Story 46. 番外編:歩邑の日記
七月甲日、べっぴん山にのぼった。
たくさんの思い出ができた。写真や動画も。
ぜんぶ宝物だよ。
カーテンの向こうがまぶしくって目が覚めた。
外を見たら、気持ちのいい晴れ。
あたしがでかけるときは、いつもいい天気なんだ。
日ごろの行いのおかげかな?
朝ごはんは食パン。
今朝はブルーベリーにしたよ。ジャムはすっぱくなくちゃ。
特製サンドイッチが冷蔵庫にあった。
ママは出勤が早いから、置いてってくれる。ありがと。
着てく服は、おきにのキュロット。
ゆうべすっごく悩んで、けっきょくいつも通りっていう。あはは。
とにかく! 決めてたから、のんびり準備してたのに。
髪が寝ぐせ? あわてて直した。
時間ギリギリになって、待ち合わせのスーパーまで激チャだよ。
もうみんなそろってて、遅刻かと思った。
さりげなく薫が「時間ぴったり」って、かばってくれた。
キュンてした。
誠ちゃんの号令で山に移動ー!
山道が、木もれ日でキラキラしてる中をくぐって、めっちゃキレイだった。
登山口には、わりとすぐ着いた。
誠ちゃんと灯ちゃんが先頭に並んで、山のぼりスタート!
薫が遅いから、あたしが階段ダッシュして「競争しよーよ」って声かけたのに、「バテるぞ」だって。もう!
ちょっとくらい乗ってくれてもいいじゃん!
ひまりも、ちゃっかり薫のとなりをキープして「ねー」とか言ってるし。
ぷんすかー!
でもね、怒ってらんなかった。
階段にびっくり! 空まで続いてた。
何百段あったんだろ?
ずーっと、ずーーっとのぼって、のぼりきったら休けい所だった。
灯ちゃんと木崎はベンチに倒れこんで、ひまりは飲みもので生き返ってた。
誠ちゃんと薫は、しゃくだけど元気っぽかった。
忘れられない湧き水。
薫が「おいしいよ」って、いま飲んだコップを貸してくれた。
いーの? しちゃうよ?
誰にも見えないように。
しちゃった。薫と。
階段にも慣れて、みんなしゃべりながらゆっくりのぼった。
けど、二つ目の休けい所すぎるころには、薫と誠ちゃん以外はバテちゃってた。
枝でひっかいて、ひまりがケガした。
薫がもってたバンソーコーはった。
ケガしたひまりが少し休みたいって。
薫がつきそい。あたしらは先に進むことになった。誠ちゃんの判断で。
あたし、すごく不安で。
そのままにしておけなくて、ひき返したんだ。
そしたら、見ちゃった。
ひまりと薫が抱きあってるとこ。
何が起きてるのかわからなくて、あたまの中がまっ白になった。
けど、前みたく誤解かもだから、見てないフリしていっしょに展望台までのぼった。
山頂で薫と二人きりになったときに、聞いてみたよ。
ひまりが貧血で倒れそうになったのを、支えてたんだって。
ホントかな~?
うらやましかった。
あたしもギュッてしたい。
だから、やってみたんだ。
すっごくドキドキした。
石にすわって起こしてもらった。
子供みたいに。
立ちくらみのフリして抱きついてやった。
やさしい薫に。
胸がじんてした。
どうしよぉ、はずかしくなってきた。いまさら!
やりすぎちゃったかな。あはは。
薫は、どう思ったんだろう?
あたしは。
持ちよったおやつ? をみんなで食べた。
ママの特製サンドは、今回も大好評!
薫のおにぎりも、具がないのにおいしかった。
記念撮影大会も始まって、いっぱい写真撮った。
薫の決定的瞬間も撮れた。めちゃかわ!
ひまりが、また薫にくっついてた。
あたし気にしすぎ?
ん~、もやもやする~
帰りも、のんびりおりた。
薫と誠ちゃんだけは元気で。
男子って、体力あまりまくってくる? びっくりだよ。
あーっ!
ハムスターがくるくる回す輪っかみたいな遊具つくって男子ほうり込んだら、いっぱい発電できるんじゃない?
いいアイディアでしょ? にひひ。
おしゃべりしながら写真とか動画とか撮ってたら、もう登山口にもどってきた。
家の方角ごとに解散。
楽しかったね! また遊ぼ?
大道まで来ると、薫と二人になった。
まだいっしょにいたくて、公園にさそった。
屋根のあるベンチで話せるかなあって。
でもザンネン。
佳奈にそうぐうしたよ。
弟の香哉くんもいたから、薫とられちゃった。
でもカンシャ。
偶然、あたしとふたりになったから、佳奈が悩みを打ちあけてくれた。
パパとママがこのごろ、ケンカしてばっかなんだって。
どうにかしてあげたい。
佳奈たちが帰ってから、薫にきいてみた。
薫も手伝ってくれるって。
あたし、佳奈を助けたい。
よーし、やるぞー!
とかいって、なにやればいいんだろ。
月曜日、薫と相談しなきゃ。佳奈とも。
ん~、楽しみすぎる!
じゃ今日撮った写真と動画の整理するよ。
お宝いっぱいでうれしー!
おわり。
第四章 コンセンの夏到来
ムジカク少女はネバギバ男子に接近する おわり