警察
世の中を生きて行くのはそう簡単ではないとつくづく感じる。何故なら運が不可欠だからだ。そして俺は運もないし、頭脳もないらしい。不利だ。
「おい、どうするよ!」
「知らないわよ!」
やばい、慌てて受話器を置いた所だがおそらく警察に通報されているだろう。ここから逃げたとしても日本の警察は甘くない。すぐに見つかってお縄になってしまう。
「ここまでか・・」
幸いまだ金銭を要求していない以上罪は誘拐だけになるだろう。それでも刑務所には長くお世話になりそうだ。
「残念だね、おじさん」
元はと言えば小娘が普通の小娘で花粉症でなければこんなことにはならなかったはずだ。もっというと花粉症というものが存在していなければ、俺の誘拐はスムーズに進んでいたはずなのだ。さらにもっと言うならば・・・
「田中のやろう・・」
「何で田中君にあたるのよ!」
「お前の鼻詰まりの原因は田中だ。それがきっかけでこうなってしまった以上全ての責任は田中にある」
「何でそうなるのよ」
田中への怒りが止まらない。大体田中って何なんだよ。これから田中という名前を見るたびにおそらく怒りを覚えて生きていくだろう。しかも、出会う確率がかなり高い。田中って名前多すぎだろ。
「仕方ないわね」
「は?何だよ」
「良いわよ逃げて」
「は?」
「だから、逃げろって言ってんの」
こいつは何を言っているのだろう。混乱しているのだろうか。
「逃げたって捕まるだけだよ」
「私が捕まらないようにしてあげるわ」
「なんだと?」
「まあ、おじさんバカだから世に放っても問題なさそうだし。それに、一応鼻詰まりの原因見つけてくれたしね。」
悪口を言われた気がするが今はそこには触れないでおく。
「良いのか?俺はお前を誘拐したんだぞ?」
「気が変わらない間に逃げな」
俺は用意していた電話機で警察に小娘の居場所を通報すると、一目散に走り出した。いくら小娘が被害届を出さないとしても警察からは一応逃げなければならない。とにかく走って走って走った。
次回でこの話は完結する予定です。