Story 12. なかよしグループ班
なかよしグループは、どうやってできるだろう。
コミュニケーション力の高い人物が一人ひとりと仲よくなり、その人物を中心としてあつまった数人のメンバーが、さいしょのグループを形成する。じきにメンバー同士のくみあわせでもなかよしが生まれ、こうしたいくつかのグループが離合集散してメンバーを変えながら、そのときどきのグループができあがる――といえば、中らずといえども遠からずだろう。
「おれの班に入ってくんない?」
と薫を勧誘した、男子三人グループのリーダーは福田誠也。
みんなから誠ちゃんと呼ばれるこの少年は、スポーツ全般が得意なうえに人懐っこいフレンドリーくんだった。
誠也の要請を、薫はふたつ返事で快諾する。
だが――異議がでた。
歩邑は胸のうちで抗議しただけだったが、
「ちょっと! こっちにしてよ~」
と、口にした女子がいた。
思いがけない発言に目をまるくする歩邑。
佳奈は、薫の争奪戦か――と面白がっている。
衆目をあつめた女子がつづけた言葉は、佳奈の期待をうらぎるものだった。
「うちらといっしょになって! 誠ちゃん」
声をかけた対象がちがっていた。
薫ではなく、誠ちゃん。
ガクンと拍子抜けする佳奈、ほっと安堵する歩邑。
当の薫は、どこ吹く風だ。
はじめから、わかっていたのかもしれない。
本心に白旗をあげた歩邑が、ついに誘った。
「薫おいでよ、あたしの班に」
ほかの女子にとられたくない! と、はやる気持ちが行動させた。
「だな、よろしく頼む」
まもなく制限時間ということもあって薫にも、とくに異論はない。
「運命には逆らえないわ……」
と佳奈はマイペースをつらぬく。
――だまれ
「だまれ」
ノータイムで言葉になったこころの声に、薫自身もおどろいていた。
ひまりがとりなすように、ぽわぽわした口調で、
「お手やわらかにー」
とあいさつした。
こうして遠足の班が、歩邑・佳奈・ひまり・薫の四名ときまる。
提出された用紙の班長の欄には、どういうわけか松本薫とかかれていた。
▽ ▽ ▽
発案したのは、まえのめりのひまりだった。
「みんなで買いにいこー」
班として重要な相談がある――とメンバーがあつめられ、ひまりの熱弁をきいている。
「――は交換だから……許しません!」
めずらしく鼻息があらい。
歩邑も乗り気だった。
「いくよね? 薫も」
「へっ、なに?」
ふだんとは別人のようなひまりの意気ごみに、面食らっていた薫の反応は鈍かった。
「せんせー! ついてこれてない人がいまーす」
冷やかす佳奈をスルーして、薫は歩邑に目線をおくる。
さらに目線で、ひまりへとうながされた。
「――てか富永、どこいくん?」
「買い出し!」
「だーかーらー、どこに?」
「どこがいいかなー」
あたまがソレに占領されたひまりは、どうにも要領をえない。
「みんなで――おやつ買いにいこって話だぞ」
と歩邑。佳奈がさらに補足する。
「うちらシェアして、とりかえっこすっからさ」
「かぶりは許しませーん」
「わかったってば」
歩邑はげんなりしている。
「もちろん、遠足のおやつ――だよ」
「おけ。となると……」
ようやく追いついた薫が参加した。
「候補は――駄菓子屋、コンビニ、スーパー、薬局あたりか?」
駄菓子屋は学校のすぐそば商店街にあり、歩邑の家のほうにぬけた先にコンビニ、大道にスーパーと薬局がある。
「コンビニひひひ……駄菓子屋ムフフ……」
ひまりはおやつの精神攻撃をうけていた。
「そっとしてあげて。あたしはコンビニ以外がいいなあ」
「うちは駄菓子推し! 異論は認める」
歩邑と佳奈の意見はでた。
お菓子となるとひまりは、いつもこんなだそうだ。
「安売りの薬局一択だな、ぼくは」
本業のスーパーより、薬局のが安いミステリー。
「ほら、どーすんのさ?」「ひまりの番だよ」
佳奈と歩邑が同時にきいた。
「みなさんお待ちかね、発表の時間でーす!」
じつに楽しそうに、もったいぶるひまり。
「ダらららら……」
口でドラムロールを再現しているようだ。
巻き舌ができない舌たらずのひまり。
佳奈が両手で、ふとももをパタパタたたいて効果音の支援にまわる。
さすがのコンビネーションだ。
「でーは! 発表しますっ」