表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/46

Story 40. ふみだした挑戦

 グゥゥ――


 食料をよこせと胃袋がさわぐ。(せい)()の。


「うちのサンドイッチ、ねらってるっしょ~」

「めぐんでくんない?」

()(むら)ちゃんたちがくるまで、ダ~メ」


 リチギな(むら)()はゆずらない。


 ち~ん――


 と、まるでコントのように、誠也は大げさにうなだれた。




「いっちばーん」「いっちばーん」


 歩邑とひまりが、なかよく展望台に到着した。

 階段をふり返ってニヤニヤ&ニコニコする。


 ガッシャ、ガッシャ、ガッシャ――


「おまえら~」


 みると左右の肩にひとつずつ、荷物をさげた(かおる)がのぼってくる。

 こめかみに(いか)りマークが――浮いている?


――すこしは元気になったみたいだな……


 歩邑とひまりが手をさしのべた。

 薫をひっぱりあげる――ためではなく、じぶんのカバンをうけとるために。

 薫の手が、むなしく(くう)をつかむ。


――ぐむー


「感謝だよ」「サンクス」

「さんばーん……」


 と落胆をみごとに全身で体現して――薫がのぼりきった。

 誠也がにこやかに、ねぎらう。


「おつかれさん」




 軽食をじゅんびしていたのは村瀬だけではなかった。

 歩邑がママ――パン職人であるママの特製サンドイッチを、薫がおにぎりをもってきていた。


 誠也が(りき)(せつ)する。

 いますぐ食べたいのが(ほん)()だが、ハラがふくれると動けなくなってしまう。そこで――まずは数分でいける山頂を攻略し、もどってからみんなで食べよう、と。


「うち、のこる~」

「オレも」「わたしも」


 と村瀬・()(ざき)・ひまりは待機をきぼうした。

 下山にひつようなスタミナを考えたのなら、賢明な判断だろう。


「そいじゃ、いきますか」


 薫と歩邑がうなずく。

 誠也がつけくわえた。


「一〇分たっても、もどんなかったら――先、食べて」

「はーい! 気をつけてね」


 と村瀬がちいさく手をふる。


(よめ)かよ」


 木崎のツッコミに――村瀬は「うひひ」と、ちらり歯をのぞかせた。




「べっぴん(さん)(せい)()ー!」


 と誠也が()たけびをあげる。

 登頂メンバーは、あっというまにテッペンにたどりついた。


「ってか、ここがいちばん高い?」

「なんかビミョーだよ」


 薫と歩邑は不満げだ。

 山頂をしめす(くい)みたいな標識が、林のなかの――ほんのちょっぴり高いだけの場所に、つきたてられているのが原因だろう。

 われらが誠也は――その標識をぐるっとまわると、


「メシメシ~♪」


 と上機嫌で、ひとり展望台にひき返していった。

 あっけにとられる歩邑と薫。


「サンドイッチに操られてる?」

「ぼくら……わすれられてる?」


 ハッと気づいた歩邑の――肩にちからが入った。


「あ、あのさ……」




 たっぷり休んだ木崎は元気をとりもどしていた。

 ポッケからひょいとスマホをとりだしていった。


「なあなあ、写真とらねえ?」

「なんでアンタと……」


 と村瀬がクレームをつける。


「記念だよ、キ・ネ・ン」

「せっかくだもんねー」


 ひまりの援護が()いた。

 山からの(ちょう)(ぼう)をバックに、三人で記念撮影する。


 カシャシャシャシャシャ――


「一枚ぐらい、いいのが撮れんだろ」

「貸して」


 木崎のスマホをうばうと、村瀬は写りのチェックをはじめた。

 ひまりものぞきこんで、


(はん)()は消してー」


 と楽しそうだ。




 薫の口からききたい――と思った。

 ふたりきりの、いましかない――と思った。

 薫とひまりの態度がふだんと変わらないことが――あのハグを気にとめなくていい、じゅうぶんすぎる証拠なのかもしれないけれど。

 歩邑がおずおずと口をひらいた。


「あのさ……見ちゃった……」


――なにを?


 とでもいいたげに、薫はキョトンとしている。

 歩邑はひとしきりモジモジしてから、つぶやいた。


「抱きあってるとこ……ひまりと……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ