困惑
この日に至るまで、様々なシュミレーションを重ねて誘拐を決行した。だが、どうやら俺は天使にも悪魔にも見放されていたらしい。
「どうゆうことだよ?」
「私はひどい花粉症で年中鼻が詰まっているの、口を塞がれていたら窒息してしまうわ!」
うん、意味が分からない。こいつは何を言っているんだ。計画ではそろそろ身代金を要求しなければならないのだが、とにかく黙らせよう。
「知ったことかよ、なら窒息するしかねえなーギャハハハハッ」
所詮ガキは怖がらせれば言うことを聞くものだ。俺は漫画に出てくる悪役のように高らかと笑い続ける。
「・・・それじゃダメなんじゃない?」
「ハハハ・・・何がだよ?」
「私が窒息したら人質がいなくなるんじゃない?」
「なに?」
これは飛んだ誤算だ。確かにこいつが死んでしまえば身代金を要求することはできなくなる。生きてるように見せかけることもできるだろうが、その場合成功確率がかなり下がるだろう。それに計画通り進める方が健全だ。こいつガキの癖にするどい所を突いてやがる。
「仕方ねえ、なら口は塞がねえから電話の間黙ってろよ」
「そんなの無理に決まってるじゃない」
「なんだと?」
「それに私が今「はい、静かにしてます!」て言ったところでそれが本当だという保証はないでしょう?」
確かにそれもそうだ、電話を掛けるまでは静かに黙っていて電話が繋がった瞬間叫び出すかもしれない。
「分かった、ならやはり口にテープだな」
「それじゃ死ぬわよ!」
んっー!このままでは拉致があかない。どうしたものか・・・
「あれれー?おじさんどうしちゃったのー?さっきはギャハハハってノリノリだったのにー笑笑笑」
こいつムカつく、俺はどうやら誘拐するやつを間違えたようだ。たが、ここで暴力や怒りに走ってはこの後の計画が全てダメになるだけだ。何かないのか、この状況を打開できる何かがっ!!
「そうだっ!」
「笑笑・・・何よ?」
「俺がお前の花粉症を治してやる!」
「はぁ??!!」
娘は意表を突かれた間抜けな声を素っ頓狂な顔をしながら上げた。