三話 ラミィ・エンドール
「お前……誰だよ……」
俺はその名前を聞いた途端、すぐさま立ち上がり剣を抜きラミィに向かって構えた。
この世界に来て俺は本名を誰にも明かしていない上、俺の名前が書いたものはあの紙以外存在しないからだ。
剣を構える俺を見ても微動だにしないラミィ。
「そんな怒んないでよ、私はアナタのためになる情報を持ってるんだよ」
先程行為をしていたラミィとは全く違う、この世界で生き抜いてきた者の顔つき……獣人の顔つきだった。
「とりあえず私、もう一度自己紹介するね。」
「私は ラミィ・エンドール・アステール
一応……王族かしら。」
ラミィの口調が変化した。
俺は知っている……
調べ物をしている最中、この世界のこの国の今について調べた。
ルテス王国。
現在の王の名前はビクス・テスカル・アステール
分家は4つあり
エンドール
テスカル
ウィンストン
レオスティアの4つだ。
「まあ聞いた通り傍系王族よ。直系ではないわね。」
「……なぜ王族がこんな娼館で働いているんだ?
訳を説明しないと俺はお前を信用出来ない」
「……まあそうね、分かったわ」
ラミィはベッドに座り直し、俺の目を真っ直ぐと見た。
「最近…何か自分の身に変化が起きたというか
私が知らない記憶……知ってるけど知らないというか……変なこと言ってると思うかもしれないけど、アナタならわかると思うわ。」
心当たりしかない、この段階で既に情報が出てきた。
俺のように何も変化しなかった人間と、変化したが記憶が戻りかけている又は断片的に復活した人間が存在する。ということになるだろう。
つまり、完全に記憶が戻ったものもいる可能性がある。
通常、この世界に何も分からず突然来た場合、何も出来ず野垂れ死ぬ可能性が高いが、2人の人生の記憶を持ち合わせているとするならば、周りと順応して生きていくというのはなんらおかしなことではない。
「……続けてくれ」
「私がここにいるは家出したのが理由よ。
家出をした理由は聞いてればまあ……分かるわ。
ーーーー見たことの無い景色や食べ物だったり、建物だったり、板のようなものを周りのみんなが必ず持っていた……という断片的な記憶が最近になって思い出すって言うか送り込まれたって言うのかしら……?
そんな感覚があったわ。
この記憶を辿りに色々文献を漁ってみたのよ。
そうすると案の定。ってわけよ
ラミィではない人物の記憶の中にあった謎の板と、文献の中に存在した謎の板
この世界ではない別の景色、それも調べたところ少しだけ見つかったわね。
そうなると、私はラミィではなく別の人物だった可能性が高いということが分かるわ。
少しの情報で断定するのは良くないかもしれないけどそれを信じられる何かがある……そう思うわ。
図書館で私と同じものを調べていたから貴方のことについては全て調べさせていただいたわ。
最も、出生から何から何まで存在しなかったようですけども……。」
「なるほどな……分かった。お前の事をひとまず信じよう。」
俺と同じ段階まで辿り着いてることに驚いた。
俺のタメになる情報とはいっていたがあまり期待していなかったため、これは想定外だな……
それに…俺の戸籍が全く存在しないとなると今後やっていく上で何か障害になりそうな気がする
ギルドで発行手続きとか出来るのだろうか。
「それで、俺の為になる情報ってなんの事だ?」
「アナタせっかちなのね、どうせならお酒でも呑みながらにしません?」
ニヤニヤしながら俺に酒を誘ってきた。
あんまりお酒は強くないが……まあいいか
「分かった。移動しよう。」
俺は警戒しながらも移動し、乾杯を交わしたあと
色々と気になることについて聞いてみた。
本題はもう少し先にしよう。
「にしても、あの情報だけで家出を決めるってあまりにも危険すぎやしないか?
王族という権威があるならもっと簡単に情報収集出来ただろう。」
「まあ……それも強ち間違っちゃいないわ。
けど、情報収集が無理なのよ。
前提としてエンドール家は強硬保守派で、王権が危ういとされたらなりふり構わずその原因を排除しに行くのよ。
私が何について調べていて、誰を調査しているのかっていうのは全部エンドール家に筒抜け
だから今後大きく行動をするって決まった時にその情報をエンドール家に握られていたら大体私の行動が予測出来ると思わない?
それでもって私がアステールの名を捨てずにアナタのような異物と絡んでいた場合……まあ殺されるか牢屋に放り投げられるでしょうね。疑わしきは罰せよの理念だから。
理由としてはこんなところよ。納得できたかしら?」
「なるほどな……政治的な理由もそりゃある訳か」
この世界についてある程度知った気になってはいたがどうも知識が明らかに足りん……。
今後ラミィと関わって行くのであればそこら辺も調べる必要が出てくるようだな。
そもそもラミィ自身そこまで信用出来る相手でも無い……と言いたいが、記憶の件は嘘はつけないだろう。
しかも王族である程度不自由なく生活してたヤツが……そんな奴が娼館で働くなど普通はありえん
普通ならな。
ひとまず信じることにはするが、今はまだ俺の目的について言う必要は無いだろう。
とりあえずラミィが今後どうするかについて聞いてみるか。
「お前は今後どうするんだ?俺と出会わなくとも何かする気ではいたんだろう」
俺は酒をちまちま飲みながら質問をした。
下戸だからな……気をつけなければ。
「そうね……それなら、本題に入ろうかしら。
あなたがあの娼館に来たのも偶然だったからここまで早く接触するつもりはなかったのよね。
まあアナタさえ良ければだけど、一緒に行動を共にしないかしら?
そう決めてくれたら、タメになる情報とやらを教えてあげるわ。」
情報を交渉材料に使うって訳か。
やはりタダとは行かんようだな
まあ俺もハナからラミィと行動するつもりだったし、願ったり叶ったりだな。
彼は忘れてしまっていた。
ラミィ・エンドール・アステールが
「サカモト」という名前を口にしたことを……




