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執筆能力向上企画作品

星の詠み人

作者: たかさば

「あの星は、水の星」

「あの星は、火の星」

「あの星は、植物の星」

「あの星は、闇の星」

「あの星は、氷の星」

「あの星は、灼熱の星」

「あの星は、ニセモノ」

「あの星は、まぼろし」


夜空に浮かぶ、あまたの星を知るものがいた


「あの星には、優しい生き物が住んでいる」

「あの星には、命を持たないものが住んでいる」

「あの星には、時間がない」

「あの星には、過去しかない」

「あの星には、音声という仕組みがない」

「あの星には、自分勝手な存在がいる」

「あの星には、おいしい食べ物があふれている」

「あの星には、運命を伝える役目がある」

「あの星には、黄金が眠っている」


夜空に浮かぶあまたの星を望み、語らい、人々に言葉を授けるものがいた


星の位置を知り

星の意味を知り

星の言葉を知り


神の御使い…星の詠み人


誰も知らない、星を読み

誰にでもわかるよう、星を詠む


「あの星が出ているから、雨はまもなく降る」

「あの星が見えたから、生贄は二人でいい」

「あの星があんなに大きくなるのは、神がお怒りだからだ」

「あの星は欲張りだから、貢物を差し出さねばならない」

「あの星が輝いているから、戦いを始めなければならない」


星の詠み人が星を読むのは、誰もが知る事実


「あの星が畑を焼き払えと言っているのだぞ!」

「あの星はまもなくこの星に接近するのだぞ!」

「あの星の輝きがわからぬとはなんと言うばちあたりか!」

「あの星から聞こえてくる叫びに気がつかんのか!」

「あの星が望むのは若い娘の命なのじゃ!」


星の詠み人の言葉は、ただひとつの真実

(まこと)か嘘か……誰も知り得ない


「あの星を見たからこうなったのじゃ!」

「あの星がお前を罰せよと申しておる!」

「あの星は良縁をもたらすのじゃ!」

「あの星に毎日礼拝を捧げよ!」

「あの星から間もなく使者がやってくる!」

「あの星が消えた時、すべての命が消えるのじゃ!」

「あの星がある限り…わしは生まれ変わろうぞ!」


星の詠み人が天に召された時、人々は星を恐れた


もう星を知るものがいない

もう星を読むものがいない

もう星に願えるものがいない


星が瞬くたび、人は怯えた

星が輝くたび、人は震えた

星が流れるたび、人は泣き叫んだ


もう、人は滅びるしかないのだと

もう、人は繁栄することが叶わないのだと

もう、人は生きるすべを無くしてしまったのだと


人は…絶えることは、なかった


星の詠み人などいなくとも…人は暮らしてゆけた

星の詠み人などいなくとも…人は答えを出した

星の詠み人などいなくとも…人は学ぶことができた


人々が、星の詠み人がいた事を知らなくなった頃

星の詠み人が地上に現れ、人々に言葉をもたらした


「あの星は凶星…間もなくこの星は滅びるのだ!!!」


しかし……誰一人として、耳を傾けるものはいなかった



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