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竜騎機将ナナカレイ  作者: 鈴神楽
変革編
11/17

ドッグファイト?

「結界張り終えましたよ」

 バハムートの最頂部でそういう小生意気そうな女子小学生に七華が言う。

「光ありがとう。それでどんくらいもつの?」

 するとその小学生、間結マムスビヒカリ十二歳が言う。

「それは、これからのお金次第です」

 七華は頬をかき言う。

「そういえば、光ってこうゆう子だった」



 バハムートのオペレータールームで、一部始終を聞いて、双葉が言う。

「それで結局相手の言い値を払ったんですか?」

 十斗が笑顔で答える。

「私が商談で小学生に負けると思うかね?」

 七華が同情する顔で言う。

「光が泣いてましたよ、ヤヤお姉ちゃんに言われたから来たのに脅されたって」

 その言葉を無視して、十斗が言う。

「とにかくこれで谷走の魔法でもこのバハムートに進入出来なくなった」

「そこですが、その英志さんって七華ちゃんが属する八刃の人間なんですよね。そちらからブルーブラッドに関るなって言えないんですか?」 双葉の提案に七華が首を横に振る。

「基本的八刃は異邪退治以外では干渉しないのがルールです。光もヤヤお姉ちゃんが口添えしてくれたから助っ人に来てくれたって感じです」



 釈然としないまま、五郎が言う。

「とにかく、約一週間どうにかして俺達、竜殲滅部隊だけで仕事をこなさないといけないんだな」

 十斗が頷く。

「相手も、奪った竜武の研究、技術反映で直ぐに竜騎機将が出てくる事は無いと思うが頼む」

 その時、通信が入る。

「アメリカに、竜騎機兵が出たそうです」

 双葉の報告に緊張が高まったその時、別口の通信が入る。

「アメリカ大統領からです」

 双葉の言葉に十斗が頷くと、通信回線が開く。

『ミスタージュット、最初に言っておく、我々アメリカ合衆国は、お前達DSSの力を必要としない。我々アメリカ軍が地上最強だという事を示してやろう』

 大統領が示す映像には、マサムネと同じベースの機体、ムラサメとキクイチモンジの小隊が離陸していた。

『これが我々の力だ、竜騎機将が居ない今のお前達に頼る必要など無い!』

 一方的に宣言すると通信が切れる。

「よくもまー人の所から借りた設計書で造った物を自慢できるな」

 五郎が呆れる。

「まーこっちも戦力に問題あるんだ、今回は頑張ってもらおう」

 十斗は投げやりに呟いた。



「どういうことですか?」

 竜人界の最高会議でレインが問いかける。

「これは決定だ。これ以降、異界に行った竜を返還する必要は無い」

 レインが立ち上がる。

「冗談はやめて下さい。返還しないでどうするって言うのですか?」

 その言葉に参加者の一人が言う。

「以前と同じ様に向うの世界で始末してもらえばいい。態々こちらの戻して裁判するだけ無駄じゃないか」

 レインが大声で反論する。

「どうしてそんな事を言うのですか! 第一竜議会が認める訳はありません!」

 失笑が会議室を覆う。

「これは竜議会からの提案なんだよ。奴等も異界に出稼ぎに行った屑の為にこっちに余計な借りを作りたくないのだろう」

 愕然とするレイン。

「これより、現地での処分ですませてくれ。君も早く帰ってきたまえ。竜の巫女が異界に行きっぱなしって現状はあまり望ましくないのだから」

 そして参加者達が会議室を出て行く。

 一人残ったレインが言う。

「何で、何でなの。どんな竜だって生きる権利がある筈。他の世界までお金を稼ぎに行かない現状を作った私達にも責任がある筈よ!」

 その声は虚しく他に誰も居ない会議室に木霊する。



 アメリカ軍空軍基地の更衣室でアメリカ軍空軍パイロット、エース=M=サンダー大尉が脱いだヘルメットを床に投げつける。

「なんで竜騎機兵ヒドラ程度に二時間もかかる!」

 周りにいた部下達の表情が強張る。

「サンダー大尉、まだ新型機の慣熟訓練が終了していない状態ですので仕方なきことかと思われます」

 そう言った部下を殴るエース。

「甘えた事を言うな! お前達は誇り高き米軍のトップパイロットだろうが!」

 全員を睨み言う。

「全員直ぐに筋肉トレーニングだ!」

「イエスサー!」

 そしてかけていく部下達を見送りながら拳を握り締めるエース。

「ムラサメでは、ゴロウのお下がりでは駄目だ。奴のマサムネを越す機体を手に入れなければ」

 そう言って、更衣室を出た時、日本人の男が道を塞いだ。

「邪魔だ、いまはジャップに関る気は無い」

 そう言って突き飛ばそうとした時、その男が言う。

「私どもでしたらマサムネを越す機体を貴方に提供出来ますよ」

 その言葉に驚くエース。

「貴様何者だ?」

 それに対して、その男は一つのマニュアルを見せる。

 エースはそのマニュアルを手にとり二ページ目に描かれていた機体に言葉を無くす。

「それを見ていただけば、マサムネを越す機体だという事を御理解頂けると思いますが?」

 その言葉にエースが睨みつけて言う。

「私にこんな物に乗れって言うのか!」

 男は笑みを浮かべて答える。

「あくまで判断は貴方次第です。しかし、今のままムラサメに乗ってマサムネに乗る晴晴五郎に勝てますか?」

 エースはそのマニュアルを握り締めたまま答えを返せない。

「良い返事をお待ちしています」

 去っていく男。

 エースはそのマニュアルを凝視して言う。

「これだったらゴロウに勝てる……」



「それじゃあ暫くあなた達の出番無いわけね?」

 八子の言葉に頷く七華とレイ。

『本当に七華の不甲斐無さには困ったものだ』

 レイの言葉に苦笑する七華。

「だったらブンさんの所に遊びに行けば?」

 八子の言葉に悩む七華。

「それも悪くないけど、今は集中できないから駄目だと思う」

 そんな七華の言葉に八子が自信たっぷり答える。

「そーゆー時こそ、恋人と熱い夜を過ごすのよ。時間制限ない深夜の二人だけのバトル。きっと新しい世界が広がるわよ!」

 頭を抱える七華。

「いつもいつもどうしてそうなるかなー」

 そんな七華に八子が答える。

「小さい頃から六牙に会うまで、楽しい事知らずに育ったの。そして六牙と出会って凄い経験したの。やっぱセッ……」

 そこから先の発言は七華はひたすら耳を塞いで耐えた。



「竜騎機兵スカイドラゴンが、横須賀の米軍の基地に上空に出現しました」

 バハムートのオペレータールームに双葉の言葉が伝わると、緊張が走る。

「米軍のムラサメは?」

 十斗の言葉に即座に双葉が答える。

「確か横須賀に来ていたと思います」

 その言葉に考え込む十斗。

「今回も奴等に任せるか?」

 それに対して五郎が言う。

「奴等にスカイドラゴンは荷が重い、行くぞ」

 駆け出す五郎。

 その間にも米軍のキクイチモンジが次々に出撃し、竜騎機兵スカイドラゴンの撃退に動く。

「おかしいな。どうしてムラサメが動かない?」

 双葉はオペレータ達に指示を出して観測結果を調べて答える。

「ムラサメは暖機されていますが、パイロットがまだ到着していないみたいです」

 そうしている間に、竜騎機兵スカイドラゴンは超高速移動と、小型ミサイルの攻撃でいとも容易く米軍のキクイチモンジを全滅させる。

 そして通信が入る。

『ゴロウ出て来い、今度こそ決着つける。私は、この竜騎機兵スカイドラゴンでお前を倒す!』

 驚く双葉。

「何でサンダー大尉が?」



「何で竜騎機兵スカイドラゴンをあんな奴に渡す?」

 横須賀の喫茶店で十三に百剣が問い詰める。

「気にしないで下さい、竜騎機将のパワーアップは順調ですよ。これは貴方達の勝負の後の話です。普通の戦闘機乗りがどれだけ竜騎機兵を扱えるかのテストですよ」

 余裕たっぷりコーヒーを飲みながら答える十三。

「お前は何を望む?」

 百剣の言葉に笑みを浮かべる十三。

「前にも言ったでしょ、今の世界のトップに居る愚者を残らず血の海に沈めて新たな秩序を作るんですよ。止めますか?」

 百剣は気にした様子も無く言う。

「異邪に関係しない以上、仕事でも頼まれない限り表の世界に関係を持たないそれが、八刃の基本方針だ」

「そうですかそれは助かります」

 そして再びコーヒーに口をつける十三。

「それより良いのか? 奴はお前と直接会っているぞ。もし負けて捕まったら、お前がDDCに関係してる事が発覚するぞ」

 百剣の疑問に十三は含み笑いをする。

「安心して下さい。ちゃんと手は打ってありますから」



 マサムネのコックピットでエースからの通信を聞いた五郎が通信回線を急いで開いて怒鳴る。

「お前何考えている! そいつらはお前の部下だろうが!」

『ふん、無能な部下は不要だ。さー今日こそ、お前を倒して、私こそが最強のパイロットだって事を証明してやる!』

 そして向かって来る竜騎機兵スカイドラゴン。

 高速接近の直後の小型ミサイルの連射。

「こなくそ、行けロンギヌススピア!」

 発射されたロンギヌススピア小型ミサイルの幾つかを破壊、そこに加速して入りこみ回避する。

 マサムネの後方でミサイルが衝突して爆発する。

『敢えて中心のミサイルを撃墜して、そのスペースに入り込む事で他の小型ミサイルを同士打ちさせたな。流石はやるな。しかし竜騎機将スカイドラゴンのスピードに追いつけるものか!』

 超高速での動き、接近された時に発生した衝撃波だけでマサムネはダメージを負っていく。

『五郎、大丈夫!』

 双葉の言葉に五郎が力強く言う。

「当たり前な事を聞くなよな」

 そして、高速で動く竜騎機兵スカイドラゴンを見て指示する。

「九十九、五分後にポイントA3に誘い込め。後は俺が決める!」

『無茶苦茶言うな、どうやってそれをやれと?』

 九十九の返信に五郎が平然と言う。

「知らねえ、俺はお前を信じるだけだ!」



『知らねえ、俺はお前を信じるだけだ!』

 九十九のキクイチモンジに五郎の身勝手な言葉が響く。

 思いっきり苦笑する九十九。

「本当に勝手な奴だ。まー信用には答えてやら無いといけないな」

 そして九十九は、相手のスピードと、行動パターンそして自分の経験で計算して、部下に指示を出していき、最後に五郎に言う。

「二度は出来ないぞ、一発で決めろよ」

『任せておけ、相棒!』

 自信たっぷりの五郎の言葉に頷き九十九が言う。

「私もとんでもない相棒を持ってしまったな。だがあいつと一緒だから私は空で自由で居られるのだから悪くは無いな」



「逃げるか五郎!」

 竜騎機兵スカイドラゴンのコックピットでエースが吼える。

 その時、DSSのキクイチモンジが接近してくる。

「雑魚は黙っていろ!」

 連続ミサイル掃射で、蹴散らそうとするが、DSSのキクイチモンジ達は、連携して確実に自分の分担のミサイルを迎撃していく。

「練熟してる。うちのキクイチモンジパイロットとは違うって事か」

 舌打ちをするエース。

 そして、マサムネを苦しめた、高速移動での衝撃波に切り替えようとした時、キクイチモンジが散開する。

「ふん一機ずつ落とせば良い話だ!」

 スピードを上げる竜騎機兵スカイドラゴン。

「まずは一機!」

 追い越そうとした時、別のキクイチモンジが低高度から一気に上昇して体当たりをかけるてくる。

「馬鹿な神風アタックか!」

 慌てて回避行動を取る竜騎機兵スカイドラゴンだったが、下から来たキクイチモンジが避けきれず、翼にダメージを受けて大きく左にそれた。

 そして接触したキクイチモンジが大爆発する。



「九十九大丈夫か!」

 九十九のキクイチモンジが竜騎機兵スカイドラゴンと接触して爆発したのを見て五郎が叫ぶ。

『当然だ。直前でちゃんと脱出している。私はお前と違って、自分の命を賭けた攻撃なんてしないからな』

「この野郎脅かすんじゃねーよ」

 五郎が悪態を吐く。

『キクイチモンジ一機壊したんだ、きっちり決めろよ』

 九十九の言葉に五郎が大きく頷く。

「当たり前だ!」

 エンジンをフルスロットルし、下降による重力加速すら加えて、竜騎機兵スカイドラゴンに直ぐ後ろくっつくマサムネ。

「これで終わりだ! エクスカリバー!」

 回復魔法を籠められたエクスカリバーの一撃は、竜騎機兵スカイドラゴンの兵装を全て打ち砕き、スカイドラゴン自身からも意識を奪った。

 竜騎機兵スカイドラゴンが墜落していく。



「竜騎機兵スカイドラゴン撃墜確認後はレインさんが来て返還してもらうだけです」

 双葉の言葉にバハムートのオペレータルームに安堵の息が漏れた。

「後は、米軍に今回の事の事後処理をするだけだな」

 十斗がそう言った時、竜騎機兵スカイドラゴンが大爆発して木っ端微塵になった。

 騒然とするオペレータールーム。



「エース!」

 マサムネのコックピットで力の限り叫ぶ五郎。

 そして慌てて、周囲に脱出したエースが居ないか探すがレーダーにも視界にもそれらしき影は無かった。

 五郎は思いっきりレーダーを叩き搾り出すように言う。

「こんな最後が、お前が望んでいた最後なのかよ」



「またやりやがったな」

 喫茶店で戦闘の様子を見ていた百剣が憎々しげに十三を見る。

「死人にくちなしですよ。安心して下さい、貴方の竜騎機将には爆弾なんてもう仕込みませんから」

 その言葉に百剣が立ち上がり、十三の胸倉を掴み言う。

「その言葉をどうやって信じろと言うんだ?」

 それに対して、十三は平然と言う。

「それでは竜騎機将に乗るのを止めますか?」

 その言葉に何もいえなくなる百剣。

「安心して下さい。私にとっても貴方は大切な駒です。あのDSSを、バハムートを落とす為のね」

 百剣が手を離し、その場を後にする。

 肩に乗ったセンが言う。

『良いんですか?』

 拳を血が出るほど握り締めて百剣が言う。

「今はまだ竜騎機将が必要なのだ。奴等に勝った後その時にはあいつを」

 そんな百剣の後姿を見て、十三が微笑む。

「まだまだ子供ですね。さてさてこちらの竜騎機将のパワーアップもそろそろ終わります。後は、邪魔な駒を一つずつ外していくだけ。そして一番邪魔な大駒を外した時、十斗あなたはどうするかな?」

 嬉しそうに笑う十三であった。



 竜殲滅部隊の格納庫、エースが使っていたムラサメが運ばれて着ていた。

「あれにはお前が乗れ」

 五郎の言葉に九十九が頷く。

「だがなお前は死ぬな!」

 九十九はビールの缶を二つ取り出すと、一つ五郎に渡す。

「その言葉そっくり返す。お前には双葉さんや三美ちゃんが居るんだからな」

 そして二人は、敵だったが同じ空の下飛んだパイロットの冥福を祈ってビールを飲む。



「それが、竜人界の最終決定なのか?」

 外部から遮断した状態の司令室で十斗がレインに確認する。

 レインは長い躊躇の後、頷いた。

「解った」

 十斗はそれだけを答えた。

 そしてレインは自分に割り当てられた部屋に戻り、悔し涙を流した。



 十斗は一人呟く。

「DDCの活発な動き、そろそろ今までみたいなモグラ叩きじゃ駄目になって来たな。あっちの事を気にしないでも良くなった今、そろそろ勝負をかけるか?」

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