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3 邪魔者

 白い外壁に若草色の窓枠が映える美容室から、一人の女が出てきた。

チェックのミニスカートに黒のピンヒール、髪は今セットしてもらったであろうレイヤーのゆるふわなヘアスタイル。

若作りをしているが、小林明美であった。

 明美は国産車のセダンに乗り込むと、アクセルを踏み込んだ。

明美は考えた。

結婚を前提にして、生命保険に入れればいい。

受取人は、勿論明美だ。

臼井が金回りが良い老人とはいえ、億の金は出てこないだろう。

 今日は臼井の家に行くことになっている。

生命保険の契約のためだ。

 保険の外交員とコンビニで待ち合わせていた。

この保険の外交員とは今日初めて会うのだが、電話では感じの良い若い女の子だと思っていたが、自分と同じ年くらいだろうか。

保険の外交員とは思えぬ地味な紺色のスーツを着ている。

化粧は明美の方が濃いくらいだ。

地味な保険の外交員は、名前を山口と名乗った。

 これで今日中に契約ができれば、機会を見て臼井を始末すればいい。

 臼井の自宅に着くと、明美はチャイムを鳴らした。

インターホンから臼井の声がした。

玄関は開いているから、上がってきなさいと臼井は言った。

玄関を開けると、見慣れない靴があった。

ローヒールの黒い革靴、紳士物のスニーカー、茶色のパンプスが綺麗に揃えて玄関先に並んでいた。

誰かが来ている。

明美は身構えた。

 リビングに入ると、見知らぬ三人が明美を鋭い目つきで睨んでいる。

細身の50代くらいの男性は黒縁のメガネをかけていて、理屈っぽそうに見えた。

黒のスーツに薄緑色のネクタイ、ネクタイピンの先には光る石がはめ込まれている。ダイヤだろうか。

その隣にいる女性も50代だろうか。薄いベージュ色のセーターに黒のパンツスタイル。髪はロングのウエーブをひとつに束ねて肩から前に流している。

一番右端の女性は40代と思われ、ショートボブが一重の目にキツさを二乗させている。

 「こちらは?」

明美がそれとなく聞くと

「あんたこそ、誰よ」

と、ショートボブの女性が言う。

「私は小林明美といいます」

「父とはどういうご関係?」

ロングウエーブの女性がすかさず言葉を挟む。

「私と臼井さんは・・・」言いよどんだ振りをして臼井を見上げる。

「明美さんと結婚するつもりだ」

臼井が何のためらいもなく言い終えると

「お父さん、騙されてるんだって言ってるでしょ」

目つきのキツイ女性が感情的に言葉を発した。

「まあまあ、俊子、落ち着きなさい」

「済まないね。長男の武明と長女の佐代子、次女の俊子だ」

臼井は場を整理するかのように子供たちを明美に紹介した。

どうやらショートボブが次女の俊子といことか。

 「私たちはあなたの存在を知り、ちょっと調べさせてもらいました」

長男の武明が冷静な物腰で明美を見つめながら言う。

「あなた、結婚されてお子さんもいらっしゃいますよね」

明美が無表情のまま押し黙っていると、

「嘘だよな、明美ちゃん」

すがるような眼で臼井が言う。

 「父からいくら騙したの?」

俊子が喰いつく様に言う。

「騙したなんて人聞きの悪い」

明美はサラっと流す。

 「そっちの人は?」

状況が飲み込めないまま立ちすくんでいる山口にまで飛び火する。

「私はニッコリ生命の山口と申しまして」と名乗っている途中で

「保険に入れるんだって?」

俊子が口を挟む。

「父を保険に入れて、どうするつもり?」

「今後の老後の生活の為に活用できると思ってのことです」

「それより、結婚してるんだろ?答えろよ」

武明が低く鋭い声で言葉を重ねてきたが、明美は何も言わなかった。

 「警察に通報しますからね」

佐代子が携帯を取り出し、110番通報をする。

その指は怒りのせいか小刻みに震えていた。

5分くらいでパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

インターホンが鳴り、佐代子が玄関まで出迎える。

刑事を目の前にして、明美は堂々とその場に立って、うっすらと笑みを浮かべていた。


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