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いつか花咲くその日まで

巻き込まれて異世界へトリップした『私』。人生リセットして後悔したアレやコレやをやり直してみようと思います。まずは、女子力を高めましょう!

 

 

 

 異世界に召喚されちゃいました。


 少女向け小説なんかにありがちな、神子でお妃候補なんだとか。いやはや、参りましたね。二十二歳で大学卒業したはいいけど就職が決まらず、フリーター確定であった私ですが。

 学生時代からバイトをしていた店で働くとはいえしょせんはフリーター。親から向けられる目も冷ややかに思え、肩身が狭く感じていろいろと嫌気がさしてたりもしましたが、渡りに船ってこういうことかなと思うようにしました。

 あの時あぁしておけば良かった。この時はこうしておけば良かった。そんな後悔もすべてリセットしちゃいましょう。

 嘘か真か元の世界へは戻れないと言われましたし、これを機に人生やり直してみようかと思います!


 今まで彼氏もいなかったのでお妃候補として一つの条件はクリアできていますよ。大きな声では言えませんけどね。

 見栄えに関しては化粧でどうにかしてみせましょう。好みのタイプはどんな感じですか?

 えぇ、男を掴むなら腹からと言いますし、料理の一つや二つ作って落としてみせましょう!

 お妃教育? もちろん、今までにないほど身を入れて学ばさせていただきますとも。

 神子の行事? とうぜん、微塵の隙もみせずにこなしてみせますともっ。

 二十二歳にもなって何痛いこと言ってるのって自分でも思いますけど、こんな突拍子もないことに遭遇したら多少は痛い言動もしたくなるってなもんですよ。




 なぁんて、そんなこんなで奮起してみたんですけどね。

 召喚されたのは私ではなく花も恥らう女子高生。たまたま彼女が落としたシャーペンを私が拾い、落ちましたよ~なんて渡そうとした瞬間の召喚でした。

 えぇ、私は予期せぬおまけってヤツですよ。でも、帰れないって話ですし? 女子高生ちゃんと手を取り合いさめざめと泣いたりしましたが、ちょうど腐してた時期もあって案外早く私は立ち直り、女子高生ちゃんを慰めたりもしましたっけね。

 由緒正しき私立校に通う女子高生ちゃんはいまどき珍しく髪も染めずに規則に従った服装と、見るからに楚々とした雰囲気の女の子。

 清楚とした雰囲気の女の子が悲しそうな顔をしてたら男女問わず慰めたいと思うもんでしょ? えぇ、私も思いましたし。旦那候補の王子様も思ったようで。

 えぇ、えぇ、無事に先日彼女と挙式をあげてましたよ。

 鴉の濡れ羽色って言葉がよく似合う黒く艶のある髪に白のレースでできたベールがこれまた映えてねぇ。彼女、色白だし、ほんのり染まった頬とかバシバシに長い睫とか、すごく可愛かったんだけど、やはりアレよね。幸せオーラがとかく彼女を美しく見せてたのよ。王子様も彼女の美しさに惚れ直してたね。断言できるね。

 いやぁ、すごく良いお式だったぁ~。

 うん、良いお式だったよ。うん……。…………。


 化粧とか服とかアクセとか、嫌いな女なんてそういないじゃない? しかも選り取り見取りで遠慮は無用とくれば、ねぇ? とりあえず試してみたくなるってものでしょ? お妃候補の勉強やら神子の行事やら礼儀作法やらの息抜きとして、侍女さん交えて女子高生ちゃんとキャッキャウフフなファッションショーですよ。

 可憐な女子高生ちゃんの雰囲気は壊さず且つエレガントな化粧を施してみたり、日本人でも合いそうなドレスを宛がってみたりデザインしてみたり、アクセもあぁでもないこうでもないとつけたりしてね。勉強は厳しかったけど楽しかったなぁ。

 後の王様になる王子様は女子高生ちゃんとくっついちゃったし、ならばと辣腕ぶりを買われて先日政権交代した若き宰相の妻の座を! と更に奮起した私に侍女さんたちが化粧方法を教えて欲しいと言ってきたから、にわかにメイク講座を開いたなんてのもあったなぁ。

 いやぁ、まさか化粧映えのする侍女さんと良い仲だったとは露知らず。デートのたんび雰囲気を変える侍女さんと熱い夜を幾夜も過ごしていたなんて、いやぁ、参りました。デキ婚ですって! おめでたいよね。もちろん、お祝いにメイクセット贈ったよ。私の注文がいろいろと加味されているメイクセットで自分で言うのもなんだけど、人気あるんだな、これが。子どもが無事に生まれたら出産祝い贈らないとだけど何がいいかな? その時になったらまた考えればいいか。


 まぁ、宰相は残念だったけど、まだ騎士団長がいるしね! 肉体派の男性にはやはり食べ物でしょう。飲食店でバイトしてたからね、作り方を教えてもらって家で作ってみたりとか、こう見えてそこそこ料理は得意だったりするのよ。異世界の料理が珍しいからって城の厨房でも料理教室開いてみたりしたなぁ。お互いの調理ハウツーを勉強しあうという良い教室だった。

 異世界だからね、食材も調味料もぜんぜん違うけど、料理なんて想像と手間をかければどうにかなるもんだよ。あとは練習だよね。味の微調整をしながら美味しいと思えるまで火のとおり加減とかを確かめながら繰り返していけばなんとかなる。うん。

 厨房の女の子がいつもべそをかいて裏庭で失敗作を食べているのをたまたま通り掛った騎士団長が見掛け、同情して付き合いで食べ始め、情が湧いたんだか絆されたんだか、俺の家で練習すれば良いとか言い出して、女の子本人が美味しく頂かれちゃいましたー! とかねっ! どんなオチー?!

 はにかみながら来春結婚すると女の子からご報告頂きましたよ。あの仏頂面の騎士団長がいったいどんな口説き文句で女の子を落としたのか。侍女さんたちと一緒に冷やかしながら根掘り葉掘りと聞いちゃいましたよ。照れて恥らう彼女の可愛さは身もだえしたくなるほどでした。幸せになりやがれって感じですよ、まったく!

 コレと目星をつけた男性が片っ端からくっついていくから、いい加減私ものんきに構えている場合じゃなくなってきた。今度こそ、今度こそ! 絶対にこの世界で幸せを掴んでやるんだからっ!




 待ってなさい次期神官長!



 

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