ある2人の物語
一応恋愛小説として書きましたが、上手く書くことが出来ませんでした。
ある大学の合否の結果が書いてある掲示板の前。
「あっ!あった!」
一人の女性が大きな声で叫んだ。
彼女は隣にいる男性に抱きつきながら聞いた。
「ねぇ?登は?」
その問いに女性の方に向いた登と呼ばれた男性が言った。
「…ない」
「え?…」
「…だから、……ない」
二人の間に流れる沈黙は、周りの歓喜や悲鳴をどんどん包み込むように二人の耳から消えていった。
二人は同じ高校に通う幼馴染のカップル。
女性の名はあさ美。あさ美と登は一緒の大学に行こうと、いつも二人で勉強をしていた。あさ美の方は学歴優秀で、大学合格は楽々だと言われていた。一方登の方は悪いと言うほどではないが、大学合格は難しいと言われていた。
「―――で、こうなる訳。解った?」
あさ美が言うと片手で頭を掻いている登が言う。
「お、おう・・・」
「ホントに?」
「…すいません。解りません」
「……」
『スパーン!?』
あさ美はノートを丸め、登の頭を思い切り叩いた。
「痛!だって解んないんだから仕方ないだろ?!」
「そんな事言ってないで少しは理解しようとしなよ」
「うっ…、すいません」
「じゃあもう一度行くよ?」
こんな感じで何時も二人は勉強をしていた。
そんな日々が続くある日。教室にいたあさ美は先生に呼ばれた。
「先生、なんですか?」
「渡辺、この頃成績が落ちてるみたいだがどうしたんだ?」
呼び出されるとは思っていた。先のテストでいつも10番以内にいたあさ美は、20番台にまで落ちてしまったのだ。
「すいません。少し疲れていたので」
「そうか。悪気は無いのだが少し聞いたんだが、いつも山本と勉強してるんだってな。どうだ?お前は十分出来たのか?」
「それは…」
それを言われて言葉が詰まった。確かにあさ美は登に教えていて十分に勉強をしたとは言えないかもしれなかったのだ。登はいつも50番台にいてあまり先生からは期待されていなかった。先生はあさ美が言葉を返す前に言った。
「どうだ?受験が終わるまで距離を置くのは」
「え?なんでですか?」
「お互いの為にも一旦距離を置いて、山本も自分にあった未来が見えてくるかもしれないじゃないか?お前も自分のためにいいと思うんだが」
それを聞いたあさ美はカチンと来た。
「先生にそんな事言う資格は無いと思いますが」
「いや、だがなぁ…」
「だがもだってもありません!失礼します!」
「お、おい渡な…」
言い終わる前にあさ美はドアを閉め出て行った。
今日もいつものようにあさ美の部屋で勉強会を始めた。
あさ美は前髪が邪魔なのでヘアピンをつけていると、前にいる登が勉強を始めないのを見て手を止めて話し掛けた。
「登、どうかしたの?」
下を向いていた登はあさ美の方に目線を向け、言った。
「もう勉強会辞めようか…」
「え?どうして?」
思いがけない言葉にあさ美はビックリした。
「この前のテスト、あさ美が悪かったのって俺のせいだと思って…」
そしてまた下にうつむく登を見て、すぐさま言い返した。
「別に違うよ。あの時はちょうど調子悪かったからだって…」
「今日お前が先生に呼ばれたの知ってるんだ。悪いとは思ったけど、後つけて話してるの聞いちゃったんだよ」
「そう…なんだ。でもちゃんとあれは違うって言った…」
「だから、俺のせいでお前に迷惑掛けたくないんだよ!」
テーブルに手を強く突いた登。しばらくして我に帰った登は、荷物をまとめ、
「ゴメン。今日はかえるわ…」
「ちょっと登!」
その言葉に応じることなく、力なくドアを閉め出て行く登。
残されたあさ美はテーブルに顔を伏せて泣いていた。
センター試験まで約1ヶ月。
あの後、今日までの間、登とあさ美はほとんど話す事は無かった。
そんな事があり、あさ美は勉強に身が入らず、授業中も上の空、と言った状況だった。
(どうしよう…。こんな事で登と別れたくない…)
そう思ったあさ美はある行動に移った。
『ピンポーン』
ここは登の家。チャイムが鳴り出てきたのは登本人だった。
玄関にはあさ美が立っていた。
「あ、あさ美…。どうしたんだ?急に家なんか来て。勉強はどうしたんだ?」
「それより、これ」
差し出した手には小さな紙袋が。その中には、
「お守り?」
「そうだよ。私とおそろの」
もう一方の手を出すと袋の中のお守りと色違いのお守りが握られていた。
「嬉しいけど、どうしたんだよ。そんな事してたら勉強できなくなるだろ!」
「繋がりが欲しかったから…」
「え?」
「あれからずっと離れ離れで寂しかった。だから…今まで通りでもいいけど、何かで登と繋がっていたかった。だから…」
「…あさ美」
次の瞬間、登はあさ美に抱きついた。
「キャ!どどど、どうしたの?急に」
「俺も…、俺もあさ美がいなくちゃダメだ。勉強しててもすぐあさ美の事考えちゃって。全然身が入らなかったんだ」
そしてお互いの気持ちを確かめ合うように無言で抱きしめあう。
「あとちょっとだけど、また勉強会はじめようか」
「ああ。良くわかんないところがたくさんあるんだ」
「もう、何回言わせるのよ。少しは解ろうと努力しなさいよ」
「すいません」
しばらく笑いあった後、二人は登の家で勉強を始めた。
〜エピローグ〜
あさ美は希望していた大学に無事入学する事が出来た。一方登は、あの合格発表の時に周りを良く見てみると『補欠合格欄』というところに番号があり、その後欠員が出た為、登は入学をする事が出来た。