の魔神竜とを繋ぐパイプにする」
その言葉に十三が驚く。
「なんだと?」
十斗が振り返り拳銃を撃つ。
「そんな事をさせない!」
その時、十歳くらいの少女、一度、十三が目撃した少女が現れて弾丸を不可思議な力で弾き言う。
「残念だけどこの人は殺させるわけには行かないのよ。私たちオーフェンの計画の為にね」
「私はこれから、バハムートの力と、新名の巫女でもある、竜人界の竜の巫女、レインを使って、失った妻を取り戻す」
四門がそう宣言すると少女が微笑み言う。
「そう言うことでさようなら」
消えていく少女と四門。
「まさか私が利用されていたなんて……」
呆然とする十三の横で慌てて通信機を取り出す十斗。
「バハムート、そっちに敵が行った! レインを保護しろ!」
その時、黒い塊が、十三の胸を貫く。
驚く十斗の耳に残酷な声が聞こえた。
『我の復讐完結せり!』
十三が血を吐きながら呟く。
「まさかフォースがこんな奥の手を隠していたとは思わなかった。きっと今まではさっきの奴の力で封じ込めていたのだろう。私を利用する為に」
「死ぬな!」
十斗の言葉に十三が一枚のメモリーチップを震える手で渡す。
「これが私の最後の力だ。明日の生きる者為に使ってくれ」
「馬鹿言うな! お前がやった罪は、こんな小さなメモリーチップで償えないぞ!」
十斗の叫びに十三が微笑みながら言う。
「最後まで厳しいな」
そのまま、十三の手から力が抜けていく。
十斗は歯を食いしばりながら立ち上がる。
「絶対お前等の思い通りにさせないぞ!」
バハムートのオペレータールームは、制御不能になったバハムートからの脱出の為に大慌てだった。
その中、レインの前に一人マントを羽織った男が現れて言う。
「お前には、これから大事な仕事をしてもらう」
レインが男の雰囲気に後退しながら言う。
「貴方は何者ですか?」
マントの男が宣言する。
「オーフェン六頭首の一人、ファザード」
当て身を食らわせてレインを抱え、その場を去ろうとした男の前を保安部が囲む。
「行かせるか!」
拳銃を向けるが、その男ファザードの剣を一振りすると、保安部の人間が凍り付く。
「あれは誰なの?」
その様子を見て居た双葉の端末から十斗の声が流れる。
『バハムート、そっちに敵が行った! レインを保護しろ!』
「あちき達の基地が……」
変貌していくバハムートとそこから脱出続けるDSSのメンバーをナナカレイから見ながら七華が呟く。
そして通信機から十斗の声が聞こえる。
『一度体勢を整える。指示する場所に移動してくれ』
『引くしかないのか?』
レイの悔しそうな声がコックピットを響く。
七華が、ダメージを受けているイフシゼロを見ながら言う。
「相手は誰だか知らないけど、何の準備無しに突っ込めないよ」
バハムートをもう一度見て言う。
「絶対取り戻すよ!」
七華の言葉にレイが答える。
『当然だ!』
そしてナナカレイを指定された地点に向かわせる七華であった。
成田空港の出口に一人の男が居た。
その前に千夜と較が走ってきた。
「間に合わなかったみたい」
千夜の言葉にその男、千夜の旦那、一文字剣一郎が言う。
「もう奴らが動いているのか?」
較が頷き言う。
「バハムートがオーフェンに乗っ取られた。そして竜の巫女レインが囚われて、止めとばかりに六牙さんが闘っている最悪の竜、魔神竜まで関っているって話」
千夜が溜息を吐く。
「表の事だと思って放置し過ぎたって事ね」
そして較が真剣な顔で言う。
「こっから先はもうDSSに任せられない。あちき達が動く事になるよ」
頷く三人であった。




