正義の味方?
「レインボードラゴンが行方不明だー?」
椅子にふんぞり返った男が言うと、報告に来た男性は冷や汗を拭きながら答える。
「はい、午後のテストの為、呼びに言ったものの話しでは、我々には読めない書置きを残して誰も居なかったそうです」
そういって一枚の紙を見せる。
「お前もいい加減あっちの言葉位読めろよ」
そういって、この世界のどの言葉とも違う言葉をあっさり読む男。
「短気な奴だ」
その時、まさに光る髪を持つ少女がその男の部屋に来た。
「レイさんが居なくなったそうですが本当でしょうか?」
不安気なその表情を見ながら男は書置きを見せながら平然と言う。
「まーな。自分で乗り手を探すって出て行ったようだ」
紙を凝視して、何度も読み返してから少女が困った様子で言う。
「大変な事になりました」
「どうしてだ?」
男の平然とした態度に少女がおどろく。
「でも、レイさんが居なければ、竜騎機兵が」
「今だってあいつの乗り手が居ないから変わらねーよ」
その一言に少女は黙る。
「こっちも色々手を尽くしてるんだが、魔力なんて意味不明なもんの高い低いなんて計測する方法がないからな」
そして少女を見る。
「すいません。私が直接竜騎機兵に乗るのは戒律違反になってしまいます」
その返事に大した気にした様子も無く男が続ける。
「いいさいいさ。俺としては、この絶望的な展開って意外と気に入ってるんだぜ」
それはそれで問題あると思いながらも少女は窓から下を見る。
そこには、巨大ビルすらミニチュア以下にしか見えない風景がそこにはあった。
そこは、上空一万キロにある、全長二キロの巨大飛行物体の中であった。
「ねーねー、この竜騎機兵って何なの?」
そう聞いたのは、学校の帰りにケーキ屋さんに寄った、中学二年の癖に巨乳少女の晴晴三美であった。
「異界の生物、竜に科学兵器を融合させた、戦闘用の兵器。一般の人たちに主張が受け入れられない、偏った思考の持ち主が好んで買ってるよ」
そう答えたのは、今もノートパソコンを弄ってる、小学生にしか見えないが、三美とはクラスメイトで親友の霧流七華である。
「異界なんてあったんだー」
意外そうな声を上げる三美に
「こんだけ巨大な生物をこっちの科学で作るよりは常識的だよ」
七華は画面一杯に、ホワイトハウスを襲おうとした竜騎機兵を映し出して見せる。
「ふーん。あたしのお兄ちゃんが入ってるDSSって何だか知ってる?」
「ドラゴン・スレイヤー・システムの略で、国連に無理やり承認させた竜騎機兵を排除している所だよ」
頭に疑問符を浮かべる三美を見て七華が言い直す。
「竜騎機兵専門のシロアリ退治屋さんだよ」
「なるほど」
納得する三美を置いて、七華はまたノートパソコンを向く。
「ところでさ、この窓の外に居るの何かな?」
七華は窓の外を見ると、そこには背中に翼を生やした大き目のトカゲが居た。
「多分、竜の赤ちゃん」
「へー竜の赤ちゃんってこんなんなんだ」
「でも竜の赤ちゃんってもう少し純粋な目してると思ったけどな」
暫く二人してみていると、周りの人間も見始め、一気に騒ぎが大きくなる。
「あれなんだよ」
「ドラゴンだよ」
「ドラゴンって?」
「ほら近頃海外で騒いでるだろ、竜騎機兵って変な兵器それの元だよ」
「嫌だ戦闘兵器!」
その一言から人の輪が広がる。
そして清算すませて外に出た七華がその赤ちゃん竜の首根っこを掴み、頭の位置まであげる。
「ねー何ドラゴン?」
『我は、レインボードラゴンなり』
「喋ったぞー」
「イヤー」
人間とは異なる竜の言葉に更に輪が広がる。
「ねーねー、レインボードラゴンって何?」
物怖じしない三美の言葉に七華が答える。
「希少種なドラゴンで、見るのはあちきも初めて。確か基本属性は光なのに七つの属性魔法とブレスを持っているって聞いてる」
『意外と博識だな』
「竜人界って所に居て、契約を結ぶのが難しいから召喚される事はまず無いはずなんだけどねー」
『そこまで知ってるのはさすがに変だぞ』
「へーそれでそのレインボードラゴンくんがどうしてここにいるのかなー」
『私は、この世界を救いに来た』
驚く周囲の人間に対して、七華は平然と一言。
「竜人界の竜はよく言えば俗世なれしてるけど、悪く言えば俗物。そんな崇高な思いが有るとは思えないなー」
『どうもおかしいと思うんだが、貴様何でそんなに詳しいんだ!』
「そうだよ。ナナカ何処で習ったの?」
三美の質問に七華はあっさり答える。
「うちの家、代々続く竜退治の一族で、この頃こっちの世界に竜が来ないから異世界に出稼ぎに行くことが多いの。だから近い世界の竜の事は自然と詳しくなったの」
「へーそうなんだ」
そしてあっさり納得する三美。
『お前等絶対変だぞ』
本来は表情が解かるはず無い竜の爬虫類顔に明らかな疲労の色が出ていた。
「ところで、本当はどうなの? さっきの下らない冗談はいいからさ」
先を促す七華。
『竜の巫女の手伝いだ』
疲れてはったりをかます気がなくなったのかあっさり答える。
「竜の巫女って何?」
「竜人界で竜と人との間に立って争いを仲裁する人だよ。するとこの頃出てきてる竜騎機兵の元って竜人界から来てるの?」
『まーな。愚かな奴らだ。竜人界では、力が弱い竜は、権利が低いと言っても他所の世界に出稼ぎするほどでは無いだろうに』
三美が聞こうと七華の方を向くが問いより先に答えが始まった。
「さっきも言ったでしょ俗物だって。だから当然身分差があり、低い地位に居る竜が自分の世界では良い思いが出来ないと、他の世界に行くって話が多いんだって。この世界はこっちに受け付ける容量を持つ人が少ないからあまり来ないけど。別の世界では、流れてきた竜が大暴れしてるから倒してほしいって依頼はお爺ちゃんのお爺ちゃんの代から有ったらしいよ」
「だったらこの子もそうなの?」
『そんな雑魚竜と一緒にしないで欲しいな。我は誇り高きレインボードラゴン』
「希少種だから保護されてるの」
身も蓋も無いことを平然と言う七華であった。
未だに騒いでる周囲をほっとき、二人と一匹で歩き出す。
「それじゃあ、悪い魔法使いが竜を呼び出してこっちの世界の技術で、竜騎機兵を作ってるの?」
七華の言葉に頷くレインボードラゴン。
『大量の竜と契約していて、国家転覆を図ってた奴なんだが、部下に裏切られ、軍資金を無くし、竜からストライキされて、異界、この世界に逃げてきて、こちらの科学者と組んで竜騎機兵等下らない物を作り出し、こちらの人間に売りさばいてるのだ」
「それって人身売買にならないの?」
レインボードラゴンは短い首を横に振る。
『残念な事に、ちゃんと雇用契約を結んであって、雇われた竜も異世界で働け、即金で支払って貰えると大喜びらしい』
「竜って力有るだけに、力の上下って有る意味絶対的だから、貧富の差にはっきり出るんだよねー」
責める視線を向ける七華にレインボードラゴンは気にした様子も見せず続ける。
『悪党の捕獲も大切だが、そー言った不法異界滞在竜の返還も竜の巫女の大切な役目の一つになっている。そして今回竜の巫女をサポートするこちらの世界の人間どもが、自分達も竜騎機兵を生み出したいと言い出した。その為、我が竜の巫女の手助けになればと立候補したのだ』
「へーそうなんだ偉いんだね」
三美があっさり感心するが、
「竜の巫女って竜にも影響力高いから、ここで恩売っておけば後々有利だと思って手助けに来たんだね」
『違う。そんな事では無い。竜の巫女と私とは深い関係になる筈の間柄』
「いまはまだ浅い関係」
『異界で二人しかいない状況、芽生える愛情』
「つり橋の心理って知ってる?」
『そして、竜の巫女と結婚し、新たな竜の王になるのが私だ』
「要は、竜の王になる為に、竜の巫女の気が引きたくって来たって事だね」
暫くの沈黙の後、レインボードラゴンが言う。
『異界の者には我々の愛情は理解出来ないのだな』
「竜と人ってセックスできるの?」
三美の言葉に固まる七華とレインボードラゴン。
『破廉恥な』
「そうだよ。いきなりそんな事言うなんて……」
慌てまくる二人。
「でも大切な事でしょ?」
そこまで言っても三美からはいやらしいイメージが無い。
『……竜が人の姿に変身してすると聞いている』
その反応を見て三美が言う。
「レインボードラゴン君チェリーだね」
『関係ない話だ!』
「でも結婚生活には必要な話しだと……」
「とにかく、そんな事が決まってるあんたが何でこんな街中に居るの?」
七華は無理やり話しを戻した。
『そうだ、私は私を受け止められる程の器量を持った人間を探しているのだ』
「受け止めるって?」
「話していて気付いたけど、この赤ちゃんの姿は仮だね?」
『解かったか?』
七華は頷き続ける。
「多分、召喚自体は竜の巫女様がやったんだろうけど、実際の戦いは他人に任せる必要があり、その為の本契約を行えるだけの力を持つ人間が見つかって無いって事だよね」
「何で、その竜の巫女さんがやれないの?」
当然の疑問にレインボードラゴンが答える。
『竜の巫女は平和の象徴、その象徴が直接戦闘行為をする訳には行かないのだ』
「いわゆる宗教的理由って奴だよ」
「難しいんだ」
レインボードラゴンはうんうんと頷き、言う。
『だからこそ、私が本来の姿に戻るに値する力を持った人間を探しに人里に降りたのだ』
「早く結果出さないと、追い返されると思って慌てて、効率を考えず自分ひとりで探しに来たって事ね」
七華の言葉にレインボードラゴンが黙る。
「レイ君も大変だね」
うな垂れるレイ(愛称)であった。
「とにかく術力が高い人間探せば良いんでよね?」
『だが、こっちの人間も判別方法が無いなんて言っていた』
「計器にでる力じゃないからね。そっちの専門家だったら何人か知り合いが居るから紹介してあげるよ」
『本当か?』
嬉しそうにするレイ。
「ねーねーあたしにも紹介して!」
呑気な三美そして
『金の亡者! 今日こそこの新たなる力で正義の鉄槌を食らわす!』
タイムリーに高さ二十メートルあるヒドラ(首長竜の胴体が大きい奴想像して)の竜騎機兵が現れる。
「日本初登場だな」
上空の遥か高みでふんぞり返る男の言葉に、その場に居た全員が言葉を無くす。
「そんな事を言っている場合ではありません。早く対処しなれば」
竜の巫女、レイン=D=アテナスの言葉に、男が、雨林十斗が、答える。
「これでも商売なんでね。仕事の依頼が来るまでほって置くしかないのさ」
「しかし」
レインの言葉に十斗が言う。
「しかしも無い。あんたも人間だ。人が生きていくのには、金が必要な事も解かっている筈だ」
「それでも、目の前で人が傷ついているのをほって置ける訳が無いです!」
憤りを感じるレインに十斗は万人を魅了する笑みで続ける。
「なーにあちらから直ぐに依頼してくるさ」
「指令、日本政府から依頼が来ました」
オペレーターの女性の声に微笑を浮かべる十斗。
「さて交渉を始めるか」
不服そうな顔をするレインであった。
『日本は今、悪徳政治家に全てを支配されている。だからこそ私が全てを正す!』
そんな言葉と共に竜騎機兵ヒドラの背中からミサイルが発射されて、少女達の直ぐ側のビルに直撃する。
『危ない!』
レイが口から突風を発生させ破片を吹き飛ばす。
「すっごい!」
感心する三美の腕を引く七華。
三美の目の前にガレキが落ちてくる。
「早く逃げないと不味いかもね」
かなり落ち着いている七華。
『まずは、そこの娘達を生贄とし、我が願いの達成を祈願する!』
竜騎機兵ヒドラが七華たちの方を向く。
「何かあちき達をターゲットに決めたみたいだね」
『どうする? 我もこのままでは、竜騎機兵には勝てぬぞ』
七華は頷くと言う。
「時間稼ぎは出来るよ、手伝って」
「状況はどうなってる?」
DSSの飛行基地バハムートの司令室で日本政府との金額交渉を行っている十斗がきくと、オペレーターを務める、流雲双葉が困った顔をして言う。
「それがかなり変な展開になってます」
変なの所に興味が引かれたのか、十斗が竜騎機兵ヒドラを移したモニターを見るとかなり非常識な映像が映っていた。
「誰かがCGで作ったおふざけじゃ無いよな?」
双葉は頷き報告を続ける。
「十分前から、一人の少女が、竜騎機兵ヒドラを相手に剣一本で渡り合っています」
画面では七華が、自分の身長ほどはありそうな刀を使って、ヒドラの生身の部分にダメージを与えていた。
「何だろうねこのUMAは?」
その時、パイロットスーツを着た青年、DSSのエースパイロット晴晴五郎が入ってくる。
「何特撮流して遊んでるんだよ。俺達は一刻も早く出たいんだぞ」
「五郎違うの、これ現実の映像なのよ」
双葉の言葉に五郎が画面を見つめる、そこで丁度七華にズームがあたる。
「あれ七華ちゃんじゃないか!」
その一言に十斗が驚く。
「お前このUMAの事知ってるのか?」
「妹の親友ですよ。しかし何でこんな事をしてるんだ!」
慌てる五郎に双葉が追い込む、
「大変、直ぐ近くのビルの影に三美ちゃんが居るわ!」
「本当か!」
双葉は急ぎ、メイン画面に三美の姿を拡大表示する。
「三美、なんでこんな所に居るんだよ!」
「三美ちゃんの学校の帰り道、居てもおかしく無いわよ」
五郎が慌てて、飛び出そうとした時、十斗が言う。
「五郎、あの娘とお前の妹は親友なんだな」
「ああ、俺自身何度も会った事あるよ!」
苛々しながら答える五郎を無視して、十斗が指示を出す。
「五郎の妹側に通信装置を投下しろ」
五郎の指示にすぐさま、答えるスタッフ。
「ナナカも凄いねー」
地上で七華を活躍を見ていた三美の側に空から何かが降ってきた。
『えー三美ちゃん居る?』
三美は聞き覚えが有る声に首を傾げながらその機械に言う。
「居ますけど、何方ですか?」
『私よ双葉よ』
それに三美は手を打ち言う。
「あー、お兄ちゃんの休みの度にお料理作りに来てくれる双葉さんですね?」
『それは良いの、うちの司令がミミちゃんに話しがあるそうなの代わるわね』
『君が三美くんだね』
「はい、うちの兄が何時もお世話になっています」
機械相手に頭を下げる三美。
『取敢えず、最初に聞きたいのは、さっきの話だが、ホントかね?』
バハムートのオペレータールームで司令の言葉を聞き、双葉がこける。
『はい本当です。食事食べた後、二人で出かけるんですけど、帰って着た時は何時もお兄ちゃんがすっきりした顔に成ってるんで、やってきたんだと』
双葉は、慌てて通信回線を奪い返し怒鳴る。
「司令も三美ちゃんも今はそんな事言ってる時じゃないでしょ!」
十斗は苦笑をしながら戻ってきた通信回線に向って言う。
「まー興味が尽きないが、取敢えず、優先する事はあるな。三美くんと言ったね、今竜騎機兵と戦っているのは君の親友の霧流七華くんでいいんだね」
望遠映像で捉えた三美は頷く。
『はい、ナナカが、周りの住人の避難が終るまで時間を稼ぐって、何かアクセサリー見たいな物を刀に変えて、竜騎機兵に向っていきました』
「しかし、戦車すら通用しない竜騎機兵に少ないがダメージを与えているのはどうしてだい?」
その質問に、三美は少し考えながら答える。
『えーとナナカの話しだと、竜は恒常的に、自分の世界を展開している為、外部からその世界に干渉するには圧倒的な力か、干渉しえる物を使わないといけなくて、ナナカが持っている刀は、その一つらしいです』
レインは頷く。
「私も聞いたことがあります。竜は、通常の技で倒す事は叶わず、竜に通ずる神器を持てと」
「それで、七華くんにあいつは倒せそうなのか?」
これこそが本題である。
自分達が必死に倒していた物を、たった一人の少女があっさり倒してしまうかもしれない。
それはDSSの組織自体の存在を危ぶませる物である。
『駄目だそうです。生身の部分だったら刀で切れるから大丈夫だそうですが、急所は完璧に機械にガードされていて、ナナカの細腕ではとても斬れないそうです』
十斗はその言葉に納得する。
「なるほどな、あの手に持っている武器は、竜の世界を無効化出来るが、少女の力では鉄は斬れない……」
そこで十斗が思考し鋭い視線になる。
「三美くん、竜騎機兵には科学兵器も搭載されている。それはどうすると言っていた?」
その時、まるで十斗の声が聞こえていたようなタイミングで、竜騎機兵ヒドラの背中に設置されていたミサイルが発射される。
「レイ出番だよ!」
地上で竜騎機兵ヒドラの攻撃してた七華の言葉に、レイは大きく息を吸い込む。
そしてミサイルに向ってサンダーブレスを放ち、空中で爆発させる。
『人間の科学兵器等には、遅れはとらん!』
爆風をその手に持つ、万年生きた竜の牙を素に作られた、竜兵器、竜牙刀の力で受け流した七華は、そのまま、竜の首の皮を斬った。
『科学兵器で攻撃してきたら、レイくんのブレスで迎撃する事になっています』
地上からの三美の言葉に、バハムートの司令室に居る十斗は子供の様な笑みを浮かべて言う。
「面白いじゃないか、あの二人、総理に連絡しろ、そっちが言ってきた金額で仕事を請けてやる。換わりにこちらの仕事に口出すなって言ってやれ」
そして内線を繋ぐ。
「九菜、竜武の投下準備しろ!」
スタッフ達は驚く。
『本当に良いの?』
「駄目元だ行け!」
レインの方を向く。
「三美くんを通じて、真竜武装のやり方を教えてやってくれ」
「そんないきなり」
レインが慌てるが、十斗はあっさり言う。
「あの二人ならやってくれると思う。これは勘だがな」
レインはもう一度、
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
十斗は、竜騎機兵ヒドラ相手に未だ刀一本で遣り合っている七華を差して言う。
「あいつは術って奴を使え、レイとコンビネーションが合っている。十分可能性はあるさ」
その言葉にレインはまだあまり慣れない通信機を掴む。
DSSの空中移動基地、バハムート先頭部の特殊射出用デッキでは慌しい作業が続けられていた。
「いきなり竜武を使うのかよ!」
「暫く使わないって言ってたの誰だよ!」
「愚痴言っている暇あったら手を動かせ!」
そして、その中央では今まで無用の長物として動かされずに居た物が、自分の出番に武者震いの様にその巨体を震わせていた。
「つまり、あちきに竜騎機兵のパイロットやれって事?」
七華が竜騎機兵ヒドラと間合いを開けた時に三美が十斗達からの伝言を伝える。
「そーみたい、出来る?」
少し考えた後、七華が言う。
「昔父さんが言ってた、やれることは何でもやっとけって、何でも自分の成長の鍵になるからって。後学の為やるよ」
「解かった、十斗さんにはあたしから言っておくね」
『何時まで話してる!』
サンドブレス(粒上の砂を多くんだ吐息)で竜騎機兵ヒドラを足止めしていたレイが言うと七華は駆け出しながら言う。
「これからあちき達で真竜武装するよ!」
それに驚いた顔をするレイ。
『本当か? でも大丈夫なのか?』
竜騎機兵ヒドラに一撃を入れながら七華がはっきりという。
「駄目もとだって」
『そんな事でいいのか!』
レイが怒鳴る。
七華が後に大きく後退し、七華が居た場所が機関銃で、大きな穴を作る。
「じゃあさー、レイはまたお荷物のままここで見送るんだ」
レイも解かっているその台詞が挑発だという事位は、しかし
『ふざけるな、我は、偉大なるレインボードラゴンだ。やってやろう』
挑発を受け流せるほど、人間(?)が出来ていなかった。
バハムートのオペレータールームにかってない緊張が走る。
『竜武、睦月型射出用意完了しました』
ハンガーからの通信が来る。
「必要な事は伝言しました」
レインが言い、
「本人達も了解の様です」
双葉が続ける。
『いざって時のフォローの準備もOKだぜ』
五郎の戦闘機から言葉で全ての準備が整った。
十斗が宣言する。
「竜武、睦月射出準備」
「竜武、睦月型射出体勢に移行して下さい」
双葉の通信にそって、ハンガースタッフ達が退避、特別射出口のでかい金属の卵が発射台に移動される。
双葉は、その卵が完全に射出装置に固定されたのを確認した所で、専用スライドレバーを大きく後に下げて、固定する。
そして、司令室の画面中央に射出用ターゲットが現れ、オペレーター達が一斉に最後の微調整を行い、目標地点とマークが重なる。
「竜武、睦月射出!」
「竜武、睦月型射出します!」
双葉が、専用スライドレバーの解除と同時にスライドレバーが前方にスライドする。
それに合わせて射出装置が移動し、金属の卵は特殊射出用デッキから射出される。
「高度カウントします。8000・6000・4000・2000・1000を切りました、魔方陣開放承認お願いします」
十斗が二本突き出した専用レバーを握る。
「真竜開放魔方陣展開」
十斗がレバーを両側に開く。
金属の卵の外殻が割れる。
そしてそれは空中で巨大な魔方陣に転ずる。
「ナナカ来るよ!」
地上の通信機の側でバハムートとの通信を聞いていた三美の言葉に、七華はレイを掴み上空の魔方陣の方に投げ飛ばす。
『汝戦う為にここに在り、戦いの姿をここに、レインボードラゴン』
その呪文に答え、レイは、魔方陣からの漏れでる、竜人界から力を己が体に変換し元の姿に戻っていく。
そしてその口から光の吐息が放たれ、七華を覆う。
七華の姿が掻き消る。
それと同時に、四足をついた状態だったレイが、直立し、まるで人間の様な体型になると上空から降って来る様に来た、機械がレイの体の要所要所を覆っていった。
そして、再び地面に立ったとき、そこには高さ十六メートルの人の体型を持ち、機械の鎧を纏った竜が存在した。
バハムートのメイン画面にレイが変化したそれが映し出される。
「竜騎機兵化確認しました」
双葉の言葉にスタッフ達が喜ぶが、十斗が大声で言う。
「あれは竜騎機兵では無い!」
その言葉に全員が静まり返る。
その沈黙の中、レインが勇気を絞って言う。
「しかし、レイさんは真の姿を取り戻し、そして機械の装備を身に着けています。あれが竜騎機兵で無いと言う根拠は」
「竜騎機兵なんかと一緒にしないで貰いたいわね」
その時、一人の女性が入ってくる。
DSSの開発部門の責任者、雪森九菜である。
「操縦者が、まるで竜を戦車か何かの様に操縦する竜騎機兵とは違う。そう、竜と人とが一体化した新たな存在、竜騎機兵を超越したもの、竜騎機将よ!」
その言葉に十斗が続ける。
「以後、あのタイプの竜騎機兵を竜騎機将と呼び、識別には、パイロット名と竜の名前を付ける」
十斗は竜騎機将を指差し宣言する。
「竜騎機将ナナカレイ。それこそが新たな我が戦力だ!」
『遊ぶの良いですけど、詳しい操作法の説明とかして欲しいんですけど』
七華は、球体の全面スクリーンの直立型コックピットに居た。
『すまんすまん。それで何が聞きたいんだ?』
『おいこっちは命がけだったんだぞ』
コックピット全体から聞こえるレイの言葉を無視して七華が言う。
「操作方法をお願いします。色々ボタンとかスイッチとか有るんですけど、どれがどれだか解かりません」
『今回はそれらは使わないから安心して』
九菜の声に七華は凄く嫌な予感を覚えた。
「もしかして、これってあちきの動きをトレースするシステムですか?」
『ピンポーン。良くわかったわね。ちなみにそこら辺のスイッチは貴女の身体の動き以外をサポートするもの。因みに貴女が動かそうと意識して無いときは、トレースしないから安心して』
七華は軽く息を整えてから本題を切り出す。
「もしかして、これ実践用の武器搭載してないんですか?」
『大正解。良くわかったわね?』
『嘘だろー』
レイの声がコックピットを共鳴させるのを無視して七華はスイッチを指差して言う。
「少し考えればわかりますよ。これだけスイッチが有るのに、今回は使わない。つまり基本的な動きはこのスイッチを必要としない。じゃあ基本的じゃ無い動きと言えば、武器の使用しか無いじゃないですか」
『お見事。そうなの、それってまだ一回も竜騎機将になった事無かったから、万が一にもトラブル起きた時の事考えて、危険な武装は外してあったのよ』
七華は深呼吸をした後、自然体をとり言う。
『どうやって戦うんだ?』
レイの言葉に七華は冷静に答える。
「まー無いものは仕方ないよ。それにあちきにはこれにあるから」
そして牙の形をしたアクセサリーを掴んで唱える。
『血の盟約の元、七華が求める、戦いの牙をここに表せ、竜牙刀』
呪文に答え、そのアクセサリは消え、何と竜騎機将ナナカレイの手に一本の刀が握られていた。
『何なんだこれ?」
「竜牙刀は、元々は万年竜の牙で、そこのビルほどの大きさなの。それをあちきが契約によって大きさを調整してるの。だからあちきに丁度良いサイズにも、レイに丁度良いサイズにもなるんだよ」
『便利だな』
「感心している場合じゃないよ。来るよ」
七華の言葉にレイは前の方に気をやるとそこには突進してくる、竜騎機兵ヒドラが居た。
『そんなこけおどしに誰が乗るか!』
二十階建のビルを一撃で粉砕する竜騎機兵ヒドラの突撃。
「レイ大丈夫だよね?」
『当然だ!』
七華は左手を竜騎機兵ヒドラに向ける。
竜騎機将ナナカレイも同じ様に動きそして、竜騎機兵ヒドラの突進があっさり止まる。
『何だって! アメリカ陸軍の最新戦車だって止められない突進を片手で受け止めるだと』
驚愕する敵に七華は一言。
「大きさが違うんだから当たり前だったでしょうが、あちき達は違うよ」
竜騎機将ナナカレイの回し蹴りが竜騎機兵ヒドラの胴体にクリーンヒットする。
簡単に吹っ飛びビルを倒壊させる。
「しっぱいしっぱい」
『気にするな、総理のOK貰ってあるから平気平気』
「あのねー国民の血税だって事わすれないでよねー」
そう言ってる間に、竜騎機兵ヒドラが立ち上がる。
『ふざけやがって食らえ!』
背中にセットされたミサイルが残弾全発射される。
「あれは回避出来んなー」
「そうねー、ちゃんと装備があれば対抗法もあったんだけどねー」
バハムートの司令室で呑気に言う十斗と九菜。
「司令、そんな呑気にしてないで下さい。あれには女の子が乗ってるんですよ!」
双葉の言葉に、十斗が言う。
「今まで竜騎機兵が通常のミサイルでダメージ食らった事有るか?」
十斗の言葉と同時に全てのミサイルが直撃し、物凄い爆煙が竜騎機将ナナカレイを覆う。
竜騎機兵ヒドラのパイロットの声がスピーカーから流れる。
『やった! やったぞ!』
その時、爆煙の中から刀身が伸びて、竜騎機兵ヒドラのコックピットを切り抜いた。
「丁度良かった。どうやってコックピットを狙う隙をつくか、悩んでたんだー」
コックピットで、陽気に七華が言うとレイが陰気な声で答える。
『この煙は嫌だったぞ』
竜騎機将ナナカレイは、刀の上にあるコックピットからテロリストを取り出す。
「こいつどうするの?」
『そこら辺のパトカーに渡しとけ、そいつの保護までは俺達の管轄じゃない』
「はいはい」
十斗の言葉に従って、近くで避難誘導を行っていた警官に渡す。
「所で、レイはもちろんドラゴンヒールを使えるよね?」
『光の属性だぞ当たり前だ!』
「だったらさー、竜牙刀にドラゴンヒールかけたらどうなると思う?」
それに対してレイは戸惑う。
『ドラゴンヒールはその余りにも高い回復力の為、ドラゴン以外には死すら与える魔法だが、確か竜牙刀は竜の牙だから……』
「論より証拠、やって!」
竜騎機将ナナカレイは高らかに呪文を吼える。
竜牙刀に光が帯びる。
『レインボーフィニッシュ』
竜騎機将ナナカレイの竜牙刀は、コックピットが無くなり、暴走気味だった竜騎機兵ヒドラの胴体を両断するように切り裂く。
そして、機械部が破壊されて爆発が起る。
「仕方ないことですよね」
モニターから様子を見ていたレインが悲しそうな顔をする。
「竜騎機兵の破壊を確認。ただし、元に成ったヒドラも生存しています」
その双葉の言葉に、驚いてレインがモニタを見てみると、切られたはずなのに、傷が無いヒドラが居た。
『竜の牙を素にした竜牙刀は、ドラゴンヒールで回復することは無いけど、その力を留めて置く事が出来たの。そしてドラゴンヒールの力を留めて置いた刃で竜騎機兵を斬ると、機械の部分は壊れるけど、竜の部分はドラゴンヒールの効力で回復する。面白いでしょ』
竜騎機将ナナカレイに乗った七華が通信でそう答える。
「確かに面白い技だ。しかしどうしてそんな回りくどいことをした?」
十斗の言葉に七華がモニタの中で頬をかきながら言う。
『レイから聞いていたから、竜の巫女さんは竜を連れ戻す事だって。だから、竜は出来るだけ無傷に近い方が良いんじゃないかなって思ったの』
レインが頭を下げる。
「ありがとうございます」
そして涙を流すレインに十斗が言う。
「それじゃあ返還させるんだな?」
「はい」
十斗の言葉にレインが嬉しそうに頷く。
そして十斗が言う。
「七華くん、すまないが魔方陣をお願いする」
『どうすればいいの?』
「両側にある、二重円が描かれたボタンを押してすると魔方陣弾が射出されるから。後はこっちでやるからお願い」
そして竜騎機将ナナカレイから魔方陣弾が射出されて、オペレータールームからの操作により、返還魔方陣がヒドラの上空に描かれる。
そしてレインが、オペレータールームの中央にある、真円池に張られた魔法水に身を沈め、地上近くにある魔方陣と真円池を同調させて呪文を唱える。
『ここは異界なり、正しき理を持って、正しき世界に帰れ、竜返還』
空中の魔方陣にヒドラが吸い込まれていった。
そんな様子をモニタから見ながら十斗が言う。
「当初の予定通りの進み方だ。今までの特殊兵器を使った殲滅法ではなく、竜騎機将を使った退治返還。なかなか面白くなってきたぞ」
高笑いを挙げる十斗であった。
そしてそんな十斗を見ながら双葉が一言。
「七華ちゃんってまだ正式にパイロットになるって決まった訳じゃないのに大丈夫かしら」